まよらなブログ

23章3話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


2012年最後の更新となります。
今年も超アウェーサイトでの更新にお付き合いくださりありがとうございます。
来年も相変わらずのだらだらペースで続けますのでよろしくお願いいたします。

とりあえず、年明けの更新は次週を予定していますが、
正月に飲んだくれてしまったら一週お休みさせてください。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


23章3話
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 マリアが焼いたアップルパイをディスケとクー・シーへの手みやげにして、一行はフィニック家から宿に帰る。今日の夕飯は何が食べたいとか、取り留めのない会話をしながらだ。デザートも食べたい、とねだっているアヴィーとカリーナ(とスハイル)と、それを受け流し続けるマルカブを、一歩後ろからぼんやり眺めていたオリヒメだが、夕暮れの坂道で不意に足を止めた。
「ぴぴぴえ?」
 マルカブの肩にとまっているスハイルが振り返り、オリヒメを呼ぶ。「どうしたの?」とアヴィーとカリーナも振り返り、マルカブは振り返る前に気が付いた。
 坂の先に、クジュラがいる。
「『アルゴー』。元老院からの伝令だ。ミッションが発動した。明日にでも、受けに来い。それから――、オリヒメ・ラクシュウ。」
 クジュラは淡々と告げてから、オリヒメを見つめた。
「・・・何が目的だ。」
 アヴィー、カリーナ、スハイルの視線が、クジュラとオリヒメを行ったりきたりする。コイツの姓は「ラクシュウ」だったのか、とマルカブはあまり重要ではないことを考えていた。
 オリヒメは無表情のまま一歩踏みだし、『アルゴー』たちの前に出る。
「我が師の命令で、私はこの町に参りました。貴方の血族が我々から外れたことを、今更問いつめるためでも処罰するためでもありません。ご安心を。」
「・・・・・・。」
 クジュラは『アルゴー』を一度見つめてから、オリヒメを憎々しげに見つめ直す。
「・・・他人の前で公言することではない。いくら、ヤライ殿直属の貴女であってもだ。」
「そうですか。我々と貴方方は今は無関係だと、そう言いたかったのですが。」
 どこをどうしたらそう聞こえるんだ・・・、と全く関係のないマルカブが頭を抱えた。アヴィーはキョロキョロと二人のショーグンを眺めながら、
「えっと・・・オリヒメとクジュラは知り合い・・・なの?」
「この南海一帯で、ショーグンと呼ばれる者たちは、それなりに知り合いです。私たちは、各国に雇われて士官し将軍職に就きます。それをとりまとめている方がおり、その方の下に我々がいます。」
「・・・え・・・。それって・・・変・・・じゃないかな・・・」
 カリーナは何故かおろおろしながら、
「将軍になる人を、外から雇うなんて・・・。言ってみれば、自分の家の守りをお隣の人に任せるようなものでしょう?」
「・・・せめて、警備員に任せる、と言ってもらいたいものだが、」
 クジュラは苦笑したが、カリーナの疑問には納得したらしい。
「だが・・・、おかしいと思われるのは分かる。国防を外国人に任せるということだからな。どれほど金を積んでも、その立場を悪用されることもある。」
「・・・クジュラも、雇われてアーモロードに仕えているの?」
 カリーナがおずおずと尋ねた。クジュラは心外そうに鼻を鳴らした。
「俺は、数代前からアーモロード王家だけに忠節を誓った家の出だ。金や契約で姫様にお仕えしているのではない。・・・ただ、海都の衛士にはギルド長の私兵も多い。また、このように冒険者に重要な国事を任せることもある。・・・そういう点では、外の人間に国を任せていることになる。」
「金があるから出来ることだな。交易で栄えている都市国家では、ありがちな話だ。」
 マルカブがそう言うと、カリーナは「・・・私は、そんな怖い方法の国防なんて考えられない・・・」と呟いた。カリーナの故郷はそれなりに人口も国土もあるため、軍を組織するだけの人数が集まるのだ。また、貿易よりも国内の産業で生活しており、家業を受け継ぐことが珍しくない国なのだろう。そのような中で、兵士になる、というのは、家業を継がない次男以降が食い扶持を稼ぐためでもあったりする。そして、その戦の素人をまとめるのは、自分の国を守るという意志なのだ。己の国は己で守る、という意識のある国で育ったカリーナには、傭兵に国を任せることには不信感しか生じないのだ。
 いろんな国があるんだよ、とマルカブはカリーナに告げてから、
「・・・国に将軍を紹介するやつがいるって言ってたな、オリヒメ。」
「はい。」
「そいつは、将軍を必要にした国にショーグンを派遣するわけだな。多分、それを雇うために必要なのが、前にクジュラが俺らにくれた【大将軍の采配】だ。違うか?」
「その通りだ。あれによって、ショーグンを呼ぶことが出来る。お前たちがギルドであれを使ってくれればな、俺の知り合いを推薦したのだが。」
 クジュラはオリヒメを顎で指し示し、
「先に、彼女が加入してしまった。」
「私も、【大将軍の采配】を『アルゴー』が持っているとは思いませんでした。私にギルドへの加入が許されたら、私が持っている【大将軍の采配】を使おうと思っていたのですが。」
 「・・・加入が許されたら?」とクジュラは訝しげに問いかける。オリヒメは頷いた。
「私はまだ正式に『アルゴー』の一員ではないのです。」
「・・・・・・聞いていないぞ。」
「そりゃそうだろ、言う必要ないんだから。」
 じろり、とクジュラに睨まれて、マルカブは肩をすくめた。その肩に停まっていたスハイルが「ぴよー」と鳴きながら肩から飛び降り、ばさばさ羽ばたいてカリーナの胸に飛び込んできた。
 マルカブはオリヒメに向かって、
「聞く分には、ショーグンってのは国の軍に派遣されるってことだよな?なのに、お前はこんなふざけたギルドに加入するためにやってきた。それが誰かの命令だって言うんなら、一体どんな理由なんだ?」
 そう問いかける。クジュラが頷き、
「そして、それは海都にとってどのような意味を持つのかを、俺は知りたい。いや、知らねばならない。俺はこの都を護る責務がある。」
 理由次第では首をはねる、とばかりに、クジュラは刀の鯉口を切った。オリヒメ相手にそれは脅しにもならないことは、同じショーグンであるクジュラの方が承知だろう。だから、間違いなく本気なのだ。
「・・・。」
 オリヒメは『アルゴー』をちらりと見てから、さらに一歩踏み出した。
「お答えできません。」
「この状況でその返答か。」
「ええ。ですから、」
 オリヒメはさらに一歩。もう一歩、と静かにクジュラに歩み寄っていく。彼女も、親指で刀がいつでも抜けるように鯉口を緩めながら。
「斬り合いとて、承知の上です。」
「・・・馬鹿!町中で何やってんだ!?」
 マルカブがオリヒメの背に怒鳴りつけたが、先に抜刀の準備をしたのはあちらです、とオリヒメは振り向かずに答えた。
「下がっていてください。あなた方を巻き込むつもりは、」
「ぴーーーーーーッッ!!!!」
 と、スハイルが甲高く鳴き、カリーナの腕からばっさばっさと羽ばたいて、不器用にオリヒメの肩に載る。
「ぴぴぴえ!ぴッ!!」
「スハイル、離れなさい。」
 オリヒメは歩みを止め肩のスハイルに命じたが、スハイルはぷるぷる首を振り、
「ぴぴぴえ、ぴッ!ぴよーぴん、ぴうぴよぴよ!」
 逆にそう叱りつけた・・・ようだった。(「おとーさんの言うことを聞くピヨ!」ぐらいのことは言ったようだ。)スハイルはクジュラの方も向いて、
「ぴうぴ、ぴッ!!ぴーようぴぴえ、ぴぴぴよえーーーー!!!」
 なにか喚きながら、ばっさばっさと羽を振って主張した。仔フクロウに叱られる形になったショーグン二人は、興が冷めた・・・というか萎えたというか馬鹿馬鹿しくなったというか、わざと大きな音を立てて刀を鞘に押し入れた。
「・・・人を脱力させるのが上手な方々です。」
「・・・ふざけたギルドだ、本当に。」
「ぴよッ!」
「・・・そこで胸を張るなッ!!」」
 ショーグン二人のコメントに得意げに胸を張ったスハイルを、マルカブは怒鳴りつけた。「戻っておいで、スハイル!」とカリーナが腕を広げると、スハイルはやっぱり得意げにカリーナのところまでよろよろ飛んできた。
「ぴぴーぴ!ぴぴ、ぴぴよぴぴよ!」
「・・・う、うん。止めてくれてありがとう、スハイル。でも、もうこんな危ないことしちゃダメだよ。」
「ぴー・・・?」
「ダメ。」
「・・・、ぴよ。」
 スハイルは渋々頷いてから、カリーナの胸に背中を預けるようにして座りを直し、クジュラとオリヒメの方を向いた。「スハイル、こういうときは催眠を掛ければいいんだよ。」とアヴィーが言い、スハイルは納得したかのように「・・・、ぴよ!」と頷いた。カリーナはアヴィーを「スハイルに変なこと教えないで!」と叱ってから、スハイルには「樹海以外で催眠を使ったらダメ!」と言い聞かせた。
 完全に緊迫感が削がれたオリヒメは、溜息を吐き、
「・・・まあ、これもあなた方の良さなのでしょう。我々の負けです。」
「・・・『我々』?」
 クジュラが思わず聞き返したが、オリヒメは取り合わない。負けを認めた以上、と彼女は続けた。
「お教えしましょう。私の目的を。」
 さらりと答えたオリヒメに、マルカブは呆然と呟いた。
「・・・・・・、お前、目的は言えないって散々・・・。」
「下手に隠せば、クジュラ殿の疑いの目はあなた方にも及びます。」
「・・・どうかな。そいつ等に隠し事が出来るとは誰も思っていないが。」
 クジュラは苦笑し、それからスハイルを見やって、
「とはいえ、その仔フクロウに礼を言わないとな。」
「ぴ?」
「お前のおかげで、オリヒメ殿の目的が聞ける。」
 スハイルはクジュラをじーっと見た後に、得意げに鳴いた。
「ぴよッッ!」
「だから胸を張るな!!」
「い、今のは胸を張ってもいいと思う!」
 マルカブとカリーナが言い合いをし、スハイルはマルカブに文句らしいことを言い、アヴィーがマルカブの上着を引いた。
「マルカブ。それよりも、」
「・・・お、おう。」
「オリヒメは何で僕らのギルドに入ろうとしてるの?」
 オリヒメは頷いて、『アルゴー』に向き直った。
「私は指令を受け、この都にやってきました。アーモロードの樹海の最奥の更に奥・・・前人未踏の階層まで踏み入り、【魔】の元にたどり着け、と。」
 【魔】の言葉に『アルゴー』は固まった。クジュラは眉を寄せる。
「・・・ヤライ殿からの命令か。」
 オリヒメは視線だけをクジュラに向けて頷いた。
「私に命令できる御方は他にはおりません。」
「・・・ヤライ殿は何故・・・」
「我が師にして主の真意を、私が理解する必要はありません。私のするべきことは、命令を実行することです。」
 クジュラは苦笑を浮かべる。
「・・・理解する気がないのではなく、理解できないのだろう?」
「ええ。」
 オリヒメは気を悪くするでもなく、頷いた。
「ですが、理解しつつも止められないことと、どちらが罪悪なのでしょう?」
 クジュラは苦虫を噛み潰したような表情でオリヒメを見つめた。あれで結構言いたい放題な娘なんだよな・・・とマルカブは頭を掻いてから、
「・・・じゃあ、お前が『アルゴー』に入りたいっていうのは、」
「【魔】にもっとも早く辿り着くギルドだと考えたからです。・・・個人的には『ファクト』の方が可能性がありそうに思えますし、私の能力もあちらでの方が生かせるとは思ったのですが・・・(『ファクト』は物理攻撃力不足だし、シェリアクの盾に守られながら前線に出れば本領発揮出来るしな・・・とマルカブは納得した。)、あちらは深都に協力しています。私の目的が深王に知られた場合、探索を打ち切られる可能性があると思いまして、・・・それで『アルゴー』に。」
「・・・俺はまだお前の加入を許してないぞ。よく言うな、そんなこと。」
「こんなことを正直に言っても、あなた方はむしろ納得するだけだと思いますので。」
 そうだな・・・、とマルカブは同意する他無かった。オリヒメはクジュラに向き直り、
「ヤライ様のお考えは私にも分かりません。しかし、各国にいるショーグンをまとめるためにもこの都は重要な中継地点であることは、クジュラ殿もご存じのはず。ヤライ様はこの都を害するような命令を下すとは思えません。」
「・・・・・・「魔」を討ち取るならば、ヤライ殿自ら出陣なさればよかろう。」
 俺はあの方以上の武人を知らない、とクジュラは呟いた。その『ヤライ』という人物は、よほど強いらしい。
 オリヒメは首を振り、
「討ち取れとは命じられておりません。『辿り着け』と。辿り着いた結果、何をするのかは私にも分かっていないのです。」
「・・・そ、それ、ダメだよ。」
 それまで大人しく聞いていたカリーナがスハイルを抱きながら、オリヒメに訴えた。
「もしかしたら【魔】を悪用するかもしれない。もしかしたら、【魔】に負の感情を食べられるかもしれない・・・。辿り着いた結果、どうするのかちゃんと知らなきゃ、海都も深都もオリヒメも危ないよ。大丈夫だって言うのは・・・無責任だと思う。」
「そうですね。」
「そうですね、じゃないよ!」
「では、聞きますが、カリーナ。王はすべての考えを家臣に話して、命令を下しますか?」
「・・・・・・、な、なんで、そんなこと聞くの・・・?今、それは関係ないと、」
「いいえ、同じことなのです。カリーナ、あなたは命じる側なのでしょうが、私は命じられる側。私は命令を果たすのみなのです。」
 ですから、とオリヒメは視線を上げた。視線はクジュラに向かっている。
「下された命令が正しいものであるように、私たちは祈るだけなのです。」
 クジュラが一度視線を下げたことにマルカブは気が付いた。だが、それ以上にカリーナが唇を噛みしめたことに気が付いたので、彼女の頭を撫でてやる。
 さて、これから受けることになるミッションは果たして『正しい』ものなのか、とそんなことを考えながら。


(23章4話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

オリヒメの姓のラクシュウは、
 オリヒメ→(こと座の)ヴェガ→「落ちる鷲」(ヴェガの意味)→
 落鷲→音読みしてみる→ラクシュウ、となりました。

将軍なのに傭兵なのか、という話ですが、
アモロを含む南海一帯は小規模な都市国家が多いため、国軍の規模も小さいです。
とはいえ、交易による金はあるので、傭兵を雇って国防にあてています。
(アモロ兵がギルド長の私兵・・・という資料集の設定から捻りだした設定です。
 イメージ的には、ルネサンス期のイタリアの都市国家みたいな感じかなー。)
だから将軍も傭兵ですが要職なので、信頼できる「とある人物」に斡旋をお願いします。
(斡旋をお願い出来る許可証が、【大将軍の采配】というアイテムになります。)
クジュラさんの家は、何代か前にアモロに派遣されたショーグンですが、
ある代からアモロ王家に忠誠を誓い、「とある人物」から距離をとってます。
まあ、全部マイ設定ですので、
まじめに働いて本社勤めになった派遣、ぐらいに考えておいてください。(笑)

なお、この「とある人物」が「ヤライ」です。
第二部の最重要人物となりますので、フライング気味に名前だけ登場です。

あ、妖刀ニヒルの影響で凶器の淵にいるらしい(資料集より)クジュラさんに対する
「ぴうぴ、ぴッ!!ぴーようぴぴえ、ぴぴぴよえーーー!!!」は、
「クジュラも、めッ!妖刀ニヒルを、外せピヨーーー!」と言ってるようです(笑)。

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