まよらなブログ

19章5話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

先週、更新お休みして申し訳ありません。風邪が治る気配がなかった・・・
正直、ちょっと更新が停滞気味です。すみません。
最終回まで辿り着ける確信はあるので、焦らずにのんびり行こうと思ってます。





それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



19章5話
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 カリーナの故郷・剣と茨の紋の国には、厳しい階級制度が存在するらしい。国土の大半が赤茶けた荒野と砂漠のその国は、よりよい土地を求めて侵略と征服を繰り返してきたらしい。そうして国土を広げたかの国は、一部の人間が征服した民を支配しているらしく、だからこそ出来上がった階級制度なのだそうだ。
 そして、その階級の最下層にいるのが、広大な国土にもともと住んでいた褐色の肌を持つ民なのだそうだ。
「・・・私、アル・ジルと会ったとき、すごく警戒してたでしょう・・・?」
 カリーナは膝の上にいるスハイルを撫でながら、ぽつぽつと話す。アル・ジルの名前を聞いて、スハイルはカリーナを見上げた。
「・・・あれはフィデリオを思い出したのもあるけど・・・、やっぱり、褐色の肌の人間に会うのが怖かったのもあるの。・・・、ううん、アル・ジルが怖かったんじゃなくて・・・、私が、怖がっていることを出してしまうんじゃないかっていうことなんだけど・・・」
 階級制度はそれくらい私のも染み着いているの、とカリーナは呟いた。マルカブはその呟きを聞きながら、カリーナはその階級制度の外側にいるような気がしてならない。それは彼女は王族だからなのかもしれない。階級制度のさらに上にいる王族は、上層民も下層民も『支配する民』であることには変わりない。
 ・・・カリーナが民を支配するもの、と考えているのかというと、そうでもないような気がするんだけどな。
 と、マルカブはぼんやりと感想を抱く。しかし話の腰を折ることもないので、口にはしない。
「・・・でもね、長い歴史があって、今は支配されてきた側が反乱を起こすようになった。それを治めきれず、妥協もするようになった。・・・それを許せない一部の貴族と、今こそ平等・・・ううん、支配権を勝ち取ろうとする多くの階級民と、綱渡りの政治をする王族がいる国・・・それが今の『剣と茨の紋の国』。」
 カリーナはため息をついた。
「今の国王は、その階級制度を変えようとした。当時、国王よりも権力を握っていた私のお祖父様はそれに反対した。それでも、国王は貴族にしか許されなかった聖騎士団への加入権を全国民に許した。そうして、聖騎士団に褐色の肌をもつ騎士がやってきた。その最初の一人が、フィデリオ・パヴァン。」
 カリーナはそこまで話し、口を噤んだ。続きを語ることに躊躇いがあるのか、話す順序を整理しているのかは分からなかった。
「・・・・・・、私が、4つのころだった。(と、恐る恐る語りだす様を見て、語ることに躊躇いがあるのだとマルカブは気がついた。)・・・、母様がお病気になって・・・床から起きられない日が続いたの・・・。私と母様は後宮から出ることは許されてなかったけど・・・、母様が父様と一緒に見たことのある花が見たいって話しているのを聞いて・・・、私、母様が元気になれば、と思って・・・花を探しにいくことにしたの。」
 昔から、決めたら行動は早いらしい、とマルカブは内心で呆れた。呆れる一方で、昔からカリーナはカリーナだと思うと胸が温かくなるのを感じてしまうのだ。それは、愛しさなのかもしれなかった。
「・・・丁度ね、庭の工事が入っていて、どさくさに紛れて外へ出たのね。でも、初めての外だったし・・・、私も小さかったから、どうしていいか分からなくて、とにかく歩いていったら・・・、見たことのない肌の色の騎士と会ったの。」
 それがフィデリオだった、とカリーナは囁いた。
「お祖父様は褐色の肌の人間を嫌って・・・ううん、憎んで、いたから、私に会わせたことはなかったし、話に出すこともなかった。私は驚いて、最初は病気なんじゃないかって思ったの。ほら、具合が悪いと顔色って変わるから。・・・だから、その・・・、すごく失礼だったんだけど・・・、具合が悪いの?って聞いたの。」
 最後は消え入りそうな声だった。カリーナは昔の自分を恥入って小さくなっている。悪意がないどころか、優しい子どもの声かけだったのに。無知は罪だと小さくなっている。
「・・・そしたら、そいつは何て答えたんだ?」
 マルカブは続きを促した。カリーナの、フィデリオ・パヴァンに対する好意的な語り口から、その褐色の騎士は小さな少女の無邪気な問いかけに気を悪くもしなかったのだろう、と推測する。
「・・・平気だよって。こういう色の人もいるんだよって言って、・・・・・・・・・、あ。」
「どうした?」
「・・・フィデリオも頭を撫でてくれた。」
 カリーナは顔をあげて、微笑んだ。マルカブも微笑を浮かべ、安心する。ああ、この少女の頭を撫でてやった大人は、俺の他にちゃんといてくれた!
「そうだ。それで、私、この人は優しい人だって思ったんだ。頭を撫でてくれるのは母様ぐらいだったから。」
 王女の頭を家臣が撫でるわけにいかないから仕方ないけど、とカリーナは言いながらも嬉しそうにしている。頭を撫でるかどうかが問題じゃないだろう、とマルカブは思う。王女だろうがなんだろうが、小さな子どもは、優しく宥められたり励まされたり誉めてもらうもんなんだ。そんな子ども時代を過ごすことが出来たマルカブは、疑いもなくそう思う。そしてそれは、頭を撫でずとも、家臣が王女に対しても、出来るはずなのだ。
 スハイルが、カリーナに甘えた声を出した。カリーナは「スハイルも撫でてほしいの?」と聞いて、スハイルの頭をよしよしと撫でる。以前、カリーナはおとーさんに似てきたよなー、とディスケが訳の分からないことを言ってきたが、これか、とマルカブは納得した。自分がカリーナの頭を撫でてきた結果、この少女が仔フクロウやドルチェのような赤ん坊の頭を優しく撫でてやるなら、それは何よりではないか。
 話が逸れちゃったね、とカリーナはスハイルを撫でながら困ったように笑い、話を戻した。
「ええっと・・・フィデリオと会って・・・そうだ、私が花を探していることを教えたら、花壇を一緒に探してくれたんだ。そこで、騎士なんだけど実は練習をさぼってるって教えてくれて・・・・・・えっと・・・その・・・」
「?何だ?」
「・・・私、小さかったからよく分かってなかったんだけど、た、多分ね、・・・逢い引き・・・?っていうの・・・?そういう最中だったんだと思うの。」
 カリーナは恥ずかしそうに小さな声で囁いた。マルカブは思わず笑いだした。
「そりゃあ、とんだお邪魔虫だったな。」
「い、今だったら、気を効かせてすぐにどこかに行くもん!アヴィーとは違うんだから!」
「ぴーーーーッ!!」
 カリーナと一緒にスハイルも抗議した。分かってるよ、とマルカブは手を振る一方で、確かにアヴィーはそういうところは気が効かないんだよな、ちゃんと教えておかないと、と相変わらず父性ばかり発揮させいる。
「と、とにかく!フィデリオは『大好きな人』を待ってて、その人もすぐに来た。その人も騎士で、子ども好きだったみたいで、遊びながら一緒に花を探してくれた。・・・今から思えば、・・・すごいことなの。」
「何が?」
「フィデリオの『大好きな人』は、白い肌で金髪でね、・・・後で分かったんだけど、騎士団長の娘・・・貴族だったの。・・・階級がぜんぜん違うのに、その二人は自然で楽しそうだったの。」
 それを見れて良かったな、とカリーナはぽつりと呟いた。カリーナがアル・ジルと初めて会ったとき、「友達になれるんじゃないかと思っている」と言ったことをマルカブは思い出す。もしかしたら、その騎士二人への憧れもあったのかもしれない。
「・・・お前とアル・ジルも、自然で楽しそうだよ。」
「・・・うん、そうだね。アル・ジルと友達になれて良かった。」
 しかしカリーナの表情は曇っていく。続く話がおそらく、彼女がずっと抱えてきた恐怖に繋がるのだ。だからマルカブは覚悟するように深呼吸した。
「・・・、すごく楽しかったの。今でも時々思い出す。・・・でもね、私、勝手に抜け出てきたでしょう・・・?そして私が、褐色の肌の人間と一緒にいる・・・。それをね、私を探しに来た騎士たちは、誘拐だって騒いで。フィデリオは何も悪くないのに、捕まってしまった。」
「・・・でも、一緒にいたフィデリオの恋人の騎士が証言してくれただろう?まして騎士団長の娘なら、」
「うん。必死に、フィデリオと私を庇ってくれた。けれど、二人ともまだ見習いで・・・、その人も捕まってしまって。・・・怖くなって泣いた私に、『大丈夫』って最後まで言ってくれた人たちだったのに・・・」
 カリーナはうつむいた。いつのまにかスハイルを撫でる手が止まっている。
「・・・、私は後宮に戻されて、部屋からも出してもらえない日がしばらく続いた。母様にもしばらく会えなくて・・・、そしてある日、お祖父様がやってきて、・・・・・・、私に盾の欠片を見せた。」
 カリーナは己の腕をしきりに擦り出す。小刻みに震え出す彼女に気づいたマルカブは、カリーナの前に屈み、腕を延ばして頭を撫でた。スハイルはぴよ!と鳴いて、カリーナにしがみついた。カリーナは口を押さえ、息を上げながら、
「・・・盾はフィデリオので・・・、フィデリオが、王宮を騒がした罰に、内乱の最前線に向かわされて・・・、そこで死んだって・・・」
 カリーナは、ひゅう、と音を立てながら息を吸い、
「恋人と私のことを庇ったみたいなの・・・全部自分のせいだから・・・私たちのことは罰するなって・・・、きっと、お祖父様が私や彼の恋人にヒドいことをするっ言って、そう言わせたの!そうして、全部の責任をとってもう十何年も続く内乱に向かわせて・・・・・・助けも出さずに・・・、・・・・・・何より酷いのは、同じ肌の色の人たちと争わせて・・・同じ肌の色の人に殺させたってことなの・・・!」
 ・・・おそらく。フィデリオへの攻撃は、他の騎士以上に苛烈なものだったろう、と思いマルカブは唸った。内乱を起こしている側から見たら、褐色の肌の人間が自分たちを裏切って国側についたように見えただろう。
「フィデリオは何も悪くないのって、私、お祖父様に言ったの・・・!は、初めてだったの、お祖父様の言うことを『違う』って言ったのは・・・!そしたら、お祖父様、頷いて、フィデリオではなくお前が悪いんだって・・・!・・・私が言いつけを守らずに外へ行ったから、フィデリオは死んだんだって・・・、もしまた言いつけを守らなかったら、誰かが死ぬぞ・・・って!」
 いつの間にか泣き出したカリーナは、マルカブすらも傷つけるような言葉を吐き出した。
「もしかしたら、今頃、お前の母が死んでいるかもな・・・って・・・!」
 マルカブは、彼女の頭を撫でていた手を彼女の背中に回して、引き寄せるようにして抱きしめた。衝動的にそうした。たった4つの女の子が、何て酷い言葉を浴びせられたのだ。怒りなのか悲しみなのか、マルカブは唸り声を上げる。そして、哀れみなのか励ましなのかただの愛しさなのか、カリーナの背中をただただ擦る。カリーナはマルカブの肩に頭を乗せて、うー、と唸るようにして泣いた。
「怖かったの、怖かったの・・・!だって母様がいなくなったら、私・・・!だから、お祖父様の言うとおりにしてきたの・・・!母様が亡くなってからもずっとそうしてきたの・・・!!フィデリオみたいな人を二度と出しちゃだめだって・・・だから、いっぱい、見捨ててしまった人たちもいるの・・・!」
 お前は悪くない、とマルカブは叫びかけた。悪くない、お前は悪くない!でも、それでこの子が救えるか?その言葉は救いになるか?俺の常識や良識と全く真逆のことをしたこの子の祖父を、「悪い」としたいだけじゃないか?勿論、この子の祖父がしたことは許されることではない。けれど、今、しなきゃいけないことは「悪い」かどうかを口にすることではない。
 マルカブは胸くそ悪い、としか言いようのない感情を胸の内に溜め込みながらも、必死に頭を巡らせた。この子はどうして、この話をしたのか。そこには、せめて応えたいのだ。
 口を開けば泣きそうだった。なんでこの子がそんな目に遭わなきゃいけないんだとか、なんでその時に俺はこの子の傍にいれなかったのか、とか。神様に食ってかかるしかないようなことにまで憤り、嘆く。
「・・・・・・、カリーナ、」
 情けないことに声は震えていた。それでも必死で応えるのだ。
「・・・、よく話してくれた。そして、よく耐えて生きてきてくれた。」
 それが精一杯だった。マルカブは「辛かっただろうに」と呟いて鼻をすすった後、もう何も言えずにカリーナの後頭部を撫でるだけだった。カリーナは、ん、と頷いて、マルカブのシャツの背中を掴んでしがみついた。膝の上のスハイルが、
「ぴーーーーーッ!!!」
 と鳴いて、もぞもぞ二人の間から抜け出した。
「・・・ご、ごめん、スハイル。押しつぶしちゃうところだったよね・・・」
「ぴよッ!・・・、ぴよーぴん!!ぴっぴッ!!」
 スハイルは飛び上がってマルカブの顔を蹴りながら、カリーナから引き離そうとする。マルカブはそれを払いのけながら、それでもカリーナを少し離して彼女の顔をのぞき込んだ。
「・・・、正直、何て言ってやればいいか分からない。・・・おまけに俺まで泣いてしまってごめんな。情けない。」
「・・・なんで謝るの?」
 カリーナはぽろりと涙をこぼしながら、小さく微笑んだ。
「・・・私は、苦しいことを分かってほしいって言ったんだもの・・・。マルカブも苦しくなったから、泣いてくれてるだよね。私はマルカブのそういうとこ大好きだし・・・だから、謝らないで。」
「・・・ん。」
 マルカブは大きく鼻をすすってから、カリーナの頭を強めに撫でる。カリーナは泣きながら嬉しそうにして、それでも少し照れくさくて、
「・・・確かに、ちょっと情けないけどね。」
 そう言うと、スハイルが大きな声で同意を示した。


(20章に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

うちの赤パイとプリ子には、
カプではないけどギリギリ感がでればいいなあ、と思って書いてます。
そしてその度に、うちの赤パイを体育館裏に呼び出したい気持ちに駆られます。


もう一捻り入れるつもりだったんだけど長くなりすぎた。次章に回します、多分。
次回はもう20章ですね。早いものです。

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