まよらなブログ

20章3話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

本日の話、またしてもいきなり回想から始まっております。
まあ、ちょっと読み進めると、誰と誰の会話なのか分かる・・・・・・・・・と思いますが、
分からなくても、あとがきのようなもの、にて、補足中なので大丈夫!


そうそう。
実は本日この更新に合わせて、
世界樹4のED後、NPCの話もアップしようかと思ってプロットを作ったものの
「・・・なんか恥ずかしいわああああ!!」と感じて、最初の一文が書き出せません!
いつだってそうなんです!新ジャンルや新キャラで二次創作をするときに、
最初の一文を書き出す勇気・・・というか羞恥心を捨て去る勇気を持つまでに
非常に時間が掛かるんです!二次創作サイトを始めて10年ぐらい経つのに!(笑)

ま、近々、アップするかもしれませんので、
その時は、こっちの話ともどもよろしくお願いします。
ローさんと皇子と巫女の布陣を作って、プロットを作って、見返して、
「・・・・・・世界樹3のウチのメイン三人とやってること変わらねえな。」と
と正直思いましたが、まあ、その時はその時です。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



20章3話
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「・・・おかしいの。」
 と、呟いた機兵に、長身の男は顔を上げた。
「何が?」
「私が深王様によって造られて5年ほど。私は貴方たちによって知識も得たし、戦いの仕方も、貴方たちとの会話の仕方も覚えた。」
「そうだね。チェスの仕方も覚えた。」
 二人の間には白黒市松模様のゲーム盤。機兵が白で、男が黒のようだった。黒が明らかに優勢だ。機兵はそのチェス盤を眺めながら、不安そうに語る。
「知識が増えれば増えるほど・・・、私の思考と行動の間に・・・わずかな空白が生じている。」
「プチ・フリーズってやつかな。」
 ちょっとイラッとするよな、と男は笑い、駒を移動させる。機兵は神妙な顔で、
「私は貴方を苛立たせている?」
「あ、ごめん。そういう意味で言ったんじゃないんだ。ただ、使っている道具が時々勝手に固まるだろ。すぐに直るんだけど、使ってる側はちょっとイラッと・・・」
 と、そこまで言って男は頭を掻いた。
「いや、ごめん。これも誤解されるな。君を機械だと言っているわけじゃないんだ。」
「私は機械。」
「そうなんだけどそうじゃないんだ。その・・・そこにある電気スタンドやトースターとは違うんだ。」
「・・・どういう風に?」
「じゃあ、君は、自分が電気スタンドと同じだと思うの?」
「・・・役割が違うだけ。そう、私は認識している。」
「そう!その『認識』ってやつだよ!」
 男は両手を広げて、
「君には『認識』がある。けど、電気スタンドにはない。いや、あるのかもしれないけど、たぶん、無い。その点で、君は、俺たちが『機械』とするものとは違う。」
「けれど、私は人間でもない。」
 機兵はそう言い、駒を動かす。白い騎士は、斜め前に黒の女王を見た。
「そうだね。しかし、魔物でもフカビトでもない。」
「・・・魔物、と言えば・・・石像系の魔物は『機械』・・・?」
「・・・ちょっとその定義は置いておこうか。ええっと、そもそもなんだっけ?君の思考と行動の間に『空白』が生じてる・・・だっけ?」
 機兵は一つ頷いた。
「深王様に見ていただいて、異常はない、と。定期メンテナンスも行っている。けれど・・・その『空白』は広がるばかり・・・。コンマ数秒だから貴方たちは気づかないけれど・・・」
「それって、どんなときに起こるか、分かる?」
「・・・最も強く異常を感じたのは・・・カーディナルを囮にフカビトを討ったとき・・・。もっと違う方法があるのではないかと・・・作戦実行直前で・・・考え・・・いや妄想が頭をよぎった・・・。その前は、フィックスドに弟の安否を伝えるとき・・・。すぐに明らかになる嘘をついてでも伝えずにいた方がいいのかと、そう一瞬考えた。ミュータブルが海都に帰りたいと言ったとき・・・私はそれを叱咤すべきなのに・・・何も言えなかった。それも、『空白』。」
 機兵はそう言い、そして呆気にとられている男の表情に気がついた。機兵は盤上へ視線を落とし、
「・・・私は不良品なのでしょう。ならば、処分されるよう、深王様に、」
「何言ってるんだ!君の『空白』は、知的生命体だからこそだよ!」
 男はそう言って身を乗り出してきた。目がきらきら輝いている。
「それはね、オランピア!人が『葛藤』と呼ぶものだ!」
「葛藤・・・?言葉は知っている・・・とても非合理な現象・・・。」
「ああ、そうだよ!非合理さ!二つ以上の、同じだけの強さを持った要求が同時に存在して、どれも選べなくなるっていう状態なんだから。でも、何が一番正しいかとか、自分はどうあるべきかとか、いくつも選べる状態だからこそ選べなくなるのは、本当に『人間らしく』なきゃできないことだ。それは、自分で自分にとっての『よりよい』幸福を選ぼうとすることなんだ。与えれた役割だけをこなす機械には、絶対にない心理状態だよ。」
「・・・しかし、それでは・・・役割をこなせない。」
「あのね、俺たちは確かに【魔】を討つためにここにいる。俺は嫁さんも子どもも置いてきた。そこに葛藤がなかったなんて強がりでも言えないし、今だって、この街から逃げ出してアーモロードに戻っても間違ってないと思ってる。ここで戦うことも、アーモロードに戻ることも、どっちも間違いじゃないから、時々立ち止まってしまうんだ。今、戻ればいいんじゃないかって。それは、君の言う『空白』なんだろうね。そして、それは毎朝起きる度に考えるよ。今日、アーモロードに帰ってもいいんじゃないかって。」
 毎日が葛藤だよ、と男は苦笑した。機兵は、また言葉を無くすのだ。ただの機械なら・・・機械であるべきなら、「この街からは出られない。あなたの言っていることは、非生産的な妄言だ。」と間髪入れずに口にするはずなのに、そんな言葉を口にしてはいけない、と彼女の『何か』が告げている。そんな悲しいことは口にしてはいけない、と機能の奥の方で『何か』が蠢いているのに、代わりに告げる言葉を持たない。
「・・・それでも、俺は選んだんだよ。嫁さんと生まれてくる子どもを守るために、こっちで戦うことを選んだんだ。それからの人生を葛藤を続けながら生きていくことをね、俺も妻も選んだんだ。少なくとも、逃げてはいないよ。」
 男は盤面を見ながら、まるで独り言のように呟いた。盤面では、白騎士が黒の女王を見たままで動きは無い。
「・・・何から?」
「うん?」
「何から、逃げていないの?」
「うん・・・難しいね。・・・そうだな、幸せになる・・・幸せにするために今を生きていくことから、かな。」 
「・・・我慢をする、ということ?」
「・・・その応用力、やっぱり君は機械じゃないよ。」
「・・・?」
「ああ、いいや。この話は、ちょっとまた長くなるし。ともかくね。その『空白』を大事にしてほしいな、俺としては。それは君が、ちゃんと物事を自分の頭で考えて・・・自分以外のことも見ているから、起こることなんだよ。視野が狭けりゃ葛藤なんか起こらないし、自分の意志もなきゃ葛藤しようもない。それでも選んでいった選択の先に、信念っていうのが出来上がる。・・・それは、人間でも機兵でも、人格を持って生きてくヤツには必要なものなんだ。」
 と、そこまで語り、男はニヤっと笑って、
「・・・いやだな、俺も年をとったね。女の子相手に、こういうことを語るようになるなんてさ。」
「・・・この話に性別は関係ないのでは。」
「いいや。こういう話は、ちょっと大きくなった息子相手にしたいもんだよ。まあ、俺もお父さんになってるんだし、大目に見ようかな。生まれてる子どもが、男の子か女の子かは分からないけど。」
「・・・どっちがいい?」
「何が?」
「アーモロードにいる、あなたの子ども。男の子か、女の子か。」
 機兵の質問に、男はきょとん、とした後に、いきなり笑いだした。機兵は眉を寄せた。
「私は、おかしなことを聞いた・・・?」
「い、いや、ごめん。・・・いや、ちょっと感動しちゃって・・・!戦うことだけ知っていればいいって、生まれたばかりのころは言っていた子が・・・、世間話に、こんな相づちを打ってくれるなんて!」
 君は大人になったなあ、と男は腕を伸ばして機兵の頭を乱暴に撫でた。機兵は驚いた様子でしばらく男を見つめ、
「大人?これが?」
「ん?厳密にはまだまだ子どもだよ。でも、ほら、俺に歩み寄ってきたから、そういう質問をしたんだろう?それは、子どもよりちょっと大人だよ。」
「・・・よく分からない。」
「うん、言ってる俺もよく分からない。」
 男の言葉に、機兵はぱちぱちと瞬きをして顔を上げた。その顔を見て、男は吹き出す。
「・・・からかったの?」
「いや、可愛いなと思って。・・・生まれている子が、君みたいな娘になっていたら嬉しいかな。まあ、元気な子ならそれでいいけど。」
 そして、男は溜め息をつく。
「・・・一つ聞いてもいいかな?」
「私が答えられることであれば。」
「ありがとう。・・・俺がさ、もう二度と会えない家族のことを話すのは・・・おかしいと思う?」
「答えられる。おかしくない。」
「ありがとう。俺も、そう思ってるんだ。多分、多くの兵士はそう思ってる。会えないからこそ、語って慰めるんだ、自分自身を。それ以上のことは、望んでいない。」
「・・・ならば、何故、こんな質問を・・・?」
「・・・俺は、陛下が心配だ。」
 男の声が急に低くなった。機兵は姿勢を正す。
「深王様が?」
 男は首を振った。
「・・・その呼び方も、心配なんだ。あの人はアーモロードの王だ。俺たちは二度とアーモロードに帰れなくても、この街はアーモロードの一部のはずだ。なのに、なんでここを『深都』と呼び、王は己を『深王』と呼ばせようとする。・・・ここはあの海の都ではない、と宣言したら・・・本当の意味で、俺たちは帰る場所を無くしてしまう。」
「私は、この海に沈んだ街で生まれたから・・・あなたの言っていることを正しく理解できるかは分からない。・・・ただ、あなたの発言に・・・感傷は感じるが、非合理性はないと判断はできる。」
 男は情けなく苦笑した。
「泣き言のようだけど言ってることは分からなくもないってことだね。」
「ただ・・・それと、家族を語ることがおかしくないこと・・・そこにどんな繋がりが・・・?」
「陛下に妹君がいるのは知っている?」
「深王様ご自身からお話を聞いたことがある。お体の弱い妹君で、深王様は非常に心配されていた・・・。妹君と約束したことがあると・・・そう話されていた。」
「・・・ああ。陛下のその心配は間違っちゃいないし、戦いとは別にその約束を果たそうとすることも間違っちゃいないんだ。なのに、あの人は・・・その心配をしてはいけないと・・・戦い以外のことを気にしてはいけないと・・・、己に課し始めている。」
「?」
「世界の為に戦う王が、一人の妹を思い煩ってはいけないと・・・そう、覚悟し始めている。でも、そんなの違うよ。俺は、世界も家族も大切だし、どっちが重いとかそんなこと決める必要もないことだし、どっちかを選べずに葛藤することも間違ってないよ。」
 陛下は葛藤を放棄するつもりなんじゃないか、と男は口にして、顔を上げた。
「葛藤することは苦しいことだよ。けど・・・それは人間らしさだ。それを失ったとき・・・、あの人は・・・『王』という機械になってしまうんじゃないかと、そう、思う。」
「・・・それは、いけないこと?」
「・・・目的に達するためには、一番の近道かも知れないね。けれど、目的と手段が混ざりあってしまう可能性が出てくるし・・・、何より・・・葛藤の苦しさから逃げただけの自分を美化してしまう。それは・・・、自己満足だし歩み寄りもしない、だから成長もしない。・・・そして、誰も幸せに出来ない。」
 自分自身すらも、と男はうめくように呟いた。機兵は、分からない、と呟いたが、
「・・・あなたが、深王様を心配していることは分かる。」
「そうだね。」
「・・・私にもいつか、あなたの言ったことが分かる日が来る・・・?その時が来たら、私はあなたとのこの話を思い出せるだろうか・・・。」
「忘れてしまったっていいよ。君が永遠に陛下の味方だってことは、俺は知ってるんだから。だから、この話を思い出さなくとも、君はきっと陛下の力になろうとする。それで十分だよ。」
「・・・しかし、それでは、私に様々なことを教えてくれたあなたに報いることが出来ない。」
「・・・そんなことは考えなくてもいいんだよ。報いてほしくて、俺は君にいろんなことを教えた訳じゃないんだから。」
「いいえ、トゥレイス。」
 機兵はきっぱりと、男を見つめた。
「それでは私の気が済まない。だから、私はこの話を忘れない。」
「・・・・・・、君は本当に潔いなあ、オランピア。そういうところ、好きだよ。」
 トゥレイスと呼ばれた男は、オランピアと呼んだ機兵に向かって微笑んだ。
「いつまでも、そうでいてくれ。」


*****


 定期メンテナンスを終えたオランピアは、浮かび上がるように目覚めた。瞼をこする。涙は、流れていなかった。流れるはずも無かったが。
「・・・、思い出した。」
 と、彼女は呟いた。メンテナンス中はセーフモードで起動しているというのに、95年近く前の会話を夢見るように再生していたらしい。
 きっとトゥレイスの曾々孫が彼に似ていたからだ、とオランピアは考えながら、メンテナンス用の機材から降りる。周囲にいた技師が、異常は見あたらなかったことを告げる。
 セーフモードで記憶の再生を行うなど、不具合もいいところだ。なのに、いつも異常は見あたらない。もうオランピアは、その『異常』に慣れっこになっていて、技師に礼を言って部屋から立ち去った。
 『・・・それは守るって言わないだろう、オランピア。逃げたって言うんだ。』
 昼に言われた言葉が、不意に再生される。曾々孫はトゥレイスと同じことを言っていた。そして深王はトゥレイスが心配したように、葛藤を封じ、約束を忘れ、戦いに没頭している。
 私のことを永遠に深王様の味方だろうから、と言ってくれた彼に、今の私は報いているだろうか。そう考えて、オランピアは立ち止まった。様々なことを教えてくれた彼に、生まれている子が自分のような女の子だったらいい、とまで言ってくれた彼に、大人になったなと頭を撫でてくれた彼に、私は報いているだろうか。
 オランピアはじっと床を見つめた。後悔とも恥ともつかぬ思いが、彼女を固める。人間だったら、多分涙が床に落ちるのだろう、と彼女は思う。けれど涙は流れない。その事実がトゥレイスへの冒涜のようで、オランピアはせめて瞼を拭うのだ。
 しばらく床を眺めた後、オランピアは顔を上げた。せめて彼に報いる方法があるとするならば。
 彼に似た男たちのいる、あの『アルゴー』に一つの可能性を渡しにいこう、と。そう決意した。


(20章4話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

いきなり95年ぐらい前の会話から始まりました。
作られて5年目のオランピアと眼鏡バリの曾々じいちゃんの若い頃です。
オランピアが女の子っぽい喋り方なのは、曾々じいちゃんと仲良しだからです。
曾々じいちゃん、眼鏡バリ以上にヒューズさんっぽくなった。(笑)
ともあれ、この回想によって真ルートへのアイテムゲットフラグ(*深都側)が立ちました。


こんな曾々じいちゃんに深都で二人目の奥さんが出来るまでですが、
新婚だった部下が任務で亡くなり、その妻の後見人としてその後の生活の世話をしているうちに
愛情が芽生えたという映画みたいなロマンスがあり、60歳前ぐらいで事実婚状態になって、
それで生まれた子がアミディスの祖父、という設定は存在してます。

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