まよらなブログ

16章2話。


先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

やっとクジュラさんの迷言・・・っていうか
あまりの根拠のなさに、暴言に近いんじゃないか、と思わなくもない
「俺を信じろ」に辿り着きました。
いやはや長かった。隙あらば遊び始めるうちのギルド連中の所為なんだけど。


では興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


16章2話
---------------------------------------

 溶岩の河を渡り、燃えるような洞窟を進む『アルゴー』たちの前に、一人の人影が現れた。
「深都の兵が来ると思ったが・・・。お前たちか。」
 一行の前に現れたのは、海都の兵であるクジュラだ。海都から来た侵入者となればコイツしかいないだろうな、と予想通りの展開にマルカブはつまらなそうに鼻を鳴らした。
「まさか俺を止めに来た訳ではないだろうな?」
 彼は口元に笑みを浮かべ、からかうようにそう告げる。クジュラにも驚きはない。彼にとっても、予想通りの展開なのだろう。だからか、彼はすらすらと先を続ける。
「お前たちには伝えていなかったが・・・実は俺も元老院もみな、深都の存在やフカビトのことは知っていた。」
 それも予想通りだ。そうでなくては、ケトスを倒し深都を見つけたときに、シェリアクが彼の視線を感じたわけがない。ただ、ならばどうして冒険者にそれを告げなかった?と疑問は続く。
「知った上であえて、冒険者を使い深都を目指し迷宮を進んでいた。」
 クジュラはそこで一度、言葉を区切った。それもこれもこの日の為だ・・・、と青年は告げながら溶岩を見つめている。沈黙がほんの三秒ほど。クジュラは我に返るように、赤く光る溶岩から、視線を『アルゴー』に向けた。
「訳は・・・、理由は全て姫様にある。俺も元老院も姫様の為にと信じ、今日に至るまで戦ってきた。」
 そう告げる青年の瞳は『アルゴー』にむいているようで、何処か遠くを見つめている。過去を思い出している様子だった。その視線に思い当たるものを感じたカリーナは、少し思いを巡らせて、ふとクー・シーを見上げるのだ。かつてクー・シーが自分たちを見ながら、別の・・・かつての仲間を思い出すときの眼差しに似ている、と思うのだ。
 その、微妙に焦点が合わないような目で、クジュラは彼らに呼びかけた。
「『アルゴー』よ、俺を信じろ。お前らはまだ何が真実で、何と戦えばいいかを知らぬ。」
「・・・そりゃあ、そうだ。」
 マルカブは軽い口調を装いながら、はっきりと憤りを口にした。
「お前たちは知っていることを、何も俺たちに伝えていない。」
 クジュラは頷いた。だが、それだけだった。謝罪も言い訳もない。そればかりか、何も明らかにしなかったことは間違っていないと彼の態度は告げている。だが、と彼は答えた。
「・・・今ならば、伝えられることもある。」
 そして、彼は強い口調で、『アルゴー』に告げた。それは「命じた」に近かった。
「まずは海都へ戻れ。そして、元老院で姫様の話を聞け。そうすれば真実が明らかになるだろう」
 クジュラはそこまで話すと『アルゴー』の目の前から少しずつ離れ始める。
「そして、選ぶがいい。己の正義を。何が本当で、何が信じるべきことか。自身の目と耳で確かめろ。」
 分かったなら行け、と呟くとクジュラは一行から視線を解き、一行の前に立ちはだかる。海都の元老院へと赴き話を聞いてこない限り、ここを動かないつもりのようだ。
「俺たち、海都の侵入者を撤退させろって頼まれたんだけどなー。」
 動かないつもりじゃどうしようもねえな、とディスケが肩をすくめる。
「・・・ホントめんどくせえな、深都も海都も。」
 マルカブは頭を掻き、海都に帰るぞ、と踵を返す。いいの?とアヴィーが不思議そうに聞く。
「意図が分かんねえんだから、これ以上会話してても無駄だろ。だったら、海都に戻って話を聞いてくるしかない。」
「・・・でも・・・」
 アヴィーはちらり、とクジュラを見て、
「・・・先に進んじゃうかもよ?」
「フカビトのことも知ってるって、さっき言ってただろう?なら、先に進んだとしても、むざむざフカビトや【魔】の餌にはならないだろうよ。」
 聞こえよがしに言ってやると、クジュラは唇の端をわずかに上げた。
「・・・話を聞きに戻ったところで、」
 クー・シーがやれやれと肩を竦めた。
「真実を話してくれるとは、わしは思わないけどね。」
 俺もそう思うよ、とマルカブは答え、
「だからといって、お前たちが勝手にしたことだと言われるよりはマシだ。」
「あー・・・」
 クー・シーは何か納得した様子で頷いた。マルカブは無意識で、これは一種の国際問題であることに気がついているのだ。一冒険者が下手に首をつっこんで不都合があった場合、一方的に責任を取らされることもある。ならば二つの国の間の遣い、という立場を取った方が身の安全は保障される。その体裁だけでも整えに行こう、というわけだ。
「ふむ、そうだね。意外と堅実だよね、マルカブは。」
「・・・はあ?」
 マルカブは抜けた声を出した頃には、クー・シーはとっとと来た道を戻りだしていた。

*****

 海都の元老院に着くと、丁度体調が良くなった姫が立ち寄られた所だ、と言われ、グートルーネ姫との接見の場が設けられた。相変わらず病的に白い姫は、たおやかに微笑みながら親書を届けたことに礼を言った。
「皆様のお陰で、海都の冒険者や一部の民が深都に入国できたと聞きます。そして、皆さまは海都と深都を自由に行き来し、その都市の人々と交流を深めているそうですね。」
 言葉を聞いて、カリーナはディスケをちらりを見上げた。ディスケはカリーナの視線に気がついて「深都の連中と仲良くなったよなあ。」とへらりと笑って答えた。カリーナは頷いて、深都の人々を思う。恒星邸の人間や天極殿に仕える人間とも顔なじみにはったが、もっとも親しくなったのはアミディスだ。そのアミディスはディスケの親戚筋に当たるが、彼の曾祖父が海都に家族を置いて深都に向かわなかったら生まれていない存在だ。ディスケもアミディスも表には見せないが、それぞれ複雑な思いもあるんじゃないか、とカリーナは思う。だからこそ、その交流を続けてほしいと思うのだ。中途半端に交流が終わるのならば、アミディスは自分の生まれすら良しと出来なくなるかもしれない。
 ・・・だから、この姫に言わなくてはいけないこともあると思う。
 カリーナは顔を上げた。何か言いたいことがあるらしい、と気がついたマルカブは彼女の背をそっと押して自分の隣に立たせた。カリーナはマルカブを見上げて、ありがとう、と囁いてから姫に視線を移した。
「グートルーネ様。私たちは深都の方々に良くしてもらっていますし、その協力があってこそ探索を続けることもできます。」
 グートルーネ姫は満足そうに頷いた。それは、とカリーナは続ける。
「姫様の親書があり、海都と深都に友好を保っていこうという相互の理解があるからです。」
「それは喜ばしいことです。」
「はい。ですから、どうして、その友好の芽を崩すようなことをなさったのですか?」
 グートルーネは首を傾げた。フローディアが何か言う前にカリーナは続ける。
「クジュラと地下11階で会いました。深都はそれを『潜入』と見なしています。冒険者も商人も、深都の入り口で深都兵の検問を受けます。クジュラは正規の手続きを踏んで深都に入ったのではないために、『潜入』と見なされたと考えます。」
 仮にも、と彼女は続けた。
「彼は元老院の人間です。公的な立場を持つものが、正規の方法を使わず深都・・・・・・、いわば『異国』に踏み入ることは相手の信頼を踏みにじる行為です。このような行為をする国からやってくる冒険者を、深都が信頼できなくなっても致し方のないこと。冒険者が深都の民と深めてきた交流も、そこですべて立ち消えてしまうこともある・・・、その可能性をお考えになったことは?」
 言葉遣いは丁寧だが、だからこそ辛辣だ。つまりカリーナは「余計なことをしたかもしれない臣下を、あなたは国の代表としてどう考えているの?責任とれるの?」と聞いているわけだ。グートルーネは、フローディアを振り返り、「そうなのですか?」と尋ねた。フローディアは頷いて、
「申し訳ありません、姫様。これはあたしとクジュラで考え、実行したことです。」
 だから、とフローディアはカリーナに告げる。
「姫様は関係ないよ。」
「・・・、国の民がすることに、王族が『関係ない』など言っていいはずがないでしょう!」
 カリーナが思わず声を上げた。驚きは何よりも、仲間たちに走った。カリーナが声を荒げることはそもそも多くないし、人見知りも強い彼女がよく知らない相手に怒りを向けることも少ない。カリーナの行動に、マルカブには驚きと同時に哀しいような気持ちも走る。カリーナ自身が望まなくとも、彼女は王族なのだ。王族であるしかないのだ。
「申し訳ございません。以後は、臣下の動向をよく見ておきましょう。」
 グートルーネは相変わらずのたおやかさで答えた。カリーナの怒りを理解していないのか流しているだけなのか、カリーナ以外には判別できなかった。カリーナだけが判別した。この姫は何も理解していない。国際問題に『今後』など暢気なことはないからだ。
「・・・・・・・・・、」
 カリーナは、口走ろうとした。あなたなんか王じゃない、と口走ろうとした。しかし、それはおそらくグートルーネを傷つけもしないだろう。何故なら彼女は、『王』ではないからだ。
 ・・・王ではない相手に『王』を語ってどうするのだ。
「・・・分かりました。以後、お気をつけください。」
 カリーナの返事に、クー・シーだけが気がついた。それは『お願い』ではない。『忠告』でもない。セイリアスが臣下から報告を受け、それに答えるときと同じ響き。そう在れ、という『命令』。
 クー・シーは髭を撫でた。カリーナはそのときが来たら、案外あっさりと国に帰るのかもしれない。それはクー・シーの任務ではあるのだが、
(・・・抵抗ぐらいさせてあげたいものだよね。)
 そんなことを思いつつ、クー・シーはこの話を切り上げさせることにした。カリーナを王族から一人の少女に戻すためにも、グートルーネに問いかける。
「さて、グートルーネ様。クジュラが言っていましたがね、海都は深都の存在もフカビトの存在も知っていたとのこと。なんだってそれを隠しておられたのか、説明していただけますかな?」
 飄々と問いかけられて、グートルーネは頷いた。
「分かりました。今から私が海都や深都の存在理由・・・かつて起こった真実の歴史をお話しますので・・・その内容を聞いたうえで、改めて皆さまが何を正しいと思うのか、考え直してみて下さい。」
 ・・・勝手な話だな。
 マルカブは、拳を握りしめるカリーナの背中をぽんぽんと叩いてやりながら、悔しさを感じるのだ。正しさは海都にも深都にもあるのかもしれない。そして、カリーナの言い分だって、ある部分では正しいのだ。それを受け止めずに何が『正しさ』か。
「・・・・・・マルカブ。私は大丈夫だから。」
 カリーナが小さく囁いた。
「・・・グートルーネ様のお話に集中して・・・。」
 そうカリーナは言って、海都の姫をまっすぐに見た。それは生きて帰るために正しい情報を見極めようとする冒険者の顔だった。正義を見極めなくても、正確な情報を見極める必要はある。マルカブは、分かった、と頷いて言われたとおりに集中することにした。これ以上、カリーナ一人に頑張らせるつもりははなかった。
 グートルーネは宙に視線を漂わせ、思い出すように話を続ける。
「大異変の前、海都には世界樹という名の守護神がありました。海都の中心部にあったその樹の正体はただの樹ではなく、意識を持ち、高い知性を有した生物だったのです。 」
「・・・深王様もそんな話してたよね?」
 アヴィーが言うと、ディスケが「幻聴じゃなかったんだな。」と苦笑した。グートルーネは不思議そうに二人を見てから続けた。
「その世界樹は、知識を提供する代わり自身の敵対する生物たちと戦うことを私たち人間に要求してきました。その敵が【魔】と呼ぶ化け物とその眷属たるフカビトです。」
 ・・・【魔】は世界樹の敵というだけでなく人間にとっても脅威となると知り、海都の王は戦いを決意しました、と姫は続け、一呼吸。そして、少しだけ声のトーンを落とした。
「・・・それが百年前の伝説の王、ザイフリート。」
 まるで掌の大切なものをそっと見せるかのように、一つの名前を口にした。その口調の切なさに、カリーナの胸がきゅっと締まり、思わずマルカブの腕を掴んだ。
 この姫にも・・・・・・、大切な人がいる。
 この人に忘れられたら、悲しくて悲しくてどうしたらいいか分からない。そういう大切な人がいるんだ、と。大切な人がいる少女は、目の前の少女の悲しさを感じ取ってしまう。マルカブが、腕を掴むカリーナの手に自らの手を重ねた。そのひんやりしていて、少しかさついた感触に、カリーナはとてつもなく安堵する。でも、海都の姫にはその手はない。もっと優しい言い方をすればよかった、とカリーナは後悔した。
 支える手のない少女は、痛みをもって続けた。
「彼は海都の中心部を世界樹と共に海底に沈め、己も深海にて【魔】と戦い続ける運命を選びました。・・・世界樹の告げた通り、海底で【魔】が暴れ危険が発生した際、それを抑える為、王は海都の一部と共に海に消えた。・・・これが大異変の内容です。」
 グートルーネは俯き、溜め息をついた。そして、誰に対してでもなく問いかける。
「しかし、この手段が正しかったのでしょうか? 私は・・・、それに疑問を持ち、今様々な手を打とうとしています。」
 そこまで話して、彼女は静かに視線を上げる。カリーナを支える『手』を、懐かしげに憎々しげにそっと見つめた後に、
「・・・すみません、少し疲れたようです。・・・続きはフローディアから聞いてください。」
 そう力なく言う少女は、一体いつから疲れているのだろう。途方もない年月を期待と諦観の狭間で生きてきたかのように、肩を落とし、白い姫君は退出した。



(16章2話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

もっと書きたいことがあったんですが、
なんか上手く書けた気がしない。こんなにモヤモヤして書き終えたの久しぶりだ。

深王と姫の対比という点からも、
彼女が『王』ではないことははっきり書いておきたいです。
責め役が「王族」であるプリ子になるのは仕方がないのですが、
やっぱりなんかイヤな子になっちゃうなーうちのプリ子ー。
でも16歳の女の子なんて、多かれ少なかれ皆イヤな子でー、
それでも良しって言ってくれる人もいるから、黒歴史が若気に至りになるんだよ。

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する