まよらなブログ

16章5話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

本日、グロめのシーンが出ます。
志水の文章なのでリアリティはないですが、苦手な方は飛ばしください。

そして、人の生死について書かれています。
震災から一年の本日、読んで辛くなる方もいるかもしれません。
その時は、すぐにウィンドウを閉じてください。
パソコンから離れて、ストレッチをしたり、
水を飲んだり、5つ数えながら息を吸い10数えながら息を吐く、
などをして、体と頭を切り替えてください。
呼吸と心拍が整えば、その場は結構どうにかなります。
無理はせずに、読めるときに読んでください。
間違いなくあと二年は、この話は続きますのでそれまでは読めますから。



それでは、準備と興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


16章5話
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 深都にやってくる冒険者は、『アルゴー』と『ファクト』だけではない。他にも二階層を抜けることが出来た冒険者たちは何組かいるし、彼らのほとんどは三階層に挑む。三階層に挑む理由は、ギルドによって様々だ。新たな階層に眠っているかもしれない財宝目当てだったり、未知なる世界への好奇心だったり、腕試しであったり、名声を求めていたり。彼らなりに様々だ。様々だが、多くの冒険者たちは必死に探すような目で深都にやってくる。当然だ。富にせよ名声にせよ力にせよ、彼らは何かを求めている。そうでなくては冒険者になろうとは思うまい。それが『冒険者』の姿として正しいのだ。渇望。それこそが彼らの本質だ。
 渇望は当然、満足の対極にある。
 全ての冒険者に話を聞いたわけでもないが、冒険者たちは特別に満たされない人生を生きてきたわけではなかった。中には、立て続けに起こる不幸の嵐に飲まれてきた者もいるだろう。中には、この生き方しか見いだせなかった者もいるだろう。しかし、それは冒険者でなくとも聞く話だ。荒波と呼ぶには酷い人生を送ってきた者や、他に道を選べなかった者は、多くはないかもしれないが決して珍しくはない。
 他に道を選べなかった者。そうだ、珍しくはない。深都の人間は全てがそうだ。『選ぶ』ということすら知らなかったのだから、『選べなかった』という悔しさもないのだが、それこそが深都の人間特有のことかもしれない。
 アミディスは樹海に向かう途中、つらつらと思考していた。最近出没している蟻の魔物の調査に向かうところだった。共に調査に向かう2人の深都兵の背中を見ながら、ただつらつらと思考する。自分も彼らも、何も選んではいなかった。先祖が選んだ結果として深都にいて、当然の義務として【魔】と戦う。その『当たり前』の繰り返しを、繰り返し繰り返し、
 ……いつまで繰り返すのだろう?
 と、考えれば、当然【魔】を討つまで、という答えがでる。当然だ、そのための戦いなのだから。100年近く戦って来て、未だ討てない人類の敵。それでも絶望はしていない。1000年の時を掛けても、討てればいいのだ。自分が生きている間にその繰り返しが終わらなくとも、数代先の子孫が幕を引けばいい。自分たちは、そのための一歩であればいい。
 アミディスはその自分の在り方に、不満があるわけでもない。理想化しているわけでもない。生き写しであるディスケを見て「自分と彼が逆だったらどうなのか。」と考えたことがなかったわけでもないが…、己に与えられた人生を、仕方がないと諦めることも出来たし、これもいい、と受け入れることも出来た。ただ、何かが一つ欠けている。冒険者たちが深都に来るようになって、そう感じ出している。
 冒険者や海都の人間と接して、文化や考え方の違いを新鮮だと感じている深都の人間は少なくない。さして広くない街の中で100年も暮らしていれば、外の空気を心地よく感じても当然だ。ただ、それはただの目新しさだ。食堂に新しいメニューが出れば試してみたくなる程度のもの。アミディスの冒険者と接したことで感じている「己の在り方に何かが一つ足りない感じ」を共有する者はいない。
 それは単純に、冒険者との縁の深さの違いでしかないこともアミディスは知っていた。実際のところ、アミディスほど冒険者と個人的なつきあいをしている深都兵はいなかった。【恒星邸】の管理者は冒険者と親しくなってはいるものの、それも務めの範囲内だ。たまたまそっくりな人間が冒険者にいて、たまたま親戚筋で、たまたま彼と彼の仲間の気がよくて、たまたま親しくなっただけ。それだけの違いでしかなく、その違いを発生させるのは結局のところ、会話の量のような気がする。
 そして、なにが足りないのか、気づいたのも彼らとの会話の中だった。足りないものは、この戦いの先へのイメージ。
 【魔】を討つことが、深都の目的、存在の意義、深都の全てだ。本当に、全てなのだ。だから、「もし、この戦いが終わったら。」という仮定の話がない。戦いを終わらせるために戦っているはずなのに、【魔】を討ったら自分たちも消えてしまうわけでもないのに、その仮定の話が出来ない。
 何のために戦っているのか。もちろん、人類を【魔】から守るためだ。しかし、その守った人類と自分たちがどのように暮らしていくかを、深王様はお考えなのだろうか。世界樹はその先を導いてくれるのだろうか。そして自分はその先をどうしたいと思っているのか。【魔】を討つことが目的ではないはずなのだ。それはただの手段。この世界と人類を、守るための手段。それなのに、守ったものがどうなってほしいのか、守ったものとどうしていきたいのかが、自分たちには欠落している。
 ・・・手段と目的が逆転している?
 それは恐怖にも似た違和感だったが、それでも他愛のない約束で和らぐのだ。【魔】を倒したら海都の家に遊びに来い、と自分そっくりの男に言われたこと。その時は海都を案内してあげる、と素直な少女に言われたこと、星座を教えてあげると素直な少年に言われたこと。海都に戻ったら本物の星空をスケッチしてくる、と彼らは言った。そんな他愛のない約束の先に戦いを終えたその後の生活があるのなら、それを心待ちに思うなら、今はその約束のために戦っていくしかない。
 アミディスがそう結論づけたときに、一団は樹海の入り口についた。入り口には、シェリアクとツィーが既に来ていた。深都兵と『ファクト』は共に魔物の調査を行っているが、合同で調査をする際は深都兵と『ファクト』のメンバーで、5名程度のメンバーになるように構成している。本日、ツィーが参加するのは、魔物の巣があるかもしれない場所に向かうため、治療の技が使える人間を選んだからだ。
 シェリアクが簡単な挨拶をしてから、早速本題を述べた。
「以前、探索中に9階の奥で蟻の魔物を見失っている。そこを重点的に調べたい。」
 反対する理由もなく深都兵たちは頷き、地図でルートを確認する。その間に、ツィーがアミディスの近くに寄ってきて、
「アミディスさん。『アルゴー』の皆様がお家にお邪魔したようですが、ご迷惑をおかけしませんでしたか?特に爺様。」
 むしろ爺様が、とツィーに聞かれ、アミディスは苦笑して首を振った。
「大丈夫。何かしでかしそうになると、大体叱って止めてくれるから。」
「では、マルカブさんに謝っておいた方がいいですね。」
 叱り役が誰なのかはツィーも分かっているらしく頷いてから、今後もよろしくお願いします、と頭を下げた。そういえば『ファクト』は何を求めて樹海にいるのだろう、とそれを見ながらアミディスは思うのだ。
 あとで聞いてみよう、とアミディスが一人頷いているうちに、出発の準備が整った。


*****

 『ファクト』が蟻の魔物を見失った場所の近くに、抜け穴を見つける。抜け穴の先には、幾分開けた洞窟が広がっていた。そこに数人分の真新しい足跡を見つけた。どうやら、先に抜け穴を見つけて踏み込んだ冒険者がいるようだ。
 シェリアクが眉間に皺を寄せて、足跡を見つめ、それから洞窟の先を見た。辺りに漂う異様な気配をアミディスも感じる。気配は熱風となって吹き付けてくる。
「・・・心配だ。」
 シェリアクが聞こえるか聞こえないかの声で、低く低く呟いた。
「急ごう。」
 そう言って歩みだそうとした途端、奥から響く地響きと悲鳴。シェリアクはすぐさま駆けだし、他の者もそれに続く。
 通路の向こうから、女性冒険者が血塗れで走ってくる・・・否、逃げてくる。それを追う無数の蟻の魔物。更にその後ろに、圧倒的な存在感を放つ姿の見えない魔物もいる。
 シェリアクは女性冒険者を背に庇うようにして槍を振るった。蟻たちは風圧で一瞬立ち止まり、間合いをとりながら狭い通路を埋め尽くしていく。ツィーが血塗れの女性冒険者の肩を抱き、来た道を戻ろうとする。その冒険者に飛びかかろうとする魔物を、シェリアクは槍で突いた。魔物たちは一度狙いを定めた獲物を逃すつもりはないらしく、一匹の動きをきっかけに、一斉に飛びかかってきた。
 恐慌状態になる冒険者の首筋へ、ツィーは手刀を打った。深都兵の一人が気絶した彼女を抱き上げ、抜け道に向かって走り出す。その背中に飛びかかろうとする蟻の魔物を叩き落とすのは、ツィーともう一人の深都兵。アミディスは蟻の魔物を貫きながら(彼は深都兵の標準装備である槍を武器にしている)、蟻を打ち払いながらもその場から動かないシェリアクに気づいた。
「シェリアク!退避を・・・!」
 呼びかけながら、シェリアクが動かない訳を知る。通路の奥から、存在感だけを放っていた何かが姿を現しつつあった。その光る目が高い位置にある。
 地響きとともに、巨大な蟻の魔物が姿を現した。その顎を見て、
「・・・・・・ッ!」
 アミディスは奥歯を噛んだ。そのまま、ガチガチと歯が鳴り始めたが、吐かなかっただけマシだった。
 巨大な蟻の魔物・・・女王蟻なのだろうか・・・の顎に、人が一人、咥えられていた。
 女王蟻の魔物は、傲然と人間を見下ろした。シェリアクが動かなかったのは、この魔物を仲間たちの元へ向かわせないためだろう。無数の蟻の魔物よりも、この一匹の女王蟻の方が恐ろしい存在だということはアミディスも理解した。
 女王蟻は、鉄槌のような前足を振り下ろした。シェリアクは盾でそれを受け止め、アミディスは転がるようにしてそれを回避する。盾で女帝の鉄槌を受け止めたシェリアクは、全身のバネでもって盾を跳ね上げ、女王蟻を背後へと僅かに押した。そして、その隙に女王蟻の間合いから抜け出す。その僅かな間さえあれば、逃げ切れる。それだけの実力が、この場にいる者たちにはある。そう判断して、
「アミディス!逃げるぞ!」
 シェリアクは同じように間合いから抜けたアミディスに声をかけ、蟻の魔物の群を斬り裂きながらツィーたちを追う。アミディスはそれに続き、自分たちに襲いかかる蟻を払い落としていく。その背後で、
 ぼりん。
 と、あまりに軽い音が響いた。
 振り返ってはいけない、と本能が告げているのに、アミディスは振り返ってしまった。女王蟻の顎が真っ赤に濡れている。ぼりんぼりん、と乾いた音を立てながら、女王蟻の顎は動く。その顎は先ほどまで人をくわえていたはずだ。だが。
 ――だが今は。その手だけが見える。まるで、助けを求めるかのように、女王蟻の口の中から手だけが伸ばされている。
 アミディスは、思わず足を止めてしまった。その手を助けようとするわけでもなく、人が蟻に補食されることに憤ったわけでもなく、その圧倒的な力に絶望したわけでもなく。ただ。ただ、信じられない情景に呆けてしまって、足を止めた。
 シェリアクが怒号のように彼を呼んだ。アミディスが我に返るより早く、
 女王蟻の鋼のような前足が、アミディスの腹を貫いた。
 


*****


 アヴィーとカリーナが、今日は自分たちの船・ミアプラキドゥス号に泊まるのだ、と言い張るので、『アルゴー』は全員で港に停泊させている船の上で過ごしていた。三階層に足を踏み入れてから深都で過ごすことが多くなり、ミアプラキドゥス号もしばらく放っておいたため、マルカブはこれ幸いと船の掃除と点検に勤しんだ。夕方には船の備品の買い出しにも行くことができた。
 マルカブが備品とともに夕飯用の弁当も買って戻ってくると、アヴィーとカリーナが甲板の上に文房具を広げていた。スケッチブックに鉛筆、絵の具に色鉛筆と、写生でも始めるような勢いだ。スハイルを頭に乗せたディスケが鉛筆を削ってやっており、クー・シーは紫の絵の具を必要以上に出してカリーナに叱られている。
「・・・何やってんだ?」
 問いかけると、おかえり!と二人は声を揃えてから、
「星のスケッチをするの。」
「僕が北の空を描いて、カリーナが南の空を描くんだよ。」
「なんだ、アヴィーの宿題か?」
「違うよ。あのね、深都って海の底だから空が見えないでしょう?」
「まあ、そうだな。あそこは海が空だからな。」
「太陽の光は何となく見えるけど、星は見えないでしょう?アミディスさんが、天極殿の天文時計が映した星は見たことあるけど、本物は見たことがないって言ってたから・・・」
 アヴィーの話を受けてカリーナが続けた。
「絵に描いて持っていくって約束したの。・・・私、上手に描けないかもしれないけど・・・」
「きっと感動するだろうなってアミディスさんは言ってたよ!大丈夫だよ!」
 アヴィーとカリーナの話をにこにこしながら聞いていたディスケが、鉛筆を削る手を止めた。スハイルを膝の上に移動させてから、クー・シーとともにマルカブを見上げる。
「いい子たちだろー、うちのお子ちゃまたちー。」
「いい子たちだよねー?羨ましくなっちゃうよねー?」
「ぴよーー!」
「・・・何でお前らが俺に自慢するんだ。」
 えっへん、と胸を張って得意げなディスケとクー・シーと得意げに鳴くスハイルに、マルカブは抗議した。俺が自慢するならともかく、と口には出さなかったが思っている時点でどうしようもなく親バカだった。
「・・・あ!アヴィー!夕日も描こう!」
 カリーナが西の空を指しながらスケッチブックを抱えた。うん!とアヴィーは色鉛筆を持って西側の甲板に移動する。
 上手く描けるかなー、喜んでくれるかなー、と言いながら、二人は甲板に座ってスケッチブックを広げる。スハイルがちょんちょんと甲板の上を飛び跳ねて二人の側に寄っていき、スケッチブックを覗くように首を伸ばした。
 仲良く並んだ二つの背中を見守りながら、
「・・・うちのガキどもにここまでさせておいて喜ばなかったら、俺はアミディスを蹴り飛ばすがな。」
 マルカブが一人呟き、それを聞いたディスケは大笑いしながら、
「今回は、俺も親バカなおとーさんに同意だ。」


 
(17章に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

16章は鋼4巻の展開を理想としてました。
今回のラストは鋼16話冒頭の汽車の中の会話がモデルだなんて、私とあなたの秘密です。

蟻の魔物に追われていた女性冒険者はリッキイです。
ここから、【血雨降りしきる揺監地】クエストに繋がって行くようですが、
このクエストは『ファクト』が解決するので、この話では書きません。
それだけで一冊の本が出来るぐらいのドラマが展開しそうなので、書きません。


このあとがきが次章の最大のネタバレなんじゃなかろうか、と思いつつ、次回は17章です。

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