まよらなブログ

八章5話。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話です。

そういえば、春コミに出る予定だった井藤さんのロマン本・・・・・・
・・・じゃなかった、井藤さんの個人誌に5ページ小話を書かせてもらいました。
バリバリファラ子・・・じゃなかった、眼鏡バリとキノコファラ子がメインだと聞いたので、
志水もうちの眼鏡バリと、うちのネタ帳にだけに存在するファラ子の話を書きました。
井藤さんから「バリがヒューズ中佐」というお褒め(?)の言葉をいただきました。
まあ、そもそもの着想が「中佐と仔リザを会話させたらどうなるか」ですから、
むしろ大成功だひゃっはーーーーー!!(笑)

とはいえ、ファラ子が大人になった頃、
「いやー、苦労させて悪いけど、アイツのことよろしく頼むよー、
 悪いヤツじゃねえしさーむしろいい奴なんだけど、
 厄介ごと背負い込んじゃうんだよー、その点、キミみたいな子が傍にいれば安心だ!!
 ・・・ところでウチの子ども達の写真見る?見る?」
ぐらいのことは眼鏡バリに言われることになっているので仕方あるまい。(開き直った)

そして、実は志水もこの5ページにとあるロマンを注いでいるので
実は志水のページもマロン・・・じゃなかったロマンページ。
どんなマロン・・・じゃなかったロマンなのか、バリの言うところの「アイツ」は誰なのか、
本をどう頒布するかを井藤さんが決めた頃に改めて書こうと思いマロン。


ともあれ、この話で八章が終了です。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。




8章5話
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 結局、ドーナツでお茶にした後に『ムロツミ』の二人組に起きた出来事について、アヴィーとカリーナに話をしたのだ。お茶の時間ははしゃいでいた二人だが、話は一言も言葉を漏らさずに聞いていた。一通り話を聞いてから、アヴィーがぽつりと「全然、実感が湧かない。」と呟いた。カリーナはそれに小さく頷きながらも、小さく震えだした。ディスケがカリーナの座っている椅子の背後に回り、彼女の両肩に手を置いて安心させるように一定のリズムでゆっくりと肩を叩く。カリーナは鼻をすすり上げた。
「・・・カナエが、もう、いないのは、実感が持てなくて・・・悲しいとか可哀想とかも、まだ・・・思えない・・・。・・・でも、もしかしたら、それ・・・私だったかも・・・って、そう思うと、」
 カリーナはぎゅっとスカートを掴み、
「・・・・・・っ、すごく、怖くて。」
「・・・ごめんな。」
 カリーナとアヴィーの前に座っているマルカブが絞り出すように謝った。
「・・・怖かったことを思い出させたな。もう少し日を置いて話せば良かった。」
 カリーナはふるふると首を振る。時間の問題じゃないよ、と呟いた。
「・・・それに・・・私、ヒドいよ・・・。もしかしたら、自分も、あの巣で、し・・・死んでしまっていたかもって思って・・・怖くなって・・・泣いてる。カナエたちのことで、悲しんで泣いてるんじゃない・・・。私、ヒドいよ・・・。」
「・・・アヴィーも言ったけど、突然すぎて実感が持てないのは当然だと思う。実感が持てないのに悲しめないだろう?それに、お前があの巣で怖い思いをしたのは事実だし、それを思い出すのも当然の出来事だ。お前が酷いんじゃない。今、そうなるのは当然のことだ。」
 マルカブは出来るだけゆっくりとした口調を意識しながら、そう伝えた。カリーナはうつむいたままだった。
「・・・ただ、いつか『ムロツミ』に起きたことに急に実感が出るかもしれない。悲しくなったり不安になったりするかもしれない。疑問に思うこともあるかもしれない。その時はそれを隠すなよ。今更どうしてそんなことを思うんだろうとか考えるな。悲しくなったり、考え直したりすることに、時期なんか関係ないんだから。」
 その時は、とマルカブは言いかけて、一瞬言葉を止めた。ちらりとディスケとクー・シーをみる。視線の意味を理解したディスケは、カリーナの肩を叩くのを止めないままで「俺は大丈夫。」と言った。壁に寄りかかっていたクー・シーは頷いた。だから、マルカブは続けた。
「・・・その時は、俺らにちゃんと言え?怖くて仕方がないんだと言えば、今、ディスケがやってるみたいに怖さがどっかに行くまで肩を叩くぐらいは出来る。心配になったのなら、何が心配か一緒に考えよう。」
「・・・ん。でも・・・」
 アヴィーは唇を一度への字にしてから、
「・・・・・・マルカブが・・・ディスケもおじいちゃんも・・・特におじいちゃん、僕らにそんなこと言われたらもっともっと辛くなったりしない?おじいちゃん、昔の仲間のことも思い出したりしない?」
 アヴィーが壁に寄りかかっているクー・シーの方へ首を捻って一生懸命問いかける。クー・シーは、大丈夫だよ、と微笑を浮かべてから、
「さっき、マルカブが最後に言ったけどね、「一緒に考えよう」ってことはだよ、おじいちゃんが辛いことや思い出したこともアヴィーにお話するんだろうね。そしたらわしも助かるよ?」
 アヴィーはあまり納得していない様子で、うん、と頷いた。クー・シーは、なんと言ったらいいかこの年でもよく分からないんだけど、と自嘲気味に呟いてから、
「こういうことは一人で考えることが一番よくないことなんだと思うんだよね。それは大人もそうなんだよ。そういうときに、わしらもアヴィーや姫の力も借りたい。だから、二人にこのことを伝えたってこともあるんだと思うんだ。まあ、うちのおとーさんはそんなことを考えてないかもしれないが。」
 ああ、考えてもいなかったね、とマルカブは相づちを打った。
「でも、クー爺の言った通りだ。誰も一人で考えるな。想像と後悔ばかり膨らんで止められなくなるからさ。」
 そしてマルカブはアヴィーとカリーナに腕を伸ばして、いつものように頭を撫でた。
「今、お前等に何かを言ってやることは出来ないし、・・・『ムロツミ』に起きたことを俺がどう思ってるのかも・・・正直分からないままだ。ただ、覚えておいてくれ。俺らは、いつでもいつまでもお前らが考えたり思ったことを聞くし、俺らの話も聞いてくれたら助かる。」
 アヴィーとカリーナは、頭を撫でられながらじっとマルカブを見つめた。そして二人一緒に頷いた。頼むな、とマルカブは言って、最後に一度二人の頭を強く撫でた。そうすることで、一番救われるのは自分なのだと自覚した。

*****

 それから数日、『アルゴー』はオランピアの行方を追って地下7・8階の探索を続けていた。昼で探索を切り上げて、午後は休みにしていたある日のことだ。マルカブが宿の部屋で銃の手入れをしていると、扉がノックされたのだ。カリーナか御用聞きに来た宿の少年だろう、と思って、開いてるぞ、と言うと遠慮がちに扉が開く。すぐに声をかけられないことをいぶかしんだマルカブが、手入れの手を止めて扉を見ると、そこにはガーネット・・・というかエラキスと呼ぶべきか、よく知っているようで全く知らない『彼女』がいた。思わず銃を落としそうになって、マルカブは慌ててそれを掴みテーブルに置いた。
「・・・あの、」
 『彼女』は扉を開けたまま、躊躇いを隠さずに口を開いた。
「・・・この前は、ごめんなさい。」
「・・・・・・・・・、・・・ああ、いや。」
「今、時間ある・・・?」
「・・・ああ。」
 『彼女』は扉を閉めた。閉めてしまうのか、とマルカブは思った。これで逃げられないのは自分の方だ、と思うのだ。
「お願いが、あるんだけど。」
「ああ。」
「あなたは、私のことを知っているんでしょう?」
「・・・どうかな。他人の空似かもしれないし。」
「ええ。そうだとしても、あなたの知っている私を教えてほしいの。」
「・・・・・・でも、もし」
「もし、また私が、・・・何かを思い出しそうになって取り乱すことになっても、大丈夫だって、カリーナちゃんが。」
「・・・カリーナが?」
「あなたたちがシェリアクたちと樹海に行った日があるでしょう?あの日にあの子が訪ねてきたの。あなたと話をしてほしいって。」
「・・・どうして。」
「・・・少なくとも、私の為ではないと思うけど。」
 と、そこでやっと『彼女』は微笑を浮かべた。それが見れただけでもマルカブは安堵した。
「あの子は言ったの。マルカブは優しいから大丈夫だって。私が取り乱しても、絶対になんとかしてくれるって。」
「・・・。」
 マルカブは眉を寄せた。それを見て『彼女』は苦笑を浮かべた。信頼されてるのね、と笑ってから、
「・・・私も、『私』のことを知るのは怖いけど。」
 『彼女』は呟いた。
「でも、・・・知ろうと思ったの、あの子と話をしていて。あの子はとっても勇敢ね。私にあなたと話をしてほしいなんて・・・あの子からしたら・・・ちょっと切なくなることでしょうにね。」
「?」
 露骨に疑問符を浮かべたマルカブを見て、『彼女』は微笑を再び浮かべた。
「・・・カリーナちゃんも言ったけど、確かにあなたとシェリアクは似てるわね。鈍いところもそうなのね。・・・きっとあの子も苦労するわね。」
「・・・はあ?」
 マルカブの間抜けた声に、気にしないで、と『彼女』は言った。
「とにかく、逃げても避けても始まらないと思ったの。どっちにせよ、私の意志とは関係なく、頭の中に知らない景色が浮かんだんだもの。だったら、心の準備というか・・・私が私の意志で知っていることが多い方がいいと思う。」
「・・・・・・でも、」
「あんな風に取り乱す私・・・いえ、取り乱すくらいに辛い思いをする私を、あなたが心配してくれている・・・んだと思うんだけど、それは私の自惚れ?」
「・・・いや、まあ・・・・・・心配というか・・・俺が見たくないんだよ、ガーネット。だってお前、一度も泣いたこと・・・」
 と、そこまで思わず口にして、マルカブは眉をしかめて口をつぐんだ。『彼女』は、頷いた。
「私は、ガーネットって呼ばれていて、少なくともあなたの前で泣いたことはないんだ。」
「・・・・・・・・・、今のは、わざとか?」
「いえ。狙ったわけではないわ。それとも、わざとこんなカマをかけるようなことをする女だったの?」
「・・・まあ、そうだな。」
「ちょっとイヤな女だったみたいね。」
「俺はそうは思わないけど。」
 マルカブはそう言ってから、また口を滑らせたように感じて眉をしかめた。『彼女』は、ありがとう、と言って、マルカブの前まで近寄った。あまり近くに来るな、と願うのだ。思わず抱きしめても、俺は謝らないぞ。
 ・・・拳を膝の上で握りしめ、マルカブはため息をついた。
「・・・まあ、座れ。」
 テーブルの向かい側の椅子を視線で示す。テーブルが間にあれば、衝動的に『彼女』に触れることもないだろう。
「シェリアクにはここに来ていることを伝えているのか?」
「ええ。あなたと話をしたいことも相談した。」
 『彼女』は向かい側の椅子に座り、そして両手を合わせながら思い出すようにして綺麗に微笑んだ。
「もしあなたの話を聞いて私が苦しくなったら抱きしめていてくれることになってるの。」
 マルカブは今度こそ本当に眉をしかめた。もう、彼女を『ガーネット』とは呼ぶまい。
「・・・俺も、以前のお前を全て知っているわけじゃない。・・・以前のお前は本当のことを言っていたわけじゃないから。」
 マルカブは懐から地図を取り出した。『彼女』の瞳が少し広がった。
「これは、お前のものだ。何でここに赤い印をつけたのかは俺は知らない。でも、この場所にいつか行こう、と言っていたことは知っている。」
 そして、マルカブはゆっくりと、諦めるように『彼女』を呼んだ。彼が知らない名前で呼んだ。
「・・・エラキス。俺が知っていることはその程度だ。昔のあんたが俺の前で言ったこと、やったこと、行動したこと。あんたの考えや思いまでは分からない。それでいいのなら、」
 そして、ため息。
「・・・俺は、俺の知っているガーネットについて、君に話そう。」


*****

 夕方。
 カリーナは桟橋に腰掛けて、足をぶらぶら揺らしながら独り言のように歌を歌っていた。
「・・・E uma cobra,e um pau E joao,e jose. Eum sprinho na mao E um corte no pe・・・」
 風に乗ってくる歌をしばし聴く。知らない言葉だ。意味は分からない。ただ、淡々と言葉が続く。詩のようだった。一つの節目のを迎えるように、小さな希望のようにカリーナの歌が続く。
「Sao as aguas de marco fechando o verao. E a promessa de vida no teu coracao・・・」
 そして、ふと歌を止めて、彼女は振り返った。
「・・・マルカブ、エラキスさんとお話出来た?」
 桟橋の途中で足を止めていたマルカブは、少し間を開けてから、ああ、と答えた。そしてカリーナに歩み寄りながら、
「俺が知ってるガーネットのことは、エラキスに教えた。」
「うん。」
「でも、まるで他人事みたいだってさ。地図も自分のものだとは思えないから、俺が持ってろって。」
「・・・うん。」
 カリーナは少し俯いてから、
「そう言われて、マルカブは、・・・悲しい?」
「・・・どうかな。ほっとしてるかもな。」
 マルカブはカリーナの隣に座る。
「・・・私、余計なことした?」
 カリーナは海面の上で漂うように揺れる自分のつま先を見つめながら、小さな声で尋ねる。マルカブは赤く染まっていく空を見上げて、小さく息を吐いた。
「・・・、ちょっと気持ちにけりがついた・・・ような気がする。」
「・・・すごく自信がない言い方。」
「完璧に整理できたとは思えねえよ。けど、まあ、・・・お前のおかげだ。」
 マルカブは隣のカリーナの頭を撫でる。カリーナは、うん、と頷いた。
 カリーナの頭に手を乗せたまま、しばらく沈黙。カリーナも何を言っていいか言葉を見つけられず沈黙。
「・・・・・・、歌。」
 マルカブがぽつり、と呟いた。
「さっきの歌は、なんて歌だ?」
「私も知らないの。歌詞も・・・ずっと昔の異国の言葉で意味も分からない。でも、母様が歌ってくれたから、覚えたの。」
 カリーナは水面を見つめてから、マルカブに微笑んだ。
「どんな意味のある歌なのか、母様も知らなかった。韻を繰り返してるから、ただの言葉遊びの歌かもしれない。でも、好きなの。淡々としてるけど優しい曲だから。」
 マルカブは、そうか、と頷いて、
「俺にも教えてくれよ。」
「マルカブに?」
「俺もいい歌だと思ったんだよ。」
 マルカブの一言に、カリーナは微笑んだ。
「いいよ。ちょっと難しいから・・・少しずつゆっくり歌うね。」
 カリーナは歌いだしの言葉をゆっくりと紡ぐ。韻を踏む言葉は繰り返されながら、別のものへと移り変わっていくようだった。カリーナの紡ぐ言葉を繰り返しながら、ぐるりぐるりと繰り返されてきた樹海の悲劇もこの世の喜劇も、繰り返しながら別のものになる日も来るのだろう、と思う。
 そんな希望にも似たものは、確かに自分の中にある。
 


(九章に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

「悲しくなったり、考え直したりすることに、時期なんか関係ないんだから。」
ここまで書いた上で、一気に更新します。
今は、悲しむ暇すらない方々もたくさんいらっしゃるでしょう。
いつか悲しむことが出来るときになったとき、「今更」と言わずにその話を聞けるかどうか。
そこって結構重要だと思います。


カリーナが歌っているのは「三月の水」です。
ポルトガル語の原詩で歌ってます。
(ただ、ポルトガル語の出し方が分からなかったので近いアルファベットで打ちました)
志水は世界樹の世界の言語は(意図的に)作り直され統一されたものなので
歌詞の意味は失われたものの、名曲は口伝で伝わっているようです。

歌っている歌詞は
「蛇、棒、ジョアン、ジョゼ、掌のとげ、足の傷。
 夏を閉じる 三月の水。君の心には生きる希望。」
とかそんな意味のようです。この曲についてはこの上の日記で語ります。
いろんなアーティストが歌ってますが、手に入りやすさと雰囲気よさ、という意味で、
ジョアン・ジルベルトの「三月の水」のCDをおススメします。

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