まよらなブログ

19章3話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

世界樹4の体験版が配信されました。
体験版で体験できるところまでは体験しましたが、
樹海をくまなく見回せることに感動しております、さすが3DS!!

前回の話の前書き部分(つまりココ)で、
『ギルド名は「数珠掛け鳩」を意味する言葉』と書きましたが、
土壇場で気球名とギルド名を逆にしました。今は、気球名が「鳩」の意味です。
ソフト発売されたら、詳細を書こうと思いますよ。


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


19章3話
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「セイリアスから手紙が来てね、」
 昼下がりの穏やかな光も届かない路地裏で、クー・シーは腰帯から手紙を取り出した。
 クー・シーの持つ手紙を見つめるのは4つの目。両手を脇に垂らして静かに立っているツィーと、壁に背を当て気配を押し殺しているリョウガンの目。昼食後、孫に構ってほしい祖父とそれに渋々応える孫を装って蝶亭を出て、カリーナの護衛としてその辺にいるリョウガンに分かるような合図を出し、三人は集まった。
 手紙には、剣に絡まる茨の図案の封蝋がしてある。三人の直接の主で、剣と茨の紋の国の国王・セイリアスからの手紙であることは、それだけで明白だった。
「隣国と手を組み、国に戦争を持ち込もうとした貴族とその一味を捕らえたそうだ。」
「ああ、つまりリョウガンの雇い主が捕まったということですね。」
「・・・・・・、元・雇い主だ。」
 皮肉なの天然なのか分からないツィーの一言に、リョウガンは苦々しく訂正を加える。それから、クー・シーに向かって、
「では、姫を国にお連れすることになるのか?」
「そう遠くないうちにはね。しかし、連れ帰れという命令はまだ出ていない。残党狩りもあるだろうし、・・・・・・セイリアス自身もこの街でもう少し過ごしたかった、という気持ちもあったからね。だから、本当にギリギリまで、姫をこの街に置いておくつもりだろうけど。」
「・・・それは、」
「自分が表舞台にいられる体力の限界ギリギリまでだろうね。」
「・・・やはり、王は長くないのか。」
 リョウガンの疑問に応えるのはツィーだった。
「ええ。侍医であるフロレアル様は、余命宣告された期間をとうに過ぎていると仰っていました。」
「義務感だけで生きているようなものだからねえ、今のセイリアスは。」
 クー・シーは髭を撫で、溜め息をついた。リョウガンは少し考える様子を見せてから、
「・・・それだけ、成したいと願うことがあるのだろう?」
「ああ、そうだね。」
「・・・しかし、己では成しきることができないから、姫に後を頼む・・・そういうことだろう?」
「無論、そういうことだね。」
「・・・、姫と王は疎遠だと聞いているが、」
「疎遠どころじゃないよ。あの兄妹、言葉を交わしたことは一度だけだ。」
「・・・ならばだ。姫は王の理想や願いを理解しているとは言い難いはずだ。」
 リョウガンが言いたいことが薄々分かってきたクー・シーとツィーは、無言で先を促した。
「姫に王位を継がせても、姫が王の理想を継ぐとは限らない。姫は、王の理想も王のこともよく知らぬはず。ならば、今のうちに姫を国に戻し、残り少ない時間でも王とともに過ごして王の理想を知るべきではないだろうか。その結果、姫が王の理想に反対するのならば、仕方のないが。」
「そうだね、リョウガン。お前の言うことは、もっともだ。」
 クー・シーは愉快そうに歯を見せて笑った。
「だがねえ、今、ここで姫が仲間とともに冒険をし、この国の王たちを見ることこそ、己の理想を理解することになると、セイリアスは考えている。それこそ、理想を語って聞かせる以上に、体験として理解してもらえると考えているんだよ。」
「・・・、爺様。私もリョウガンと同じように思います。」
 ツィーは静かに立ったままで、
「セイリアス様がかつてこの町で体験したこと・・・それが今のセイリアス様を付き動かしていることは分かってます。でも・・・姫様が同じ体験をし、セイリアス様と同じ答えに至るとは限りません。」
「姫にセイリアスと同じ体験なんかさせたくないがね。」
 クー・シーはただ溜め息をついた。静かに、どこかしら悲しく。
「ただ、自分が決して独りではないことを知ったことが、セイリアスの原動力だから、姫にそれを知ってほしいと思っているんだよ。」
 クー・シーは視線をあげた。
「・・・姫がセイリアスの意志を継ぐか、それを拒むか・・・それは姫の意志だ。その選択まで強要してしまったら、それこそ姫の祖父君と同じようになってしまうとセイリアスは考えている。ただ、姫には自分の幸せだけを考えて選択してもらいたくはないし、自分の幸せを犠牲にした選択をさせたいとは思わない。けれど選ぶときが必ず来るから、その選択に誇りを持ってほしい、そうセイリアスは思っているようでね。」
「・・・それが、独りでないことと関係が、」
「あるんだよ。だって、『独り』だと思うから自分勝手にも自己犠牲にも生きられる。自棄になってその場しのぎの選択だってできる。『独りではない』ということは、支えにもなるが責任もあることだ。・・・孤独でない者は、逃げることは出来ないんだよ。」
 それが幸せかって言えばどうかとは思うんだけどねえ、とクー・シーはぼやくのだ。彼はセイリアスの考えを語りながらも、どこかでそれに納得出来ないのだろう。けれど、セイリアスが決めたことに最後まで協力したいと思っていて、苦々しさを感じながらも従っている。
 爺様はセイリアス様に甘いですね、という感想を急に思い抱いたツィーは何気なく口にした。
「・・・・・・、爺様って、」
「なんだね?」
「もしかして、昔はマルカブさんみたいだったんですか?」
「いきなりなんだね、ツィー。おじいちゃまは、もっともっといい男だったよ!」
「・・・どちらかというとディスケ似だったのではないかと思うが・・・」
 まさかこんな会話に参加するとは思ってなかったリョウガンがぼそりと呟くので、クー・シーはムキー!と両手を振り回した。
「何だね何だね!二人そろって!おじいちゃまを、あんなダメダメんずたちと一緒にしないでおくれよ!もっとも、おじいちゃんが少年だった頃はアヴィーみたいに素直な紅顔の美少年だったけどね!」
「「それはありえない。」」
 とりあえず、ツィーとリョウガンは一緒になって否定した。


*****


 『剣と茨の紋の国』・・・というのは、正式な国名ではない。長い歴史の中で侵略と征服を繰り返してきたかの国の名前を、呼ぶ者はいなくなっていた。その名に、畏れを抱く者もあれば怒りを抱く者もあった。その名前を汚らわしいとする者もいたし、神聖視する者もいた。いずれにせよ、かつての王たちはその感情を利用した。「国の名を口にしてはならない。」という暗黙の決まりを植え付けて、この国は特別だと思わせるようにしてきたのだ。
 馬鹿げている、と『剣と茨の紋の国』の現国王は考える。今、この国の真の名を口にして、それがこの国を指すと気づく者はどれだけいるのだろうか。結局、肩書きばかりが広がって真実の姿はなくなった。それがこの国だ。骸が鎧を着ている、それがこの国の姿だ。
 遅かれ早かれ、この国には変革の時が訪れる。それは隣国の侵略かもしれないし、国民の革命かもしれない。いずれにせよ、鎧の下が骸であることを知る者が、その『骸』を倒すのだ。その『骸』とされるものが、この王朝であればいい、と現国王・セイリアスは考える。『国』そのものを『骸』とされたとき、この国は蹂躙される。侵略され、略奪され、縛られて、支配される。支配されながらでも、平和に国民が生きていけるのならば、セイリアスとしては国を譲り渡してもいいと思っていた。だが、きっとそうはいくまい。侵略してきた歴史が跳ね返るように、支配してきたこの国の民のように、誰かがこの国を支配する。それは、ただ自分たちのしたことをされるだけの話ではあったが・・・、明日生まれる命に罪はないのも事実だった。
 ・・・罪があるなら、『我々』だ。
 我々、王族だ。最初の統治。その後の統治。差別を支配の道具に使ってきたこと、自分たちの繁栄のために搾取しつづけたこと。それを真似たのが貴族で、それに絶望したのは国民で、しかし被支配部族を同じように支配したのも国民だ。どこかで絶たねばならないなら、最初の『我々』に罪を戻し、倒されるべき『骸』となろう。そう、セイリアスは考える。
 それが異母妹に困難な道を進ませることになることは分かっている。彼女には歴代の王ほどの罪もないことも分かっている。結局、次の世代に罪を回さないために、身近にいる罪なき者を犠牲にするのだ。その偽善も分かっている。分かっているが、・・・時間がない。
 セイリアスが奥歯を噛んだとき、扉がノックされた。どうぞ、と告げると、扉が開き、彼の侍医・フロレアルと金髪の騎士と・・・、二人に羽交い締めにされるような形で栗色の髪の女性が入ってきた。
「もー!何なんですか何なんですか!セイリアス様、いくらなんでもこれはナシですよ!?」
 栗色の髪の女性はバタバタと足を踏みならした。セイリアスは苦笑して、彼女を離すように侍医と騎士に命じた。力を入れていたわけではないらしく二人の腕はするりと抜けて、女性はよろめきもせずにその場に仁王立ちになる。
「すまなかった。そして、久しぶりだね、ヴィオレッタ。元気そうで何より。」
「10年以上ぶりに故郷に戻った国民にする仕打ちじゃないと思います。」
 ヴィオレッタ、と呼ばれた女性は頬を膨らませた。
「実家に帰ってきて、弟にお遣いを頼まれて出かけていった先で謀反を企んでいる疑いをかけられて逃げだそうとしたら捕まって一週間も牢屋入りして出してもらったら弟と妹に連行されて国王様と謁見ですよ!?」
「悪かった。アウグストからすでに聞いていると思うが、囮役になってもらったんだ。君があの場で暴れた隙に、本当に謀反を企んでいる連中を捕らえることが出来たよ。」
「信じられない!それならそうと先に言ってくれればいいのに!」
「・・・いや、だって、小姉上は顔に出るし・・・。それにフロレアルが、」
 と、背後で騎士がぼそり、と言い、侍医が頷いた。
「はい。私が、小姉様には何も説明せずに送り出すようにとアウグストに言いました。」
 ヴィオレッタと呼ばれた女性は振り返り騎士と侍医をを睨みつけ、「あとでお姉さまに言いつけてやる!地の果てまで蹴りとばされなさい!」と言い、騎士は肩を落として小さくなり、侍医は肩をすくめるばかりだった。
「姉上とは会っているのかい?」
 セイリアスは苦笑してヴィオレッタに問いかける。ヴィオレッタはまたセイリアスに向き直る。
「今はほとんど会ってませんねえ。私がハイラガにいたころは、お姉さまがバカンスに来て一年に一回は会えてましたけど。まあ、元気にしてますよ。」
「・・・それは何よりだ。」
 少しトーンが落ちたことに、ヴィオレッタも騎士も侍医も気づくのだ。国王が何年も、彼らの長姉に引け目を感じていることは知っている。
「セイリアス様。姉に対するお気遣いは感謝します。ですが、」
 ヴィオレッタはそれまでと打って変わって、良家の子女らしく(実際、彼女は騎士団長の娘だった)切り出した。
「もういいのです。もう、フィデリオのことは。そもそもからセイリアス様のせいではありませんから、誰もセイリアス様を恨んではおりません。・・・私はハイ・ラガードで、アーサー隊長とファルーカ・・・フィデリオの妹と会ったんですよ。誰も誰も、誰かを恨んだりはしておりません。」
「・・・、私はね、ヴィオレッタ、」
 セイリアスは情けなく笑うのだ。
「私自身を恨んでいるんだよ。」
「・・・お姉さまもアーサー隊長もファルーカも、みんなそうでしたよ。」
 ヴィオレッタはそして、静かに付け加えた。
「おそらく、カリーナエ姫様も。」
「・・・そうかもしれないね。」
「・・・・・・、ですけどね、セイリアス様。お姉さまには新しく恋人も出来ましたし、」
「「・・・そんな物好きな人が?」」
 ヴィオレッタの背後から、騎士と侍医が完全なユニゾンで疑問を口にするのが聞こえた。二人は双子だったで、幼い頃から言葉が被ることがよくあった。慣れているらしいヴィオレッタは振り返らずに、セイリアスに続ける。
「お姉さまは養子と幸せに暮らしてましたよ。アーサー隊長も昔なじみとツルんで女の人のお尻追っかけて楽しくやってますし、ファルーカも理解者を得て一生懸命暮らしてました。・・・フィデリオのことは、誰も忘れてません。悲しんでいない人は誰もいません。でも、」
 ヴィオレッタは少し考えてから、
「・・・・・・、みんな、その後の人生を生きているんですよ。」
「・・・、生きていないのは私だけかな。」
「セイリアス様も、その後の人生を生きていらっしゃいますよ。ただ、時々、すごく視野が狭くなるようですけど。」
「・・・君たち姉妹は本当に、歯に衣着せないな。」
「私とフロレアルは、手が出ないだけいいじゃないですか。お姉さまなら、今頃シールドスマイトで吹っ飛ばしてますよ。」
 セイリアスは力なく笑い、それから溜め息をついた。
「・・・その後の人生もね、私は人を傷つけてばかりだよ、ヴィオレッタ。君の弟の右手も潰してしまったし。」
 セイリアスの言葉に息をのんだのは、騎士だった。
「そ、そんなことは・・・!」
 否定しようとする騎士を、ヴィオレッタは腕だけで制した。
「・・・、私の妹もきっと傷つけてしまうのだろう。」
「あなたの妹のことは知りませんが、」
 ヴィオレッタは、王に対する態度とは思えぬ不遜極まりない態度を見せた。
「私の弟は、それをあなたのせいだと言いましたか?」
「・・・言うはずもないね。」
 セイリアスは騎士を見て、苦笑した。ヴィオレッタは背後は見ずに、「アウグスト。」と騎士に声をかけた。
「何故、セイリアス様のせいにしなかったか、簡潔に答えなさい。」
「・・・え?」
「三秒以内で。3、2・・・」
「そう言われても、小姉上!姫を護ることは命令とはいえ、あの場でああ判断したのは俺ですし、」
「もっと簡潔に!」
「アウグストは己の騎士道を貫いただけですから。」
 簡潔な答えは侍医から出てきた。騎士・・・アウグストは困ったような安心したような表情で侍医を見つめる。ヴィオレッタは頷いた。
「そういうわけですよ、セイリアス様。それ以上、アウグストの傷を背負うような真似は、アウグストの騎士道に対する侮辱です。忘れてほしくはありませんし、労っていただけると嬉しいし、感謝もしてほしいところですが、それで己の命令を後悔されるようならば、騎士は悲しむばかりです。」
 ヴィオレッタは息を吐き、窓の外へと目をやった。
「・・・カリーナエ姫様はアーモロードで樹海に潜っているそうですね。冒険者は誰しも、自分の道を見つけます。そうでなくては死んでしまいますからね。」
「・・・元・冒険者としての言葉かね?」
「今も冒険者ですよ。」
 元・冒険者は貴方でしょう?と、ヴィオレッタは苦笑を浮かべた。
「姫様が戻ってくるにせよ、そうでないにせよ、己の道を決めるのは姫様です。そして決めた以上は、それ以上を他人が背負うことは出来ません。」
 それが、その後の人生を生きるってことだと思いますけれど、とヴィオレッタは口にした。セイリアスは肯定も否定もせずにしばらくヴィオレッタを見つめ、それから窓の外へと目をやった。


(19章4話に続く)
---------------あとがきのようなもの-------------------

番外編向きの話だな・・・

うちの世界樹2の主人公のヴィオレッタをやっと書けました。
彼女はデコソドで、この話のプロローグ3話でうちの赤パイをぶん殴ってます。
名前と存在だけは、今まででもところどころで出てます。
この話では「運命の王子様探し」をしている痛々しいアラサー(笑)という設定です。

アウグストはプロローグ2話の騎士で、
ヴィオレッタの「お姉さま」は黒ゾディの養母・師匠パラ子で、
途中で名前だけ出てくるアーサー隊長はおっさんパラディンですが、
「パラディンのほん。」(井藤さんとの合同誌)をお読みの方はピンと来るかもしれません。


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