まよらなブログ

19章4話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

更新お休みして申し訳ありません。
仕事が忙しかったのもそうなんですが、世界樹の迷宮Ⅳやってました。
うおおお・・・、面白ええええ・・・・・・・・・!!と思いましたので、
たまーに小ネタを書くかもしれません。

と、いうわけでこのブログにも「世界樹の迷宮4」カテゴリーを作り、
そちらで小ネタや感想やQRコード載せていきますので、興味のある方はどうぞー。


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



19章4話
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 ちょこん、と椅子に座っているカリーナは肩を強ばらせていて、彼女の膝にいるスハイルも同じように固まっていた。宿の厨房から茶をもらってきたマルカブは、小さく溜息をついてテーブルにカップを置いた。スハイルが羽毛を膨らませて威嚇してくる。なんでだ、と呟いてから、
「・・・カリーナ。話しにくいことなら無理しなくてもいいんだぞ。」
 カリーナはびくっと肩を振るわせてから、恐る恐るマルカブを見上げ、そして首を振った。
「・・・カリーナ。俺は時間だけはいっぱいある。今日じゃなくても、」
「い、いいの!それに!」
 カリーナは強くした声を急に弱くして、
「・・・、あんまり優しいこと言わないで、マルカブ。私、甘えて、きっと、ずっと、話をしない・・・」
 そう呟いた。お前は自分に厳しいな、とマルカブは囁くように口にして、自分の分のカップを持ってベッドに腰掛けた。
「分かった。でも、一つ約束しろ。」
「うん。」
「もう無理だ、と思ったら、そう言え。頭を撫でてほしい時もだ。」
「うん。」
「あと、スハイルはそのままでいいのか?」
「ぴよ!?」
 スハイルは強い調子で抗議した・・・ようだった。カリーナがスハイルを軽く抱きしめる。
「うん。抱きしめてると落ち着くから。」
「ぴよん!」
 カリーナに抱きしめられたスハイルはご機嫌に首を振る。その様子を見ながら、コイツは女好きな助平なんじゃないか、とマルカブは疑惑を抱いた。世話をしてくれるカリーナやアル・ジルよりも、エラキスやコロネに抱き上げられたときに大喜びするあたりが疑わしい。
 お前がいいならいいけど、とマルカブは口にして茶をすすった。二人は今、アーマンの宿の『アルゴー』の男部屋にいる。ディスケの家までアンドロの材料を運んだ後、カリーナの申し出通り、彼女の話を聞くことになったのだ。
 一体、どんな話をされるのか、とマルカブの方も緊張する。話を『聞く』のは簡単だが、彼女の思いを聴くのは正直気が進まない。話の内容がどうこう、という問題ではない。果たしてそれを受け止めきれるのか、という自分の器への不信感だ。彼のその不信感は、裏を返せばカリーナを傷つけたくないという優しさだ。自分がカリーナが吐き出した思いを受け止められなかったときに、彼女は傷つくに違いない・・・そういう恐怖であり、その恐怖を抱く一方で口約束を果たそうとするからこそ、カリーナは話を聞いて欲しいと頼んだのだ。自分の力に不信感を抱きながらもそれでも自分にできることはしようとする彼に、カリーナは全幅の信頼を置いている。
 カリーナの緊張を解いてから話をさせるべきだろうか、とマルカブは考える。とはいえ、冗談など言う場合でもないだろうし、肝心なときに気の利いた言葉など思いついたこともない。しかし、自分を頼ってきた少女に、いつまでも緊張を強いていてどうするのだ。カリーナはずっと押し黙っているし、何か促した方がいいんだろうか。いっそ、そのものズバリをいきなり話題にした方がいいんだろうか。お前はきっと、『フィデリオ』という奴のことを話すのだろう、と。何度か聞いたその名前こそ、カリーナの胸の内にこびりついた染みだということはもう薄々気づいている。
「・・・マルカブ、お願いがあるの。」
 マルカブの逡巡は、カリーナ自身によって破られた。カリーナは一度深呼吸してから口にした。
「私の話を聞いても、どうにかしようと思わなくていい。・・・解決しようとしなくていい。マルカブは優しいから、なんとかしたいって思ってくれると思う。・・・でも、ただ、知ってほしいだけなの。でも・・・何を知ってほしいのかっていったら、」
 カリーナはスハイルの頭に顔を埋めるようにして、
「・・・私が苦しいことを知ってほしいってことなの。」
 ・・・どうしてこの娘はこんなに賢いのかな、とマルカブは心の中で嘆息した。賢いというよりも厳しいのだろうか。自分を徹底的に観察し、それを言葉として表せるだけの力もある。その分、彼女は自己嫌悪にも陥るだろうし罪悪感も抱きやすいだろうし臆病にもなるだろう。賢いことも自分に厳しいことも美徳かもしれないが、当の本人はどれだけ生きにくさを感じるのだろうか。そう思うと、切ない。
「・・・私が苦しいことを知ってほしいっていうのは、知ったマルカブも苦しくなってほしいってことなんだと思うの。・・・マルカブが苦しくなるのは嫌なんだよ、私。・・・でも、・・・マルカブに知ってほしいの。」
 私、おかしい?とカリーナは尋ねた。おかしくない、とマルカブは答えた。答えながら、何だか告白でも受けているみたいに感じる自分の方がおかしいな、と思うのだ。とはいえ、カリーナは「私の今までの人生を一緒に背負ってほしい。」と言っているようなものなのだ。向きこそ真逆だが、未来の人生を一緒に生きてほしい、と伝える熱や重さと変わらないのだろう。
 カリーナは頷いて、顔を上げた。
「・・・だから、慰めなくてもいい。どうにもならなくてもいい。私は楽にならなくてもいい。苦しいことが分かってほしいだけ。」
 ・・・俺は、女の子を慰めるなり助言をするなりして「楽にさせた」ような気持ちに酔うこともできないわけだ。・・・そう考えてマルカブは苦笑した。中途半端な優しさも、自分が満足するだけの慰めも、己に力があることを示すだけの助言もいらない、と彼女は言っている。彼女はそこまで攻撃的な物言いはしないが、言っていることはただ一つ。私のいるところまで、やってきて!
「・・・ちょっと買いかぶり過ぎだな・・・」
 マルカブは苦笑混じりに呟いた。カリーナが、え?と聞き返すが、何でもない、と彼は首を振る。何をしてほしいか、分かっている彼女は、誰彼かまわずこんなことを言いはしないだろう。彼を信じているから、彼に「一緒に苦しんでほしい。」と言うのだ。きっと彼は苦しみながらも潰れまい、と信じているからそう縋ってくるのだ。そして、それこそが彼女が潰れないための、もっとも強い手だてになる。苦しみながらも潰れない誰かがいることで、苦しみながらも潰れないように頑張れるのだ。
「・・・カリーナ。俺はそんなに強くない。甘いだけで、優しくもない。」
「・・・。」
 カリーナは、少し迷った後に頷いた。とても小さく、頷いた。彼女は、彼の言葉の前半だけを肯定したくて、半分だけ頷いたのだ。それが伝わったわけではない。彼女の返事が肯定でも否定でも、続く言葉は変わらないから、彼はただ続けるのみだ。
「けれど、お前が一人で苦しんできたことなのに俺は苦しめないなんて、言う気はない。お前が本当に小さい頃から抱えてきたことを、お前より一回り年を喰ってる俺が抱えられないなんて、小さかった頃のお前に対しての侮辱だろう。それに、」
 マルカブは、わずかに屈んでカリーナの頭を撫でた。子どもにするようにしながらも、マルカブの心の中は少女に対する尊敬の念で一杯になるのだ。
「お前は独りでその苦しみを抱えてきたかもしれないが、俺にはお前がいるんだ。だから遠慮せずに話せ。」
 どんな事情があったのか、どんな出来事があったのかは知らない。どうでもいい。ただ、その出来事から起きてきた苦しさを、幼い頃からたった独りで抱えてきたのなら、その忍耐や勇気や労力や覚悟にどれだけの敬意を払っても足りることなどあり得ない。彼女が独りでしてきたことを、自分には出来ないなど、言ってたまるか。
 カリーナは頭を撫でられながら、俯いた。スハイルの頭の上に、ぽつん、と水滴が落ち、スハイルは視線を上げた。カリーナがぎゅっと目を瞑りながら涙をにじませているのを見て、スハイルは首を伸ばし、
「ぴーーーーッッ!!!」
 マルカブを威嚇した。
「・・・ここは別に怒る場面じゃない。」
「ぴっぴッ!ぴっぴッ!!!」
 しっしっ!とスハイルはマルカブに向かって羽を振り、それから泣きだしたカリーナを見上げオロオロした後に、意を決してカリーナの膝の上からテーブルに飛び乗った。
「ぴぴーぴ!ぴぴーぴ!」
 スハイルはカリーナを呼んで、彼女は顔を上げたのを確認してから、くるりと彼女に長い尾羽の生えた尻を向けた。そして、ぴーよぴーよ、と歌いながら尾羽を振って踊って見せた。
 カリーナはスハイルなりの励ましや気遣いを感じて微笑・・・もうとしたが、表情筋が動いたことでボロボロと涙がこぼれ落ちた。息を吸ったことで、横隔膜が痙攣し始め、ひっくひっくとしゃくりあげ始める。スハイルはカリーナが余計に泣き出したのを見て狼狽えた後に、
「ぴーーーーーーッッッ!!!」
 と、またマルカブを威嚇した。
「・・・八つ当たりすんな。」
「ご、・・・ごめ・・・ん・・・、うれし・・・のに、涙が、出・・・!!」
「カリーナ。さっきも言ったけど、」
 マルカブはもう一度カリーナの頭を撫でてやってから、
「俺にもスハイルにも、時間だけはたっぷりある。今すぐ泣き止もうとしなくていい。涙の量なんざ決まってるんだ。先に泣いてしまえ。・・・それから、スハイル。」
 マルカブは、スハイルをむんずと掴み上げて再びカリーナの膝に戻す。自分はその前に屈んで、
「お前はここにいればいい。」
「ぴ?」
「カリーナは、言っただろうが。抱きしめていると落ち着くって。それに、泣いてる女に胸ぐらい貸せるようになれ。」
「・・・・・・、ぴ!」
 スハイルはカリーナに向き直って、ぴよ!と彼女にしがみついた。カリーナは頷いて、スハイルを抱きしめる。そうやって、しばらく声も立てずに泣いた彼女は、ゆっくりと顔を上げた。
「・・・ありがとう、もう大丈夫。」
「おう。」
「・・・、じゃあ、聞いて?・・・私のせいで死んでしまったフィデリオ・パヴァンのことを。」
 カリーナは淡々とその名前を口にした。


*****

「うーん・・・」
 樹海入り口近くの野原で、アヴィーは一人で型稽古をしている。
「・・・うーんと・・・」
 先ほどまでシェリアクに教わっていた防御の術を、一人で復習しているのだが、
「・・・・・・、なんか分からなくなっちゃったよう。」
 シェリアクに教わったときは理解できた、と思ったのだが、復習していると理解していないことが多い。アヴィーは首をひねりながら、
「・・・どこが分からないのか、分かるといいんだけどな・・・。そうすれば質問できるんだけど、それも分からないよう・・・」
 やっぱり一人で練習するのは良くないよう、といい、型を取る姿勢を止める。汗を拭いながら、もう一回シェリアクさんに聞いてみよう、と呟いて、空を見上げる。
「そろそろ4時かな。先生のところに行かなきゃ。」
 夕方から授業をお願いしているためテキストなどの入った鞄を持ち上げ、街に戻ろうとする。その耳に、刃が宙を凪ぐ音が微かに届いた。
 思わず、気を引き締める。樹海の外とはいえ、誰かが戦っているのかもしれない。だが、それ以外の音はなく、また聞こえてくる音も規則的で、素振りをしているようだった。自分のように修練中の冒険者だろう、と思って、アヴィーはそのまま街へと向かう。
 素振りらしく音は少し大きくなった。近づいているらしい。アヴィーの持ち前の好奇心が起きてきて、どんな人かちょっとだけ見てみようと思う。音のする方に向かっていき、大半が欠けた城壁に足を欠けたときだ。
 ひゅん!!と今までより高く、はっきりした音。刃が宙を凪ぐ音が・・・耳元でした。そして、首筋に冷たい感触。
 アヴィーは息を飲んで、目だけを動かし首筋に当てられたものを見た。長い刃だ。
「・・・失礼しました。魔物か何かと、勘違いしてしまいました。」
 声が真下から。声の主は城壁の下に屈んで、刃を振るったらしい。アヴィーの首筋から刃は外れる。片刃の長刀。カタナと呼ばれるものであることは、エトリア出身のアヴィーにはすぐに分かった。かの街のブシドーと呼ばれる剣士は、このカタナを使っている。
 アヴィーは刀を静かに降ろす相手を見た。彼女(髪の長い娘だった)は、二本の刀を手にしながらゆっくりと立ち上がり、アヴィーを見つめ返した。光の具合で青くも見える黒髪を一つにまとめ、異国風の鎧(といっても、エトリア出身のアヴィーにはけっして珍しくはない甲冑だ)に身を包んだ娘。花のような髪飾りは少女らしいものだったが、醸し出す雰囲気は厳しく冷たい。
 アヴィーはぱちくり、と瞬きをしてしばらく呆けていた。最初に口にしたには「シルン?」という養母の名前で、その次に口にしたのは「レンさん?」というエトリアの剣士の名前だった。
 花飾りをつけた娘は、訝しげに彼を見た。
「あ・・・、えっと、ごめんなさい。知り合いに似てたんだよ。」
 アヴィーは城壁から足を外し、ごめんなさい、と頭を下げなおした。
「邪魔しちゃって。」
「いえ、こちらこそ、驚かせてしまったようで。」
 淡々と彼女は返事を返す。アヴィーは、バツが悪そうにもう一度頭を下げてから、街に向かって走り出した。
 
(19章5話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

書いてて辛い話だったんですが、それは志水が相談業務とかやってるからです。
このあとがきで、いろいろ書こうと思いましたが、止めました。
「私」に言い聞かせなきゃいけないことは、話の中で二人がしっかり言っている。

ラストで登場しているのは、青ショーグン子です。近々加入します。
エトリア踏破ギルドのギルマスが養母なので、うちの黒ゾディはレンとツスクルとも知り合いです。
なお、黒ゾディは幼児の頃、レンツスを「ちゃん」付けで呼んでいた、という裏設定が存在します。

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