まよらなブログ

17章3話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

『ゾディアック』は占星術師のことですが、
ウチのゾディアック・・・というか、うちのアーモロードにおける占星術は、
「占い」として使われていない設定であることに先日思い至りました。
占いというよりも膨大なデータバンクを持つ、観測を中心とした科学です。

星を観察し運行を詠み農耕や祭事に適切な時期のデータ化、そのデータと個々の星の動き及び発せられるエーテルの相関から天と地の関係性を把握しすることによる世界の成り立ちの研究、宇宙の様子を地上で縮図として再現し人為的に事象を起こすことで「類似」の呪詛の近いものとして縮図の中で起きた出来事を宇宙でも起こすことが出来ると考えたうんたらかんたら・・・となるとだんだん錬金術にも近くなっていくし「類似」の呪いの作用を引っ張ってくる時点でもうオカルト臭い感じですが、
まあ、科学なんです。人の運勢は占わないよ!!

なお、うちの黒ゾディは上に書いたような学問としての占星術を
まだよく分かってないので、ただの星好きの少年だと思って書いてます。


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


17章3話
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 アミディスの葬式から、3日ほどが過ぎた。
 エラキスはきょろきょろと周囲を見回しながら、深都からの樹海入り口付近までやってきた。白い砂に埋まる建造物の向こうで、鋭く短い息遣いがする。
 エラキスは足音を隠すことなく建造物を乗り越えた。その向こうには、ツィーが一人で形稽古をしている。正拳が真っ直ぐに宙を突き、蹴りがぐるりと宙を薙ぐ。綺麗な動きにエラキスは感心しながら、建造物の上に腰掛けた。
 蹴り上げた足を下ろし、ツィーは深い息をつく。誰もいない向こうに向かって、両手を合わせて一礼をした。顔をあげたツィーは、顎まで伝い落ちてきた汗を手の甲で拭いながら、
「何かご用でしょうか?エラキスさん。」
「御用って、随分ねえ。いきなりいなくなったら心配するでしょう?」
「申し訳ありません。」
「せめて出掛けることぐらい言ってちょうだいね。」
 エラキスはそう言い、持ってきた手提げ袋から水筒を取り出してツィーを手招きした。用意がいいことだ、と思いながら、ツィーは歩み寄る。コップに注がれたものは冷えたお茶だった。差し出されたコップからは、微かにジャスミンの匂いがする。
 わざわざツィーの好きな茶をいれてきたのだろう。ツィーは、いただきます、と礼をしてからコップを受け取り、茶を口に含んだ。彼女が一息ついてから、エラキスは自分の隣に座るように言った。
「ツィーはまどろっこしいの好きじゃないだろうから、」
 彼女が座ると、エラキスは口を開いた。
「ストレートに言うわね。シェリアクは、そろそろ探索を再開するつもり。」
「はい。」
「彼は、今回の件で責任を感じている。だから、深王のミッションを受けるつもりでいる。本当は、女王蟻退治に向かいたいようだけど、今の私たちにはまだ難しいって判断している。」
「はい。」
「そして、私たちにはあなたの力が必要。私の言いたいこと、分かる?」
「いつまでも落ち込んでいるな、ということでしょうか。」
「まあ、そこまで言うつもりはないんだけど、そういうことになってしまうわよね。」
「大丈夫です、エラキスさん。」
 ツィーはぐっとコップを掴んだ。
「私は大丈夫です。もう二度と、誰のことも死なせません。」
 落ち込んでいる場合ではありません、とツィーは呟いた。エラキスは溜め息をついた。
「【サブクラス】、」
「?」
「私ね、気功師の技を覚えようと思って、クーおじいさんに教えてほしいってお願いしてきた。」
 シェリアクも了解してる、とエラキスは言い、ツィーは瞬きながら俯いた。
「・・・シェリアクさんとエラキスさんの判断は当然です。私の治療の技は未熟ですし、速さも足りない。」
「・・・んんー・・・、むしろツィーの拳に私たちが頼っているのよね。あなたが回復に回ることで、貴重な攻撃の手が減ってしまう。」
「・・・、エラキスさん。」
「なあに?」
「それは、ただの理由ではないでしょうか。」
「ただの理由って変な言い回しね。」
 エラキスはおかしそうに笑い、それから感心した様子でツィーを見た。いつも見ているツィーを、頭からつま先まで一通り見てから、
「ツィーは賢いから誤魔化されないとは思っていたけど。そうね、それは『ただの理由』よね。それも一理あるんだけど、本当に『ただの理由』でしかないわ。」
 エラキスは脚を組み、その膝の上に頬杖を付いた。
「じゃあ、私の真意を伝えましょうか。誰かが傷ついたとしても、私はそれをあなた一人に背負わせるつもりなんかないのよ。」
「・・・ですから、私が努力すればいいだけです。傷を癒し、誰も死なせないように。」
「・・・覚悟は重要、でもそんなのはただの理想。」
 エラキスの囁くような声に、ツィーは顔を上げた。怒りも滲ませるツィーの目に、エラキスは頷いた。
「怒れるのね、ツィー。あなたは淡々としてるから、もしかしたら我慢してるんじゃないかと思ってたけど、そうでないなら安心したわ。」
「怒ります、いくらエラキスさんでも。人は確かに死にますが、その突然さを延ばすための治療です。それは理想と呼ぶには・・・」
「あまりにも泥臭いわ。」
 エラキスはそう言い切った。しかしツィーはそれには怒りを向けなかった。治療というものはそういうものだ。神の手を持つ医師であっても、痕も残さぬ鮮やかな処置であっても、吐きそうになる責任と這いつくばるような労力の末に患者を生かす。命を投げ出さない、ということは、尊くも泥臭いことなのだ。
 しかし、だからこそ。理想と呼ぶには泥臭い『理想』を、ただの理想だ、と切って捨てられたくはない。泥の中で、それでもそれでも、と掴み続けるものなのだから。
「・・・『覚悟は重要、でもそんなのはただの理想。・・・それでも理想を追う覚悟はあるのか?』」
 もう一度、エラキスは繰り返し、そして付け足した。
「そう、クーおじいさんに聞かれたわ。」
「・・・爺様の言葉ですか。」
「あなたのおじいさん、ホントはすごく真面目な人よね。」
 エラキスは苦笑し、それから真面目な顔で、
「怒られるのを覚悟で言うわ、ツィー。私は気功師じゃない。もちろん、誰かを救えたらうれしいと思うけど、私はその理想に情熱は向けられない。」
「・・・でしたら、爺様はきっと治療の技を教えはしないでしょう。」
「ええ。でもね、私はあなたを独りにしないことには、情熱も覚悟も持てる。」
 ツィーが視線を上げた。エラキスはそのツィーの頬を両手で包む。
「そう言ったら、あなたのおじいさん、笑って了承したわ。ツィーをお願いしますって。」
「・・・・・・・・・そんな理由で?」
「そんな理由なんて、怒るわよ。私も、クーおじいさんも。」
 エラキスはそう言って、ツィーの頬をくるくると円を描くように揺すった。
「同じことをすれば苦しみが分かる訳じゃないけど、あなたの背負う分は少しは軽くなるでしょう。おまけに戦略的にも悪くはないわ。一石二鳥だとは思うけど。」
 エラキスはそれから少し考えて、
「・・・同じものを見てる人がいるのはすごく幸せなことなんだって、私、確かに誰かに言われた気がするんだけど、あれは誰だったのかしら。その時の私は分かってなかったから、一人で記憶を無くしたんだろうけど。」
 少しだけ寂しそうに微笑んでから、エラキスはツィーを見つめ、
「でも、今ならその言葉の意味も分かるのよ。なら、私が記憶を無くしたことも必要だったことなのでしょう。」
 だったら私を襲った災難にも感謝もしないとね、とエラキスは笑みを苦笑に変えた。
「私たちの誰も死なせない。その理想が永遠に叶うように、私も一緒に頑張らせてちょうだいよ。」
 ね?と問いかけるエラキスの声は優しいので、ツィーは自分の頬を包む彼女の手に己の手を重ねた。そして震える声で聞く。
「・・・・・・・・・、甘えても、いいのでしょうか?」
「嬉しいわ。」
 返事に、ツィーはエラキスに手を伸ばして、彼女にしがみつくように抱きついた。エラキスはよしよし、とその背中を撫でてやりながら、もしこの子がこれで少しでも救われたとしたら、
 本当に記憶を無くしたことは無駄ではなかったと思うのだ。


*****

「・・・、何か用かね?」
 クー・シーは二階層から深都に向かうまでの道で、蒼い木々の間に問いかけた。
「さっきから、こそこそとなんだね。わしはこれから、美人に気功術を教えるんだ。男に構ってるほど暇じゃないんだよ。」
 音もなく蒼い木々の間から、覆面の男が姿を表した。リョウガンだ。クー・シーはわざとらしく息を吐き、
「姫の護衛についているそうだが、まあ、よく気配を消しているもんだね。」
「・・・あの重騎士と彼の近くにいる少女には気づかれているようだが。」
「シェリアク殿とミラちゃんのことかね。シェリアク殿は相当の手練だし、ミラちゃんは気配にものすごく敏感だからね。」
 うちの連中は誰も気が付いていないけれど、とクー・シーは肩を竦めた。
「わしにも分かる程度に痕跡を残したということは、何か用があるのだろう?」
 クー・シーの質問に、リョウガンは頷いた。
「いくつか気になる話を聞いた。ひとまず、貴方と赤毛の男に伝えておきたい。」
「それはかまわないけど、」
 クー・シーは苦笑を浮かべた。
「お前は姫を傷つけたんだから、うちのおとーさんに殴られるのを覚悟しておきなよ?」


*****


 その頃、【恒星邸】の一室では
「『ファクト』は深王からの依頼を受けるとさ。」
「んー・・・やっぱ、そうなるよなあ。」
 マルカブからの情報に、ディスケは頭を掻いた。マルカブはディスケが座るテーブルにウィスキーの瓶とショットグラスを置き、彼の向かいに座る。
「・・・シェリアクは、」
「分かってる。アミディスのこと、責任感じてるんだろ。『ファクト』は深王からの依頼で9階を探索してた。深都兵を失ったことを自分たちの責任だって思うよな。シェリアクもツィーちゃんも、それで、はいサヨナラっては出来ないよ。」
 ディスケの言葉を聞きながら、マルカブはグラスに酒を注いだ。献杯をすべきだろうか、と考えているうちに、ディスケがグラスを持ち目を閉じて「献杯。」と言った。マルカブはそれに習った。
 グラスの中身を一気に煽り、ディスケは軽くむせた。マルカブは何も言わず、空になったグラスに酒を注いだ。ディスケは眼鏡の奥の瞼を拭いつつ、問いかけた。
「・・・、なあ、おとーさん。わがままを言ってもいい?」
「そのわがままで困るのが、俺とクー爺だけなら聞いてやる。」
「おとーさんってばホント甘やかし上手ー。」
 ディスケは笑い、それから、やれやれと溜め息をついた。グラスを持ち上げて、しかしそれを口には運ばずに、視線を落とす。
「・・・ごめん。俺、深王には協力できない。」
「おう。」
「でも、樹海から逃げる気はない。」
「おう。」
「世界平和とかよく分かんないけど、【魔】が倒されたら家に遊びに来いよって、誘ったのは俺だからさ、」
「ああ。」
「・・・【魔】を倒すために、俺が戦わなきゃいけないんだろう。」
「・・・ああ。」
「だから、樹海を進むためには海都に協力するしかない。・・・それを、許してほしいんだ。」
「・・・。」
 マルカブは酒を一口含んで、安物だな、と呟いた。ディスケは少し苦笑したが、何も答えなかった。ただ待つ。返事を。
 マルカブは腕を組んで、
「・・・俺は、海都の元老院だって深王とそんなに変わらない気はするんだ。」
「うん。そうかもな。」
「・・・冒険者やめて、ガキどもと楽しく暮らしたいって言うのは俺だけのわがままか?」
「健全な願いだと思う。」
 ディスケははっきりとそう答えた。その続きを口にするのは、少し覚悟がいることだった。だが、ディスケは口にした。冒険者を辞めて暮らしていた方が幸せだろうし、向かいに座る男は子どもたちを守る事を使命のように思っていることも知っている。
「だったら、マルカブ。・・・・・・ここで『アルゴー』を、」
「解散にはしないぞ。」
 先回りをされて答えられた。マルカブは溜め息を吐くのが聞こえた。マルカブのグラスの中身がほとんど減っていないことに、ディスケは気がついた。酒に弱いわけでもないのに。
「ここで放り出せるような奴は、うちのギルドにはいない。」
「放り出させるのも、おとーさんの仕事だろうよ。」
「『アルゴー』が解散したら、お前が単独で樹海を進むってことは、みんな分かってる。そんな無茶は誰も許さないし、ガキどもはこっそりお前を追っていくだろうな。それこそ危険だ。アヴィーやカリーナが危険な目に合いそうなことを言うんじゃねえよ。危険な目に合うのなら、俺の目の届くところで合わせろ。それならフォローも出来るんだ。」
「・・・結局おとーさんはお子ちゃまたちが無事ならいいんだー。俺のことなんかどうでもいいんだーーー。」
「拗ねるな、気色悪い。お前はガキじゃないんだから、うちのガキどもほど心配はしてない。ただ、お前はうちのギルドの一員なんだから、」
 マルカブは、うんざりとした溜め息をついた。これを口にすることこそ気色悪い、と思ったのだ。ただ、伝えずにディスケがどこかに行くのなら、それこそ寝覚めが悪い。
「・・・俺はお前のことも放り出す気はねえぞ。」
 ディスケは苦笑した。マルカブはこうして貧乏くじを引いていくのだろうな、と思った。けれど、誰のことも独りにさせないギルマスを仲間たちは愛していたので、貧乏くじを引き続けてほしいとも思う。
「もー、おとーさん大好きー。」
「気色悪い。」
 マルカブは唇を尖らせて呟いてから、一度息を深く吸った。
「クー爺は海都に協力する方が、剣と茨の紋の国にとって得だって考えてた。」
「そうだったなー。」
「・・・国の損得なんてどうでもいいんだけどな、俺としては。」
 取って付けたように聞こえて、ディスケはマルカブの表情を伺った。マルカブは眉を寄せてグラスの縁を眺めている。何を思っているか今一つ判断が付かない表情だった。
 マルカブはディスケの視線には気が付かないままで続けた。
「アヴィーはとっくに先に進むと決めている。でも、誰が死んでも傷ついても、アヴィーは傷つく。そんなアヴィーを、フカビトとの戦いを続ける深都に置いておきたくもない。」
 だから海都に協力してた方が安心なんだよ、とマルカブは呟いた。マルカブが敢えてカリーナのことを話題に出さないで、結論を述べていることにディスケは違和感を感じた。触れていいことだろうか、と思いながらも尋ねた。
「・・・じゃあ、カリーナは?」
 マルカブは、ちらりとディスケを見て、それからやっとグラスを空けた。とん、と空のグラスをテーブルに置く。答えないかもな、とディスケは予感したが、それに反してマルカブは答えた。
「・・・俺は、カリーナを深王に会わせたくない。海都の姫にも会わせたくないが、・・・まあ、マシかなって思ってる。」
「どうして?」
「・・・分かんねえよ、勘だ。」
 ――、いいや、分かってるよ。深王と会わせることで、カリーナは己は『王』としてどうなのか、必ず振り返るからだよ。そして、あの子が『王』であることを選んで、俺たちから飛び去っていくことが不安なんだよ。
 ・・・と、ディスケは心の中だけで反論したが、口には出さなかった。口にすれば、実際に起きてしまいそうに思えた。ディスケだって、カリーナがなりたくもない王になるのは賛成できないし、王妹だからという理由で困難を押しつけられることは納得できない。ただ彼は、カリーナが王族として生まれた責務を背負うだろうという予感を自分が抱いていることを認めていた。予感しつつも否定しているマルカブとは、その点で異なっていた。
 マルカブは己に湧いた予感を振り払うように、結論づけた。
「だから、俺も海都に協力した方がマシかな、と思っている。」
 ディスケは、そう、とだけ答える。沈黙が降りたが、その沈黙を慌てて破るほど浅い関係でもなかった。だが、沈黙が自然に解消するようにも思えないでいた。
 その沈黙を破る出来事は、廊下からした。ノックがされて、「ちょっといいかね?」とクー・シーが扉を開けた。二人はそれはもう嫌そうな顔でクー・シーを見つめた。クー・シーはわざとらしく頬を膨らませた。
「何だね?その顔。」
「・・・爺さんが、ノックするなんて・・・」
「・・心の準備が必要なことをするつもりだろ・・・」
 二人の言い分に、クー・シーは笑い、頷いた。
「応とも。おじいちゃんの行動パターンをよく分かっていてくれて嬉しいよ。」
 


(17章4話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

またしても、最大文字数を更新した。

前半のようなやり取りがあり、
うちのパイ姐のサブスキルはフルヒーリング一点張りのモンクです。

17章は、「あもーれ」とか「えろす」ではない、
「あがぺー」とか「ぶらざーふっど」とかの方向の
「愛」について書きたいと思ってました。
あれもラブこれもラブ、志水は「愛の並卵味噌汁」希望です。(PSソフト「moon」より)

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