まよらなブログ

18章2話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

スパコミでは世界樹プチオンリーがあったようですし、
参加された方、お疲れ様でした。

・・・と、社交辞令的に書いてはおくものの
この話を読みに来てくださる方々の中に、
どれだけ世界樹プレイヤーがいるかは、甚だ疑問です。

とはいえ、
超アウェー運営は、超気楽。(笑)


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



18章2話
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 地下9階の蟻の巣への入り口に花を供えた『アルゴー』は、そのまま進み地下12階の探索を再開する。溶岩の上を走る岩を乗り継ぎ、嗅ぎ回る毒竜の動きをかわし、汗を拭きつつ12階を三分の二も進んだ頃だ。
 滾る溶岩の中で何かが跳ねたのを目撃して、思わず歩みを止めた。
「・・・何かいるよ?」
 カリーナがじっと目をこらして囁く。もう一度、溶岩の中で跳ねる何か。
「魚?」
 アヴィーがつぶやき、マルカブが頷いた。
「・・・ああ。溶岩の中にいる魚がいるって聞いたことあるが・・・あれか。」
 俺も眉唾モンだと思ってたけど、とマルカブは頭を掻いた。魚なの?と首を傾げて聞くアヴィーに、マルカブも首を傾げ、
「さあ?魚みたいな形をしてるだけで、魚ですらないのかもしれない。まあ、でも、溶岩に住む魚ってことで船乗りの噂にはなってんだよ。なんでも、幸運の象徴なんだとさ。」
「あの魔物みたいなもの?えーっと・・・、ほら、私が地下3階で見た・・・綿毛みたいな魔物・・・」
「ああ、ケセランパサランか。」
 カリーナの質問に、ディスケが顎まで垂れてきた汗を拭いつつ答えた。
「そうなのかもなあー。じゃあ、いいことあるかもよー?」
 いっちょ捕まえてみるか?とディスケが笑うと、アヴィーとカリーナはぱっと顔を輝かせた。ダメだ、と鋭くマルカブが禁止した。
「噂じゃ、縄張り意識が高いんだそうだ。噂のオチは、珍しさに不用意に近づいて、捕りに行こうとした奴がやられちまったっていうのばっかりだ。」
「そんなの噂じゃんかよー。」
「ただの噂でも危険性が否定できないなら、近づくべきじゃないだろうよ。」
「・・・・・・『危険性』ときたかー。おとーさんって時々、頭良さそうな言い方するよなー。」
「良さそうなんじゃなくて、良いって言え。」
 マルカブとディスケがそんなやりとりをしているうちに、アヴィーはターっと溶岩の岸まで駆けていってしまった。
「・・・、アヴィー!!俺の話、聞いてろよ!」
「聞いてたよう!でも、噂だもん!」
 僕、あの魚、もっとよく見たいもん!とアヴィーがマルカブの小言に反論すると、ぱしゃん!と音を立てて魚が跳ねた。
「あ!近づいても大丈夫だよ!」
 跳ねるばかりで何もしてこない魚に、アヴィーは笑い、カリーナもおいでよう!と声をかけた。本当は近寄りたくてそわそわしていたカリーナは、困った様子を見せたのだが、
「わしも近づいちゃおー!」
 とクー・シーが駆けていくのを見て、自分も!と岸まで走り出した。あーもー、と頭を抱えるマルカブと笑うディスケの前で、アヴィーはそーっと岸をのぞき込む。溶岩を泳いでいる魚を見ることができるかもしれない。そんな期待を抱いたのだ。
 アヴィーの顔が溶岩の上に来たときだ。気配を悟ったのか、アヴィーの顔を見たからなのか、魚は高く跳ね上がる。はっと身を引くアヴィーに向かって、魚はエラの隙間から溶岩を吐き出した。
「アヴィー!」
 このままでは溶岩の直撃は免れない・・・と、その場にいた誰もが思った。ならば、溶岩を落とせばいい。そう思ったのは一人だけだったし、それが出来るのも一人だけだった。
 ディスケは素早く弩を構える。照準を素早く合わせ、アヴィーに迫り来る溶岩を正確に狙い撃つ。
 溶岩は四散して、一瞬で蒸発した。魚はボチャン!と溶岩に潜りこみ、二度と跳ね上がってはこなかった。
「アヴィー!大丈夫!?」
 カリーナが、その場にへたりこんだアヴィーに駆け寄る。アヴィーは、うん、と頷きながら、にっこり笑って、
「・・・でも、びっくりした!」
「・・・、それはこっちの台詞だ!!」
 マルカブは頭を抱えながら怒鳴りつけた。
「チョロチョロするなって、何度言ったら分かるんだ!?」
「僕、チョロチョロしてない!」
「してるだろうが!」
「してない!まっすぐ走ったもん!」
「あー・・・・・・!だから!それがッ!チョロチョロしてるんだッ!!警戒心を持てって言ってるだろうが!」
 一回ぐらい、悪い大人にさらわれてしまえばいい。そうすれば学習するだろうから。・・・とすらマルカブは思いながら、アヴィーを叱り飛ばすのだが、当のアヴィーに通じる様子はないし、ディスケなんかはへらへら笑いながら
「まあ、いいじゃんかよー。無事だったんだしー。」
「よくねえよ!」
「え?無事じゃない方がいいのかよー?」
 せっかく溶岩撃ち落としたのにさー、とディスケがわざとらしく唇を尖らせた。
「うん。ありがとう、ディスケ!」
 ディスケの機転で、間一髪のところで溶岩の直撃を免れたアヴィーはにこにこしながら礼を言う。
「すごいね!飛んでくる溶岩も撃ち落とせるんだ!」
「ディスケ、射撃の腕、上がったよね。」
「よせよー、照れるじゃんかよー。」
 素直に賛辞を送るアヴィーとカリーナと、わざとらしく照れたフリをするディスケ、それに口笛を吹いて冷やかす真似をするクー・シーを
「だからそうじゃねえだろ!?反省しろ!!」
 マルカブはそう怒鳴りつけた。


*****


 溶岩に住む魚を見つけた後は、溶岩の上を進む岩の乗り継ぎとこの洞窟に生息する魔物との戦いが続く。魔物との遭遇は緊張感はあるものの、地下12階まで進んだ彼らには慣れてしまったことだった。そうやって、地図上では洞窟の内側に回り込むような形で『アルゴー』は歩みを進める。地図も中央部を残してほとんどが埋まった。
 地下12階中央部に近い場所に野営地を見つけた『アルゴー』は、休憩しながら遅めの昼食をとる。昼食は、マリア手製のいなり寿司だ。探索中に手軽に摘まめるように、という配慮からか小さめの、しかしスタミナ源になるように、という配慮からか具をたっぷり混ぜ込んである。アサリの佃煮ときんぴらにした人参を細かく刻んだもの、ちりめんじゃこと胡麻を混ぜ込んだもの、甘酢生姜を入れたもの、といくつか用意してあった。
 カリーナは甘じょっぱく味付けされたいなり寿司が気に入ったらしい。おいしいね!というアヴィーの声に、頷いて「私、いなり寿司を食べたの初めて!」と笑う。
 熱い溶岩地帯を進んできたので酢飯は食べやすかったし、濃いめの味付けも汗で流れる塩分を接れるように、と考えてのことなのだろう。いい奥さんだよねー、とクー・シーは髭についたご飯粒をとりつつ呟き、いい主婦だってことは分かるんだけど怖いんだよなああの人・・・とマルカブは呟いて、ディスケは煮汁のついた指先をなめながら笑った。
 腹一杯にするわけにもいかないので、昼食の量は多くなく、すぐに済んだ。もう少し休んでから出発するか、と仲間の様子を見ながらマルカブが考えていると、
 音ではなく、静かな振動が、地を這うように伝わってきた。
 地震かと思ったが、そうではない。揺れは断続的に、しかし繰り返している。アヴィーがぱっと顔を上げて、壁に向かって目を凝らした。
「アヴィー?どうしたの?」
「・・・エーテルが動いてる。」
 野営地の壁に触れながら、アヴィーはカリーナに地図を広げるように言う。カリーナはあわてて地図を取り出し、広げた。
「・・・この壁の向こうって、何があるんだっけ?」
「ま、まだ行っていない場所・・・。多分、12階の一番奥だと思う。」
「・・・一番奥で、これだけのエーテルが動いてる・・・?」
 アヴィーは手を壁から離して、マルカブに告げた。
「マルカブ、きっと、この先で誰かと誰かが戦ってるよ。僕らが星術を使う以上の量のエーテルが、流れ込んでるんだ。こんなの自然には起こりにくいし・・・そこが一番奥なら・・・」
「【ゲートキーパー】ってやつが戦ってるってことか?」
 アヴィーは頷いた。
「【ゲートキーパー】と戦っているのが、他の冒険者ならともかく・・・もし、四階層から来たフカビトだったら・・・」
「・・・そうだな。それはミッション関係なく阻止しないといけない。」
 マルカブがそう言って立ち上がったときには、ディスケは弩を担ぎ上げ、クー・シーはゴミも含めて荷物をまとめ直していた。カリーナは慌てて地図を丸めて荷物に突っ込む。
「進もう。深都に侵攻しようっていうフカビトと【ゲートキーパー】が戦ってるなら、【ゲートキーパー】に協力すべきだ。他の冒険者がゲートキーパーに戦いを挑んでいるなら・・・協力も出来るだろう。」
 マルカブの言葉に、仲間たちは頷きを返した。

*****

 溶岩の川を一度渡って進んだ先に、小部屋のような広間があって、その先には扉があった。その奥から、鈍い振動が伝わってくる。また、アヴィーにはその奥に向かってエーテルが流れ込んでいくのが感じられた。
 不意に扉が開いて、中から派手な異国風の装束の男が転がるように出てきた。海都の姫に仕えるクジュラだ・・・、と『アルゴー』が思った次の瞬間には、別のものへと意識が奪われた。
 開いた扉から見えるのは、体を鋼鉄で覆った巨兵の姿。とはいえ、3メートルを少し越えた程度の大きさだったのだが・・・大きく見えたのはその太い腕と・・・その腕を構えた仕草のせいだろう。あれこそが何度もその名を聞いた恐るべき巨兵【ゲートキーパー】だ・・・と全員が無言で知る。
「伏せろ!」
 と叫んだのは、クジュラだった。続いて反応を見せたのは、圧倒的な量のエーテルが【ゲートキーパー】に向かって流れ込んだのを感じたアヴィーだった。アヴィーはカリーナの頭を押すようにして地面に伏せさせ、それを見たマルカブは他の仲間に伏せるように素早く命じ、それを聞いたディスケとクー・シーは疑問も放り出して地面に伏せる。
 次には、扉の向こうの部屋が一面、光によって薙ぎ払われる。ゴ・・・ッ!!という音とともに、衝撃は一行がいる部屋まで吹き付けてきた。頭上を風・・・と呼ぶには少々暴力的な圧力が走る。しかし、それも一瞬だった。ゲートキーパーがいる部屋を繋いでいる扉が、衝撃によって再び閉まり、巨兵が発したエネルギーを遮った。
 そして、その場は静まり返る。扉の奥から振動も感じない。エーテルはどうだ?とマルカブがアヴィーに聞くと、動いてない、と返事が返ってくる。扉が閉まったことで、【ゲートキーパー】の敵の認識が、解除されたのかもしれない。ならば、ゲートキーパーが自ら扉を開けて、こちらに攻めてくるとは考えにくい。そう思って、皆がそろそろと顔を上げた。
「・・・・・・、あれが、」
 アヴィーが顔を上げて、呆然と呟いた。
「・・・エーテルを動かすぐらいの力だったんだ・・・」
 ああ、と呟きに返ってくる声がある。クジュラだ。来るのが遅いぞ、と言いながら皮肉めいた笑みを浮かべた彼は、刀を支えに地面に座り、背中を壁に預けた。カリーナが、あ、と小さく声を上げた。苦笑を浮かべるクジュラの体からは鮮血が滴っており、痛んだ防具は激しい戦闘があったことを物語る。クー・シーがクジュラに元に屈み、治療をしようと申し出たが、彼はそれをきっぱりと断った。『アルゴー』の一員ではない自分のために、貴重な回復手を消耗させるわけにはいかない、と言う。クー・シーは、ならば止血だけ、と告げて、荷物から布を取り出し、手頃な太さに引き裂いた。カリーナが駆け寄ってきて、それを手伝う。
 クジュラはアヴィーを見ながら、
「あの巨兵・・・、両腕を構えてからすべてを砕く恐ろしい威力の光を放ってきやがった・・・。」
 その技がエーテルを動かすほどの力なのだろう、と呟く。アヴィーは顔を青くする。
「・・・あんなに沢山のエーテルが動くほどの技なんだよね。もし、あの技が・・・直撃したら・・・」
「直撃は避けたが・・・、このザマだ。」
 クジュラは、一度息を吐いた。出血がひどいところから、テキパキとクー・シーが止血を始めている。
「・・・そもそも、どうしてお前がここに?」
 マルカブは腕を組んで尋ねる。クジュラは、奥の扉を見ながら答えた。
「その扉の先に深層へと繋がる道があり、そこをあの化け物・・・巨兵【ゲートキーパー】が守っている。」
 そこで一息。溜め息と呼ぶには重い息を吐く。話すだけでも辛い状態のようだ。
「少し様子を見る為に潜入したが・・・俺としたことが油断したようだ。」
 彼は、視線を『アルゴー』に戻した。
「・・・あとはお前たちに託すしかない。すまないが・・・、」
 その視線は、決然と。しかし、どこか哀しみも持っていた。
「頼む。」
 と、続けられた言葉にも、同じような哀しみが滲んでいた。


(18章3話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

いなり寿司に向かって情熱を傾けた話。


前半の溶岩魚イベントは、
あまりにも「うちのギルドっぽい」と思って、必ず書く、と決めてました。

後半のクジュラさんと遭遇する展開がゲームと違いますが、
『この方が燃えるから』理論による修正が入ってます。
(台詞の順番も、『この方が自然だから』理論による修正で入れ換えました。)
海都に協力すると決めたので、海都の人間もちゃんと書きたいです。

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