まよらなブログ

十章2話。


先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

本日から二階層ボス・ケトス戦に入ります。
ケトスはくじら座の学名だよ、と一応書いておこうと思います。
(ウィキに載ってるけどさー、本読んでてたまたま見つけて感動したん。)
それにしてもヤツは何鯨なんだろうか。
頭に瘤みたいのがあるからセミクジラなのか形的にはマッコウクジラなのか
白いからベルーガか(ベルーガはむしろイルカ)、本当に深王と友だ(規制)。
気にしてもしょうがないところが気になります。


まあ、そんなこんなで、話に興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



10章2話
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 細い通路を塞ぐように、行き来を繰り返す深海の殺戮者の背中を見ながら、
「・・・あの魔物は我々が引き寄せよう。」
 と、提案したのはシェリアクだった。マルカブは鼻を鳴らし、
「・・・まあ、『あの』声の主に来るように呼ばれたのは俺らだもんな。」
 正直代わってほしいけどな、と付け加える。しかし、すぐに振り返り、『ファクト』の地図を覗き込んで自分たちの地図と見比べている仲間たちに声をかけた。
「お前ら、準備しろ。駆けるぞ。」
 ディスケが弩を担ぎ、クー・シーは腰を叩き、アヴィーは地図を見せてもらった礼を言い、カリーナは自分たちの地図を仕舞う。その様子を見て、同じように地図を仕舞いながらミラが、
「シェリアクさん。私たちは、」
「陣形を。」
 すべてを言わせる前に、シェリアクが短くそれを遮った。反応をすぐに見せたのはエラキスとツィーだ。そして、シェリアクは一歩通路に踏み込んだ。
 縄張りに獲物が入ったことを感知したらしい深海の殺戮者は、愚鈍な足取りながらもまっすぐにシェリアクに向かってくる。深海の殺戮者が『ファクト』と『アルゴー』のいる広間まで出てきたのと同時に、シェリアクの盾が深海の殺戮者を壁際へ押さえ込んだ。
 「駆けろ」とマルカブが仲間に命じ、『アルゴー』は通路に飛び込むように駆けだした。背後から、「ご武運を!」とツィーの声がして、続いて発砲音が鳴る。『アルゴー』の面々は、『ファクト』の心配はしなかった。深海の殺戮者は『アルゴー』も一度は退けている。彼らよりも戦いなれているシェリアクならば、倒せずとも上手に撤退するだろう。
 通路を抜けきったカリーナは、通路を振り返る。そして同じように振り返っているマルカブをちらりと見上げた。『ファクト』は見えない。少しくぐもった破裂音が聞こえてくるだけだ。カリーナは通路の先へ視線を戻し。
「・・・心配なら戻ってもいいよ。」
 小さな声でそう言うと、一拍の間の後にマルカブが彼女を見た。自分に掛けられた言葉だと気づくのに一拍の間がかかったらしい。
「・・・何が?」
 微妙に噛み合わない言葉を返してきたマルカブに、カリーナは「何でもない。」と言った。彼は通路に背中を向けて、「俺らの方が危険だろうがよ。」と言った。私が何を言ったか分かっているのに「何が?」なんて聞かないでよ、とカリーナは少しだけ拗ねた。
「カリーナ、地図を描かないと。」
 微妙な空気は読み切れないアヴィーが、とことこと二人のところにやってくる。二人は「助かった」と思うのだ。カリーナは頷いて地図を出し、今通ってきた通路を書き込む。出来上がっていく地下8階の地図をディスケがのぞき込みに来て、
「空白は右上だけか。」
「8階の最奥まで大した距離はなさそうだねえ。」
 クー・シーは髭を撫でながら、先の道と地図を交互に眺める。クー・シーは通路を振り返らない。
「クー爺。ツィーが心配なら、」
 マルカブはクー・シーに、自分が言われたばかりの言葉を掛けかけて、
「バカを言っちゃいけないよ、マルカブ。戻ったりしたら、ツィーに軽蔑されるよ。」
 肩をすくめながらのクー・シーに遮られた。あの子の白い目は本当に怖いんだからね、とクー・シーはわざとらしく震えてみせるが、まあ実際にそうだろうな、とマルカブは思ったので、そうか、とだけ答えた。
「だから、とっとと進むとしよう。おじいちゃまの威厳をギリギリで保たないといけないからね。」
 カリーナが地図を描き終えるのを見ながら、クー・シーは先を指した。ディスケが、ぷっぷーと吹き出す真似をしつつ、
「爺さんの威厳なんか、もうギリギリで失われてるだろうよー。」
「バカを言っちゃいけないよ、ディスケ。うちのおとーさんほどは失われてないよ。」
「・・・・・・マルカブの場合、もともと無いんだと思うけどな・・・。」
 ディスケとクー・シーの会話は聞き流したが、ぽそっと付け加えたアヴィーの一言は聞き流せなかったので、マルカブはアヴィーの耳をぐぐぐぐぐ・・・と引っ張った。それを見ながらディスケとクー・シーが爆笑し、カリーナは、こんなことばかりしてるからミラに軽蔑されるの、と唇を尖らせて小言を言った。アヴィーは、そうだよう!と言いながら、マルカブの手を振り払って、
「そんなことより、先に進もうよう!」
「そもそもお前が余計なことを言うからだろうが!それと、先に進む前にそこに抜け道があるか確認しろ。」
 マルカブが、道の横に生えている背の低い青い木を指した。その木が生えているところは他の木々が生えにくいのか、木々の間に抜け道があることが多い。アヴィーが屈んで青い木の下をのぞき込み、落ち葉を掻きだして抜け道を確認した。カリーナはその抜け道を地図に描きながら、マルカブを見ずに、
「私とアヴィーに、抜け道を使って戻れって言わないでね。」
 と、言った。マルカブは眉を寄せて、開き掛けていた口を閉じた。それを見ながら、ディスケが、
「おとーさん、俺には戻れって言ってくれないのかよー。俺にだって待ってる人がいるのにさー。」
「・・・・・・・・・絶対言わん。」
「そうか。じゃあ、とっとと進んでとっとと深都を探して、で、とっとと戻ろうぜ。」
 ディスケは弩をかつぎ上げ、
「それが一番最短距離みたいだ。いろんな心配に対しての。」
 気楽な口調でそう続ける。『アルゴー』の面々には、それはとても尤もな気がした。

*****

 そして進んだ先に大きな扉があった。扉越しでも、その向こうから圧倒的な強く気高い気配を感じる。この扉の向こうにいるのは、海珠を渡してきたあの声の持ち主だと理解する。
 扉を開けない、という選択肢は既に存在しない。カリーナは剣を抜き、ディスケは弦を軽く引いて弩の調子を確かめ、アヴィーは両手を一度握りしめて開き、クー・シーは特に準備はしなかった。4人の動作が終わったのを確認してから、マルカブは扉を開けた。
 広く、高い空間。頭上に蒼い海が広がっている。周囲を海底に包まれた広間だった。
 普段のアヴィーとカリーナなら、歓声をあげて広間の中央まで駆け出しそうな美しい場所だった。そうはさせない存在感と、そして声。
「来たか、小さき者よ。ここまで来るには覚悟もあろう。」
 蒼く美し海の底・・・、その広間には今まで見たこともない巨大な鯨の姿がある。
 残念だ、とカリーナは思った。広間も鯨も美しいのに、それをゆっくりと見ることは出来ない。
 宙に泳ぐように浮かぶ白い鯨は、その澄んだ目で『アルゴー』を見つめる。その目に知性の光が瞬くとともに、海王ケトスを名乗った「あの」声が響いてくる。
「その覚悟は見事なり!されど、汝らの旅はここで終わる。最後の相手が我であることを喜べ!」
 一方的な宣告だ、と思ったが、逃れられないことはすでに覚悟済みだった。眼前の巨体から裂帛の咆哮が上がる。戦いの叫び。答えるしかない。
 震える空気の中で、カリーナは剣を構える。宙に浮くケトスを見上げる。ケトスの巨体が、遠く海面から差し込んでくる太陽を遮った。カリーナの顔に影が落ちる。その薄暗さとケトスの巨体を見上げ、カリーナの後頭部に地下6階の古代魚の巣で見た情景が差し込まれた。古代魚の巨体、その巨体が作る影、貝塚の白い・・・枝。
「・・・・・・ッ!」
 カリーナは身震いした。こんな時にあの時のことを思い出すなんて!思い出すな、蓋をしろ!震えている場合じゃない。震えていては、きっと勝てない。勝てなかったら、
 導き出される答えに、カリーナの背中が泡だった。同時に思い起こしてしまう、あの死臭。古代魚の巣に漂っていた、あの無数の死臭。
 ・・・・・・・・・怖い!
 恐怖は腹の底から。記憶の縁から。目の前の白い鯨からではない。カリーナは、ここにいるのにここにいない。彼女の時間は、数週間前に巻き戻る。そしてそんな自分を自覚して、集中しようとするのだが、そんな思いも恐怖に拍車を掛けるのだ。
 カタカタと震えだした剣の音に気がついたのはアヴィーだ。
「・・・カリーナ!」
 彼はカリーナの震えの理由は分からずとも、彼女の異変に気がついた。さっと視線をカリーナに向けたマルカブが、彼女の額に浮かぶ脂汗を見て、彼女の恐怖に気がついた。
「カリーナ!足の裏に力を込めろ!」
 マルカブの声にカリーナは我に返り、ぐっと地面を踏み込んだ。まさに浮き足立っていた感覚が、足の裏から自分の中に戻ってくる。自分は、今、ここにいる。6階の古代魚の巣にいるんじゃない。
 ・・・・・・独りでいるんじゃない!
 カリーナは、たったその一点で、過去の恐怖を振り切ろうとした。目の前の敵は強大だ。けれど、ここに独りでいるんじゃない。大丈夫、あの時とは違う。ちゃんと、みんないる。
 カリーナが我を取り戻し、自分を勇気づけようと仲間を見ようとしたときだ。自分は独りでいるんじゃない、と、それだけを拠り所にしようとした少女をあざ笑うかのように、ケトスは背中から水柱のように潮を吹く。潮は宙に霧散し、乳白色の霧になって周囲を包む。ケトスは勿論、仲間たちの姿も霧に紛れて見えなくなった。
「・・・・・・!」
 カリーナは、息を飲んだ。そのまま引きつった嗚咽を漏らしそうになる。霧の向こうに、みんながいる。分かっている。でも、分かれない。
「、いやだ・・・!」
 思わず声を漏らし、涙を浮かべて、仲間を求めて霧の中に走り出そうとする。剣も放り出して駆け出そうとする。鋭い声が飛んできた。
「駆け出すな!」
 マルカブの声にカリーナは足を止める。
「ちゃんと剣を持て、カリーナ!瞼を拭え!不安なら声を出せ!」
 カリーナは周囲を見回した。マルカブの姿は見えない。それでも彼は、的確にカリーナの行動に命令のような助言を与えた。まるで見ているかのように助言を与えた。しかし、それがカリーナには不安を与えた。自分だけが見えていないの?
「・・・マルカブ!どこにいるの!?」
「近くだ!」
 返事は、簡潔だった。そして答えにすらなっていなかった。もっとも、「お前の左手側に3m離れたところだ」と言っても何の役に立つだろう。必要なことは、カリーナを安心させる圧倒的な説得力だ。そこに論理などいらない。
「俺は、お前が泣き出しそうなことも分かってる!それくらいには一緒にいるし、これからもそうだ!だからそれだけ分かってろ!それだけ分かってれば十分だ!」
 乳白色の霧しか見えない中で、カリーナは目の端に夕陽が見えたような気がした。夕焼けの海で、彼に言われたことを覚えているか?
 カリーナは、足を肩幅に開いて、ぐっとその足裏に力を込めた。青い大地・・・と言うべきか海底と言うべきか、この世界の基底にしっかりと足を付ける。そして、剣を構えて霧の向こうの気配に集中し始めた。
 あの夕焼けの海で、彼が言ったことは、つまりたった二つのこと。お前は『ここ』に居ていい。そして、自分もお前と共に居る。
 ・・・・・・本当に、この人は、これっぽっちも忘れてない。
 カリーナは、何かを小さく囁いてから、
「ありがとう!もう大丈夫!」
 近くにいる仲間に向かって声を上げた。 
 


(十章3話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

夕焼けの海云々の話は三章5話にお戻りください。
古代魚の巣の話は六章ね。
えー、3章5話って昨年の8月に書いた話なの。本当にダラダラ書きすぎだ。


イベントのテキストは可能な限り、そのまま利用してます。
そのため、ケトスの台詞の箇所は浮いていると思います。
いや正確にはゲーム内テキストを浮かせてしまう私の文体の方が浮いているのだが。

それにしたって古風な言い回しが多いよね世界樹テキストって。 
 

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