まよらなブログ

21章2話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

先週お休みしてすみません。
鋼のほうのいろいろの準備をしておりました。

本日、帽子アンドロ子登場です。
これで第一部で登場するキャラは全員揃ったかなー。




それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


21章2話
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 『ファクト』と『アルゴー』が固唾を飲んで見守る中、アンドロは目を開けた。ぱちくり、と瞬きをしたアンドロをディスケがのぞき込む。
「ようこそ、この世界に。歓迎するよ、・・・ええっと、」
 そして、『ファクト』を振り返り、
「名前、決めた?」
 問いにシェリアクが頷いて、ミモザの背に手を添えて促した。名付け親はどうやらミモザのようだ。彼女はおずおずと告げる。
「・・・ディアデム。」
「そう、ディアデム。これがキミの名前。」
 ディアデムと名付けられたばかりのアンドロはディスケを見上げ、滑らかに返事をした。
「記憶しました。」
「よろしい。じゃ、ちょっと動いてみよう。何か違和感があったら、すぐに伝えて。」
 ディスケはそう言いながら、ディアデムに繋がれていたコードを外していく。全て外してから、シェリアクを指し、
「あの一番デカいのがシェリアク。キミの・・・そうだなー・・・管理者?保護者?とにかく、キミがこれから一番世話になる人だ。じゃ、前まで歩いていってみよう。」
 手早く指示を出すディスケに反して、シェリアクは少々たじろいだ。しかし、これから彼女は『ファクト』の一員だ。ならば、今まで少女たちを受け入れてきたように機械の少女を受け入れるしかない。方針を決めれば、シェリアクは落ち着くのも早かった。やはり滑らかに自分の前まで歩いてきたディアデムに、ミラやツィーやミモザにするのと同じように身を屈めて視線を合わせる。そして、手を差し出した。
「よろしく、ディアデム。私たちの力になってほしい。」
 極めて人間的なシェリアクに、ディアデムは機械の固さで答える。
「はい。了解しました。」
 ディアデムはシェリアクの瞳から、差し出された手に視線を動かし、問いかけた。
「この手はどのような意味を持つのでしょうか?」
「握手だ。」
「あくしゅ、とは何でしょうか?」
「・・・手を繋ぐ動作で・・・」
 シェリアクが説明に困っていると、ミラが横から出てきて、
「こうやるんですのよ!」
 と、シェリアクの手を取って見せる。シェリアクと握手をして、ミラは無駄に嬉しそうだ。
「その動作にどのような意味があるのでしょうか?」
「親愛の情を示す・・・というのかな。」
「シェリアク。そうしたら、今度は『親愛』について説明しなきゃ。」
 エラキスがおかしそうに笑い、
「その握手は、初めましての挨拶、よ。挨拶は分かる?」
「はい。人と会ったときや別れるときに交わす社会的行動です。」
「そうね。(とエラキスは答えたが、聞き流したようだった。)握手も同じ。今は、初めましての握手。シェリアクの手を握り返してあげて。あと、ミラ。いつまでシェリアクの手を握ってるの?」
 妬いちゃうわよ?とエラキスがフザケて頬を膨らませると、ミラは「た、他意はありませんのよ!」と慌てて手を離した。(「あっちのお父さんも犯罪臭がするよー」とクー・シーはぼやいたが、その向こう臑を蹴り跳ばす元気は今のマルカブには無かった。)
 改めて差し出された手をディアデムは掴んだが、すぐにシェリアクは眉を寄せ、
「すまない、手を離してくれ。」
 落ち着いているが、早口にディアデムに告げた。ディアデムが手を離すと、シェリアクの大きな手に赤く指の痕が付いていた。力を込めて握り込んだのだろう。
「ああ、力の加減も教えないとなー。」
 暢気なディスケの言葉に、
「さ・・・先に教えておいてくださいな!シェリアクさんが怪我をしたら、どうなさるつもりでしたの!?」
 ミラが本気で怒りだした。悪かった、とディスケは謝りつつも、
「力加減について教えておかなかったのは、俺のミスだ。ディアデムは『知らなかった』んだ。ディアデムのせいじゃない。ディアデムは人を傷つけない。それは分かっていてほしい。」
「でも、オランピアは、こんなことしませんわ!」
「産まれたばっかなんだから、オランピアみたいにいかないんだよ。彼女だって、いろいろ覚えてきたんだろうさ。ディアデムにも教えてやってよ。」
 ミラはむむむ・・・!と呻いたが、シェリアクの手を診ていたツィーが、まあまあ、とミラをなだめる。
「ミラさん、シェリアクさんにはお怪我はありませんよ。安心してください。それに、ディアデムは赤ちゃんみたいなものでしょう?となれば、私たちの妹みたいなものです。ディアデム、私はツィーといいます。一番上のお姉さんですよー。」
 ささっと自分の位置をツィーが告げると、ミラが非難がましく主張した。
「ず、ずるいですよ、ツィー!ここぞとばかりにそんなことを言って!大体、私の方が先に『ファクト』に入ってましてよ!!」
 どうやら『ファクト』にも「誰が長女か論争」が存在するらしい。マルカブは、ウチの子どもたちを眺めながら、シェリアクも苦労してんな、と思った。ミラはミモザを引き込もうとし、ミモザはオロオロと狼狽えて、それをエラキスが苦笑混じりに宥めてから、ディアデムに丁寧に一人一人を紹介した。それから自分自身を紹介し、もう一度、ディアデムに手を差し出した。ディアデムはエラキスのほっそりした手を見ながら、
「『あくしゅ』をしても、いいのでしょうか?」
「ええ。練習しましょう。」
 エラキス、とシェリアクが声をかけたが、彼女はシェリアクを見上げる動作だけで、彼を黙らせた。意外とカカア天下だよな、とディスケは場違いな感想を抱きつつ、ディアデムの挙動を見守る。ディスケは、『人間を傷つけない』ことを最重要視して行動するようにディアデムを調整した。(次に重視するは命令に従うことで、その次は自分自身を傷つけないことだ。これはアンドロに限らず、人の手で人のために造られたものならば遵守すべき事柄だと、技師であるディスケは確信している。)加減をすることを知らなかったとはいえ、シェリアクを傷つけたのは事実だ。その事実に、ディアデムは困惑した様子でエラキスの手を見つめている。
 生まれてすぐに困惑するような事態に遭遇したディアデムを心配する一方で、起動したばかりのアンドロがどう対処するのかを観察できることに、ディスケは喜びも感じるのだ。調整はうまく行ったようだ。自分の組んだシステムがディアデムに生きている。技師の達成感がそこにはある。
 一方、エラキスは、ディアデムを観察した上で導きを示した。じゃあ、こうしましょう、と彼女は言い、ディアデムの手を自分からとった。
「今から私が、私が人と握手するときの強さであなたの手を握るわね?それを覚えて、握り返してくれる?」
 ディアデムは明確に頷いた。
「はい。それは可能です。」
 それなら良かった、とエラキスは微笑み、ディアデムの手を軽く握った。ディアデムはその握力を把握して、その強さで握り返す。エラキスは微笑みを深くした。
「よろしくね、ディアデム。」
「はい。」
「それじゃ、今度はみんなと握手してごらんなさい。」
 そう言って、エラキスはディアデムを『ファクト』の娘らを引き会わせる。黄色い声を上げながら握手を交わす彼女らを見つめて、アヴィーはほえーと感心しきり、
「エラキスさんは先生みたいだねえ。」
「いいねー美人で優しい女教師かー。おじいちゃん、個人授業受けたいー。」
「ぴよー!」
 アヴィーとは明らかに違う方向で、クー・シーとスハイルが同意をした。ディスケは満足そうに、
「いやー。こりゃ、ディアデムの成長は早そうだなー。」
 わはは、と笑う。技師は造るまで。そこから先は、使う人や育てる人を信頼するしかない。だが、これなら安心だ。
 一通りの握手が済むと、エラキスはディスケを指し示し、
「そして、あなたを作ってくれた人がディスケ。私たちはあなたの体のことはよく分からないの。もし、どこかが外れたとか、痛みを感じたら、」
「痛覚はありません。しかし、アラート機能はありますので、異常を感じたらお伝えします。」
 滑らかだが堅いディアデムの返事に、「よく分からないけど、分かったわ。」とエラキスは頷き、
「ともかく、体に異常を感じたらディスケに見てもらいましょう。遠慮しないでね。」
「『えんりょ』とは何ですか?」
 ディアデムは口調を全く変えずに質問する。エラキスは笑い、育て甲斐がありそうね、とシェリアクに同意を求めたが、シェリアクはどうコメントしていいか迷ったようだった。エラキスは苦笑を浮かべて、ディアデムに向き直った。
「追々覚えていきましょう。あなたが今、了解しなきゃいけないことは、自分の体に異常を感じたらディスケに見てもらうこと。」
「はい。了解しました。」
 ディアデムの返事にエラキスは頷き、ディスケに向かって、
「まだチェックすることはある?」
「そうだなー、ちょっと外に出てもいい?走るとか跳ぶ動作の確認しないとさ。ディアデム、ちょっと庭に出てみようか。」
 場が動きかけ、マルカブは、そろそろか、と自分の前に立っている子どもらの後頭部を眺めた。今まで静かにしてきたが、さすがに好奇心の限界だろう。
「・・・ねえ、ディスケ!!」
 やっぱり限界だったらしいアヴィーが声をあげた。
「ディアデムに僕らのことも紹介してよう!」
「ぴーーー!!」
「ああ、悪い悪い。ディアデム、あの可愛いのが末っ子のアヴィー、ぴーぴー言ってるのがペットのスハイル、スハイルを抱いてるのがおねえちゃんのカリーナで、二人の後ろにいるのがおとーさんのマルカブで、その横にいるのがおじーさんのクー・シー。俺も入れて『アルゴー』で、俺は『アルゴー』ではおにーさん。OK?」
「了解しました。」
「・・・了解させるな。」
「そうだよ!僕は可愛くないし、末っ子じゃないッ!!」
「ぴーッ!ぴぴぴ!ぴぴ、ぴよぴよ!!」
「ディスケ、スハイルが『自分はペットじゃないピヨ!』って言っとるよ?」
 自分の仲間たちの紹介はどうでもいいらしいディスケに一応の抗議はしたが、当然のように取り合われない。じゃあ、外に行くぞーとディスケはとっととドアを開けた。
「ディスケ!ふざけないで、ディアデムにちゃんと紹介してよ!ねえ、カリーナもそう思うでしょう!?」
 ディスケを追いながら、カリーナを振り返るアヴィーだが、カリーナはびくっと身を竦めた。
「?カリーナ、どうしたの?」
「ぴー?」
「う・・・、ううん。何でもないよ。」
 そんな二人の様子を眺めていたマルカブは、別の視線を感じて顔を上げる。ディスケが指先でカリーナを示しながら、さっきからなんだかおかしいんだよ、と視線とジェスチャーで告げる。それから、しゅたっ!と手を掲げて、あからさまに「よろしく頼むわ!」と示してきた。
「・・・・・・、アヴィー。」
 マルカブは、カリーナからスハイルを取り上げアヴィーに手渡し、
「ディスケの奴、とっとと外に行っちまったぞ。追わないと。」
「・・・あ!ディスケ!まだ話は終わってないよ!」
 アヴィーはスハイルを抱いて、たーっとディスケの後を追って駆けていく。それを飄々とクー・シーが追っていき、それからマルカブはカリーナの前に少しだけ身を屈めた。
「・・・・・・何かあったか?」
「・・・・・・・・・、思い出したの。」
「昔のことを?」
「・・・・・・、ん。」
 カリーナは胸の前で手を組み、その胸にかかっている鮫の歯のペンダントをきゅっと握りしめた。
「・・・マルカブは、」
「おう。」
「・・・・・・運命の出会いって、信じる?」
「・・・・・・、実は、」
 マルカブは、カリーナの前に屈み込む。意図的に、彼女より視線を低くして下から覗き込むようにしながら、
「かなり信じてる。」
 大真面目に答えて見せたが、それは逆に笑いを引き出したかったからだ。カリーナは、マルカブはそれで結構ロマンチストだものね、と呟いてから(それで、ってどういうことだよ、とマルカブは思ったが口にはしなかった)、
「・・・でも、・・・いい出会いばっかりじゃないよね。」
「・・・どういうことだよ。」
 問いかけにカリーナは首を振った。
「・・・私、先に宿に帰ってるね・・・。ちょっと疲れたから。」
「俺も一緒に、」
「いい。」
 カリーナはかつてないほどきっぱりと答えた。それは拒絶に近かった。
「・・・ちょっと一人にさせて。」
「・・・・・・お前、一人にならなきゃいけないって思ってないか?」
 とマルカブは問いかけた。カリーナはその視線を受けるのが辛くなり、ぱっとマルカブから離れて、
「マルカブはアヴィーたちと居て!」
 そう言って、部屋から飛び出した。

*****

 マルカブが庭に出ると、そこにはスハイルを抱いたエラキスとクー・シーが談笑している。他の面子は近くには居なかった。
「ぴよーぴん!」
 スハイルがマルカブを呼んだ。スハイルはキョロキョロとその周囲を見回してから、
「・・・ぴぴーぴ!?」
 カリーナはどこだ!?と問いかけてきた・・・ようだった。
「・・・カリーナは宿に帰ってる。ちょっと疲れたってさ。」
「ぴーーーーーーッッ!!!」
「怒るなよ。・・・エラキスに抱かれてご機嫌だったくせに。」
 と、言いながらむんず!とスハイルを掴みあげた。スハイルは「ぴぴーぴ!」と泣きながら羽を振り回す。
「・・・他の連中は?」
「庭から出て、道の方へ行ったよ。ちょっとした距離を走るテストをしたいんだってさ。この辺は人通りも少ないから、まあ、邪魔にはならないだろうしね。」
 クー・シーは髭を撫でつつ、そしてわしはエラキスさんと談笑したわけだよフフン、と自慢げにマルカブを見上げた。マルカブはとりあえず、クー・シーの向こう臑を蹴りとばした。
「カリーナちゃん、大丈夫なの?」
 エラキスが腕を組みながらマルカブを見上げる。
「・・・あなたが一緒に行かないなんて、よっぽどなんじゃない?」
「・・・なんか、勝手に背負い込んだみたいなんだよな。」
「?」
 噛み合わない返事にエラキスは眉を寄せたが、マルカブは「どうすっかな・・・」と呟くのみだ。スハイルがマルカブの脇腹を蹴り付けているが、全く気にも留めていない。
「スハイル、おとーさんを蹴り付けてはいけないよ。おじいちゃんはおとーさんに蹴りとばされたけど。」
 クー・シーがひょいっとスハイルを奪い取って、己の腕に停める。
「ぴいぴん!ぴよーぴん、ぴよぴよ!!」
「『じいちゃん!おとーさんはヒドいピヨ!』とね。」
「ぴよ!」
「しょうがないねえ、きっと何かあったんだよ。おとーさんはそんなにヒドい男でもないから、まあ信じようじゃないかね。少年少女に愛されすぎてて、犯罪臭もするけどね、まさか実際に犯罪行為を少女に働き、傷ついた姫が泣きながら宿に帰ったわけでもないだろうし。」
「・・・・・・・・・・・・。」
 マルカブは無言のまま、思いっきりクー・シーの髭を捻りあげた。
「冗談だよ!エラキスさんの前で言っちゃいけなかったと反省はしてる!けど、お前こそ反省おしよ!お前の鈍さに、姫がどれだけモヤモヤしてるか!」
「・・・・・・何のことだ!?」
 マルカブは更に髭を捻りあげようとしたが、
「それが分からないことを、反省しないといけないわねえ。」
 とエラキスに呟かれ、とりあえず固まった。

*****

 公道を使って、ディアデムの走行動作を確認し終えたディスケは、庭でクー・シーの髭を捻りあげているマルカブを示しながら、
「いいかー、ディアデム。あれが『アルゴー』のコントだぞー。」
「了解しました。ところで、『こんと』とは何ですか?髭を捻ることですか?」
「・・・ディスケ、マルカブに怒られるよ・・・?」
 さすがにそれを覚えさせるのはどうなのか、と思ったアヴィーが咎めたが、やっぱりそれは聞き流された。


(21章3話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

眼鏡バリの作るアンドロたちにはロボット工学三原則が搭載されてますが、
ダニールとベイリの友情に敬意を払い第零原則だって搭載しております。
でも第一原則があるとクジュラさんと戦えないね、まあいいけど。

「なんのこっちゃいな」な方は、ググるのではなく
ロボット工学三原則が載っているアシモフのロボットシリーズをお読みください。
まずは「私はロボット」が読みやすいんじゃないかな!(文庫本を押しつけながら)

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