まよらなブログ

12章5話。


先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

実は、今日までの話で私の中では一区切りつきます。
ここまでは、保護者役を保護者役にする話でした。

これからは、メインキャラの中でも主眼になるキャラが変わっていくと思われます。
最終的には少年の成長物語にしたいんだよなあ、それは二部の話なんだけど。




まあ、そんなこんなで興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。




12章5話
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「サア!お給料ダ!喜ベ、ガキンチョども!」
「わあああ!お給料だあ!」
「ありがとうございます、ママさん!」
「それト、これはママさんからデス!」
 と給料袋の上にポチ袋を渡された。慌てる二人に、【羽ばたく蝶亭】の女主人は腕を組み、
「がんばっタで賞でス!お菓子でも買ウといいゾ!」
 豊かな胸を強調させて、えへん!と胸を張る。
「でもでも!無理に働かせてもらったのに・・・!」
「イイのダ!そのかわり、たまに手伝いに来イ!それから、これからもごヒイキにしロ!家族みんなでゴ利用くださイ!」
 そして主人はどん!と二人の背中を叩き、
「ホラ、帰レ!オトーサンに報告しにいケ!」
 二人を外へと押し出した。封筒を大事そうにもった二人は、
「ありがとうございました!」
「お世話になりました!」
 ぺこっと頭を下げてから駆けだしていく。女主人は「イザユケー!」と二人を見送った。

***

「あ!まだあった!」
「おじいさん、これ!これください!!」
 給料をもらったアヴィーとカリーナは、バイトを始める二週間前に入った店で、ぴょんぴょん跳ねながら店の主人を呼ぶ。主人はゆっくり奥から出てきて、その二人が指す品物をとった。売れてなくてよかったね!と二人はにこにこ顔を見合わせる。
 そんな二人のいる店の看板には、【帽子店】の文字がある。


*****

「「ただいま、マルカブ!」」
「おう、おかえり。」
 マルカブがベッドの上に足を投げ出して座り新聞を読んでいると、アヴィーとカリーナが楽しそうに帰ってくる。マルカブは新聞をおろして、
「今日、給料日だって?」
「「うん!」」
「そうか。頑張ったな。蝶亭に行った奴らが誉めてたぞ。二人とも働き者だって。」
 満面の笑顔の二人を労ってやる。二人は、恥ずかしそうにえへへ、と笑った。
「ちゃんとママさんにお礼は言ってきたか?お世話になりましたって。」
「言ってきたよう!」
「そうか。稼いだ金は大事に使えよ。」
 そう言って、再び新聞に目を落とす。と、子どもたちがごしょごしょ何か内緒話をしているのが聞こえてきた。
「・・・・・・何だよ?」
 顔をあげて聞くと、二人はきっ!とマルカブを見てから、アヴィーが飛びかかるように駆け寄ってきた。アヴィーの手が新聞を掴み、それをマルカブの顔に押しつける。
「・・・ぶ!?」
「ごめん!ちょっとこのまま待ってて!」
 とアヴィーの声が新聞の向こうからする。顔に新聞を押し当てられたマルカブは、アヴィーの肩を掴んで押し返し、
「・・・お前、いきなり、何す・・・!」
 顔を新聞から引き離した途端、マルカブの視界は再度暗くなった。新聞を再度押し当てられたからではなく、頭に何かを乗せられて、それを深く被されて、目元まで覆われたからだ。
「・・・・・・。」
 マルカブは自分の頭に被された『何か』を取った。手には何故か、妙に懐かしい感触。
「・・・俺の帽子?」
 手に持ったものは帽子だった。船乗りたちが好む帽子。ケトスとの戦いで無くしたと思っていた帽子。それが新しくなって、手の上に乗っている。
 アヴィーと、いつの間にかすぐ近くに来ていたカリーナが笑顔で頷いた。アヴィーが新聞でマルカブの視界を覆っている内に、彼に帽子を被せたのはカリーナらしかった。
「あのね!マルカブの帽子と同じ帽子を見つけたんだよ!」
「マルカブ、あの帽子のこと気にしてたでしょう?だから・・・」
「見つけたときはビックリしたよね!同じなんだもん!」
「ねえ!同じのがあって良かった!やっぱり帽子あった方がいいよ!」
 にこにこしている子どもらは一言も言わなかったが、理解した。マルカブは帽子と二人を交互に見やり、
「・・・お前等、バイトして買いたかったものって、」
「・・・だってねえ?」
「うん、せっかく同じ帽子があったんだし。」
「・・・あ!でも、ちょっとお金が余ったんだよ!ママさんもお小遣いくれたし!」
「余ったお金でアイス食べてきたの!」
「美味しかったよねえ!」
「うん!3段重ねだもんね!」
「・・・・・・、本当のガキか、お前等は。」
 マルカブは頭に帽子を乗せながら呆れた様子で呟いた。子ども達は頬を膨らませた。
「何でだよう!」
「何よお!?」
 抗議を示した子どもたちの額を、指で弾く。二人はそれぞれ悲鳴を上げた。
「お前等、仮にも十代半ばだろ、もっと欲しいもんもあるだろ、アイスなんかで喜ぶな、それが3段でもだ!」
 額を押さえながらマルカブを見つめる二人に、マルカブは、もう一言、
「初めて働いたんだから、自分のために使えよ!」
「自分のためだもん!!」
「自分がそうしたかったんだもん!!」
 二人は主張をし始めた。いつも以上に必死の様子だった。
「マルカブのちょっと早い回復祝いだもん!」
「それに、いつもありがとうの品物だもん!」
「あと、怪我をさせてごめんなさいの品物で、」
「いつも迷惑かけてごめんなさいの品・・・」
「迷惑なんかかかってないッ!!だから、お前等がわざわざ俺に何かを買う必要はないッ!」
 子どもらの言葉を遮って、今度はマルカブは主張した。やはり必死の様子だった。それを聞いて、子どもらは同時に、
「「要らないの!?」」
「そんな話はしていないッ!!」
「じゃあ、ありがとうが先だよ!」
「そうだよ!嬉しくないの!?」
「うるせえ!それとこれとは話が別だ!」
「「何が!?」」
「大体、お前等は!・・・お前等は・・・!」
「「何!?」」
「・・・あ~~~~~・・・・・・・・・、もう!知らん!」
「「何が!?」」
 マルカブは二人に背を向け、ベッドにゴロン!と寝そべった。頭に・・・というか顔に、真新しい帽子を乗せる。子どもらは、むー!とむくれ、
「ちゃんとお礼言ってよー!」
「ちゃんと挨拶しろって、いつもマルカブが言ってるのに!」
 二人は騒ぎながらベッドに乗りあがり、マルカブの背中を揺する。「うるさい!もう、俺は寝る!」という言葉が背中の向こうから聞こえ、続いて、
 ぐずっと鼻をすする音を聞こえた。
「「・・・・・・。」」
 アヴィーとカリーナはぴたっと言葉を止めて互いの顔を見る。共に怒って顔が赤いが、泣いてない。
 子ども二人は、マルカブの背中を越えるようにして彼の顔を覗き込んだ。彼は帽子を顔に乗せているので、表情は分からない。ただ、その帽子を押さえる手に力が篭っている。絶対に顔を見せまいとしている。
 だから、アヴィーとカリーナは、さらにその背中を揺すり出した。
「マルカブ!泣いてるでしょ!?」
「泣いてないッ!」
「泣いてないなら顔見せてよ!」
「うるさい!絶対見せないッ!!」
「こっち向いてよー!」
「帽子で顔を隠さないでよー!」
 二人は、マルカブの帽子をはぎ取ろうとした。あわててマルカブは帽子を更に目深に押さえる。
「もう!素直じゃないな!」
「本当は嬉しいんでしょ!?」
「嬉し泣きでしょう!?」
「感激したんでしょう!?」
 そんなことを言いながら、子どもらは帽子を引っ張る。慌てたのは、マルカブだ。
「・・・・・・!馬鹿!帽子が破れたらどうすんだ!?」
 彼はそんなことを言いながら、帽子から手を離す。力を篭めて帽子を引っ張っていたアヴィーとカリーナは、ベッドの上に尻餅をついた。
「折角、お前らがくれたのに!」
 マルカブはそんなことを言いながら、起き上がり、二人の手から帽子を引ったくった。そして帽子が破れていないか、よく確認してから、よし、と頷いて頭に乗せる。二人はそんなマルカブを、きょとん、と見つめる。その視線に気がついたマルカブは、奥歯を噛みしめながら耳まで染めた。
「・・・・・・・・・、ああ、もう、お前ら!」
 マルカブはヤケになって
「そうだよ嬉しいよ感激したよ悪いかッ!!人間三十も越えると涙腺も脆くなるんだよッあんまり泣かせることすんじゃねえよッ!!」
 そう一方的に言われた二人だが、一緒になって、ぱあああ!と顔を輝かせた。
 ・・・ああ、くそ。俺、この顔に弱いんだよ。
 そう、マルカブは今更自覚した。自覚した瞬間に、左右の腕で一人ずつ思わず抱きしめた。
 ・・・もう、ダメだ。俺の負けだ。無邪気で素直で健気で、こんな情けない大人にも一生懸命に手を伸ばしてくれる、そんなこいつ等が、
「お前ら、大好きだよ!」
 マルカブの左右の肩にそれぞれの顎を乗せるようになった二人はぱちくり、と瞬きをした。続いて、アヴィーは満面の笑みを浮かべ、カリーナは少し複雑な表情を浮かべた後に、気負いも狙いもなく「大好き」と言われたのは亡くなった母しかいなかったことに気が付き、にっこり微笑んで、
「「うん!知ってる!」」
 なんて答えるのだ。おうよ、とマルカブは答えながら鼻をすすり、腕に少し力を込めて、
「わあああああ!なんだねなんだね!なんだね、その仲良し親子っぷりは!」
 というクー・シーの楽しげな声を聞いた。
 もはや反射的に、マルカブは子どもらに回した腕を振り解き、
「おじいちゃんも混ぜてーーーー!」
 と飛びかかってきたクー・シーの腕をつかんで投げ飛ばした。クー・シーは受け身をとってゴロロロロ・・・と床を転がり、背中が壁にぶつかって止まった。天地がひっくり返っているクー・シーの前に、マルカブは動くようになってきた足をどんッ!!と踏みならして立ち、
「・・・空気読めよ、クー爺。」
「おじいちゃんに一番難しい注文をつけるねえ。」
 ひっくり返った姿勢のまま、クー・シーは笑い、人差し指をマルカブの頭に向けた。
「それ、新しい帽子かね?」
「・・・おう。」
「むう、折角だから違うデザインにすればよかったのに。それに折角なんだから、そんな安物じゃなく・・・・・・・・・、ぶふう!?」
「だから空気読めっていってるだろうが!」
 子どもらの贈り物にケチをつけだしたクー・シーの顔に、マルカブは枕を押しつけた。
「・・・やっぱり安物なのかな・・・」
「もうちょっとバイトしてお金貯めればよかったかな・・・」
 子どもたちがおずおずとそんなことを言い始めるので、マルカブはもはや殺意すら持って枕をクー・シーに押しつけながら、
「クー爺の言葉なんか気にするな!俺は気に入った!大切にする!ありがとな!」
 その一言に、ぱっと子どもらの顔が輝いて、「やっとお礼を言ってくれた!」とはしゃぎだす。枕の下から、クー・シーの苦笑と「感謝は素直に伝えないとねえ、おとーさん?」という声が聞こえた。この老人に一杯食わされたことに気がついたマルカブは、悔しさで一杯のあまり奥歯を噛みしめながら、さらに枕を押しつけた。
 

(13章に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

このエピソード、
そもそもの発想が、「海賊なんだしさー、帽子にエピソードは無いのかー?」
という志水の思いこみによる無茶振りにキャラが応えた話です。(爆)
何となく、モン爺がオイシイところを持っていった気がします。


次回から13章です。深王様からのミッション発動させたい気がしますが、
グダグダと日常パートが続きそうな予感です。深都の描写とかしたいんですよねー。



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