まよらなブログ

13章4話。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

昨日から、世界樹シリーズとアトリエシリーズとWA音楽の人たちが作ってる
「ノーラと刻の工房」(DSソフト)を借りてちょこちょこいじってます。
オクトーヤさんが少佐に見えてきたので、仲良くなろうと思いました。



ともあれ、妄想話に興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


13章4話
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 カリーナの軽い咳を聞きながら、アヴィーは血溜まりの中の屍をじっと見つめる。屍にはリョウガンが黒い布をかけていて、その姿は隠れている。けれど、そこには確かに人がいる。
 ―― 僕が騙されなかったら、この人は死ななかったのかな。
 アヴィーはそう考え始め、よろめいて尻餅をついた。それを見たカリーナは自分の背をさするマルカブに、アヴィーの側にいってあげて、と頼むのだ。解毒剤を飲んで回復しつつあるものの小さな声しか出せないカリーナを、心配そうに見下ろしたマルカブだが頷いてアヴィーの隣に行って屈み込み、
「・・・もう見るな。」
 アヴィーの肩を抱き、その目を掌で覆う。アヴィーは、しゃくり上げだした。カリーナは胸を押さえながらそれを見つめ、
「・・・リョウガンは・・・、どうして・・・」
 小さく呟く。リョウガンはマルカブに錠剤を投げ渡した後、たった一言、「戦争は回避されました。」と伝えて消えてしまった。
「・・・あ!アヴィーに姫にマルカブ!見つけた!」
 そこへ、クー・シーの声が響く。クー・シーとシェリアクが駆けてきた。
「無事だったかね!?」
「・・・おう。俺らはな。」
 マルカブの低い声にクー・シーは眉を寄せ、そして血溜まりとその中の塊を見つけて、立ち止まる。
「・・・リョウガンがいた。」
 マルカブはそう言って、クー・シーをじっと見つめ、
「・・・お前、何か知ってるんじゃないか?」
「・・・。」
 クー・シーはしばらく無言。それは肯定だと気づく。
「・・・クー・シー。知っていることを、教えて。」
 カリーナが咳込みながら頼んでくる。彼女の声と呼吸の具合から、呼吸器をやられていることに気がついたシェリアクが彼女の傍らに屈み体を支える。カリーナは、シェリアクの腕に背中を預けながら、
「・・・リョウガンが、その人を・・・。でも、・・・私を、助けるため、だった、みたいだから・・・」
「・・・そうですか。では、やはりセイリアスからの手紙の通り。」
 クー・シーは腕を組み、
「セイリアスより、リョウガンを姫の護衛に向かわせる、という手紙を一週間ほど前に受け取っております。」
「・・・護衛・・・?」
「左様で。しかし、上陸しているならわしかツィーに声をかければいいものを・・・」
「護衛ったって、やりすぎだろ。」
 マルカブが吐き捨てた。アヴィーが、唸るような声を上げて泣き出した。マルカブはアヴィーの頭を撫でながら、
「ガキにこんなの見せるんじゃねえよ・・・!」
 クー・シーは何か言いたげにしたが、口を噤んだ。シェリアクがカリーナに声をかけて、彼女を抱き上げた。
「・・・ともかく、樹海を出よう。その・・・その人のことも冒険者ギルドに報告しなくてはいけない。」
 シェリアクの提案に頷く以外に方法はない。マルカブは、アヴィーの頭をもう一度強めに撫でてから、彼を支えるようにして立ち上がった。


*****

 樹海を出て宿に戻った一行だが、アヴィーにはマルカブが付きっきりにならざるえず、ミモザのことはシェリアクとミラが送っていくことになった。(その帰りに冒険者ギルドへとりあえずの報告をしてくる、とシェリアクは申し出た。)カリーナはクー・シーとツィーに診察され、解毒剤が効いていることが確認されるとゆっくり休むように伝えられた。ツィーがカリーナに付いていようと申し出たが、彼女はそれを断って一人で部屋のベッドに横になっている。
 しん・・・っと静まり返った部屋。外から聞こえる音は遠くの波の音ぐらいだ。
 周囲の静まり返った様子に、カリーナは起き上がり窓を開けた。
「・・・その辺に、いるんでしょう?」
 窓の外に向かって、囁く。
「リョウガン。いるのでしょう?」
 カリーナの声に、がさりと音が鳴る。カリーナは視線を巡らせ、頭上を見上げた。自分の部屋の上の屋根。そこに黒衣の男がいる。
「中へ。」
 彼女は告げて・・・というより命じて、窓から下がる。男・・・リョウガンは一瞬のためらいを見せた後、窓枠に手をかけてぶら下がるようにして部屋へと入ってきた。そして着地するなり、膝をついて頭を垂れる。
 カリーナはそれをじっと見下ろしながら、椅子に腰掛けた。
「私を助けてくれたことのお礼は言います。」
 リョウガンは顔を上げない。カリーナも顔を上げさせなかった。そんなことを許してやる気はなかった。
「そして、私の護衛を引き受けたことにもお礼を言います。よく国王の命令を聞き入れました。」
「・・・命令もありましたが、私自身が志願したことです。」
「そう。」
 リョウガンの淡々とした声に、カリーナも短く答えた。
「・・・では、よく考えなさい。私がどうしてあのときに、あなたを死なせなかったのか。」
 カリーナは膝の上で拳を握る。
「分かっていれば、あなたはアヴィーの前で人を殺すはずなどない。」
「・・・・・・、姫にとって、お仲間が最も大切であることは分かっているつもりです。」
 リョウガンは顔を上げた。同時に覆面を下げる。自ら顔を曝すこと、それが彼の忠誠の表現であることにカリーナは気が付いた。彼女はぐっと唇を噛みしめた。忠誠など要らない。欲しいのは、私の仲間を哀しませないという確約だけだ。
「・・・分かってなどいません。」
 カリーナは低い声でそう非難した。リョウガンは、そうかもしれません、と呟いた。
「ですが、あなたの仲間への想いを、私は分かっている必要はない。」
「私にとって必要です。」
「いいえ、姫。私にとって、あなたがどれだけ仲間たちを愛しているか、そんなことは些末なことなのです。」
 ・・・これは嘘だ。些末であるはずもない、とリョウガンは心の中で呟きながら言葉を継いだ。この姫が、仲間を苦しませないためだけに身の危険も己の命も二の次にし、自らを圧倒的不利に立たせた姫の威厳に自分は完敗したから、仕えようと思ったのだ。だが、そんなことは今から主になる人は知らなくてもいいことだ。彼女にとって仲間たちがどれだけ大切なのかは、当の仲間たちが知っている。彼女が泣けば、その頭を撫でる手も既にある。
 なれば。自分がすべきことはたった一つ。冷酷に非情に。その一点を貫くのだ。
「・・・ですが、私がお守りすると決めたのは姫だけです。」
 リョウガンに与えられた使命も、彼が見つけた使命もそれだけだった。彼女は女王になり、国王の意志を継ぐだろう。その道の途中で障害にもぶつかるはずだ。それでも、彼女は会ったこともない国民に心を砕くだろうし、全力で政務に当たるだろうし、そんな彼女の元に協力者も現れるに決まっている。
 なれば、自分のすべきことはただ一点。彼女を決して死なせない、ということだ。
「・・・・・・、私は・・・っ!」
 カリーナは立ち上がった。リョウガンが自分のことを、無力で護衛が必要な姫として見ているのではないことに気が付いて。国を背負い民を導く、その責任を抱える王族である自分を護ると言っているのだ。
「・・・私は、ただの冒険者なの・・・!」
 じっと見上げるリョウガンの瞳に、カリーナは身震いしながら必死に主張した。抗うように主張する。抗う相手は、リョウガンの瞳ではなく己の運命だ。
「・・・今の私は、姫でも王族でもない!カリーナエではなく、カリーナなの!」
 リョウガンは何も言わなかった。代わりに、彼は立ち上がり一歩後退して窓際へ。
「・・・御用が出来ましたら、お呼びください。」
 そう言って、彼は窓から屋根へと跳び移る。カリーナは窓の向こうの夜の空と世界樹を見つめながら、唇を噛みしめ、服の胸元を握りしめる。布の向こうに固い感触。カリーナは瞼をこすりながら、服の襟に手を入れて首に掛かった皮紐を引っ張りだした。その紐の先には鮫の歯。マルカブが作ってくれたペンダントだ。
「・・・大丈夫・・・」
 カリーナは鮫の歯を握りしめ、
「私、帰らない・・・。みんなと、ずっと一緒にいられる・・・!」
 まじないのように繰り返した。

*****


「・・・!」
 アヴィーはぱっと目を開けた。ぼんやりとした灯りに照らされる木の天井は、いつも見ている宿の天井。何だか良く分からないけど、とても苦しい夢を見た。けれど、あれは夢なのだ。
 ・・・でも、その夢の前、現実で見た赤い血溜まりは夢じゃない。
 アヴィーは、うう、と呻き声を上げた。
「・・・アヴィー、起きたのか・・・?」
 マルカブの、本当に小さな声がした。アヴィーは横になったままで顔を向ける。部屋のテーブルを前にして、椅子に座っているマルカブがいる。揺らめくかすかな灯りは、そのテーブルの上の小さなランプのものだった。そしてテーブルの上には他に酒瓶と水差しがあって、マルカブは琥珀色の液体の入った小さなグラスを持っている。
 アヴィーは、うん、と頷いて起きあがった。マルカブはグラスを置いてランプに手を伸ばし、灯りを少し大きくなるように調整した。アヴィーは自分の影がはっきりしたのを感じながら、
「・・・今、何時?」
「・・・日にちが回ったぐらいかな。」
「・・・僕、宿に帰ってからずっと寝てたんだ。」 
 樹海から帰ってきて、部屋まで来たのは覚えている。そのままベッドに突っ伏して、泣いてるうちに寝たらしかった。アヴィーは、はっと顔を上げて、
「ミモザは?」
「シェリアクとミラが送っていってくれた。」
「・・・そうか。・・・お礼もごめんねも言えなかった・・・。」
 また後で言えばいいじゃねえか、とは、今のマルカブは言えなかった。代わりに、
「・・・腹減ってないか?夕飯食ってないだろ?」
「・・・・・・食べたくない。」
「そうか。」
 マルカブはそれだけの返事をして、グラスを空にした。そのグラスに水差しから液体を注ぐ。無色透明。水らしい。
「水だけでも飲んでおけ。俺が使ったグラスで悪いけど。」
 そう言いながら、水の入ったグラスをアヴィーに向けて、テーブルの上にとんっと置く。アヴィーはベッドから下りて、テーブルまでやってきて、ショットグラス一杯分の水を飲んだ。
「・・・お酒の匂いがするよう。」
「匂いだけなら問題ない。」
 アヴィーからグラスを受け取ったマルカブは、もう一杯飲むか?と聞いた。アヴィーが首を振るので、彼は、そうか、とだけ答えて、酒瓶から酒を注いだ。液体にランプの灯りが反射するのを見つめながら、
「・・・お酒って、美味しいの?」
 アヴィーが小さな声で聞いてきた。
「・・・・・・いやなこと、忘れられるって本当なの?」
「・・・どうだろうな。忘れるために飲む酒は、最悪に不味いのは確かだけど。」
 マルカブは酒瓶を置いて、グラスは持たずに背もたれに寄りかかった。「飲みたいのか?」とアヴィーに聞く。アヴィーは少し考えた後、「・・・忘れられるなら。」と答えた。グラスはアヴィーとの間の中間にある。マルカブは一度深く呼吸をして、アヴィーに聞く。
「お前、酒を飲んだことは?」
「ないよ。」
 そうか、とマルカブは答えて、グラスを見つめた。
「・・・俺は、ガキに酒なんか飲ませないけど、」
 マルカブはグラスに手を伸ばした。、
「今日は別の理由だ。初めて飲む酒が最悪に不味いなんて、不幸だからな。」
 だから飲ませない、と言って、彼はグラスを一気に仰いで空にした。


(13章5話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

酒飲みによる酒飲み論は次回に続きます。
本当に、書きたいことしか書いてない世界樹カンケーない話です。

最後にうちの赤パイが飲んでいるのはウィスキーです。
この話を書きながら、志水が「ニッ〇 ブラッククリア」飲んでたからです。

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