まよらなブログ

番外編・5

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話・・・ですが、
今日は、番外編となります。

世界樹2の舞台「ハイ・ラガード」の迷宮を踏破したギルド『ヴラスティシ』の
メンバーであるブシドーとカースメーカー、
それと彼らの知り合いで昔はブシドー、今はショーグン(世界樹3)の「そのころ」の話です。

志水の設定では、ハイラガの樹海でシナリオのラスボスが倒されたのは10年前です。
これからゲームやる方がいたらネタバレになるので、ゲームで起きたことについては詳しく書きませんが、
なんかウッカリ壮大なネタバレをしでかしているような気がします。
まあ、詳細を知りたい方は、世界樹Wikiのテキスト集を読んでください。(超不親切仕様)
もしくは「世界樹の迷宮Ⅱ」をお買い求めください。
中古よりベスト版をおススメします、バグ修正されてるから。




では興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


番外編 「その頃のハイラガ」
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 雪深いハイ・ラガードの春は遅い。だからこそ、この地の人たちは春を心待ちにする。
 世界樹を抱くハイ・ラガードの町から、少し離れたところにある小さな集落でも、それは変わらない。屋根から雪が滑り落ちるバサリという音や水滴の小さな連続した音・・・春の近づく音に、住民は少しずつ浮き足だしている。
 その集落の中に、広い庭と母屋とは別に広い平屋の建物を持つ屋敷があった。その屋敷の庭で、栗色の髪を短く切りそろえた10歳頃の少女はフキノトウを見つけた。庭の片隅の白い雪が凹んだ場所に、黄緑が空から落ちてきたかのように在る。彼女はしゃがんだままで背後の屋敷・・・――この地方では珍しく茅葺きの屋根と木材で出来た異国情緒溢れた屋敷だ――・・・に振り返り、舌っ足らずだが大声で屋敷の主を呼ぶ。少女の左頬には渦巻くような入れ墨が入っている。
「ノヴェンー!ノヴェンーー!!ふきのとうーー!!」
 屋敷の主は庭に面した板張りの細長いテラス・・・、――家主が言うには『エンガワ』という場所だ――で、少女と庭を見守っていた。少女に呼ばれて、そうか、と笑い、
「もうすぐ春だ。」
「てんぷらーおひたしー、ふきのとうー」
「・・・そっちか。」
「でも、トゥオネラ、ニガいのヤー。」
「食べられないのに、なんで料理を連想したんだ。」
 呆れた様子で家主・・・ノヴェンと呼ばれた男は呟き、トゥオネラと自らを呼んだ少女は水っぽくなった雪を踏みながらノヴェンの元まで帰ってきた。
「ノヴェン、ふきのとう、とらないで。」
「どうして?」
「うー、これから、伸びる。」
 芽を摘むな、ということか。ノヴェンはすぐに理解して、わかったよ、と答えた。トゥオネラは頷いた後に、
「・・・うー、うー・・・、だれか、くる。春になったら、道場にくる。でも、その人、ほんとは来たくない。・・・・・・でも、怒らないで。」
 唸り声を上げつつ、一生懸命に説明しようとする。意味は分からないが、意味があることだ、ということもすぐに分かった。少女には予言の力があった。残念なことに彼女にはその予言したものを伝えられるだけの言語能力がない上に、所構わず予言が降りてくるため、「脈絡がないことを言う」と思われている。ただ、ノヴェンはもう10年以上、少女と共にいる。彼女が意味不明なことを言ったときこそ、襟を正さなければならないことを知っている。
「・・・そうか。分かった。気をつける。教えてくれてありがとうな。」
「うー!」
 少女は唸るようにして喜んだ。それから上機嫌のままで、
「ノヴェン、サツキがくる!」
「うん?」
 聞き返したのと同時に、玄関から「ごめんください。」という声がした。

*****

 ノヴェンはハイ・ラガードの【世界樹の迷宮】を踏破したギルド『ヴラスティシ』の一人だ。ブシドーとして国一番の剣の腕を持つとまで言われている。本人は否定しているし、公国で行われた試合で優勝したことはない。しかし、上帝との戦いで右腕の腱を絶たれ、三十路から左腕一本での剣技を磨いて公国屈指の剣士でい続けるのだ。その精神の持ち方が既に国一番の剣士ではないか。
 (・・・・・・、と思うんだけどなあ・・・)
 と、板張りの床に正座して、鎧甲冑姿の娘は口をへの字にまげる。公国一と名高い剣士は、向かいに座ってため息をついた。二人がいる場所は道場だ。屋敷にある母屋とは別の建物は、剣術道場だった。面会するのは不適当と思われる場所だが、客人である娘がこの場所を望んだ。その客人にとって、ここは人生が始まった場所なのだ。
「・・・お前が、俺を気にしてくれるのは嬉しいよ。けど、俺は今の生活で満足してるし、門下生もいるんだ。放っておけないだろ。」
「ですが、師匠様。」
「士官する気はない。・・・ああ、別にお前の生き方を否定する気はない。やり甲斐はあるんだろ?」
「・・・ええ、まあ、お仕えしてる方は立派な方ですので。」
「それは何よりだ。そして、俺もここで弟子に剣技を教えることに生き甲斐を感じてる。何よりだな?」
「・・・師匠様ほどの腕がありながら田舎の剣術道場の先生なんて。」
「・・・サツキ。」
 名を呼ばれて娘は顔を上げた。師は左手で右手をさすりながら(大きな傷のあるあたりだ)、静かに続ける。怒らせてしまった、とサツキと呼ばれた娘はうなだれた。
「その田舎の剣術道場やってたからお前みたいな弟子にも会えたんだろうが。それを馬鹿にするような物言いをするな。」
「・・・ごめんなさい。」
 サツキは素直に謝罪した。師匠が田舎の剣術道場の主に甘んじてくれたおかげで、今の自分がいるのは事実だった。師匠は一度息を吐き、軽く咳払いをしてから、
「まあ、・・・何年前だ?5年前か?刀はしっかり抱きながらサラシだけ巻いた姿で家の前に倒れてた娘が、ずいぶん立派になったもんだ。今や士官して、【ショーグン】様か。」
 口は悪いが、感慨深げにノヴェンは言う。その間に口調はずっと穏やかになる。
「弟子の栄誉は師匠の名誉だ。これ以上、何を求めることがある。」
 極めつけの穏やかさと誇らしさで告げられた言葉に、サツキは膝に乗せていた手をぐっと握りしめ、
「・・・・・・、」
「泣くな泣くな。困る。」
 泣いていいぞ、と言ってるようにも聞こえる声で師匠はそう言った。ずずず、とサツキは鼻をすすり、目の前の茶を一気に煽り、それから師をきっと睨むように見つめた。ノヴェンは笑った。それでこそだ、と笑った。
「・・・・・・ノヴェンー・・・サツキー・・・」
 道場の入り口から不安そうな声がした。トゥオネラが中を覗くようにして様子を窺っている。ノヴェンが手招きすると、トゥオネラはたたた、と駆けてきて、ノヴェンの隣にちょこん、と座った。そして前にある茶菓子を見つめてからノヴェンを見上げる。食っていいぞ、と言われると彼女は茶菓子を手にとし、ぱくっと口に頬張った。
 サツキは少女に「美味しい?」と聞くと、少女は笑顔で頷いた。笑顔を返すサツキだが、違和感はぬぐい去れない。トゥオネラは5年前もこの姿だった。ノヴェンが出会った10年近く前から、10歳程度の容姿は変わらないらしい。そのことについて、トゥオネラは何も知らないようだし、ノヴェンは何も言わない。ラガード公国の世界樹の先、天空の城の御業によるもの、というのが門下生たちの噂だった。
 そしてこの年をとらない少女の存在も、サツキの訪問の理由だった。
「・・・トゥオネラ。」
 サツキが声をかけると、トゥオネラは頬袋を膨らませたリスのような顔をあげた。
「あの、お菓子を食べ終わってからでいいんだけど・・・師匠様と大事な話をしたい。少し、席を・・・」
「トゥオネラも聞く。」
 お菓子を飲み込んで、トゥオネラはきっぱりと言い切った。
「退屈な話だよ。だから、」
「たいくつ、ちがう。」
 トゥオネラはじっとサツキを見つめたままで、
「サツキ、トゥオネラのこと、ノヴェンに話しにきた。トゥオネラが大人にならないこと。だから、トゥオネラも聞く。」
 少女の言葉に、サツキは眉を寄せ、ノヴェンは息を飲んでトゥオネラとサツキを交互に見る。そうだ、この少女は未来を見る。自分がこれから師匠に話す情景を、彼女は既に知っていたのだろう。サツキは嘆息し、師匠を見上げた。ノヴェンもため息をつき、「・・・知ってるなら聞かなくてもいいんじゃないのか?」と呻いたが、トゥオネラはふるふると首を振った。
「ノヴェンといっしょに聞く。」
 どうやら最初からそのつもりだったようだ。お菓子を食べにきたのはついでか、とノヴェンは呟き、弟子に向かって頷いた。サツキも頷きを返し、居住まいを正す。
「師匠様はアーモロードをご存知ですか?」
「・・・どこかで聞いた気がするが・・・」
「うー!フェイデンとマリアがいるとこ!」
 トゥオネラが抗議するように口を挟んだ。ノヴェンは、そうだった、と頷いた。自分たちの冒険を助けてくれた弓の得意な植物学者と錬金術師は各地を旅して、アーモロードに落ち着いた。そこで結婚したという手紙をもらったこともある。
「私がお仕えしている国の近くにある小さな島国です。しかし、かつては高度な文明と栄華を誇り、遠くの海にまで影響を及ぼした、と言われています。」
 ノヴェンは視線だけで続きを促した。
「私のように剣技を得意とし、国に仕えている者を【ショーグン】と呼ぶのも、かの国からの影響です。私の国を始め、周辺の諸国はアーモロードと文化圏を同じにしています。そして、周辺諸国には、同じような筋書きの物語が伝えられております。」
 トゥオネラがきゅっとノヴェンの着物の袖を掴んだ。彼女は未来視でこの先の話を知っているのだ。その未来視の中で、自分は彼女に何をしてやったのだろう?その通りにした方がいいのか、それとも違う行動を取った方がいいのか。そんなことをノヴェンは思い耽りながら弟子の話を促した。
「人魚の肉を食い不老不死になった娘の話です。」
「・・・・・・、そんなの決して珍しい話じゃないと思うけどな。」
「ええ。ですが、アーモロードにはその秘術があるという噂もあります。」
「噂は噂だ。まして、昔は高度な文明があったんだろ?医術が発展して、治せないような病を治したのかもし・・・」
 と、言いかけて、ノヴェンは言葉を止めた。植物学者であるフェイデンとマリアが、アーモロードに落ち着いた理由を思い出したのだ。
「・・・アーモロードには確か・・・」
「世界樹があります。」
 この国と同じように、とサツキは言った。
「この国は世界樹の先に空飛ぶ城があり・・・上帝を名乗る者が冒険者の屍に仮初めの命を吹き込んでいたはずです。」
 師匠様とトゥオネラに言うまでもないことですが、とサツキは言った。当然だ。その事実を最初に知り、その上帝に再びの命を与えられた魔物を倒し、その上帝を倒したのは『ヴラスティシ』・・・ノヴェンとトゥオネラが所属するギルドだったのだから。
「・・・エトリアの世界樹も古代の文明によって作られたものだと聞いています。アーモロードの世界樹も・・・もしかしたら。」
 そして、とサツキはトゥオネラを見つめた。
「不老の術は、アーモロードの世界樹が隠す古代の技なのかもしれない。」
「・・・うー・・・」
 トゥオネラは唸った。
「じゃあ、トゥオネラ、アーモロードから来た?」
 トゥオネラの記憶は曖昧だ。『ヴラスティシ』のリーダー・ヴィオレッタに拾われた以前の記憶は曖昧らしい。
「可能性はあると思う。」
「・・・うー・・・」
「もし、トゥオネラが自分の体のことを知りたくてその可能性にかけるのなら・・・私は、私の主にお願いしてトゥオネラを国に呼ぶこともできます。そしてアーモロードに向かうこともできるでしょう。・・・もっとも、徒労に終わる可能性もありますが。」
「・・・。」
 トゥオネラは不意に宙を見つめた。ぎゅっとノヴェンの袖を掴む。未来がまた、彼女に降りてきたのだろう。
「・・・、サツキ、」
 トゥオネラは譫言のようにサツキを呼んだ。
「はい?」
「・・・ずっと、・・・一人で戦ってる人がいる。」
「・・・。」
「その人、不老だけど、不死じゃない。・・・でも、それが、その人の、本当の、切り札。」
「・・・そうなんだ。」
 としか言えない。予言中のトゥオネラは質問しても答えは返ってこない。また、トゥオネラ自身も自分の予言の意味がよく分からないのだ。
「・・・アヴィーが、」
 トゥオネラは続けた。サツキは首を傾げたが、ノヴェンはトゥオネラを改めて見た。その名を、ノヴェンもトゥオネラも知っている。彼らのギルド『ヴラスティシ』のリーダー・ヴィオレッタの(立場上の)甥にあたる少年の名前だ。年に一度、ハイ・ラガードに遊びに来て、この家まで顔を見せにやってくる。それはヴィオレッタがこの国を去ってからもずっとそうだった。
「・・・その人を、終わりにする。」
 そこまでトゥオネラは言って、そしてその目は焦点を結び、サツキを見た。
「・・・うー・・・、『ふろう』・・・さみしい。」
「・・・うん。そうじゃないかなって思ってた。」
「・・・だから、サツキがトゥオネラの『ふろう』なくそうとしたの、うー!うれしい!」
 トゥオネラは唸りながら喜んだが、
「でも、トゥオネラ、アーモロード行かない。」
「どうして?」
「トゥオネラ、ノヴェンと一緒がいい。」
 ぎゅーーっとトゥオネラはノヴェンの袖を引っ張った。引っ張るな、とノヴェンは呻いた。
「・・・それに、トゥオネラにも『おしまい』が、ちゃんと来る。」
 トゥオネラの一言にノヴェンとサツキが思わず顔を上げた。トゥオネラは微笑みも浮かべて穏やかに告げる。
「それが、分かった。だから、トゥオネラ、もう、みらい、見ない。その時まで、ノヴェンと一緒って分かった。それでいい。」
 トゥオネラは、ぱっと立ち上がり、「あそびにいってくる!」と駆けていった。ノヴェンが呼び止めるのも聞かない。
 長い沈黙の後、
「・・・サツキ、俺はどうしたらいいと思う?」
「・・・申し訳ありません。」
「・・・謝ることじゃ、ないんだけどな。」
 ノヴェンは膝の上で拳を握りしめながら、
「・・・アイツ、100年は生きてるんだ。あちこち調べて、それは確実に言える。ヴィッタがアイツを拾ってくるまで、どんな生活をしてたのかは知らないが・・・、夜中に泣き出して、置いていかないで、と、喚いたこともある。」
 あれは予言じゃなかったんだ、とノヴェンは唸った。おそらく思い出したのだ。昔、誰かが彼女を置いて逝ってしまったことを。
「・・・そんな思いを繰り返させずに済むことを、俺は安心するべきなのか?」
 師匠の問いかけに、弟子は答える術を持たなかった。


 

---------------あとがきのようなもの-------------------

お、おかしいなあ・・・こんな話にするつもりはなかったんだけど・・・

サツキは、元ブシ子で今はショーグンにクラスチェンジ。
ノヴェンは青ブシ、トゥオネラは茶カスメ、二人はハイラガ踏破ギルドの一員でした。
途中のトゥオネラの予言は、海都のひ(規制)の伏線・・・
と見せかけて、この話の上での真のラスボスの伏線となりますが、
伏線回収は二年以上後の話となるでしょう。話がいつまでたっても進まない。

なお、パラほん。(井藤さんとの合同誌)をお読みの方はニヤリとするやもしれませんが、
このノヴェンはあの本で登場している青ブシの10年後ぐらいの姿です。
幼女と少女に懐かれる器用貧乏、ということで、こいつの発展系がうちの赤パイです。


次回は18章です。ゲートキーパー戦に入るつもりですが、どうするかなー

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