まよらなブログ

21章1話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

今日の話もいきなり過去回想から始まっております。
7年前のエトリアが舞台です。子どもを書くのは楽しいですね。


あ、あと今日はこの下の記事で
志水的世界樹4NPC話をアップしております。
興味のある方は、こちらどうぞ。
ED後で赤竜戦後で途中から登場するNPCキャラがメインなので、
ネタバレは困る!という方はスルーしてください。


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



21章1話
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 ・・・・・・・・・、しくしく、と子どもの泣き声がする。
 人参の皮むきに悪戦苦闘していた女性は、改めて耳を澄まし、包丁を持ったまま勝手口から飛び出した。
「アヴィー!?どうした、腹が痛むか!?怪我をしたか!?」
 血相を変えて台所の勝手口を開けると、勝手口前の階段に座って、目に入れても痛くない・・・むしろ目に入れてしまいたいと溺愛している男の子がいる。涙を溜めて振り返る7歳ほどの子どもの顔に、犬(この夏にハイラガでもらってきた犬だ。生後6ヶ月ほどだが、大型犬なので体は大きい。)がふんふんと鼻先を寄せた。
「な・・・なんでもないよう!」
 ごしごし!と袖で顔をこする子どもの元に、女性は屈んだ。持ってきてしまった包丁は、背後にこっそり置いておく。
「どこか痛かったり気持ち悪かったら、言うのだぞ?」
「・・・、シルン。」
「うむ。」
「・・・僕、ほんとに、なんでもないんだよ。」
「・・・うむ。そうだな、『何でもない』のだな。」
 女性の問いかけに、子どもは「ん。」と頷いた。うむ、と女性は頷いてから、
「・・・しかし、何でもないのに泣きたくなることはある。」
 女性は笑い、腕を広げた。
「そういうときは、私の胸に抱きつけばよいのだぞ!」
 子どもはじっと女性を見つめてから、「シルンー」と女性の胸に抱きついた。よしよし、と女性は子どもを撫でながら、
「今日は『何でもない』が、何かあった時は遠慮せず言うのだぞ。」
「・・・・・・ん。」
 子どもは女性の胸にしがみついて、鼻をすする。しばらく無言で撫でられた後に、
「・・・・・・シルン。」
「うむ?」
「シルンは、僕がいると、めいわく?」
「何故だッ!?私が迷惑してるように見えるかッ!?」
 ぎゅむ!と子どもを抱きしめながら、女性はショックだ!と叫んだ。「くるしいよう!」と子どもはパタパタ腕を振る。
「何故、そう思ったのだ!?も・・・もしや、アヴィー『が』、私と一緒だと迷惑なのでは・・・!?」
 そのときはハッキリ言うのだぞ、私も考え直すからな、と女性は狼狽えながらも宣言する。「ちがうよう!」と子どもは、女性のふくよかな胸から顔を上げ、
「僕のせいで、シルンがたいへんだって、みんなが言うから・・・!」
 と、言ってから、はっ!と口を噤んだ。
「・・・・・・・・・・・・ッどこのどいつだッ!?私のアヴィーにそんなことを言ったのはッ!?盾の錆にしてくれるわッッ!!」
 女性は立ち上がり、「戦支度を整えるぞ!カーラも付いてこい!!」と犬にも命じて家の中に入ろうとする。「まってよう!」と子どもは女性の服を掴んで止めた。
「シルン、【しーるどすまいと】したらダメーーー!」
 ケンカはダメー!と子どもが泣きだし、女性は慌てて屈みなおした。
「な、泣くな、アヴィー!ほんの冗談だ!本当だぞ!」
「ほんとう?」
「うむ!いくら私でも民間人にシールドスマイトはせん!」
 どうだろうなあ、と思ったのは、その場の様子を眺めている犬だけだった。子どもは、うん、と頷いた。
「・・・それで、アヴィー。なぜ、そのようなことを言われたか分かるか?私は何も大変ではないぞ。」
「・・・・・・、シルンは、僕のお父さんでもお兄ちゃんでもないでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・、ちょっと待て、何故そこで『お父さん』と『お兄ちゃん』なのだ?そこは、『お母さん』か『お姉ちゃん』と言うべきではないか?」
「・・・僕、まちがえた・・・?」
 不安そうに聞く子どもの様子に、女性は首を振った。
「い、いや!いいのだぞ!ささいな問題だ!それで、私がアヴィーの血縁者でないことがどうしたというのだ?」
「・・・それなのに、僕のこと、お家にいさせてくれるでしょう?」
「うむ!当然だ!」
「・・・シルン、おしごといそがしいし・・・僕がいると、たいへんなんだって。」
「確かに仕事は忙しいし大変だが、仕事とはそういうものだぞ。」
「あとね、僕がいると、シルン、けっこんできないの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、近所のオバサマ方の井戸端会議でも盗み聞きしたか、アヴィー・・・。そんな世迷い言は聞くな!耳が腐るぞ!!」
「お耳、クサっちゃうの!?」
 子どもは両耳を押さえて、うわーん!と泣き出した。女性は慌てて、
「だ、大丈夫だぞアヴィー。いたいのいたいのとんでけーすれば、大丈夫だ。」
「いたくないよう!」
「いいのだ!汎用性が高いのだ!」
 そう言い、子どもの耳を撫でて、とんでけー!をした。そして、無駄に自信たっぷりに、
「うむ!これでよし!」
 と、頷く。女性はいつでも(必要以上に)自信たっぷりなのだが、その態度は子どもを安心させるには十分だった。子どもは、うん、と頷いた。
「アヴィー。それで、自分がいると私が忙しくなったり、結婚できないと思って、悲しくなったのか?」
「うん。だって、おばちゃんたち、言ってたよう。女のしあわせ が、にげるって。」
 近所の下世話なオバサマどもを盾でぶん殴る算段を立て始めた女性だが、それを察した犬が「わん!」と吠えて思い留まらせた。
「シルンのしあわせ が にげたら、僕、やだよう。」
 そうして、しくしく、と子どもはまた泣き出した。なんて優しい子なのだ・・・!と女性はメロメロになり、子どもに頬ずりしたい気持ちに駆られるが、それをぐっと我慢して、
「私は幸せだぞ、アヴィー。」
「・・・ほんと?」
「うむ!何故か分かるか?」
「?わかんない。」
 では特別に教えよう!と女性は言い、子どもに少し顔を寄せて静かに告げる。
「私は、アヴィーやカーラやエトリアの人々を幸せにしたいと思い、そのために努力もしている。そして、自分も幸せになりたいと思い、そのために努力もしている。一番の幸せというのはな、アヴィー。自分と誰かが幸せになるために、頑張れることなのだ。」
「・・・がんばることなの?」
「そうだぞ!幸せなどは勝手にはやってこない。勝手にやってきた幸せは、幸福ではなく幸運だ。幸運も悪いものではないが、自ら向かっていった幸福とは味が違うのだ。」
「たべもの なの?」
「うむ、食事も幸福だな!今日はシチューだぞ、アヴィー。何故か分かるか?」
「たべたかったから?」
「美味しく作りたいからだ!野菜炒めが焦げてしまう、とルサルカに相談したらな、代わりにシチューを教えてくれたのだ。弱火でじっくり煮込めば焦げないし、生焼けの心配もない!すばらしいな。シチュー!」
 素晴らしいぞシチュー!と女性は拳を握りしめた。壊滅的に料理下手な女性だし、味噌汁などは女性より子どもの方が上手く作れるようになってしまったが、それでも子どもは女性の料理は嫌いではなかった(美味しいとは思わなかったが)。子どもの苦手なピーマンを細かく刻もうとしたり(結果、指を何度も切っているが)、楽しい見た目にしようと飾り付けをしたり(それでも覆い隠せない黒い焦げはついているのだが)、ひもじい思いはさせまいとおかわりは用意してあるし(とはいえ、おかわりしたい味かというと微妙だが)、女性の料理が自分に向いていることを子どもの本能で分かっているのだ。
 何かが閃いたらしい子どもは、おお、と声を上げた。
「わかったよう、シルン。」
「む?」
「シルンのおりょうりは『こーふく』で、ルサルカちゃんのおすそわけは『こーうん』でしょう?」
「・・・・・・・・・・・・、おお!!」
 女性は少し考えた後に、顔を輝かせ子どもを抱きしめた。
「アヴィーは賢いな!その通りだ!それに、私の料理は『幸福』か!嬉しいぞ!!」
「うん、シルンのおりょうりは、がんばってるからね!」
「うむ!料理中の私は、大変そうだが悲しそうに見えるか!?」
「見えない!」
「だから、私は幸せなのだ!」
 幸せなのだぞー、と歌うようにしながら、女性は子どもを抱きしめたまま体をゆっくり揺らすのだ。ゆりかごに揺られているような思いで、しあわせなのだぞー、と子どもも歌うように真似をした。
「ねえ、シルン。」
「うむ、なんだ?」
「けっこんしたら、もっとしあわせ?」
「その話はもう良かろう。夫を娶るつもりもない。」
 微妙な言い回しをする女性だが、その場でその言い回しに気づく者もいなかった。
「シルンは、けっこんしたくないの?」
 子どもは、急にしょんぼりし出す。
「どうした、アヴィー?」
「だって、ぼく、大きくなったら、シルンをおよめさんにするんだよ。」
「・・・・・・・・・おお!おお!!そうだったな、そうだったぞ、アヴィー!お前が大きくなったら、結婚するんだったな!」
「そうだよう。ぼくが大きくなるまで、まってられる?ぼくね、シルンのおムコさんになったらね、シルンがもっとしあわせになるように、がんばるよう!」
「・・・・・・・・・、・・・うおおおお・・・・・・・・・ッ!なんて愛らしいのだお前は!天使か!?天使以上だ!もちろん待っていられるぞ!!」
 メロメロになった女性は、がしい!と子どもを抱きしめ頬ずりする。くすぐったいよう、と子どもはパタパタ両手を振り、犬だけは大あくびをした。




*****


 ・・・かつてアヴィーと彼の養母が『幸福』について話した出来事があったなど、当然カリーナは知らない。女性は宿の自分の部屋、ベッドに仰向けになっている。ぼんやり天井を見上げて、それから目を閉じた。今になって思い出す、フィデリオの声。
 ―― 俺はね、大好きな人を待っているんだよ ――
 ここで何をしているの?と尋ねたカリーナに、彼は全く照れもなく答えた。そしてやってきた女性に手を振って、「シルン!」と呼んだ。
 確かに、呼んだ。
 やってきた『大好きな人』は、カリーナが姫君だとすぐに気付いた。後宮の外にいるはずのない姫君の姿に驚いたが、幼いカリーナの辿々しい説明(というより弁解だったと今になっては思う。)に辛抱強く耳を傾けてくれたことは覚えている。そしてカリーナが母のために花を探しに来たことを理解すると、確かに満面の笑顔で頷いた。
 『シルン』の方が、フィデリオより一層騎士らしかった。膝をついて姫君の手をとって、自分たちも姫に協力すると誓ったのだ。それは、絵本の中で高潔な騎士が姫に忠誠を誓う姿そのもので、幼いカリーナもどぎまぎしたものだった。逢い引きの邪魔をされたことなど気にもせず、フィデリオにカリーナを肩車するように命じて、ご機嫌な様子で花探しに向かってくれた。
 優しいが強引な人だったと思う。空気が読めない割に繊細に気遣いをするアヴィーとは全く真逆だ。けれど、ぱ!っと輝くような笑顔の見せ方は、
「・・・・・・・・・、アヴィーとそっくりだったんだ・・・」
 カリーナは目を開けて、天井を見つめながら呟いた。4つの頃の記憶が当てになるとは思わない。けれど今まで、こんなにはっきり思い出したことはない。今になって、まるで再現されるかのように情景が目に浮かぶ。
 カリーナは寝返りをうち、溜め息をついた。
「・・・・・・・・・国を出て・・・エトリアに行ったんだ・・・」
 騎士団長の娘がどうして国を出たのか・・・と考え出せば、フィデリオの死が影響している可能性は高い。アヴィーは5つのころに父親を亡くして養母に引き取られた、と言っていたから、9年前にはエトリアにいたのだ。それ以前から冒険者をしていたのなら、フィデリオの死の直後に国を出てエトリアに向かったことになる。
 ・・・・・・今、どうしているんだろう・・・
 アヴィーを見れば、答えは見える気もしたが、アヴィーを育てた強さと女性自身の強さは別物かもしれない。恋人を亡くした後、どう生きてきたのだろう。あの出来事を恨んでいるだろうか。いや、元凶である自分を恨んでくれているなら、まだいい。もし、後悔や女性自身を恨んでいるのなら、それは・・・。
 ・・・・・・・・・、幸せなんだろうか。
 カリーナは、眦からぽろりと涙が落ちるのに気づいた。今の自分は幸せだと思う。いろいろあったけれど、今は仲間も側にいる。怖い思いもするけれど、冒険は楽しい。頭を撫でてくれる人もいる。でも、そんな『今』は、多くの『過去』の上に成り立っている。その過去には、犠牲だってあったのに。
 カリーナはうつ伏せになって、顔をシーツに埋めた。私はその犠牲も忘れてた。自分だけ幸せになってはいけないはずなのに。
 うー、と唸る。嗚咽は必死にこらえる。泣いてはいけない。それを自分に許すことも、許してはいけない。
 カリーナが唇を噛みしめていると、扉がノックされた。
「カリーナ、いるかー?おにーさんだぞー。」
 声は気楽さを(敢えて)装ったディスケのものだ。同時にスハイルが「ぴぴーぴ!」とカリーナを呼ぶ声もした。彼は返事も待たず、一方的に告げる。
「『ファクト』が帰ってきたから、今からアンドロを動かすぞー。見たかったら、ウチに来いよー。」
 無理はしなくてもいいけどさー、とは言っていないが、言外にそう告げている。「ぴぴーぴ!ぴぴーーぴーーー!!」とスハイルが一生懸命カリーナを呼んでいるが、その声が不意に途切れた。ディスケスハイルの嘴を押さえたのだろう。
 ・・・・・・心配かけさせても、ダメだ。
 カリーナは「ちょっと待って。今、行くから。」と返事をした。起き上がり瞼を拭って、髪をすばやく束ね直す。
 扉の向こうで、声を聞いたディスケが眉を寄せる。
「・・・・・・・・・、本当に大丈夫かよ。」
 カリーナの声が、鼻にかかった上擦った声だったことに気づいたディスケはそう呟いたが、「おとーさんに報告だなー。」と結局マルカブに丸投げすることにした。


(21章2話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

この話を書くのに、
最初に作った「志水の世界樹界における年表」を見返し、
ついでに各キャラの設定メモを見返すと
「どこにいっちゃったんだろうなこのキャラ・・・」続出中だった。

1話かけて、黒ゾディの養母でうちのししょーパラ子、
シルンことシルネリア・ダンベルトの話です。
彼女は、猪突猛進な熱血漢で俺様気質の長女気質で
養子を溺愛する母性の持ち主である一方でものすごく自分にも他人にも厳しく
情愛を重視するのに行動は合理主義と、一言で言えないキャラなんですが、
非常に動かしやすいです。シリアスもギャグも、本人は常に真剣だからだと思います。
つまり「天然」の一言ですべてが語れるのでしょう。

折角なので、世界樹1の話も回想でちょっとだけ書いていこうと思います。

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