まよらなブログ

11章5話。


先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


本当に深王様を書くのに気がのらなくて困ります。
しかし、天極殿のグラフィックと音楽は大好きなので困ります。(え・・・)



ともかく興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



11章5話
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 天文時計が回り、天井に星空が描かれている部屋の中で、深都の王は海都の姫の親書を読み、顔をあげた。
「・・・海都の姫とやらが我らと友好を結びたいことは解った。また、卿らのような腕利きの冒険者が多数存在し、迷宮探索を行っていることも理解した。」
 静かに答える深王を見ていたアヴィーは、ふと何かに気がついて、きょろきょろと深王とオランピアを交互に見やる。じっとしてなさい、とカリーナがアヴィーの背中を軽く叩いた。そんな子どもらの動きは完全に無視をして、深王は「・・・とにかく、姫君の提案は即答できかねる話だ。」と呟くようにしながら、親書を畳む。
「・・・卿らに深都に留まる権利をやる。一両日ほど待ってくれたまえ。」
 明日になれば返答しよう、と深王は伝え、オランピアに『アルゴー』と宰領の一夜の宿を用意するように命じた。マルカブは、ちらっとカリーナに縋るような視線を送る。その意味を理解したカリーナは、一歩前に進み出て、
「お気遣い、感謝いたします。」
 スカートをつまみ上げ、一行を代表して一礼した。カリーナの優雅な動きに、深王は感心したように笑みを浮かべ、
「明日、この天極殿に来るんだな。」
 と言って、一行を送り出した。


「・・・・・・ねえ、あの王様、誰かに似てないかなあ?」
 アヴィーが宿まで案内する道すがら、マルカブの上着を引いて小さな声で問う。
「そうか?」
「うん。それにね・・・」
 アヴィーは、先を行くオランピアの背中を見ながら、
「・・・オランピアも誰かに似てる気がする。」
「・・・そうか?」
「うん。ねえ、カリーナはそう思わなかった?」
 アヴィーは隣を歩くカリーナに問う。カリーナは、え?と聞き返し、それから少し迷ったあとに、
「・・・・・・、私は、似てないなって思った。」
「え?誰に?」
「・・・私の国の王に。」
「・・・それって、カリーナのお兄さ」
 アヴィーの言葉はマルカブが遮って、彼はカリーナの頭をわしわし撫でる。
「・・・お前、リョウガンとツィーの話を気にし過ぎだよ。」
「・・・・・・・・・うん。」
 カリーナは小さく頷いたが、納得はしていないようだった。


 そして、天文時計が回り、天井に星空が描かれている部屋の中には深王だけが独り残る。一行とオランピアが出ていった扉を見ながら呟いた。
「あの者たちが、我が友ケトスを倒したか・・・」
 そこに憎しみはない。哀しみもない。百年も深都への最後の道を守り続けた友人は、最後までそうしていたのだろう。それを誇りに思うのと、それでも彼らがそれを超えてきたことへの関心と好奇心が、深王の中にある。
「この深都の中なら、人知れずに闇に葬ることもたやすい話だが・・・」
 深王は笑みを浮かべ、拳を握った。
「だが、あれだけの力を利用すれば、あるいはフカビトの脅威に対抗できることが可能かもしれぬ。」
 失敗すればそれまでのこと。と、深王は呟いて、その場から歩きだした。
「冒険者とやらの力、深都に有効に使わせてもらうことにしよう。」
 深王も部屋から出ていく。誰もいなくなった部屋の中で、天文時計だけが規則正しく回り続ける。



 翌日、深王に呼ばれた一行は、海都の姫からの要望を深都は受けることにしたこと、冒険者たちに限定的に許すことを伝えられた。グートルーネ姫からの依頼も果たした一行は、一度海都に戻ることにした。そんな一行に、深王は、『アルゴー』に別に頼みたいことがある、と告げるのだ。
 深王はマルカブの松葉杖を見ながら、無論傷が癒えてからでかまわぬが、と前置きし、
「卿らの腕を見込んでのことだ。深都の未来に関わることだが、それだけでない。全人類の未来にも大きく関わることだ。」
 傷が癒えたら深都を訪ねて欲しい、と深王は一行に伝える。そこに、遠い過去からの執念のようなものを感じたカリーナは、思わず後ずさる。それに気づいたマルカブは彼女を背中に隠すようにしながら、「少し考えさせてくれ。」とだけ答えた。

*****


 『アルゴー』が深王から海都の姫への返事を聞いていた頃、カリーナの故郷である剣と茨の紋の国の王宮で一つの問いかけがされていた。
「・・・王とは何だと思うかな?」
「禅問答は坊主とやってください。」
 採血をしながらの問答に、王の侍医であるフロレアルはぴしゃりと答えた。王でありカリーナの兄であるセイリアスは、ため息をつく。
「血を抜かれている時間は暇なんだよ、Dr.フロレアル。」
「なら、私の診察が終わってからにしてください。」
 気が散ります、と一刀両断だ。慣れているセイリアスは肩をすくめて、視線を動かした。部屋の壁にほとんど同化するように立っている男に目をやる。額に傷のある細身の男。伏目がちに控えているが、神経を周囲に張り巡らせていることは分かる。
「・・・彼女はいつもこんな感じでね。無礼も非礼もあったもんじゃない。だから、君も、少しは肩の力を抜きたまえ。」
 男は一瞬の躊躇いを見せた後、では、と答えたが、まったく緊張をゆるめる気はないようだった。セイリアスは、当然か、と苦笑する。丁度、フロレアルが採血を終えたことを告げた。セイリアスは捲った腕を戻しながら、
「私は、君を罰する気はないし、君の一族を罰する気もない。だから、安心しなさい。」
 それに今にも死ぬような男相手に緊張してどうする、と言う。その言葉にフロレアルが露骨に眉を寄せた。そのフロレアルの視線に気が付いたセイリアスは、どうせツィーが全部話してる、と肩を竦めた。
 それから、彼はもう一度男を見た。ゆっくりと視線を向ける。その瞬間に、男は思わず背筋を伸ばした。セイリアスの目の光が急に変わったのだ。それは病を抱えた痩せた男のものではなく、病を抱えながらも死のその瞬間まで主であろうとする王のものだった。
「リョウガン。」
 王は、男の名を呼んだ。額に傷のある男・・・リョウガンは、は、と短く返事をする。この有無を言わせぬ響きには覚えがある。あの海都の樹海で、己に従え、と命じた姫の声だ。
「我が国の王位継承者の暗殺を企てたことは許されることではない。だが、君の情報が我が国を救ったのも事実だ。幸い、星を紋に持つ隣国も王宮内で争い続き、今、我が国と争うつもりはないらしい。この件はかの国の軍人の独断によるもの、として片づけることにしたらしい。」
「・・・では、かの王家も企てに関わっていた、と?」
「君は知らなくてもよいことだと思うが?」
 セイリアスは穏やかに、だがやはり有無を言わせずに確認する。失礼しました、とリョウガンは頭を垂れた。リョウガンが素直に引いたのを見て、セイリアスは静かに笑みを浮かべた。
「いずれにせよ、私はこの機会に反対派の貴族たちを捕らえることが出来た。これだけ大がかりに逮捕者が出れば、奴らの力を大きく削ぐことになったろう。これならば、私が生きているうちに、改革の障害はほぼ潰すことが出来る。」
 改革が出来る・・・ではないところに、王には本当に時間が無いことをリョウガンは知る。セイリアスもリョウガンの気付きに気付いたのだろう。少し楽しそうにした。
「リョウガン。私は、君も君の部族も罰するつもりはない。君の部族に今後も頼む仕事もあるだろう。もちろん、二重スパイとして働くことを見越してね。」
 リョウガンは己の一族が間者や伏兵としてではなくただの駒として使われることを理解しながら、それを屈辱とは捉えなかった。美しく使いきってくれるのならば、それはそれで本望だ。
「とはいえ、君に頼みごとという名の命令はしよう。これは罰ではないが、断る余地など与えない。寛大な処置だと思って、喜んで引き受けろ。」
 セイリアスは横柄にそんなことを言った。もちろん、この状態で断れるはずもない。部屋には王と医者しかいない。しかし医者は剣と巫術を極めた手練れだったし、部屋の外には近衛の騎士が控えている。断るものならすぐに再度捕らえられるのだろう。そもそも、部族と己の存命を許した王の頼みが何であれ、心情的に断ることなど出来なかった。
「・・・如何なるご命令でも。」
 リョウガンは静かに答える。セイリアスは彼の返事を称えるように笑みを浮かべた。己の頼みを聞いて当然だ、という悠然とした笑みは、やはり彼の異母妹が見せた表情にどこかしら似ていたのだ。
「再度、アーモロードに向かうように。」
 セイリアスはさらりとリョウガンに告げた。リョウガンは一瞬何を言われたか理解できず、数秒固まった後に顔を上げセイリアスを見つめた。
「アーモロードでクー・シーとツィーと合流しろ。そしてカリーナエが国に戻るその日まで、彼女を護衛するように。」
「・・・し、しかし、私は姫君の命を一度は奪おうと」
「再度、暗殺でもする気か?」
 その気がないなら構わないだろう、とセイリアスはそっけなく言い、フロレアルにテーブルの上から手紙を持ってくるように頼む。フロレアルが示された手紙をセイリアスに渡し、セイリアスはそれを広げながら、
「カリーナエらは海都の元老院からの依頼で深都とやらを探している。私たちが達せなかった地下7階以降へと足も踏み入れている。危険も多くなるだろう。影ながら守ってほしい。」
「・・・恐れながら申し上げます。なれば、姫に冒険者をお辞めになっていただくべきでは?国にお戻しにならずとも、海都から別の町にお連れすべきではないのでしょうか。」
「私は、あの子を今の仲間から引き離すつもりもないし、今のうちにアーモロード王家と元老院に恩を売っておくことは彼女が王位を継いだときに意味を持つだろう。」
 苦笑混じりにそんなことを言い、それから彼は真面目な表情を作るのだ。
「・・・あの町は、王が不在だ。私が冒険者として滞在したときも。おそらく、今も変わっていない。」
 確かにあの町には『王』はいない。だが、セイリアスが言っていることはそういうことではない。それだけはリョウガンにも分かるのだが、王の真意は分からない。
「・・・だからこそ、カリーナエはあの町で『王』について考えてくるべきだ。」
 独り言のようにセイリアスは言い、それから我に返るようにリョウガンを見た。
「行ってくれるね?断りなんか許さないが。」
「・・・・・・王よ。あなたは誤解されているようです。」
「ああ、何だろうか?」
「私は断るつもりもありません。むしろ、許されるなら、私は姫君にお仕えしたいと思っていました。」
「・・・へえ。」
 セイリアスは興味深いものを見た、とリョウガンを凝視する。リョウガンはその視線を真っ向から受け止めた。
「姫君は、傀儡として育てられ、王として育てられておりません。ご本人にも王になる意志はありません。ですが、おそらく、仕えるべき『王』に成長なさるでしょう。ですから、私からお願いいたします。私をアーモロードに向かわせてください。」
「・・・それは良かった。だが、一つ聞かせてほしい。これはただの好奇心だ。」
 セイリアスは少し身を乗り出した。
「君を確信させたものはなんだ?」
 リョウガンは一瞬考えて、
「・・・仲間に死を背負わせぬため、一貫して行動したこと、でしょうか。」
 リョウガンの返答に、セイリアスは無言。続きを促している、と気づいたリョウガンは淀みながらも続ける。
「私は、王というものを・・・よくは知りません。ですが・・・、想像力と行動力を要するものだと、感じます。姫は、・・・仲間が何を背負うかを、推測し・・・決断し、行動しました。おそらくは、王になったときも同じようにされるのでしょう。民や家臣を想像し、迷い、決断し、行動するのです。会ったこともない民を、仲間を思うように思い、」
 リョウガンはそこまで口にし、ふと言葉を止めてセイリアスを見た。
「・・・王は、そのために姫を、」
 セイリアスは答えずに、ただ満足げに頷いた。
「それではよろしく頼むよ。クー・シーとツィーにはこのことは伝えておこう。」 


(12章に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

と、いうわけで、うちのシノビ・リョウガンも参戦予定です。

久々に登場のプリ子のおにーちゃん・セイリアスとフロレアルの会話が何かに似てる・・・
・・・と2章1話のころからずっと思い続けて、「・・・ロイアイだ!!」と気がついた。
そりゃあ、うちのモン爺は金プリ好きだわ。(笑)


次回から12章です。ぐだぐだな日常パートに戻ります。
12章で蝶亭のママさんが登場し、志水のブラインドタッチは高速モードです。
ママさん可愛いーーー!書くの、楽しいーーー!(深王様と大違いの扱い)



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