まよらなブログ

九章4話。


先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

体調不良やらなんやらの関係で、先週の更新はお休みしました。
今週、二話アップしようと思ってたんですが、
次の話が込み入っており推敲が間に合わないため今回は一話のみです、すみません。


では、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


九章4話
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「カリーナ!!」
 海流を抜けた先で、咳込む男の口にハンカチを当てて、心配そうに彼の顔をのぞき込んでいる少女を見つける。名を呼ばれた少女は首を上げ、振り返り、
「マルカブ!!」
 ぱあ!と顔を輝かせた。
 とりあえずマルカブはほっと安堵の溜息を吐いた。それからカリーナが口元にハンカチを当てている男は、以前に彼女を狙ってきた刺客だということに気がついて、
「・・・離れろ!!」
 銃を抜き、男に照準を合わせる。カリーナはぱっと立ち上がり、両手を広げて男を背中に庇った。
「何やってんだ!?離れろよ!!」
「平気、平気なの!それより、クー・シー!」
 カリーナはマルカブの後に海流を抜けてきたクー・シーとディスケ(どうやら途中で二人と合流したらしい)を見つけ、
「この人を治療して!」
「む?」
 クー・シーはカリーナと刺客を交互に見やり、のんびりと髭を撫でた。
「何だかおもしろそうなことになっておりますな。」
「何を暢気に言ってやがる!治療する必要はねえぞ!」
「何を暢気なことを言ってるの!すぐに治療してちょうだい!」
 マルカブとカリーナは同じことを言って、真逆なことを命じた。クー・シーは、ふうむ、と唸りながら、カリーナへ・・・というよりも刺客へと歩み寄る。
「クー爺!」
「悪いねえ、マルカブ。」
 クー・シーは刺客の元に屈み、
「わしとしても、コイツを死なすわけにもいかないんだよね。拷問でもかけて、雇い主の名前を吐き出させるまではさ。」
 それにわしも腐っても気功師なんでねえ、と言いながら、刺客の腹を捲り、傷を確かめ始めた。クー・シーの眉が一度寄せられたことにカリーナは気がついて、
「・・・傷は深い・・・?」
「むう、きちんとした治療が必要かもしれませんな。まあ、今、出来ることはするとお約束しましょう。」
 クー・シーはそう言いつつ、治療を始めた。いつになく集中しているクー・シーの様子にカリーナはそっと立ち上がり、それから今にも怒鳴り散らしそうなマルカブとそれをへらへら笑って見ているディスケの方へ、おずおずと歩み寄った。
「・・・あ、あの、マルカブ、心配なのは、分かるんだけど、」
「・・・・・・ッ、この、馬鹿がッ!!!」
 やはり、というか、怒鳴られた。カリーナは、肩を竦めて小さくなる。
「お前、命狙われてんだぞ!何があったのかは知らねえけどアイツがケガしてんだったら逃げろよ!お前に何かあったらどうするんだ!?」
 小さくなったカリーナの肩を、マルカブは掴んで
「それで!?」
 その勢いで、カリーナに聞いた。
「・・・え?何?」
「お前、怪我はねえのか!?」
「・・・・・・う、うん・・・平気。」
「本当だな!?」
「う、うん。本当。」
 カリーナの言葉と彼女の様子に、マルカブは天を仰いで、
「~~~~~ッ!!」
 声にならない声で、呻いた。ディスケがへらへら笑いながら、
「おとーさん、単純にさ、『無事でよかった』って言えばいいんじゃねえ?」
「・・・うるせえよッ!」
「じゃあ、おにーさんが言っちゃおう~。無事でよかったよ、カリーナ。」
「俺より先に言うなッ!!」
 もう八つ当たりなんじゃないか、という内容でマルカブはディスケを怒鳴りつけ(とはいえ、ディスケは大爆笑を堪えるのに必死だった)、カリーナをじっと見る。それから大きく深呼吸して、身を僅かに屈めて、
「・・・・・・・・・本当に、無事なんだな?」
 静かに聞いてくる。自分たちを言い聞かせたり心配したときの、彼の仕草だ。カリーナは胸の辺りがきゅう・・・と絞まるのを感じ、胸元に拳を押しつけて答えた。
「・・・うん、平気。」
 答えながら目に涙が集まってくる。安心したのか嬉しいのか、よく分からなかった。何故か切なくなって、カリーナは瞼を拭った。そして、マルカブを見上げて
「・・・・・・あのね、マルカブ。」
「おう。」
「・・・頭、撫でてほしい。」
 小さな声でお願いすると、マルカブは呆れたように溜息をついた。だって、私、そうして欲しくて古代魚の回廊の中に逃げたんだよ。カリーナはそう言おうとして、しかしそれを彼女に言わせる前に、マルカブの掌がカリーナの頭をわしわしと撫でてきた。少し強めの力で撫でられながら、
「・・・・・・無事でよかったよ。」
 頭の上から安堵の声が響いてくる。カリーナは胸を押さえる拳をきゅっと握りながら、うん、と頷いた。
 と、そこへ、
「・・・・・・あ!カリーナ!!」
 海流を抜けてきたアヴィーが、カリーナの姿を見て声を上げ、
「カリーナあ!無事で良かったよう!!」
 泣きそうになりながら駆けてきた。
「うん、心配かけてごめんね、アヴィー。」
 カリーナが年上っぽく伝えると、アヴィーはずずずと鼻をすすり上げながら頷いた。マルカブがそんなアヴィーに「泣くなよ。」と言い、ディスケがぷぷーとわざとらしく吹き出しながら「お前だって泣きそうな顔で追ってたくせにー。」と言い、マルカブはディスケの向こう臑を蹴り飛ばしてから、眉を寄せてアヴィーを見た。
「お前、一人で追ってきたんじゃ・・・」
 そう問いつめようとして、海流から巨漢がぬうっと姿を表したことに気がついた。
「・・・シェリアクに連れてきてもらったのか。」
 シェリアクがカリーナを見つけ少し表情を緩めるのを見ながら、マルカブはアヴィーに聞く。アヴィーが頷くと、それならいいんだけどよ、とマルカブは言い、アヴィーの頭をぐっと押しながら、
「すまない、シェリアク。手間をかけさせた。」
 と自分も軽く礼をした。ディスケがそれを見ながら、「自覚でてきたよなー、おとーさん。」と呟いた。
「・・・いや。それより、無事で何よりだ。」
 朴訥と答えるシェリアクの背中に、海流から転がるようにでてきた少女が激突する。カリーナがそれを見て、あ、と声を上げ、思わずマルカブの背後に隠れた。
「・・・む、すまない。ツィー。」
 シェリアクが振り返り、鼻を押さえている少女に謝る。そのツィーを見て、
「カリーナ!あのね、ツィーってカリーナの友達なんでしょう?カリーナを探しにきたんだって!」
 アヴィーがカリーナに呼びかけるが、カリーナはマルカブの後ろにくっついたままで、しー!と人差し指を立てる。
「姫様!!」
 ツィーはカリーナに向かって走ってきたが、カリーナはさささっとマルカブを回ってツィーの反対側に回りながら、
「た、たぶん、人違いだと思う。」
「いいえ!その往生際の悪さも姫様です!ツィーはずっと探しておりました!お顔をお見せください!」
「で、でも、私、ツィーって名前、知らないし・・・」
「人違いでしたら顔を見せられるはずです!」
 カリーナを追いかけるツィーとそれから逃げるカリーナに、ぐるぐる自分の周りを回られる羽目になったマルカブが
「人の周りで追いかけっこすんな。」
「そうですよ!姫様!このままでは私たちはバターになってしまいます!」
 ツィーはマルカブの背後にいるカリーナに声をかけたが、カリーナは反応しなかった。マルカブがカリーナを振り返り「お前も事情を話せよ。」と声をかけるが、カリーナはふるふると頭を振る。そんな様子をしばらく止まって見ていたツィーは、ぽん!と手を打って、
「貴方はマルカブ様ですね?」
「あ?」
「祖父がお世話になっております。姫様に大変良くしてくださっているようで、セイリアス様からくれぐれもよろしくとご伝言を賜っております。」
「・・・はあ?」
「でも、」
 ツィーは深々と下げた頭をあげて、
「ちょっと退いていてくださいね。」
 と言うなり、マルカブを蹴り飛ばした。小柄で細身の少女の蹴りだが、マルカブはアヴィーとディスケの間を抜けて吹っ飛ばされた。盾代わりをなくし、ツィーと向き合うはめになったカリーナひゃん!と声を出す。
「やはり姫様ではありませんか。」
「な、何をしにきたの?ツィー!私を連れ戻しにきたの?それは国王の命令?」
「セイリアス様は私にこう仰いました。」
 ツィーは腰に手を当て、呆れた様子でため息をついた。
「姫様と喧嘩をしてこい、と。」
 ですが、と彼女は刺客とクー・シーを見やり、
「ひとまず、それは置いておきましょう。あの不届者の口を割り、首謀者を突き詰めねばなりませんから。爺様、私も手伝います。」
 ツィーの言葉に、クー・シーは頷き、
「ちょっと遅かったんじゃないかね、ツィー。またどこかで行き倒れていたかね?」
「ええ、ですが、シェリアクさんたちが助けてくださいました。」
「おお!おじいちゃま、お礼しないとね!」
「はい。お願いします。」
 そんなやりとりをしつつ治療に加わったツィーを見て、カリーナとディスケが首を傾げ、
「爺様・・・?」
「おじいちゃま・・・?」
「あ、あのね、ツィーはおじいちゃんの孫なんだって!」
 アヴィーが説明し、起きあがりながらマルカブが
「・・・・・・爺さんばりに唐突だな・・・」
 と、呻いた。


*****

 そよそよとした暖かな風と、
「噛まれただと!?あの男に!?」
「だ、だって舌を噛もうとしたから手を入れて・・・」
「舌なんか噛ませとけ!!」
「あっはっはっは、おとーさんったら可愛い娘が男に噛まれたからってムキになっちゃってー。」
「ムキにもなるよねえ。手ならともかく別の場所だったら大問題だよー。」
「別の場所???」
「別の場所っていうのはね、アヴィー・・・」
「ガキに妙なこと吹き込むなッ!」
 そんな頭が痛くなる会話が聞こえてきて、目を開けた。風に揺れる白いカーテンと、白い天井と白い壁。柱や梁の木目。窓の向こうの青い空。そして、自分をのぞき込む二つの深い青の目。
「ああ、起きましたね。」
 長い黒髪を二つに結わえた少女を知っている。追放生活中の姫の侍女で、姫の暗殺をそれとなく邪魔してきた少女だ。彼女は、くるりと振り返り、
「爺様、姫様、皆様。刺客の方が起きました。」
 どうでもいい会話を繰り広げている『アルゴー』に声をかけた。と、ズカズカズカ!と赤毛の男が歩み寄ってきて、
「・・・カリーナを噛んだってどういうことだ!?ああ!?返答次第じゃ海に沈めるぞッ!!」
「だからマルカブ!私が口に手をいれたんだってば!恥ずかしいからやめてよ!」
 と言いながら姫君が駆け寄ってきて、
「・・・それより、」
 と姫の視線とぶつかる。
「話をすることは出来る?」
 問いかけに頷いた。状況は把握した。樹海で気功師の治療を受けたところまでは記憶がある。その後、気を失った自分を彼らは町まで運んで、きちんとした治療を受けさせたのだろう。体に巻かれた包帯がそれを物語っている。
「・・・カリーナ、お前は下がってろ。武器がなくたってお前の命を狙ってきた奴だぞ。」
 赤毛の男が姫の前に腕をだし、己の背中に彼女を隠そうとした。一方、金髪長身の男は、「おとーさん、心配性だからなあ。」と笑いながら窓側へと回り込む。老人は扉に背をつけた。逃走ルートを塞ぐつもりらしかった。
 だから、少しだけ笑った。
「・・・何がおかしい?」
「・・・ここまでされて、命を奪おうとは思わない。また、ここまでされた以上、逃げても私が追われる身になる。」
 ゆっくりと体を起こす。黒髪の少女が背中の後ろにクッションを差し込んだ。それにもたれ掛かりながら肩の力を抜く。
「・・・覆面も取られている。顔も見られてこれ以上、見苦しい真似はしない。」
「そうね。覆面は取っておいた方がいいと思う。」
「意外とカッコいいですよね。」
 と、姫と少女が言い、「・・・女は暢気だ。」と赤毛の男が呻いた。姫はそれを無視して、
「では、確かめるために聞きましょう。あなたの名前は?」
「・・・リョウガン。」
 姫の視線が黒髪の少女へ流された。少女は一つ頷いた。
「本名です。」
「結構。あなたに殺意がないことを認めましょう。」
 そのやり取りに、少女を睨みつけ
「調べたのか。」
「ええ。アウグスト様が貴方と戦う中で奪った品があります。それから貴方の出身を割り出し、調べました。とはいえ、簡単に調べがつき過ぎました。これが何を意味するか、わかりますね。」
「・・・意図的に私の情報が流されている・・・私の雇い主が、私に罪を擦り付ける。」
「ええ。ですから私もここに来たのです。姫の命を狙う輩をはっきりさせるために。」
「・・・ちょっと待ってくれ。ツィー。」
 制止したのは赤毛の男だ。彼は、老人の隣にいる少年を見やり、
「アヴィー。お前、カリーナと一緒にちょっと外にでてろ。」
「う、うん。いいけど・・・」
「マルカブ。私にツィーの話・・・本当に私を殺そうとした人間が誰か、聞かせないつもりなんでしょう?」
 姫が男をじっと見上げた。
「・・・私は聞くよ。」
「・・・・・・・・・俺は聞かせたくないけどな。」
 そう呟いてから、少女に向かって「続けてくれ。」と言った。少年が姫の隣にやってきて、「もし外に行きたくなったら言ってね?」と声をかける。姫は頷き、少女は「成る程。爺様の手紙の通りです。」と呟いて老人を見た。老人は肩を竦めるのみだった。
「・・・では、お話しましょうね。お仲間がいる姫様よりも、貴方に辛い話かもしれませんが。」
 と、少女は言った。
 

(九章5話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------- 

覆面シノビは当初おじさん設定だったんですが、
ネットをぐーるぐるしていたときに、覆面の下がイケメンシノビを発見し、
「それだあああ!!」と思ったので、イケメンということになりました。
まあ、今回はどんな容姿なのかの説明が全くないんですけどね。


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