まよらなブログ

21章5話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

今回は刀の描写にムダに情熱を傾けましたが
こればっかりは実物を見てみないことには、本当のことは書けない気もします。
東京国立博物館でガン見してはくるんですけどねー、
鍔とか三所物とかステキだなーと思うんですけど
刃の方は、飾ってあると「なんか別物」感がするんだよなー。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



21章5話
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 アル・ジルよりもフェイデンとサビクの方が先に家に帰ってきたので、ドルチェを二人に任せ(二人が明らかに狼狽えたのを見て、マリアが自分に感心したわけだ、とマルカブは思うのだ。フェイデンは愛娘を溺愛しているが、子守自体は苦手らしい。)、マリアはマルカブとともに【アーマンの宿】にやってきた。
「・・・ああ!せっかくだし、作ったワンピースを持ってくれば良かったわ!」
 宿に着いて、マリアはそんなことを口にする。そしてマルカブに向かって、
「我ながら、力作なのよ!カリーナちゃんって白が似合うでしょう?だから白のふんわりしたサマードレスで、スカートの裾にビーズとレースの刺繍を縫いつけたの。刺繍は青で清潔感漂わせて・・・・・・、ああ!今から帰って持ってこようかしら?きっと似合うと思うのよ。すっごく可愛いと思うから、ちゃんと誉めてあげてね。」
「あー、はいはい。」
「折角だし、アヴィーくんに色違いで作ろうかしら・・・」
「それは本人が泣くんでやめてくれ。」
 そう言いつつ、宿に入り階段を上がっていくと、
「あ!マルカブ!」
 アヴィーがぱたぱた出てきた。
「もう!ビックリしたよう!帰ってきたら、オリヒメが部屋にいるんだもの!」
「・・・ああ、ちょっとな、留守番を頼んでたんだ。それより、ほら。マリアさんに挨拶しろ。」
「あ、マリアさん、こんにちは。」
「はい、こんにちは。」
 ぺこり、と頭を下げるアヴィーに、マリアも同じように頭を下げて答える。そんな二人を見つめるように、部屋の入り口にはオリヒメがいる。彼女に構って欲しいらしいスハイルは、ぴよぴよ鳴きながら周囲を跳び回っている。
「オリヒメ。留守中、なにも無かったか?」
「はい。隣の部屋から出た様子はありません。在室はしているようです。時折、歩く音がしましたから。」
「そうか。ありがとな。」
 オリヒメに礼をしたマルカブは、彼女の周りを「ぴーーー!!」と喚きながら回っているスハイルを見下ろした。スハイルが「自分を抱き上げろ!」とオリヒメに飛びついてきたので、マルカブはそのスハイルの頭をがしっ!と掴んだ。
「ぴーーーーッ!!?」
「お前は、女にすり寄りすぎだッ!」
「あらあら、スハイルちゃんは私にはすり寄らないのにねえ。」
「・・・・・・ぴ!?・・・ぴぴぴぴん!?」
 スハイルはマリアに気づくと、悲鳴を上げて大人しくなる。フィニック家にいる動物たちは、マリアを(なぜか)畏れていて、スハイルがぴーと泣きながらマルカブの背後に隠れた。
「ぴぴ、ぴぴよぴぴよ!!」
「別に、私はこの前のイタズラを叱りにきたんじゃないわよ、スハイルちゃん。あのときのことはあの時でおしまいよ。」
「・・・・・・・・・ぴ・・・?」
「本当よー。マリアさんは怒ると怖いけど、済んだことをグダグダ言わないんだから。それにスハイルちゃん、よく分かってるでしょう?今度同じことをしたら、」
「ぴーーーーーッッ!!!」
 スハイルは泣き出して、マルカブにしがみついた。マルカブは、よしよし、と頭を撫でてやりながら、
「あー・・・マリアさん、それよりカリーナのこと、頼むよ。」
「ええ。」
 マリアは一度アヴィーに意味ありげな視線を投げた。当然ながら、アヴィーはその視線の意味は理解せず、首を傾げた。
「じゃあ、皆さんはちょっと席を外していてね。多分、他の誰かがいるって分かったら、カリーナちゃんは出てこないだろうから。」
「???マリアさんはカリーナに会いに来たんですか?」
 アヴィーの質問にマリアは頷いた。アヴィーは、そうなんだ、と呟いてから、
「あの、マリアさん。カリーナはなんだか僕を避けてるみたいなんです。・・・あの、理由を聞いてもらっても・・・」
「ダメよ。」
 マリアはあっさり断った。
「もしかしたら、そういう話も聞くかもしれないけど、聞き出すことはしません。それに、それをアヴィーくんに教えることもありません。自分で聞きなさいね。」
「・・・・・・でも・・・」
「大丈夫よー。カリーナちゃんがアヴィーくんを嫌うわけないんだから。それとも嫌われるようなことしたの?」
「ぴッ!?」
「な、なんで睨むの、スハイル!僕、カリーナにひどいことしないよ!でも・・・知らないうちに怒らせたのかも・・・」
「ぴーーーッ!!」
「蹴らないでよ!もしかしたら、の話だよ!」
 飛び上がってアヴィーを蹴り付けるスハイルだが、マリアが名前を呼んで窘めると大人しくなった。なんでマリアさんの言うことは聞くんだよ・・・とマルカブは呻いた。
「それじゃあ、みんなはちょっとお散歩にでも行ってきて。スハイルちゃん、カリーナちゃんがいなくて寂しいのは分かるけど、アヴィー君やマルカブさんに八つ当たりしちゃだめよ?」
「ぴよ!」
 スハイルは羽を掲げて返事をしたが、絶対に八つ当たりしてくるんだろうな、とマルカブは確信していた。

*****

 いってらっしゃーい、とマリアは、マルカブとアヴィーとスハイル、それにオリヒメも送り出し、それから腰に手を当てたまま、
「カリーナちゃん、こっそり扉を開けるの下手ね?」
 と、振り返りもせず、1センチも開いていない扉の隙間に向かって声をかける。隙間の向こうで、ひゃん、と小さく声が上がった。マリアは長い三つ編みを揺らしながら振り返り、
「引きこもるのはよくないわよ。だったら、いっそグレなさい。そっちの方が、保護者は楽なのよ。」
 と、よく分からない持論を展開した。扉の隙間が広くなり、
「・・・・・・マリアさんも・・・背中に目がついているんですか・・・?」
 とカリーナが半開きになった扉の向こうから、問いかけた。マリアはきょとん、とした後に、にこにこ笑いだし、
「マルカブさんが、そんなことを言ったの?たまに、すごく可愛いことを言うわよねえ。本当にどこかで一度お父さんになってるんじゃないかしら。まあ、それはともかく・・・」
 マリアはずいっと扉に寄り、その扉の隙間を広げた。
「マルカブさんからちょっとだけ聞いたわ。シルンさんの恋人のことに気がついたそうだけど。」
「・・・・・・、マリアさん、知ってるんですか・・・?」
「まあ、何となく、だけど。カリーナちゃん、シルンさんがエトリアに来た理由と、・・・留まった理由を、私に話させてくれない?」
 カリーナはマリアを見上げた。マリアは微笑みは浮かべず、ただ静かに、
「それは、あの人の恋人のためだったから。」
 そう、言った。


*****

「・・・・・・おおお・・・」
 宿の庭でアヴィーがオリヒメから刀を一本貸してもらい、鞘に入れたままで鑑賞している。
 鞘は黒漆で塗られている。模様などはなく、艶やかな黒一色。柄巻も黒、鍔も鉄地の黒。目貫だけは金だが、柄巻の下に隠れてしまっている。全体的に飾り気がない。だが、よく見ると、鍔は鷺が翼を広げた文様の透かし彫りで、翼の模様はレースのように繊細だ。目貫は、葉脈まで彫り込んで柳の葉を象っている。飾り気がないようで、手の込んだ作りだ。何よりも、その手の込んだ作りの目貫が柄巻の糸でほとんど隠れているという、贅沢な拵えだった。
 アヴィーは感心しきって刀を眺め回した後に、
「綺麗だねえ!かっこいいねえ!抜いてみてもいい!?」
 頬を紅潮させて、庭に置かれたベンチに座っているオリヒメに問いかける。スハイルを膝に乗せた(というか、スハイルが膝に乗っている)オリヒメは少々引き気味に、
「・・・構いませんが、落ち着いてからにしてください。」
 オリヒメの忠告に、アヴィーはまったくテンションを変えずに頷いた。
「うん!分かった!!」
「全然分かってない!」
 と、マルカブはアヴィーのこめかみを指で弾いた。刀を抜こうとしていたアヴィーは、あう!?と悲鳴を上げた後、こめかみを押さえながら、
「何するんだよう!マルカブ!危ないでしょう!?」
「そのままのテンションで刀を抜かせる方が危ないだろ!落ち着け!」
「大丈夫だもん!僕、エトリアのブシドーが刀を抜いて手入れするの、何度も見てるもん!!」
「何度も見てるなら、何でそんなにはしゃいでるんだ・・・。」
「だって、持たせてもらうの初めてなんだもん!」
 絶対に「危ないから持たせられない」と言われてきたんだろうな、とマルカブは確信して頭を抱えた。アヴィーは鞘を腰に差すような形に持っていき、
「あのねえ!こうやって、居合いで抜くのも見たことあるよ!エトリアのブシドーは、構えを重視するんだよ!それでね、構えから一線描くようにして・・・」
「ああ!分かった、分かったから!抜くな!!」
 宿の庭でぎゃあぎゃあと騒ぐアヴィーとマルカブだが、いつものことらしい。宿に帰ってくる冒険者たちは「ああ、『アルゴー』は今日もじゃれあってるな。」と、ニコニコしながらその様子を眺めて宿に入っていく。オリヒメは他の冒険者たちの様子を逆に眺めてから、スハイルをベンチに下ろして立ち上がった。スハイルは不満そうに、ぴー、と鳴いた。
「刀を返してもらえますか?」
 オリヒメはそう言いながら、アヴィーに手を差し出した。アヴィーは露骨に渋って、上目遣いで問いかける。(オリヒメの方が背が高いのだ。)
「・・・・・・返さなきゃダメ?」
 アヴィーの子犬のような目に、大体の人間は甘い。(その筆頭はマルカブだ。)だが、オリヒメは、はい、ときっぱり頷いた。
「はしゃいだままですと、指を切り落とします。結構、じゃじゃ馬ですので。」
「・・・?オリヒメが?」
「いえ、その刀です。」
 大まじめにオリヒメは答えた。アヴィーは、大真面目な顔で刀を見つめ、それからおずおずと刀をオリヒメに返した。受け取ったオリヒメは一度腰に刀を差す。そして、少し離れているようにアヴィーに告げてから、ゆっくりと刃を抜いた。黒い外観が割れて、その間から白い光が生じる。そうして現れた澄んだ刃は、淀みなく鞘から抜かれた。オリヒメはアヴィーに側面を向けて、刀を正眼に構えた。刀の全身像が見えるようにであり、アヴィーに切っ先を向けないためにでもあった。
 三日月みたいだ、とアヴィーが囁いた。ゆるやかな反りを持つ、広直刃の刃。こちらも余計なものは何もなく、オリヒメの構えと共に凛とした佇まいでいる。場はすっかり厳かな雰囲気になり、アヴィーも息を潜めて刃を凝視した。オリヒメは構えのまま数度の呼吸をゆっくり繰り返し、目を閉じて一度深呼吸してから構えを解いた。刃の先を地面に向け、柄をアヴィーに向ける。
「・・・持ちますか?」
「・・・ッえッ!?でも、」
「・・・今なら、指を切り落とすこともないでしょうから。」
 淡々とオリヒメは告げ、アヴィーはじっと刃を見つめた。押さえられない好奇心と、それ以上の遠慮が顔に浮かんでいる。
 ・・・いや、遠慮じゃないな。
 と、マルカブは思う。遠慮と言うよりも、
「・・・ううん、やっぱりいいよ。」
 アヴィーは首を振った。
「遊びで持ったら、失礼なんだね。」
 遠慮と言うよりも、配慮だった。オリヒメと刀に対する敬意。オリヒメは、淡々と「ありがとうございます。」と答え、流れる動作で刃を鞘に収めた。淡泊だが、アヴィーの配慮を感じての礼だということは分かった。彼女は基本的に無表情のようだが、かすかに眦が下がっている。微笑んでいる・・・ようだ。分かるか分からないかの微笑みでアヴィーを見つめ、腰の刀の柄を撫でる。
 ・・・悪い子ではなさそうだ。
 マルカブはオリヒメに対してそんな感想を抱き、それから頭を掻く。そして、彼女に声をかけた。
「オリヒメ。」
「はい。」
「お前をギルドに入れるかどうかの返事は『まだ』出来ない。」
「ええ!?入ってもらおうよう!僕、ショーグンと一緒に冒険してみたいよう!」
「ぴーーー!!」
 アヴィーとスハイルが主張した。スハイルはオリヒメの太ももの感触が気に入ったようだ。
「『まだ』出来ない、だ。」
 マルカブは腕を組みつつ、
「しばらく、探索を手伝ってもらってから返事をする。」
 オリヒメは表情を変えずに頷いた。
「了解しました。それは、ギルド入りをほぼ了解してくださったのでしょうから。」
「仲間として信用できない、と思ったら、すぐに叩き出すからな。」
「構いません。そんなことは起こりませんから。」
 なんだその自信、とマルカブは呻きつつ、
「とりあえず、実力と・・・まあ、人柄を知りたい。カリーナとマリアさんの話が終わったら、飯にするから一緒に食ってけ。」
「ぴよんぴよん!!」
 スハイルは喜びの声を上げ、ベンチの上で跳ねた。オリヒメは、頷きつつ、
「一つだけ確認をしてもよろしいでしょうか?」
「おう。」
「奢りでしょうか?あまり持ち合わせがないので、そうでしたら助かるのですが。」
「・・・・・・・・・、ちゃっかりしてるよな。」
 マルカブは呆れて呻く。とりあえず、オリヒメがツィーのような大食らいでないことを祈るしかなかった。


(22章に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

「エトリアのブシドーは構えを重視するんだよ!」は、
エトリアのブシドーの「構えスキルに1ターン使う」を肯定的に書いた結果。(笑)

今回見せている刀は「柳に鷺」(青鷺火のイメージ)なんですが、
ショーグンなのでもう一本、刀を持っていると思われます。
こっちはどんなイメージにしようかのう・・・赤いイメージなんだけど・・・

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