まよらなブログ

14章3話。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

今回の話はだらだら日常パートです。
各章を書く前に、その章で書く内容と適当なプロットを箇条書きにしておくんですけど、
このままではその半分も書けないような気がしてきましたが、
まあ、日常パートの方が好きだから、しかたがないのだあきらめよう。


では興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

14章3話
---------------------------------------


「・・・えいッ・・・!」
 シェリアクの盾をせめて背中に担いでみようとアヴィーは一生懸命だが、盾はびくとも動かない。
「・・・ふん・・・ッ・・・!うんんんッ!!!」
 漏れる声だけが響く中、
「何だか、可哀想になってきました・・・。」
「諦めた方がいいと思いますわよ。」
 ツィーが涙を拭い、ミラが冷たく言い放つ。『ファクト』の少女たちの間にもう一人、小柄な少女が立っている。彼女はハラハラする胸を押さえてアヴィーの奮闘を見守っている。
「・・・お・・・重いよう・・・!」
 やがてアヴィーはぺたりと床に座り込んだ。
「ほら、やっぱり。」
「シェリアクさんとは体格が違いすぎますから仕方ないですよ、アヴィーさん。」
 呆れるミラと微妙に慰めになっていないツィーの言葉に対し、二人の間にいる少女・・・アヴィーの師匠の娘のミモザは「・・・アヴィーも頑張ったのに。」と小さな声で抗議した。あらあ?と二人ににやにやと見られて、ミモザは耳まで真っ赤にしてから、
「ア、アヴィー!発動機だって重いんだから、盾ぐらい持ってみなさいよ!」
 と、無茶なことを言いだした。アヴィーは、盾の方が重いよう、と呟いてからごろんと仰向けになり、ため息をついた。
「シルンみたいに、シールドスマイトしてみたかったのになあ・・・。」
「そもそも盾は殴るものじゃありませんわよ。」
「まあ、剣と茨の紋の国の騎士の最後の武器は盾だって元・騎士団長は言ってましたけど。」
 ツィーが言うと、アヴィーはぱっと起き上がり、
「じゃあ、やっぱり盾で殴るのが最後の切り札なんだよ!シルン・・・僕の母さんもカリーナの国の出身だもの。」
「騎士団長様は、盾で殴るとは言ってませんよ。」
「もう!アヴィーは占星術士なんだから、シェリアクさんみたいにならなくてもいいでしょ!」
 ミモザは妙にムキになりながら、
「あたしと同じ占星術士なんだから!星術を頑張ればいいでしょ!!」
「・・・うん、そうだよね。」
 アヴィーは盾を見やってから、頷き、ミモザに笑いかけた。
「ありがとう、ミモザ。そうだよね。」
「・・・っ・・・!べ、別にアヴィーのために言ったんじゃないわよ・・・!」
 ミモザは真っ赤になってそっぽを向いた。あらあらあ?とミラとツィーがからかいの声を出す。
「・・・む。どうしたんだ?にぎやかだな。」
 そこへシェリアクがやってきて、洗って干していた己の盾をひょいっと片手でかつぎ上げるのだ。ほわーとアヴィーがそれを感嘆の目で見つめる。
「どうかしたかね?アヴィー。」
「・・・あ、あの!ええっと、あの、シェリアクさん!ご、ごめんなさい。僕、盾を持ってみたくて勝手に触ってしまって!」
「ああ、構わないよ。壊れるものでもないしな。」
 シェリアクは答えてから、先ほどカリーナから聞いた話を思い出す。
「そういえば、盾を習いたいと言っていたそうだが・・・」
「あ、は、はい!・・・でも、盾も持てないのに無理ですよね・・・」
「この盾が君に合っていない所為だと思うが。・・・さきほどカリーナにも伝えたのだが、盾の技ではなく攻撃の受け流し方を教えることも出来るがどうかね?」
「・・・盾がなくても使える技ですか?」
「ああ。合気道といったものにも近いかな。・・・特別な道具もいらないし、役に立つと思うが。」
「は、はい!教えてほしいです!!」
 アヴィーがこくこく!と頷くと、シェリアクは満足そうに微笑んだ。私が宿にいるときはいつでも声をかけてくれ、と彼は言い、それから、ミモザを呼んで手招きをする。ミモザは慌てた様子でシェリアクに近寄っていった。シェリアクはアヴィーに向かって改めて、
「君にはきちんと伝えておこう。ミモザに我々の探索を手伝ってもらうことになった。」
「先生がよく了承してくれましたね・・・。」
「うむ。まあ、ミモザに何かあったら私に隕石が降ってくるらしいがね。」
 シェリアクは苦笑し、ミモザは早口で、
「あ、あたしがパパにお願いしたの!樹海の探索をしたいって!パパも冒険者だったし・・・。アヴィーは探索して帰ってくると星術が強くなってて、パパもアヴィーはすごいって言うし・・・」
「え?ホント!?」
 アヴィーは顔を輝かせて喜んだ。ミモザはそのアヴィーに向かって、びしっと指をさし、
「あたしだって、冒険者になればアヴィーよりもっと強い星術使えるようになって、パパにも認めてもらえるんだからね!あたし、負けてない!!」
 ミモザはアヴィーに対して、恋心だけではなくライバル心も抱いていることを、シェリアクは理解した。星詠みとしての父親を尊敬しているミモザは、滅多に他者を誉めない父親がアヴィーを認めていることも気に入らないのだ。一方のアヴィーがそんなことは全く意に介さずに、「うん!頑張ろうね!」と答えるのもミモザは気に入らないし、一緒に頷き合えない自分自身も気に入らない。一気に起きる感情を処理するには、12歳では幼すぎる。ミモザは、ぐっと唇を噛みしめてから、その唇を震わせた後に、
「・・・・・・・・・、アヴィーのばかあああああ!!」
 そう言って、恒星亭の中に駆けて行ってしまった。
「え!?何で!?」
「・・・ミラ、ツィー。ミモザを宥めてやってくれ。」
 シェリアクが、にやにやしながら一連のやりとりをみていた少女二人に声をかけると、二人は「はーい。」と答えて宿に向かっていく。アヴィーは、あうう、と情けない声をだして、
「僕、ミモザがよく分からないときがあります・・・。」
「まあ・・・難しい年頃だとは思うが・・・。そもそもミモザは君を特別視してるというか・・・」
「ミモザは僕のこと嫌いなのかな・・・。」
「・・・・・・・・・、君、鈍いところまでマルカブに似る必要はないぞ?」
「???ディスケやおじいちゃんやマリアさんも同じこと言うんですけど、何でですか?」
 アヴィーがぐすん、と鼻を鳴らしながらシェリアクを見上げる。早めに気づくように、とシェリアクは呟いた。アヴィーは首を傾げた後に、少し考え込んでからぱっと顔を輝かせた。
「でも、ミモザが一緒に探索するのがシェリアクさんたちで良かったです!シェリアクさんは強いし、エラキスさんたちは親切だし。」
「そうか。ありがとう。」
「ミモザのことよろしくお願いします!」
 アヴィーがぺこりと頭を下げる。カリーナの動作に似てる、と思ったシェリアクは、
「ああ。勿論だとも。・・・ところで、君とカリーナは、どちらが姉か兄かで喧嘩をしているそうだね?」
「もしかして、マルカブが教えたんですか!?どうせ、面白おかしく言ってるんだ!僕たち真剣なのに!!」
 アヴィーは、マルカブに文句言ってくる!と屋敷の中へ走り出した。シェリアクは苦笑しながら盾を持って屋敷の中へと向かっていった。

*****

 
「美味しく出来て良かったわね。」
 エラキスが恒星邸の厨房で皿とカップを洗いながら、笑う。カリーナは洗ったカップを拭きながら、頷いた。
「後でレシピを写させて?シェリアクは、甘い物、あまり食べないんだけど、このケーキは食べたから。」
「は、はい!」
 カリーナは慌てた様子で頷くのを見て、エラキスは困ったように首を傾げてから、
「意外?」
「い、いえ。・・・その・・・、エラキスさんもシェリアクさんにもっと何かしてあげたいんだなって思って・・・」
 カリーナは皿を置きながら、胸に下がっている鮫の歯のペンダントに触れ、
「・・・もう、これ以上、何か必要なこととかなさそうなのに。」
「足りるってことは永遠にないと思うけど。私がシェリアクを好きな限りは。」
 じゃあ、私はどれだけを与えていけばいいんだろう、とカリーナは思ったが、それを口にはしなかった。エラキスが、そのカリーナの思いに気がついたかどうかは分からないが、
「鮫の歯ね?そのペンダント。マルカブに貰ったの?」
「は、はい。お守り代わりにしていろって。」
 カリーナはペンダントをぎゅっと握りしめてから、
「・・・あ、あの、エラキスさん。その・・・、なんだかさっきはマルカブと自然な感じでお話してた・・・」
「そうかもね。話しやすくなったわ。」
「何か・・・あったんですか?」
「特に何も。彼の方が自然になったんじゃないかしら。何というか、・・・私・・・というかガーネットに構っている場合なんかじゃないのよ。」
「?」
「人間って、天秤みたいなものだと思うの。一つ気になることがあっても、もっと気になることがあったら、そちらに傾く。今は・・・、・・・むしろ『これからは』と言うべきかしら?彼は、あなたたちが一番大切なのよ。」
 だから私に対して変に肩肘張ってる場合じゃないの、とエラキスは言い、最後の一枚をカリーナに手渡した。カリーナはそれを受け取り、拭く。あんな風にガーネットは話をしていたのかしらねえ、と他人事のようにエラキスは呟いた。
「・・・エラキスさんは、まだ何も思い出せないんですか?」
「そうね。・・・、ガーネットが彼をどう想ってたのかは、何となく分かるんだけど。」
「え。」
「でも、他人事みたいなのよね。今、私が一番に想っている相手は違う人だし・・・」
 これも天秤よね、とエラキスは自嘲気味に笑った。
「・・・今、大事に想っているものがあるなら、それを大事にするしかないじゃない。そう思ったら、なんだか無理する必要も、予防線をはる必要もないかなって思ったのよ。でも、・・・これじゃあ、まるで嫌な女よね。」
「・・・嫌な女性です。」
「そうよね。」
「・・・でも、エラキスさんの記憶が戻らずに天秤が永遠にそのままでいればいいなって思う私も、きっとイヤな女です。」
 カリーナは唇を尖らせて、そう呟いた。エラキスは苦笑して、
「カリーナちゃん、一人で夜に泣いちゃうタイプでしょ?」
「?」
「たった一人で反省したり後悔したりしそうだなって。」
「・・・そうかどうかは分かりませんけど、」
 カリーナはちょっとだけ得意げに、
「でも、泣いちゃうような夜でも、頼めば『かわのじ』で寝てくれるんですよ。」
 誰が、とは言わなかったが、誰なのかは明白だったので、エラキスも改めて問いかけなかった。そう、と彼女は微笑んでから、
「じゃあ、私と同じね。不安な夜にシェリアクも一緒に寝てくれるもの。」
「そ、それ・・・、絶対に私と同じじゃないと思います・・・。」
 カリーナは真っ赤になって、小さな声で抗議した。


(14章4話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

とりあえずうちの赤パイをぶん殴りに行こうかシリーズ。

あ、シェリアクさんとエラキスは大人なので、おとなのごかんけいをお持ちです。


剣と茨の紋の国の元・騎士団長は
盾でぶん殴る技を編み出しており、一部の騎士たちはそれを習得してます。
騎士団長は、剣すら持てないギリギリの戦いの際の戦法として編み出したので、
鈍器として使っているアヴィーの養母である師匠パラ子の方が例外ですが、
内乱やゲリラ戦の中、その場にある物で何とかする必要があった元・騎士団長と
泥沼の戦を経験していない師匠パラ子の世代の差、という裏過ぎる裏設定も存在する。

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する