まよらなブログ

22章5話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

そういえば、キャラ名の由来について
書いてないキャラがいることに気がついたので、ここで書いときます。

ミモザ:南十字星β星の別名。
    父親・ベクルックスと同じ星を指してます・・・が、
    南十字星α星が『ミモザ』説もあり、やっちゃったなーと思ってます。

リョウガン:ふたご座のカストルとポルックスの二つを指して。
      日本でこう呼ぶ地域があるそうです。(『両眼』に見えたんでしょうね。)
      ちなみに第二部で登場する彼の妹、
      シノ姐は「ミツナミ」(オリオンの三ツ星)と言います。
      ふたごの二つ星でリョウガン、オリオンの三ツ星でミツナミ・・・と
      星が2、3と増えているので、彼には兄が姉がいるものと思われます。(笑)

オリヒメ:言わずと知れた、琴座の織姫。
     メジャー過ぎる名前は使いたくなかったんですが、
     髪飾りがあまりに七夕飾りだったので、負けました。(笑)
     ちなみにこの話では出てこないから書いちゃうけど
     彼女の兄弟子・若ショーは「ヒシボシ」と言います。
     敢えての「ヒコボシ」一字違い。

ディアデム:かみのけ座α星で、王冠とか髪飾りの意味。
      星座としての形が無いので、発展中のアンドロ向きかな、
      と思って名づけました。

スハイル:カノープス(カリーナの名前の由来)のこと。
     とりあえず、『アルゴ座』縛りで名前つけました。
     フクロウが仲間になることは決まってたのに、
     ギリギリまで名づけをしていなくて、結構適当に決めた。(笑)


シノビとショーグンには星の和名がついてます。
第一部で出てくるキャラは、これで全員揃った・・・よな・・・?    




それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


22章5話
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「「・・・【アマラントス】の花を知っているか?」」
 港近くの居酒屋兼食堂のカウンター席で、マルカブとシェリアクは全く同じ質問を相手にした。二人は露骨に眉を寄せて互いを見る。先に、話を続けたのはマルカブだ。
「・・・俺は姫さんの依頼で、その花を持ってきた。薬になるんだとさ。」
「私は、深王からその名を聞いた。」
 シェリアクは手を組み、
「クジュラが、四階層・・・祭祀殿にあるアマラントスを探していたらしい。深王が言うには・・・、毒花だそうだが?」
「毒ねえ。触っても何もねえし、アヴィーは匂いを散々嗅いだけど、相変わらず元気だけどな。スハイルにも変わった様子もないから、動物に効くってわけでもなさそうだし。」
 と、マルカブは窓の外を見る。そこは【羽ばたく蝶亭】ではなく港にある食堂で、店には海に面したテラス席があった。快晴のテラス席で、アヴィーはスハイルとエビフライを奪い合っている。(蝶亭の女主人にひっついて離れないスハイルは、常連によって出禁になっている。そのため『アルゴー』は、スハイルがいる時は別の店を利用する。)同じテーブルで、エビフライをもぎ取り勝利の声を上げたスハイルをカリーナが叱り、オリヒメが自分のフライをアヴィーに譲っている。それをゲラゲラ笑って見ているのはディスケとクー・シーで、隣のテーブルではエラキスがやっぱり笑ってそれを眺めていた。エラキスと同じテーブルにいるのは『ファクト』の少女たちだ。ミモザはオリヒメと親しげなアヴィーをじー・・・っと見ており、ミラは騒がしい『アルゴー』に文句を言い、ツィーは黙々と食事を続行していた。食事の必要がないディアデムは、ツィーが身を食べた貝殻を重ねて並べている。探索から帰ってきた『ファクト』を誘っての遅めの昼食。それが今のテラス席の様子だった。
 アヴィーはオリヒメの皿から、白身のフライを貰っている。笑顔で礼を言ったアヴィーは、マルカブの視線に気がつき「貰ったよ!」とフライを見せた。分かったよ、とマルカブは手を振りつつ、
「・・・とにかく毎日あんな調子だからな。少し毒を吸って具合悪くなれば、大人しくなって助かるかもな。」
 と、呟いた。アヴィーが大人しくなったらなったで死ぬほど心配するだろうに・・・とシェリアクは思ったが、口には出さなかった。代わりに、話を続けた。
「その毒花だが、」
「おう。」
「フカビトにとっては、その力を保つ為の有効な養分らしい。」
 冷たい茶の入ったグラスを持ち上げたマルカブは、グラスに口をつける寸前で止まり、グラスを下ろして聞き返した。
「・・・・・・・・・なんだって?」
「深王が言うには、だが。【アマラントス】は、フカビトにとって力を保つ養分となるらしい。」
 そして、とシェリアクは続ける。
「これは世界樹の話だが・・・、・・・・・・ああ、我々は『世界樹』の話を聞いてきた。」
「記憶が無くならずに何よりだ。」
「一周回って、『ガーネット』の記憶が戻ることもなかったがね。」
「・・・お前、実はすっごく嫌な奴だろ・・・。」
「正確には、」
 シェリアクはマルカブのぼやきを無視して、続けた。
「世界樹は碑文で人に語りかける、らしい。 文字を用いた交信能力・・・なのか・・・。ともあれ、語りかけはされたが、一方的で我々が質問する余地はなかった。なので、世界樹が言うには、という前提だが、」
 シェリアクは茶を一口飲んでから、
「世界樹と【魔】は、漆黒の海を越えてこの世界に来たらしい。ミモザが言うには、漆黒の海とは宇宙の比喩だそうだ。」
「・・・宇宙から来たってことか?」
「私もよくは分からないよ。聞き流すべきだろう。」
「そうだな。」
 自分たちの理解の範疇は越えていそうなので、二人は考えることを放棄する。ここに星詠みであるアヴィーや月に向かうことを目標にしているディスケがいれば、目を輝かせて質問責めにしたかもしれない。だが、二人は研究者ではなかった。
「だが、聞き流せないことを世界樹は告げてきた。【魔】の眷属がフカビトで、フカビトは世界樹を打ち倒し【魔】を守ろうとしている。そして、フカビトは【魔】の血による人の支配という手段を講じてきているらしい。」
 どういうことだ、というマルカブの視線を受けて、シェリアクは続けた。
「人間を操ることで、深王の隙をつき世界樹を滅ぼそうという魂胆だというのだ。そして、こうも言った。『お前たちもよく知る海都の者が【魔】の眷属に憑かれている。』」と。
「・・・・・・・・・、」
 マルカブは、他人からは不評な顎髭を思案気に撫でながら、
「・・・、まとめるとだ。海都の誰かがフカビトに支配されている。で、毒花の【アマラントス】はフカビトの養分になる。・・・つまり、【アマラントス】を必要にした人間が、フカビト・・・【魔】の眷属とやらに憑かれている奴だってことか?」
「筋を立てれば、な。【魔】の眷属は人に憑き利用する、らしい。世界樹が言っていたよ。『目に見える人が人とは限らぬのだ。』と。」
 シェリアクはそして苦笑した。そして、視線をカウンターへと落とす。
「私は、『聞いた話がすべて真実だと限らない。』と思うがね。」
 嘘など吐くのは簡単だ、とシェリアクは己のグラスの中身を見ながら呟いた。グラスの中に言葉を捨てたようにも見える。でも、そのグラスの中身を飲み干さなきゃならないんだぞ、とマルカブは思ったが、当然口には出さなかった。代わりに、
「じゃあ、次はこっちの話だ。こっちも、どこまで本当で嘘かは分からないけどな。」
「ああ。姫君の依頼で【アマラントス】を持って帰った後の話だな。」
「姫さんは、その花を調合して、薬をつくって寿命を延ばしてるんだそうだ。」
 マルカブは周囲に人が居ないことを確認してから、素早く囁いた。シェリアクは、己の言葉を落としたグラスから視線を上げて、
「・・・まさか、それが・・・」
「多分な。リョウガンが殺した男が言ってた、不老不死の薬だろう。リョウガンも、今でもその薬は作られてるって言ってたが・・・、姫さんのためなんだろう。」
 シェリアクはテラス席をちらりと見てから、
「アヴィーは、あの時の男が探していた薬だと気がついたのか?」
「・・・いや。アヴィーは賢いくせに鈍いから助かるよ。・・・まあ、時間の問題かもしれないけどな。」
 いっそ、ただの馬鹿ならいいんだけどなあ、とマルカブは呻くようにぼやいた。鈍くて賢いアヴィーだからこそ可愛がっているくせに・・・とシェリアクは思ったが、やはり口にはしなかった。
「姫さんが言うには、100年前の大異変のときから寿命を延ばして生きてるんだそうだ。・・・まあ、本当かどうかは分からない。確かに、嘘を吐くのは簡単だ。」
 シェリアクの言った言葉を繰り返してから、「けれど」とマルカブは続けた。
「・・・実は、事実を話すことの方が簡単だ。だから、嘘を吐くには、吐く理由がある。」
 シェリアクは軽く鼻を鳴らした。苦笑したようだった。
「・・・では、どんな理由があると?」
「こんな突拍子もない嘘をつく理由はないと思うんだよ。嘘をつくなら、もっとマトモな嘘をつく。だから、たぶん、これは嘘じゃないんだろう。」
「・・・では、姫君の言葉が真実だったとして。・・・なぜ、寿命を延ばしてきた?」
「【魔】と戦うために海底に消えた兄ちゃんに、会いたいんだとさ。」
「・・・・・・・・・、それは深王ということか?」
「・・・驚かねえんだな。」
「深王も、生き永らえているのを考えればな・・・。それに、・・・あの二人は似てる、らしい。」
「・・・そうか?」
「ミラがね、そう言った。あの子は気配に敏感だ。身内に通じる雰囲気も、何となく分かるようだ。」
「・・・、ああ。よく吠える飼い犬が、主人の親戚には吠えないようなもんか。」
「・・・・・・ミラを犬と一緒にするな。」
 シェリアクがそう言うと、親バカだよな、とマルカブは苦笑した。人のこと言えないだろう・・・、とシェリアクは思い、今度はそれを口にした。マルカブは隣の席に置いている帽子を軽く撫でながら、まあな、と同意した。そして、その子どもたちから贈られた帽子を見つめて、
「・・・・・・、【アマラントス】はフカビトにとって力を保つ養分になる・・・って言ってたな?」
「深王はそう言った。」
「・・・その【アマラントス】を使って姫は寿命を延ばしている。」
「・・・ああ。」
「・・・・・・、世界樹と深王の話だと、姫は【アマラントス】を必要にした人間・・・、【魔】の眷属に憑かれている奴だってことになるんだが、」
 マルカブはそう言いながら、もう一度帽子に触れた。
「・・・俺が気になるのは、それが事実かどうかじゃない。・・・リョウガンが持ってきた記録の中にあった、『フカビトの力を削ぐ方法』だ。」
「・・・・・・、ああ。君たちの船で、聞いた話か。そう言えば、彼はそんな話も仕入れてきていたな・・・。」
「フカビトの力の一部を、人に移植してフカビトの力を押さえる方法だったと思う。その力を与えられた人間は人間じゃなくなっていくが、フカビトは子どもの姿になり力が削がれる。そんな記録を、リョウガンは持ってきた。」
「ああ。」
「・・・その人間が子どもなら、移植しやすい。そう、書いてあった。」
 マルカブが帽子に触れつつ、テラス席を見ながら、言った。声は小さいが言葉は刺すように鋭い。シェリアクは、一拍の間の後に息を詰めた。
「・・・・・・・・・力の移植・・・。その結果、人ではなくなる・・・。・・・つまり、それが、【魔】に憑かれた、ということだと?・・・姫君が、その、子どもだった、と・・・?」
「・・・さあ?」
 マルカブはテラス席から視線を外し、つまらなそうに頬杖をつく。
「・・・誰が『嘘』を吐いているのか。誰も、『嘘』を吐いていないのか。それとも『嘘』を吐かれたことに気がついていないのかもしれない。そうしたら、その『嘘』はソイツにとっては『本当』だな?」
「・・・・・・君は、こう言いたいのか。・・・実は誰も嘘をついていない、と。」
「・・・誰かが嘘をついていてくれれば、面倒はないんだけどな。よく言うだろ。『悪気がないのが一番タチが悪い』って。」
 シェリアクは苦々しく眉を寄せて、マルカブを見つめ、それから深い溜息をついた。
「・・・君の推測は信憑性が高いように思う。だが・・・、何というか・・・個人的な思いが含まれていないか?あの子たちを大事に思う君にとって、子どもを利用することは許せないだろうが・・・。君の推測とて、推測だ。」
「・・・・・・マリアさんと同じようなことを言うな・・・」
「誰だ?」
「いや、こっちの話だ。・・・まあ、本当の悪役がいて、面倒のない話かもしれないし。・・・でも、よかったよ。お前から情報が聞けてさ。悪かったな。探索帰りに飯に誘って。」
「・・・いや。」
 マルカブがそう言って、話題を打ち切ったことはシェリアクも百も承知だろうが、彼はそれ以上何も言わなかった。
 マルカブは口にはしなかったが、クジュラから受け取った【空の玉碗】、オランピアから預かった【星界の欠片】のことを思い出す。荷物の奥に仕舞い込んであるが、あれらを渡されたときの話も考えれば、姫の話は限りなく事実に近いように思われた。
(・・・・・・でも、あの時の姫さんの様子を思い出せば、世界樹と深王の話も頷けるんだよな・・・)
 スハイルとともに見た、姫の波打つ腕。濃厚な毒花の匂いのような空気。何故か、溶岩の洞窟に捕らえられたフカビトの子どもの姿を重なる姫の姿。
 誰かが嘘を吐いているのかもしれないし、誰も嘘を吐いていないのかもしれない。しかし、迷宮を進むうちに全貌が見えそうな予感はある。そのタイミングを逃さないこと。それこそが重要に思えた。
 だが。
 姫や深王によってカリーナの王族としての部分が揺らされるように、マルカブも姫の話である部分が揺らされた。それが、先ほどシェリアクが指摘した、個人的な思い、なのだと思う。それに囚われないこと・・・それも彼自身には重要なことのように思えた。
 マルカブは溜息をつき、にぎやかなテラス席を見た。一方のシェリアクは、グラスを持ち上げようとして、
「・・・まあ、確かに、」
 マルカブがテラス席・・・というよりもその向こうの海を見つめながら、
「妹を放っておく兄ちゃんこそどうかと、思うんだよな。」
 まるで自分に言うかのように、呟くのを聞いた。



(23章に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

最後の一言を書いてしまったがために、話が進まないのを覚悟して、
うちの赤パイが妹と生き別れた事情について、書かねばなるまい。

「一周回って『ガーネット』の記憶が~」は19章2話の会話が下敷きです。
「フカビトの力を削ぐ方法」の話は17章4話をお読みください。
(なお、これはウチのオリジナル設定なのでご了承ください。)
いろんな伏線を回収するのに、過去更新分を読み返しつつなんですが・・・、
長くなってきたので該当箇所を探すのにも一苦労です。

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