まよらなブログ

17章5話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

17章は救いの無い話にしてやろうか、
と思っていたのにも関わらず、全く暗くならずに終わりそうです。
文章にしてないところで落ち込んだりしてると思います。(逃げた)
っていうか、落ち込みの揺れ動きってあると思うんだよね。
落ち込んだり、いやこんなんじゃダメだって奮い立ったり、振り子みたいに。
折角連載なんだから、「立ち直ったと思ってたのに何で今になって悲しくなるのか」
っていう、もう一回くる大きな落ち込みとか、そういうのを書きたい・・・
・・・・・・と思うんですが、「話が進まねえよ!!」の一言で書かなかったりするんです。




それはともかく、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


17章5話
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「どこに行ってたの!?僕、心配してたんだよ!」
 【瞬く恒星邸】に男連中が帰ってくるなり、アヴィーがぷんぷんしながら出迎えた。
「ちゃんと行き先を言ってから出かけてよう!」
「・・・口の周りにパイの食べカスをつけたままで何言ってるんだ、お前は。」
「ホントだー、可愛いなーアヴィーはー。」
「ホント可愛いねー。」
「僕は可愛くないッ!!!」
 いつもの調子でアヴィーは臍を曲げ、口の周りのパイ生地のカスを払ってから、
「心配して損した!マリアさんのキッシュ、折角残しておいたけど全部食べちゃうもん!」
 そう言って部屋に向かいかけ、一度振り返ってから「ホントに食べちゃうからね!」ともう一度宣言して、走っていく。
「・・・アヴィーは、自分のどこが可愛いのか、自覚した方がいいと思う。」
 一緒に出迎えたカリーナが、アヴィーを見送りながらつぶやいた。カリーナの頭の上のスハイルが「ぴよー!」と同意した・・・ようだった。
 カリーナはクー・シーに向き直り、
「クー・シー。エラキスさんが待ってるよ。気功術を教えるって約束したんでしょう?」
「おお!そうでしたそうでした!なにせ美人とマンツーマン!張り切って教えますよ!気功術以外も勿論!むしろ気功術以外を教えたい!」
「うん、だからツィーもエラキスさんと一緒にクー・シーの授業にでるって。」
 カリーナのさらっとした一言に、クー・シーはわざとらしく肩を落とし、「我が孫娘ながら気が利かない。」と呟いた。爺さんの孫娘だからだろうよー、とディスケが笑ってつっこんだ。
 カリーナは、仲間たちと一緒に帰ってきたシェリアクに向かって、
「シェリアクさん。ミラとミモザが探してました。アヴィーと同じくらい心配してたみたいです。二人とも部屋にいるから帰ってきたって伝えてあげてください。」
「ああ、ありがとう。早速、向かうとしよう。」
「あ、シェリアクさんの分のキッシュをミモザが持っていったんで、よかったらどうぞ。・・・ツィーが食べてなければ、あるはずです。」
 シェリアクは苦笑して頷いた。
「いただこう。クー・シー殿、気功術の件、よろしくお願いする。」
「勿論!じゃあ、わしもエラキスさんとツィーを呼びにいこうかねー!」
 シェリアクとクー・シーが部屋に向かって階段を上がっていき、マルカブがクー・シーに向かって「あんまりはしゃぐんじゃねえぞ。」と声をかけた。(が、聞いていない様子だった。)カリーナは二人が階段を上りきったのを見てから、
「ねえ。マルカブ、ディスケ。」
 腰に手を当てて、二人の男の前に仁王立ちになった。カリーナの頭の上ではスハイルが毛を膨らませて、体を大きく見せた。
「どこに行ってたの?」
 必要以上に怒っている様を出そうとしているカリーナと、カリーナに同調して意味もなく威嚇のポーズをとっているスハイルに、ディスケは吹き出しそうになりながら、
「夜遊びが娘にバレたらこんな感じなのかね?どう思うよ、おとーさん?」
「そうか?俺はむしろ、昔の彼女に二股がバレたときのことを思い出したぞ。」
「おとーさんたらー、昔の女の話を娘の前でしちゃダメだろーよー。しかも二股って、おとーさんってば浮気者なんだからー。」
「ふざけないのッ!!」
「ぴよッ!!」
 男二人の軽口(そのうち猥談になっていきそうな気配もある)を、カリーナは一喝した。頭の上のスハイルも一緒になって一喝した。ディスケは耐えきれずに吹き出し、マルカブは思わず頬を緩めてしまい、
「笑わないッ!!」
「ぴよッ!!」
 と、さらに一喝された。結果、男二人は腹を抱えて笑いだした。
「なんで笑うの!?」
「だ、だって!可愛いすぎる、だろーよー・・・!!スハイルまで・・・!」
「・・・ア、アヴィーがいなくてよかった・・・!二人と一匹で、それをされたら、俺、立ってられねえ・・・!」
「わ、私はまじめな話がしたいの!スハイルだって、みんなのこと待ってたんだから・・・!」
 カリーナはスハイルを頭の上から下ろして、抱きかかえた。スハイルはキョロキョロと三人を見回した後、「ぴよー・・・」とか細い声を上げて大人しくなった。カリーナが真っ赤になりつつも必死に見上げてくる様に、ちょっと悪いことをしたな、と反省したマルカブは少し身を屈めてカリーナと視線を合わせた。
「・・・ちょっと、海都にな。」
「・・・なんで?」
「・・・海を見ながら今後のことを考えてた。」
 まあ、嘘は言ってない。カリーナはディスケを見た。ディスケは肩を竦め、
「ママさんの胸元を見ながら、酒を飲んで考えるよりはマシじゃね?」
 とかそんなことを言う。カリーナは眉を寄せたが、嘘はつかれていないとは判断したようだ。
「シェリアクさんも一緒に?」
「まあ、全く無関係ってわけにはいかないだろうから。」
「・・・それで、どうするか決まったの?」
「ああ、そのこともな、お前たちに話さないと。」
「・・・じゃあ、部屋に行こう。アヴィーにも話さないと。アヴィーは、みんなに早くキッシュを食べてほしいから、自分が全部食べちゃうって言ったんだよ。だから、部屋に行こう。」
 マルカブはカリーナの頭を撫でながら、そうだな、と答えた。カリーナの腕の中から身を乗り出してくるスハイルの頭も撫でながら、
「そうだな、そうしよう。マリアさんの料理はうまいしな。」
「うん。美味しかった。エラキスさんたちも喜んでくれた。」
「・・・ツィーは元気になったのか?」
「うん。ちょっとは元気になったみたい。キッシュは一人で6切れ食べてたよ。」
「それ、ほとんどワンホールじゃねえの?」
 とディスケが苦笑した。シェリアクの分が残ってればいいけどな、とマルカブも苦笑した。

*****

 リョウガンが裏で情報収集していることは明らかにはしないで、『アルゴー』は海都に協力して迷宮を進むこと、『ファクト』は深都に協力して迷宮を進むことを子どもたちに告げると、アヴィーもカリーナも頷いた。
「・・・正直な話、どっちの都のことも俺は信用してない。ただ、迷宮を進むためには、どちらかに協力するという形をとっておいた方が身の安全は保証される・・・と思う。少なくとも、一つの都を敵に回すだけで済むんだからな。」
 マルカブの言葉にカリーナは頷き、アヴィーは少し考えた。
「本当は、あんまりこういう形はとりたくないんだ。協力する以上、信頼したいし・・・お前等に、疑いながら人と付き合うところは見せたくない。」
 続くマルカブの本音にカリーナが少し考えて、アヴィーは頷いた。ディスケは「本当におとーさんだなあ、もー。」と苦笑した。
 アヴィーが、ねえ、と声を出した。
「マルカブ。でも、『ファクト』には協力するんでしょう?」
「ああ。冒険者が樹海で助け合うのは別に珍しいことじゃねえし。そこは海都にも深都にも文句は言わせねえよ。」
 返事にアヴィーはにこりと笑った。
「あのね、僕、思うんだけど。深都に協力してる『ファクト』に協力するって、つまり深都に協力するってことだよね。・・・その、遠くから。だからね、僕たちは、どっちかの味方とかそういうんじゃないと思うんだよ。だからどっちに付くとかことじゃないし・・・、」
 アヴィーは少し言葉を区切って考えてから続けた。
「マルカブは、・・・ディスケもおじいちゃんも、海都と深都は仲良くしてほしいって思ってるでしょう?」
 マルカブは、ディスケにその質問に応じるように顎をしゃくって示した。ディスケは、何で俺なんだよーと言いながらも、意図も汲む。ディスケは海都の人間だったし、深都の人間であるアミディスと最も親しくなったのも彼だからだ。
「そうだなあ。そりゃあ、人類みな兄弟っていうし。仲良くしたくないって思うヤツっているのかなあ。」
 ディスケの返答に、アヴィーは「まじめに答えてよう。」と頬を膨らませた。その様はやはり愛らしかったのでもう少しからかってやろうかと思ったが、真面目な話の最中なのでやめておく。
「じゃあ、真面目に答えるぞ。俺は、『深都』ってものと仲良くしたいかって言われたらよく分かんないな。だって、『深都』ってものはただの町の形だ。俺が仲良くしたい相手は、そこに住んでいる一人一人で、これから生まれてくる一人一人だ。俺は、そこに住んでいる人たちとせめて仲良くやっていきたい。それはアミディスの代わりなのかもしれないが・・・、まあ、間違っちゃいないよなあ?」
 口調はいつもの調子で軽いのだが、内容は彼が思っていること全てだろう。ディスケの目に照れも誤魔化しも嘘もないのをアヴィーは見て取りながら、
「・・・・・・予想してたより、ずっと真面目に答えてくれた。」
 驚いて呟いた。アヴィーの反応にカリーナは思わずは吹き出して、マルカブは「信用ないな、ディスケ。」と茶化した。ディスケは苦笑して肩を竦めるだけだった。
 アヴィーは、驚いてごめんね、とディスケに伝えてから、真摯に答えられた言葉に真摯に答えることにする。
「あのね、僕も、アミディスさんの代わりなのかもしれないけど・・・僕は、深都の人と仲良くしたいし、みんなに幸せになってほしいって思ってるよ。それは、みんなもそうでしょう?たとえ信用できなくても、どっちの都の人にも幸せになってほしいって思ってるよね?表向きは海都に協力して、深都に協力してる『ファクト』に協力してたら、深都の人たちにも幸せになってほしいって言う気持ちに『ウソ』をついてないよ。」
 しばらく、ぽかんとアヴィー以外がアヴィーを見つめる。ディスケが感心したように唸ってから、
「・・・いい子だなあーアヴィーは。そう思わない?おとーさん。」
 涙ぐむ真似をして茶化す。が、マルカブは「今更、何言ってんだ。」と真顔で返してきた。アヴィーは、ディスケに「違うの?」と尋ねる。ディスケは笑って首を振った。
「いいや、お前の言ってることは当たりだよ。むしろ、正解はお前の言ったことだよ。俺らは難しく考えすぎてたかね、おとーさん?単純な話、どんな道筋を辿っても、最終的に海都と深都の人間と俺ら自身が、幸せになれればそれでいいんだよな。だって、海都と深都が仲良くやってたら、俺、いろんな意味で幸せじゃん?」
「シンプルでいいけどな。まあ、まずは自分たちの幸せだよ。」
 全員が幸せにって言うのは難しいだろうから、とはマルカブは口にしなかった。そんな「絶対にありえない」と分かっていることをイチイチ口に出さない程度には、彼も大人だった。そもそも大前提は、『自分たち』が幸せになることだ。ディスケの曾々祖父やアミディスが甘受できなかった類の幸せを、一人でも多くの人が受けるところが見られたら自分たちは幸せだし、アミディスに対して抱いた後悔をせめて解消できれば多少は幸せなのだ。全員も何もない。自分たちが『幸せ』だと思う方向が間違ってなければ、それは誰かに対して波及もする。
「・・・・・・」
 カリーナがじっと考え込んでいた。彼女の膝の上のスハイルも一緒になって目をつぶっているが、別に何も考えてはいない様子だった。
「どうした、カリーナ。」
「あ、あのね。自分たちが幸せで、他の人も幸せなのってすごいなって。」
「?」
「ええっと、私たちのしたいことをして・・・えっと、ちょっと違うかな・・・。私達が『これでいい』って思うことをして、それで他人も幸せになるんでしょう?それってすごいよね。だって、人を幸せにしようと思ってるだけじゃ自己犠牲だけど、そうじゃないんだもの。みんな少しずつ幸せになれる方法だと思う。」
 カリーナは一生懸命に自分の感動を伝えようとするが、言葉が追いついていかないようだった。目は生き生きとしているのだが、えっとうーんと、と繰り返して言葉をつむぐ。ただ、カリーナの言い分はやっぱり優しい子どものものなので、マルカブは、そうだな、と言いながら頭を撫でてやった。


*****


 その翌日。
 ツィーとマルカブはばったり廊下で出くわした。
「おはようございます、マルカブさん。」
「おう、おはよう。」
 普段ならそれだけで通り過ぎるのだが、マルカブは足を止めて話を続けた。
「・・・お前、キッシュを6切れ食べたんだって?シェリアクの分まで食わなかっただろうな?」
「ええ。シェリアクさんにも食べてほしかったので我慢しました。美味しかったです。」
「そうか。・・・・・・まあ、食欲があって何よりだよ。」
「ご心配をおかけしました。」
 ツィーは両手を合わせながら、深々と礼をした。彼女の祖父が心からの感謝を示すときに同じ姿勢をすることを知っているマルカブは頭を掻いた。ツィーは、マルカブが心配をして話かけたところまで、すっかり分かっているのだろう。だから、聞きたいことをストレートに聞くことにした。
「・・・あー・・・、元気になってきたか?」
「はい。皆さまのお気遣いのおかげです。」
「何もしてないけどな。カリーナはともかく、俺たちは。」
「ですが、心配してくださいました。」
「・・・その大人な思考をクー爺にも分けてやってくれよ。」
「それは無理です。」
「即答なのか。」
 マルカブは頭を押さえ、それから思い出したように、
「そういや、クー爺がエラキスに気功術を教えるって言ってたけど・・・、お前はそれを納得してるのか?」
「・・・・・・。」
 ツィーが驚きを隠さずにマルカブを見上げるので、マルカブは怪訝そうに聞き返した。
「何だよ。」
「マルカブさんは気遣い上手ですよね。」
「はあ?」
「いえ、独り言です。・・・エラキスさんから話を聞いた最初は、その・・・複雑でした。私の未熟さを責められているようにも感じて。」
 でも、とツィーは顔をあげた。笑みはないが、晴れやかに。まるで自慢げに。
「エラキスさんは、私の責任を少し背負ってくださると仰ってくれました。」
「・・・そうか。」
 マルカブの方が笑みを浮かべた。
「それなら良かったよ。一人で背負い込んでないなら構わない。それに、人間誰だって、自分と同じものを見ようとしてる他人がいるだけで十分幸せなんだしな。」
 その一言に、ツィーは数回瞬いた。つい昨日、同じようなことをエラキスに言われた気がするのだが。確か、エラキスも「誰かに言われた気がする。」と言っていた。そして今、目の前の男が同じようなことを言っている。
 じゃあ、つまり、そもそも誰が言ったのか。推測できることはただ一つ。記憶を失ったエラキスがうっすら覚えているほどの言葉を言ったのは誰か。それだけの影響力を未だに彼女に与えている存在は誰か。導き出される答えは一つだ。
「・・・あ・・・、あなたですかあああああ!?」
 なんだか無性に腹立たしくなったツィーは、とりあえずマルカブの腹筋に拳を叩き込んだ。ぐふっという鈍い声は聞き流して喚く。
「何なんですかマルカブさんは。姫様といいエラキスさんといい、どこまで女心を揺らすんですか?天然タラシですか?そんな髭を生やしておいて!」
「・・・ちょ・・・ちょっと、待て・・・!!何の話・・・だ・・・ッ!?」
 マルカブは腹を押さえてうずくまり、息も絶え絶えに抗議したが、
「マルカブさんは姫様の幸せだけ考えてればいいんです。エラキスさんのことは私たちとシェリアクさんが幸せにしますから。」
「だから、何の、話・・・!?」
「エラキスさんのことは私たちとシェリアクさんが。シェリアクさんが!幸せにしますから!!」
「何で繰り返した・・・!?」
 地味に傷つく、とはさすがに口にしなかったが、ツィーは「覚えておいてくださいね!」と言い捨てて、たーっと廊下を駆けていった。訳が分からない、とマルカブはぼやいていると、
「どうしたの?マルカブ?お腹痛いの?」
 アヴィーがそんなマルカブを見つけて駆け寄ってきて、背中をさすったりしてくれるので、
 ・・・ああ、もういいや。どうでも。うちのガキはいい子で幸せだし。
 と、親バカなことを思うのだ。

 
(18章に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

やっと、うちの赤パイを殴ってやったぞーーーーー!!!(ガッツポーズとともに)


「幸福論」は、おこちゃまーずの今後に関わることでして、ちょっと出してみました。
すべてが大団円に終わる結末は用意できないのですが、
すべてが大団円に終わるために各キャラが善処することこそ大団円だと思うので、
この話の行く先は絶対に揺るがない大団円です。

あ、次回は一回番外編を挟みます。
その頃のハイラガ(世界樹2)の話です。

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