まよらなブログ

20章2話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

お休みが続いて申し訳ありません。
本日、二話分アップしましたので、この下に「20章1話」が更新されてます。
そちらから先にお読みください。


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

20章2話
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 ・・・・・・・・・、大きな地震があった。
 街も王宮も騒がしくなり、海は荒れ船は消え、街にはフカビトも現れるようになった。王は被害のあった場所を回り、戦いも行い、王宮を留守にすることも増えた。
 ある日、王によって一人のフカビトが捕らえられた。王宮にフカビトが捕らえられていることが人々の話題に上らなくなった頃、姫がこっそりと親友である侍女に告げた。「兄様のお手伝いができることになったの。」その後、数日、姫は侍女の前から消えた。侍女は、姫は兄王の手伝いに行っているのだろう、と考えて、二人の無事を祈りながら待っていた。数日後、姫は帰ってきた。元々体の弱い姫だったが、白い顔をますます白くさせて。しかし、「これで、フカビトの王は生まれない。」と誇らしげにそう言った。
 「でもね。」と無邪気な姫は続けたのだ。
「兄様が捕らえたフカビトも、声をかけたら返事を返してくれたの。私に花も渡してくれた。もしかしたら、友達になれるかもしれない。」
 馬鹿なことを仰らないで、と侍女は訴える。御身に何かあったらどうするのです。フカビトも姫様を油断させて傷つけるやもしれません、と侍女は訴えた。姫は、そうね、と笑って聞き流した。
 とはいえ、姫には危害を加えられた様子もなく嬉しそうに兄の力になれたことを語る姫を見て、侍女は本当に心の底から安堵したのだ。きっと、きっと事態は好転する。この海の都を遅う異変も収まり、不安も消え、王も無事に王宮に帰ってくる、とそう信じられたのだ。
 ・・・実際、王はすぐに帰ってきた。血相を変えて帰ってきた。そして、何故だ、と姫に問いかけた。そして重臣と、いつの頃からか王宮に入り浸るようになった学者たちに、何故だ!?と詰め寄った。
 何故、妹を巻き込んだ。何故、妹にこんな恐ろしい術を施した。貴様等は、妹から人としての幸せを奪うのか。そう詰め寄った。その後、その重臣と学者たちの姿を見ることはなかった。
 数日後、兄に叱られたと消沈していた姫の元に、兄王が訪れた。彼は、詫びた。そして、約束をする。それは兄と妹の間で何度となくされた約束だったが、兄王は本当に真剣な眼差しで誓ったのだ。
「【白亜の供物】を見つけてこよう。お前の呪いを必ず解こう。」
 だから、待っていてほしい。少し長くなるかもしれないが、寂しさに負けずに待っていてほしい。民と手を取りながら待っていれば、その寂しさも紛れよう。だからどうか、王族として人間として、この国を愛しながら待っていてほしいのだ。小指を絡めて、そう約束を一つ。
 海都の中心部が海に沈んだのは、その後だった。
 約束は、果たされていない。兄は戻ってこないし、妹は国を愛してなどいない。


 ・・・・・・しかし、約束が果たされることを願っているから、足掻いている。
 かつての侍女は、元老院の窓から外を見つめる。外では、肩に仔フクロウを留めた赤毛の男が、元老院から街に向かって歩いていく。仔フクロウはチラチラと元老院を振り返り、男は宥めるようにフクロウを撫でる。何度か繰り返して、仔フクロウは前を向いた。そして、街へと出て行った。
 かつての侍女は、息を吐いた。微笑ましくも憎々しい。
 もう一度ぐらい、うちの姫様だって兄王に頭を撫でてもらってもいいはずだ。多くの民に許されているささやかな幸せを、甘受してもいいはずだ。
 微笑ましいのに憎々しい。疼くような思いは、もう一度の溜息で抑えた。その時、扉がノックされ、姫君の来訪が伝えられた。



*****

「ぴぴーぴ!ぴぴーぴーー!」
 蝶亭の前で、スハイルは大泣きしながらカリーナにしがみついた。
「どうしたの?スハイル?」
 カリーナはスハイルを抱きしめながら、よしよしと宥めた。
「マルカブにイジメられたの?」
「・・・なんで俺がガキのフクロウをイジメる必要があるんだよ。」
「ぴよッ!ぴよーぴん、ぴぴぴよー!」
「・・・・・・お前、今、俺がイジメたって言っただろ?」
「しかし、今日はなんだか長かったねえ。」
 クー・シーが髭を撫でながら、のーんびりと聞く。
「何かあったのかね?」
 マルカブは、帽子を外して頭を掻いた。
「・・・、ちょっと、姫さんと話してな。」
「ぴーーー・・・!」
 スハイルが身を竦めて震え出す。
「・・・何かあったの?」
 腕の中のスハイルの様子に、カリーナは心配そうに尋ねた。マルカブはスハイルをぽんぽん!と撫でながら、
「・・・いや。・・・姫さん、そこそこ元気そうだったよ。・・・それより、アヴィーとディスケはどうした?」
「ディスケは、アンドロの材料を探しにネイピア商店にいくって。もしかしたら、深都の支店まで行かなきゃいけないかもって言ってた。アヴィーは先生のところにいって、本を借りてくるって。ディスケは後でスハイルのことを宿まで迎えにくるって言ってたよ。」
「わしもこの後、薬の買い出しにいくから。先に帰っててよ。あ、おとーさん、薬代ちょうだい。」
「・・・その薬は探索で使う薬なのか?」
「いや、わしの関節痛の薬なんだけどね。」
「自分の金で買え。」
「おとーさんはケチんぼだねー。」
「ぴよーぴん、ぴぴんよぴよー。」
 だから何でお前はいちいち真似するんだ、と、マルカブがスハイルの頭を掴んで力を込める。ぴー!と声をあげるスハイルと「スハイルのせいじゃないでしょ!」と文句をいうカリーナを見つつ、じゃあ行ってくるねー、とクー・シーはさっさと出かけていった。
 カリーナはスハイルの頭を撫でながら、
「あ、マルカブ。帰ったら、剣の稽古に付き合ってもらってもいい?疲れてるなら、ムリしなくてもいいけど・・・」
「構わないけど、どうした急に。」
「うん。・・・体、動かしてた方が、いろいろ考えなくてすむし。」
 小さな声でそう言うカリーナを、マルカブは心配そうに見つめ、
「お前、この前、話したことを・・・」
「うん。最近ね、思い出してる。・・・あ、でも、話したことは良かったと思ってるの。それに、・・・なんて言うのかな・・・思い出すことは多くなってるんだけど・・・、考え直している感じなの。でも、まだ纏まらなくて・・・ぐるぐる回ってる。」
 そして、カリーナは話題を変えるようにして、微笑んだ。
「それに、四階層は魔物も強いし。ちょっと特訓しておこうと思って。」
 そう言って微笑む少女の気概を買って、マルカブはカリーナの頭を撫でながら、分かった、とだけ答える。スハイルが、ばっさばっさと翼を振った。
「ぴぴーぴ!ぴよよえー!」
 スハイルの応援に、カリーナは微笑んだ。
「うん。頑張るね。」


*****


「・・・『アルゴー』が『ファクト』のアンドロを作成しているのか?」
「ありゃりゃ、バレちゃった?」
 深都から海都に戻る磁軸の前で、オランピアが怪訝そうにディスケを呼び止めた。ディスケは、深都のネイピア支店で手に入れたアンドロ用の基盤を振りながら、
「でもさ、しょうがないんだよ。『ファクト』はこういうの苦手だからさ。完成したアンドロは『ファクト』に渡すから、気にしないでくれよ。」
「振るな。基盤はしまえ。埃がついたら誤作動の原因になる。」
 ディスケの言い訳は無視して、オランピアは注意を口にした。そうだなーとディスケは気の抜けた返事をしつつ、基盤を布にくるんだ。オランピアはその動作を見つめつつ、
「アンドロの設計図は、深王様が『ファクト』にお渡しになったものだ。今は『ファクト』に所有権がある。それを『ファクト』が誰に預けようと、私にそれを咎める権利はない。」
「俺、キミのそういう潔いトコ、嫌いじゃないなー。」
 わはは、と笑いながらのディスケの軽口に、オランピアは一瞬固まり、そして人間だったら、間違いなくため息をつくような間があった。
「・・・・・・アスピス・トゥレイス・イオタスと同じことを言うのか。」
「・・・、へえ?」
「・・・彼には貴方の方が似ている。アミディス・クシーダ・イオタスよりも。」
「そりゃ、曾々祖父さんは不真面目な人間だったんだな。俺よりアミディスに似てれば、きっと真面目な兵士だったんだろうにさ。」
 ディスケはそう言って、肩を竦め、それから声を固くした。
「・・・・・・、お前は覚えているんだな。アミディスが生きていたことも、曾々祖父さんが生きていたときのことも。」
 深王は覚えていないのに、とは口にしなかったが、言葉の裏をオランピアは汲み取った。
「深王様は覚えようとしないのではない。忘れてしまわれるのだ。」
「・・・定期的に記憶を失うそうだな。」
「・・・どこで聞いた。」
 オランピアの問いにディスケは答えない。肩も竦めない。ただ、じっとオランピアを見詰める。問いはこちらがしたのだ、と。そう視線だけで訴える。
 折れたのはオランピアだ。
「・・・、そうでもしなくては、あの方は戦ってこられなかった。」
「それは記憶の容量が増えすぎて、ということか?100年以上生きているなら、人間の脳の容量を超えるかもしれないしな。それとも・・・、記憶が心を殺してしまう、ということか?」
「・・・前者だ。」
 と、彼女は呟いた。
「体を作り替え、増えすぎた記憶を消去する。その中で、忘れられた兵士もいる。そうして、深王様は人としての寿命を越えて、生きてこられた。だが・・・、」
 だが、とオランピアはもう一度囁いた。声は、震えているようにも聞こえるのだ。
「忘れてはいけない約束を忘れたのは・・・、そうしなくては心が潰れてしまうからだ。」
「・・・忘れてはいけなかったと、キミは思っているんだ?」
「・・・機械の私が、人の心を語るなどおこがましいけれど、・・・私はそう、思っている。人の心を守るために、・・・人の心を封じてしまったのだから。」
「・・・それは守るって言わないだろう、オランピア。」
 ディスケは厳しく断言した。
「逃げたって言うんだ。」
 オランピアは弾かれたようにディスケを見つめ、そして肩を落とすのだ。
「・・・、そうなのかもしれない。・・・だが、イオタスの末裔。深王様がお心を封じたのは、貴方の先祖たちの死を深く悲しんだから。」
「・・・・・・・・・・・・、なあ、オランピア。もう、こんなこと止めにしない?」
「・・・なにを?」
「何って。お前等も海都も、はっきりしたことを、なーーんにも俺らに伝えてない。俺らに伝えなくてもいい、相手に伝えにいけよ。そうじゃなきゃ、結局、本当に言いたいことはなーーーーんにも伝わらなくて、誤解ばっかり生むんだよ。」
 何か思い当たることがあるのか、オランピアはただ「・・・ああ。」と静かに答えた。諦観が漂うその返事に、オランピアは命令に従うことしか出来ないのだ、とディスケは急に理解をし、少し考えを改める。
(・・・必要なことを伝えろって言う前に、・・・俺も伝えなきゃいけないんだよな。)
 結局、その積み重ねなのだ。ささやかなやり取りの積み重ねの先に、本当に重要なことの共有がある。・・・もう少し積み重ねたかったな、とディスケは思う。アミディスとのささやかな交流を、もう少し積み重ねたかった。だからこそ、今、積み重ねられる相手がいるなら、積み重ねておくべきなのだ。
 ディスケは、なあ、とオランピアに声を掛けた。
「・・・100年、深都は頑張ってきた。海都の助けは必要ないかもしれない。けど、あの海の上の都は故郷なんだろう?もうちょっと伝えあってもいいはずだし、海都が王と技術を無くして100年も頑張ってきたことも労ってやっていいはずだし、深都が戦ってきたことを感謝されていいはずなんだよ。・・・少なくとも、俺はアモロっ子として、キミやアミディスたちが戦ってきたことに、感謝してるよ?」
 オランピアはしばらく沈黙し、ゆっくりと顔を上げた。その表情に、かすかに微笑みが混ざっていることに、ディスケは気がついた。ああ、この子はこういう顔も出来るのか。
「・・・ありがとう。私たちの100年を労わってくれて。」
 静かに告げられた礼に、ディスケは「どういたしまして。」と微笑を返した。返しながら、これから造り上げるアンドロもこんな風に笑えたらいいな、と思うし、
 ・・・深都と海都でこういう風に笑い合えたらいいな、と思うのだ。
 

(20章3話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

すさまじい勢いで、ネタバレをかます回想から始まっておりますが、
実は「え?これって、つまりこういうこと?」というマイ解釈も加わっているので、
世界樹3プレイヤーは逆に読みにくい冒頭かもしれません。

後半のオランピアとの会話は
真ルートに行く為のアイテムゲットフラグを立てるためのフラグを(以下略)
メインシナリオが「唐突なんだよセカイジュッ!」ということが多いので、
フラグを立てるためのフラグを考えたり
以前に張った伏線を慌てて確認したり、今、ちょっとめんどくさいトコです。(笑)

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