まよらなブログ

11章3話。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

なでしこがW杯で優勝したので、
ここで何だかんだ書くことが思いつきません。


ともかく興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



11章3話
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 アーモロードから樹海入り口に向かうまで、朽ち果てた城壁を幾つもくぐっていく。その幾つ目かの城門の横に、古い道祖神が立っている。多くの冒険者たちは気にも止めていないが、道祖神は何百という冒険者を無言で見送り、迎え続けている。
 その道祖神に小さい饅頭を二つ、お供えして、サビクとアル・ジルは手を合わせた。
「アヴィーたちが無事に帰ってきますように。」
「みんな怪我してませんように。」
「メーー。」
「ケーー。」
 羊のハマルと鷹のギェナーも一緒に声を出し、しばらく祈ってから、サビクが顔を上げた。アル・ジルも顔を上げて心配そうに、朽ち果てた城門の先を覗きこむ。
「・・・もう四日、帰ってこないよ・・・。」
「大丈夫だって。野営でもしてるんだ、きっと。」
「・・・でも、『アルゴー』と『ファクト』は二階層の主を倒しに行ったって、衛士さんが言ってたよ。」
「じゃあ、途中で迷ってるんだ。詰めが甘いからさ、アイツら。」
「・・・・・・。」
「・・・帰ろう、ジル。帰りに買い物も頼まれてるし。」
 サビクが立ち上がり、アル・ジルに手を差し出した。アル・ジルは俯きがちに頷いてから、その手をとって立ち上がる。と、ギェナーが急に羽ばたいて、アル・ジルの頭の上をぐるぐる旋回し始めた。アル・ジルが、どうしたの?と聞く前に、
「あ!サビクとアル・ジルだ!!」
 樹海の入り口の方からアヴィーの声がした。二人はぱっと声のした方を見る。そこには、幾重もの城壁の向こうから9人の人間が歩いてきていた。アヴィーが手を振り、カリーナが「ただいま!」と声を出すと、
「・・・カリーナあ!!」
 アル・ジルがカリーナに駆け寄って、彼女に抱きついた。
「おかえり、おかえり!!カリーナ、良かった、無事だったあ!」
 あああん!と泣きながら、アル・ジルは友人の帰還を喜ぶ。
「・・・うん。ありがと、アル・ジル。ただいま。」
 アル・ジルの背中をぽんぽんと撫でながら微笑むカリーナの様子を、ツィーは意外そうに見つめた。クー・シーが小声で「肌の色なんか、もう姫には関係ないんだよ。」と孫娘に言うと、ツィーは、なるほど、と呟いて微笑んだ。
 アル・ジルに続いて駆け寄ってきたサビクは、マルカブがディスケの肩を借りて歩いてるのを見て、心配そうに問いかけた。
「だ、大丈夫なのか?マルカブ、脚を怪我したのか?」
 なんとか平気だ、とマルカブは適当に答え、それから真剣な顔で、
「・・・お前らこそ、ここで何してんだ?まさか、樹海に入ろうとか思ってたんじゃないだろうな?」
「違うって。そこの像にお供えしにきたんだ。」
「何だよー、お前ら、お祈りとかしててくれたわけ?お供えまでしてさ。」
 ディスケがからかうように言うと、サビクは心外だ、と言った様子で、
「前からマリアさんがやってることなんだよ。今は、ドルチェがまだ小さくて外に出られないから、代わりにお供えを頼まれただけ。」
「へー、マリアさん、意外と信心深いんだなー。」
「マリアさんもフェイデンさんも心配してたの。」
 アル・ジルがぐすん、と鼻を鳴らしてから。アヴィーに向かって、
「ミモザも泣きそうなくらい心配してたよ?」
「ミモザが?」
 きょとん、としているアヴィーに、おやおや、とクー・シーが肩をすくめ、ディスケが軽く口笛を吹き、しかしアヴィーはそのリアクションの意図が分からずに首を傾げる。それを見てカリーナが「・・・ミモザ、可哀想・・・全然気づいてもらえてない・・・」と呟き、「まったくだ。」とマルカブに同意され、それを聞いたディスケが「そんなことを聞かされるカリーナの方が可哀想だ。」と呻き、「まったくだね」とクー・シーが同意したが、しかしマルカブはその言葉の意味には気付けずに「はあ?」と聞き返した。
 クー・シーは、そんな鈍い男には構っている暇などないんだよ、と無視し、サビクとアル・ジルに頼む。
「じゃあ、サビクくんたちはフェイデン殿やマリアさん、ベクやミモザちゃんに、わしらが無事だったって伝えてくれるかね?」
「・・・それはいいけど・・・、みんなはどうするんだ?」
「ふむ、まずは脚を引きずってるうちのおとーさんを医者に診せて、クタクタの体も休めんと。」
 サビクとアル・ジルは一行を見渡して、それもそうだ、と納得したらしい。分かった、と頷いて、
「じゃあ、みんなに伝えておくよ。」
「あとで宿に行くね!・・・あ!ディスケ!コロネにも伝えておくね!」
 そんなことを言いながら、善は急げ、と駆けだした。ディスケがアル・ジルに「頼むよー!」と応える。
「そういうことにしちゃったけど、それでいいかね?」
 クー・シーは振り返り、ぐるりと一行を見回した。
「元老院に報告にいく必要もあるだろうけど、まずは休もうよ。マルカブの脚だって、改めて診てもらった方がいいはずだしね。」

*****


 結局、その翌日、『アルゴー』も『ファクト』も元老院に呼び出されることになる。急き立てられるようにして元老院に向かうと、元老院の第一人者である老婆・フローディアが少々苛立った様子で、「遅いよ。」と開口一番に言った。
「報告が遅くなったことは謝罪します。」
 他の者が余計なことを言う前に、素早くシェリアクは高い位置にある頭を軽く下げた。
「しかし、傷を癒す時間も我々には必要です。まして、マルカブはここに来るために松葉杖も必要でした。」
 シェリアクの言葉に、老婆はちらりとマルカブに目をやった。彼は治療院から松葉杖を貸してもらって歩いている。傷自体は深都の技術で大方ふさがっているのだが、痛みは続く。マルカブの額に薄く浮かんでいる汗に、老婆が気がついたタイミングで
「彼に椅子を勧めてもらってもよろしいでしょうか?」
 と、シェリアクは老婆に頼んだ。構わないよ、という答えを聞いて、シェリアクはマルカブに椅子に座るように言う。木訥としている割に手慣れてるな、と椅子に座りながらマルカブは感心した。
 老婆・・・フローディアもクッションの置かれたソファにゆったりと座る。そして、いつも以上に目を光らせて一行をぐるり、と見回し、さあ報告しておくれ、と熱っぽく促した。
「あたしゃ、この日を100年待ってたんだ!」
 何らかの執念を感じて、思わずアヴィーが少し下がる。逃がすか、とばかりにフローディアは畳みかけた。
「あったんだろうね、深都は?海底に消えたもう一つの海都は!?」
 問いかけに、一瞬の沈黙。答えを求めるフローディアは、彼らの回答を待つべく沈黙。待つ必要などあるのだろうか、とマルカブは考えた。答えはきっと知っている。
「・・・答える前に、聞いていいか?」
 マルカブは静かに、問いかけに問いかけを返した。
「・・・クジュラが俺らの後を付けていたようだが。」
「・・・バレているなら隠さないよ。あたしたちだって本気なんだ。念のため後ぐらい付けさせるさ。」
「そうか。じゃあ、知ってるだろう?答えなんか。」
 それが精一杯の譲歩だ、と思う。深都に対しても、海都に対しても。フローディアは、卑怯な男だね、と鼻を鳴らした。
「あんたたちが深都に着いたことは聞いているよ。けれど、あんたたちが深都で何を見たかは知らない。三日間、脚の治療だけをしていたわけでもないだろう?」
 ふと、この老婆の目的は深都ではないのでは?という疑問がカリーナの頭によぎった。深都があるかどうかではなく、『あるもの』が存在する深都があるかどうか、が問題なのではないかと。
「悪いけど、脚の治療しかしてないんだよ。」
 と、ディスケが肩をすくめた。
「うちのギルマスの脚の治療がすむまで、っていう約束で深都にいたからさ。見たものは、深都の街並みと治療施設の一部。そこの医者と看護士と身の回りの世話をしてくれた数名の人間としか話してないし。婆さんに報告出来るほどのことはないんじゃねえかな?」
 気楽なディスケの口調や報告内容に・・・というよりも「婆さん」呼ばわりにフローディアは彼を睨みつけた。だが、一つ息を吐いて、
「いずれにせよ、深都はあった。それは確実だね。」
 それには沈黙で答えるのみだ。フローディアは「それは肯定ととるよ。」と言って、
「・・・なら、きっとあの御方の消息も分かるだろう。」
 と、祈りのように囁いた。安堵するかのような老婆の様子は、それまでとはまったく違う。一行がそれを意外に思った一瞬のうちに、彼女はいつもの口調で、
「ちょっと待っておくれ。姫様を呼んでくる。直接、深都のことを話してやっておくれ。」
 そう言いながら立ち上がり、部屋の奥にかかるカーテンの向こうへと下がっていった。
「・・・姫様って・・・グートルーネ姫様?」
 地元民であるディスケが顎髭を撫でながら、
「俺、初めて見るよー。」
「お姫様なんて簡単に見れないよう。」
 と、アヴィーが隣にお姫様を立たせながら、そんなことを言った。ディスケはそうじゃなくて、と答えながら、
「公式行事とかあると、王族が挨拶したりするだろ?なあ、カリーナ?」
「う、うん。統治には親近感・・・っていうか国民の肯定的な感情って必要だし、国民の前に姿を見せる意味はあるよね。ただ、王に神性をつけてる場合は、敢えて姿を見せないようにして神秘性を高めるけど・・・この国はそういう統治の仕方はしてないみたいだし・・・」
 統治する側の舞台裏を見せられたような気分で、マルカブは微妙な表情を作ったが、素直すぎるアヴィーと庶民気質らしいミラは首を傾げるだけだった。ディスケはさらりと流した。
「行事のときも、姫様は出席しないで代理が出るんだよなあ。体弱いらしいから、無理は出来ないんだろうけど。」
 そんなディスケの言葉を聞きながら、フローディアが下がった先を見つつ、
「・・・タイミングが良すぎる気がするけど。」
 エラキスが、隣にいるシェリアクとその向こう側にいるマルカブに聞こえる程度の小さな声で囁いた。シェリアクは頷かなかったが、その表情は同意を見せる。そりゃあそうだろうな、とマルカブは考えた。相手が呼び出しているのだから、相手にとって都合のいいタイミングでしかるべきだ。
 報告だけでは済まないな、とマルカブとシェリアクは目配せした。その一方で、アヴィーがちょっとはしゃぎながら、
「お姫様って、やっぱり綺麗なのかな?僕、お姫様に初めて会うよ!」
 などと言ってしまって、カリーナにぎゅーー!!と耳を引っ張られた。自分の失言に気がついたアヴィーが、はう!と声を上げ、
「べ、別にカリーナはお姫様なのに綺麗じゃないって言ってるんじゃないよう!」
 と、墓穴を掘っている。ますます耳を引っ張られるアヴィーを見て、姫様は綺麗と言うより可愛らしいのですよ、とツィーがフォローになってないフォローを入れた。アヴィーはカリーナの手を振り解いて、マルカブの椅子の後ろに隠れるように逃げてきた。
「マルカブ!アヴィーばっかり庇わないでよ!」
「・・・・・・別に庇ってるわけじゃないんだけどな。」
 カリーナにものすごく理不尽なことを言われてマルカブは呻く。マルカブはアヴィーに甘すぎるの!とぷんぷん怒りだしたカリーナに、「いや、お前に一番甘いだろうよ」と総ツッコミが入る前に、
 フローディアが消えていった部屋の奥から、くすくすと耳をくすぐる笑い声がした。
 一斉に視線が動く。分厚いカーテンの向こうから、フローディアが出てきてカーテンを押さえた。そして、暗がりからゆっくりと白い姫がやってきた。
 そう、白かった。身につけている服もだが、透き通るような、と形容するのがぴったりの白い肌と銀色の髪。カリーナも色白だが、この姫の白さは体の弱さから来るものか。血の気が感じられなかった。
 それでも・・・いや、だからこそか。浮き世離れた美しさが姫にはあった。人の形をしながらも、人とは異なるような。それは、引き込まれる美しさだ。
 緊張とは異なる張りつめた空気に、姫は慣れているらしい。微笑みを深くして、姫は一行を見回した。
「皆様が深都を発見してくださった方々ですか。ありがとうございました。」
 鈴を振ったような、という形容がぴったりな、可愛らしいがよく響く声で挨拶をする。
「私は海都の姫、グートルーネ。」
 姫は、深都発見は私にとって悲願でした、と海の底の匂いを漂わせながら、夢見るように囁いた。



(11章4話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

「樹海入り口」で映る道祖神だか地蔵さんだかを書いてやろう、と決めておりました。
志水の世界樹界には古きよき日本が生きています。
後半の婆ちゃんや姫様よりも、そっちの方がメインです。

次回はやっぱ深王様ですかねー・・・書くの苦手なタイプやでー

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