まよらなブログ

23章2話。


クリスマスなんかカンケーねえ!な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


メリクリメリクリ。
更新が一日遅くなりまして、申し訳ありません。


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



23章2話
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 マルカブとフェイデンがアマラントスについて話をしている頃、リビングでは子ども達による姫リンゴの研究が開始されていた。サビクは小さく切った姫リンゴをゆっくり齧りながら、メモを取る。
「十分甘いから、食用でいけるよな。糖度がどんなもんか調べたいな。」
 調べたいことを綺麗とは言えない字でメモするサビクの隣で、アヴィーが顕微鏡を用意しつつ、
「ネイピア商会に持ってったら、ネクタルⅡが作れるって言ってたよ?このまま薬の材料として売り出せば、食用に改良することないんじゃないかな?」
「そうなんだけど。冒険者がいるこの街ならともかく、どのくらい使われる薬なのか分からないだろ。高価でも、特別な薬なら売れようもないし、冒険者が採集してくる分で賄えるかもしれない。だったら、確実に売れる食用にすることも考えておこうと思って。食べ物にも薬にもなるなら、それはそれでいいし。」
「・・・・・・サビク、大人みたいだ。」
 アヴィーが感心してそんなことを言い、サビクは微妙な顔で頬を掻く。
「そんなんじゃない。大人とか子どもとかじゃなくて、・・・おれは故郷に役立つことをしたいだけ。」
「それが大人みたいだよう!」
 アヴィーは両手を振り上げて、
「だって、故郷の村を背負ってるってことでしょう?僕、そんな風にはまだ出来ないもの!」
「背負っては、いない・・・と思うけど。」
 サビクは首を傾げながら、曖昧に返答した。
「故郷のために頑張ろう、とは思うけどさ。責任があるわけじゃないし。他の人たちも頑張ってるし。別に、おれ一人で背負ってるんじゃないし。」
「そうかなあ・・・」
「そうだよ。」
 そのやり取りを聞いていたカリーナも「そうかなあ・・・」と思うのだ。
 確かに、サビクは一人で村を背負っているわけではないが・・・彼は村民としての責任を果たそうとしているようにも思うのだ。そう言ったら、サビクは否定するだろう。責任とかは感じてない、と言うだろう。だって、当たり前のことだし、とか言うのだろう。
 けれど、自分の生活する場を自分で立ち直らせようとするのは、そこに住んでいる人間の責任であるようにも思うのだ。
 カリーナはクッションを抱きながら、姫リンゴを剥いているアル・ジルに尋ねた。
「・・・ねえ、アル・ジル。」
「なあに?」
「・・・・・・、アル・ジルたちの故郷って・・・誰か助けてくれる人はいないの?」
「うん、いるよ。」
 アル・ジルは事も無げに頷いて、
「隣の村の人や近くの町の人が、家や畑を直しに来てくれるし。領主様は、5年も税金払わなくていいって言ってくれてるんだ。お金のある領主様じゃないんだけど、太っ腹だよねー。」
「・・・そういう力があっても、借金しなきゃいけないし、それを何年もかけて返すことになるの?」
「そうだね。安い利子で貸してくれる人も多いけど、タダでお金は借りられないもん。」
「・・・寄附は無いの?」
「あるよ。でも、寄附は道や橋を直すのに使ってて、家や畑を戻すには間に合わないんだよね。」
 アル・ジルは剥いたリンゴをカリーナに差し出した。二人の話を聞いていたサビクは、ガラス板の上に薄く切ったリンゴの身を載せながら、
「一人一人に寄附があるわけじゃなくて、村宛だからさ。個人の土地や家の修理費に使うわけにいかないらしいよ。個人のものは、自分達で直してる。」
「え!?そしたら、家が壊れた人は家が直るまでどうしてるの!?」
 ガラス板に割った種を載せる手を止めて、アヴィーが聞くと、
「だから村では、一番最初に家をいくつか建てたんだよ。小屋みたいな家だけど、自分の家が壊れた人はそこで寝泊りして家を直してる。金はなくても、森はあるしレンガも焼ける。家を作る材料は自分で用意できるから。田舎な分、その辺は都合がつくんだよな。」
「本当は、猟場が変わるから、森の木を切ってほしくないんだけど・・・。そんなこと言ってる場合じゃないって、わたしのお父さんも言ってた。お百姓さんたちは何年もかけて畑を元に戻すんだから、猟師は何年かかけて新しい猟場を見つければいいんだって。・・・被害があってから1年ぐらい経ってるけど・・・、まだまだ直しきってないよね。」
「それでも家は直しようがあるんだけど。畑はなあ・・・。ゴミを撤去して、土を整えないと。それから作物を植えて・・・って考えると先が長いよな。」
「堆肥も流れちゃったしね。避難が早くて家畜の被害が少なかったのは良かったけど。」
 サビクとアル・ジルが溜め息をつく。アヴィーは、慌てて
「でも・・・!大丈夫だよう!!だって『大丈夫』にするために、姫リンゴを育ててみるんでしょう!?僕も手伝うよう!」
 だから大丈夫だよう!とアヴィーは、一生懸命だがまったく理にかなってないことを言う。とはいえ、サビクもアル・ジルも、そこで「何が大丈夫なんだ?」と聞けるほど冷たい子どもではなかった。何より、アヴィーが思っている以上のことも以下のことも言えないのは分かっている。これは、一生懸命な励ましだったり、応援なのだ。だから二人とも笑顔で、うん、と頷いた。それを見て、アヴィーはぱあ!と顔を輝かせ、
「サビク!早く顕微鏡でリンゴを見てみようよう!ほら!プレパラート出来たよ!!今回は空気入らなかったよ!」
「プレパラートを振り上げるなよ!割れるだろ!」
 ガラス板を振り上げてハシャぐアヴィーの一方で、カリーナは先ほど勧められたリンゴを持ったままじっと押し黙っている。
「カリーナ、どうしたの?」
 リンゴ食べなよ、とアル・ジルは言いながら、自分も一切れ齧る。甘いねー!と顔を綻ばせてから、
「カリーナは何を考えてるの?」
「う・・・うん・・・。あのね、もし・・・私が、二人の村を治めてる領主様だったらどうするかなって・・・。」
「領主様だったら?」
「うん。どんな方なのかとか・・・財政状況とか分からないから、何とも言えないけど・・・。」
 カリーナは少し考えてから、
「もし、お金も人手も技術もあったら、困ってる村に全部貸し出せるのかな。そうしたら、二人の故郷は元通りになるのかな。」
「それって、カリーナが全部直してくれるってこと?」
「私がっていうか・・・。・・・でも、もし、そう出来るなら、そうしたいな。」
 カリーナはそう言って、リンゴを齧った。サビクとアル・ジルは顔を見合わせてから、うーん・・・と唸った。
「な・・・何?」
「カリーナがそう言ってくれるのは嬉しいんだけど・・・」
「それは、なんか違う気がする。」
「え?何が違うの?」
 アヴィーが首を傾げた。だって、とアル・ジルは続けたが考えが纏まらないらしく、少し沈黙して、
「・・・だって・・・、わたしたちの村のことだから・・・かな・・・?」
 自信がなさそうに答えた。
「手伝ってくれるのは嬉しいんだよ。最後まで付き合ってくれたら、感謝してもし足りない。」
 サビクは顕微鏡にガラス板をセットしながら、
「でも、全部をやってもらうのは違うと思う。・・・おれが嫌なのは、・・・もしかしたら、おれたちもそれに甘えるかもしれないって思うことだな。」
「甘える?」
 カリーナが問い掛けると、サビクは顔を上げて頷いた。
「確かに、おれたちは被害者だけどさ。でも、だからって、被害者だから助けてくださいって言ってるだけで、自分たちのことを人任せにしちゃいけないだろ。それに、何ていうのかな・・・・・・。自分のことが出来ない状態の『被害者』のままでいると、『何も出来ない』って思いこんじゃうんだよ。いつまで経っても、被害者のままなんだ。・・・実際、みんなが助けてくれるから、何も考えないで貰うだけ貰う大人もいるんだよ。でも、それじゃ何も良くならないだろ?だから、誰かがやってくれるのを待ってるのは一番だめなんだよ。」
「そうだね。大変だけど、それでも『やり直せる』とか『ここまで直せた!』ってときに、元気も出るもんね!」
 アル・ジルがガッツポーズをして笑う。カリーナは、ぽかん、と二人を見つめた後、
「・・・・・・・・・・・・あ、」
 彼女は頭を下げた。
「ありがとう。」
「「え?何で?」」
 二人(とアヴィー)が、首を傾げる。顔を上げたカリーナは笑顔だったが、何かを見定めたようだった。
「私ね、今、二人から大事なことを聞いたと思ったの。」
 不思議そうにカリーナを見つめる三人の元へ、
「あらあら、早速実験開始?」
 採寸を終えたらしいマリアが、スハイルを抱いたオリヒメとともにやってくる。
「マリアさん、長かったね?」
 アル・ジルが聞くと、マリアはニコニコと笑顔で答える。
「オリヒメちゃんの服が気になって、いろいろ見せてもらったのよー。縫い方が分かったから、今度、作ってみようかしらー。とりあえず、『ユカタ』とやらを縫ってみるわね!」
「オリヒメ、お疲れ様。」
 カリーナは切った姫リンゴの載った皿を差し出した。オリヒメはスハイルをカリーナに渡してから、リンゴを一つ手にした。マリアは、まだいくつか残っている姫リンゴを見て、
「何かリンゴのお菓子を作ろうかしら・・・。アップルパイや焼きリンゴだと甘すぎる?」
「ううん!わたし、食べたいよマリアさん!」
「僕も!」
 アル・ジルとアヴィーが、わーい!と両手を上げた。あらあら、とマリアは微笑んで
「それじゃ、何か作ってみましょう。4つばかり、いただくわね。」
 姫リンゴを持って台所へと向かっていった。

******

 結局、姫リンゴでアップルパイを作ることになった。焼き上がるまでの時間、子ども達(オリヒメ含む)は、お茶などの買出しに出かけたのだが、
「ぴーーーー!!」
 その帰り道、スハイルが木の上で泣き叫んだ。
「スハイル!飛んでごらん!」
「そうだよ!飛べるよ!ゲートキーパーと戦ったとき、飛んでたよ!」
「ギェナーと練習したようにすればいいんだよ!」
「とりあえず、そこから飛び降りてみろよ。」
 カリーナ、アヴィー、アル・ジル、サビクが木の上に停まっているスハイルに声をかける。スハイルは、ぴーーー!と泣いて首を振った。その隣で、ギェナーが羽ばたく様を見せて、飛ぶことを促している。
 一歩引いたところでそれを見ているオリヒメは、フクロウというより子猫みたいだ、と感想を抱く。一体、どうやって登ったのかは不明だが、店から出てくるとスハイルは高い木の枝に停まって得意げに鳴いていた。だが、そこから降りれなくなった上に、「折角だから、飛ぶ練習をしよう」という子どもたちの意見に、ぴーぴー泣き出した。
「ぴぴぴ!ぴぴぴーー!」
「ディスケを呼んでもダメーー!」
 アヴィーがスハイルを叱る。スハイルは、仲間内で一番背の高いディスケを呼んで、降ろしてもらおうという考えらしい。
「スハイルぐらいに大きくなれば、飛べるはずなんだけどな・・・」
 アル・ジルが困った様子で呟き、サビクが「スハイルは甘えてるんだよ。」と言い放った。カリーナが腕を広げて、
「ほら、スハイル!ちゃんと受け止めるから!飛んでごらん!」
「ぴぴーぴ!ぴぴーーぴーー!!」
「た、助けを求められても・・・、ダ・・・ダメ!スハイルが飛ぶの!」
「・・・ぴッ・・・!?・・・ぴ・・・、ぴぴーぴ、ぴーーーーッ!!」
 どうやらスハイルは「カリーナなんかキラいピヨ!」に近いことを言ったらしく、隣のギェナーがスハイルを睨みつけた。
「ケー!!ゲッゲ!クケー!」
「・・・珍しい・・・ギェナーが怒り出した。」
「カリーナに甘えるなって言ってるんだろ。」
 アル・ジルとサビクが、ギェナーの様子を見てそう言い、カリーナは自分の胸を押さえながら、
「わ、私、今までスハイルのことを甘やかしてたかな・・・」
 と、そんな反省をし出す。マルカブがあなたたちに甘いほどではないと思う、とオリヒメはそんなことを思うのだ。
「・・・スハイルが飛べないのは、私のせいかな・・・」
「そんなことないよう!・・・スハイル!こんなことで、カリーナを心配させない!!」
「ぴぴぃー!ぴーーー!ぴっぴっ!ぴっぴっ!」
「あ!今、あっち行けって言ったでしょう!?」
「ぴよッ!」
「胸を張らない!」
「クケー!!」
 子フクロウと鷹と子犬のような子どもが、きゃんきゃん吠え合っているところに、
「どうしたの?」
 落ち着いた女性の声がした。振り返ると、買い物帰りなのか、荷物をもったエラキスとミモザがいる。(アル・ジルが「あ!あの時のおねーさんだ!」と声を上げた。以前、二人を町まで送って、と頼んだことをアヴィーは思い出した。)
「エ、エラキスさん・・・スハイルが木から降りなくて・・・」
 カリーナが説明をしようとしたが、その木の上で
「ぴよーーーん!!!」
 スハイルが妙にうれしそうな声で鳴き、
「ぴよぴぴー!ぴよぴよーー!!」
 羽ばたいて宙に浮き、枝から飛び降りた。翼を広げて、エラキスの元までまっすぐ滑空し、彼女の胸に飛び込んだ。エラキスはスハイルを抱き上げて、
「あら、降りれたじゃない?スハイル。」
「ぴよぴぴ!ぴよぴぴ!ぴよぴよ!」
 エラキスの豊かな胸にすり寄るスハイルに、アヴィーとカリーナは真っ赤になって、
「「スハイルッ!!」」
 スハイルの脚をそれぞれ一本ずつ掴み、エラキスから引き離そうとする。
「スハイル!そ・・・そういうことはしちゃいけないんだよう!!」
「恥ずかしいから、やめてちょうだい!」
「ぴーーーーッ!!!」
「泣かない!!」
「ぴーーーーーーッッ!!」
「怒らない!!」
「まあ、そうね。あまり、こういうことはしない方がいいわよ、スハイル。」
 エラキスはスハイルを少し離してから、抱き直して目を合わせた。
「蝶亭の女将さんにもこういうことして、出禁になったそうね。嫌がる人もいるし、何より一番大好きなカリーナちゃんに誤解されるわよ?」
「ぴ!?」
 スハイルはエラキスを見つめた後、カリーナに振り返り、
「ぴぴーぴ!ぴぴ、ぴよぴよ!!」
「今更、ご機嫌とってもダメ!」
 カリーナはぷん!とそっぽを向いてから、ととと!と走り去る・・・が、少し離れたところで振り返り、
「スハイル!今度こそ、ちゃんと飛んでごらん!」
 そう言って、腕をスハイルに向けて広げた。
「ぴ!?」
「飛んで、ここまでおいで!」
 スハイルは、助けを求めるようにアヴィーたちを見るが、
「そうだね、さっき、飛んだよね?スハイル。」
「うん、飛んだね、スハイル。」
「やっぱり飛べるんじゃんか、スハイル。」
「クケーーー!!」
 全員が、そっけない返事をした。
 スハイルはぷるぷると首を振ったが、エラキスは苦笑して、そのスハイルを頭の上に掲げて、
「ほら、ここから飛んでみようか?スハイル。カリーナちゃんが待ってるわ。」
「ぴーーーー!!ぴよぴぴ、ぴーーーー!!」
「カワイイ女の子を待たせちゃダメよ。根性見せないとね。」
 スハイルはぷるぷる首を振り続けるが、「スハイル!」とカリーナの声を聞いて、
「・・・・・・・・・ッぴっよーーーーー!!」
 羽ばたいてから跳びあがり、ちょっと浮いてから、カリーナに向かってよろよろと飛んでいった。
 

(23章3話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

サビクとアル・ジルの故郷は竜巻と水害で、農村的に壊滅状態という設定です。
なんとなくの封建制度が残っていて、さほど権力の無い領主様がいるようです。
あんまり詳しく書かないようにしましたが、彼らが語るいくつかのことは、
リアル業務内に感じたり見聞きした、あれやこれやが下敷きです。


後半はおまけというか、
「そろそろスハイルをちゃんと飛ばさないと、探索に支障をきたす」
と思って書きました。今後は、ばさばさ飛びます。


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