まよらなブログ

23章4話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

明けました、本年もよろしくお願いいたします。

正月休み中、世界樹3を久々に起動して、
黒ゾディのレベル上げ(Lv99引退後、再度レベル上げ中)をしてました。
いつになったら裏ボスと神竜を倒しに行くのやら不明ですが、
まあ、この話が終わるまでには倒しに行きたいと思ってます。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



23章4話
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「あの・・・、クー・シー。ちょっといい?」
 宿で、マリアのアップルパイを頬張っているクー・シーをカリーナは呼んだ。クー・シーは、パイをごくんと飲み込んだ。
「はいはい。何ですかな。」
「・・・えっと・・・その・・・」
 カリーナは部屋に入りながら、周囲を見て、
「マルカブ達は?」
「風呂に行っておりますよ。先ほどスハイルがグラスをひっくり返して、頭からジュースを被りましてな、スハイルも連れて行ってます。ですから、わしと二人でお話したいなら今がチャンス!」
「・・・う、うん・・・。」
 カリーナは勧められた椅子に座り、そわそわと両手をこすりながら、
「・・・あの、」
「はい。」
「・・・どうして、私・・・なのかな・・・?」
 唐突なカリーナの質問に、クー・シーは髭を撫で、
「王位継承者が何故自分なのか、と?」
「う、うん。」
 カリーナは頷きつつも、自分が唐突な質問をした自覚があるらしく、「すごいね。なんで分かったの・・・?」と呟いた。クー・シーは髭をもう一撫でし、
「正直・・・、わしは心苦しくてなりません。」
 と、今度は彼が唐突に発言した。何が?とカリーナは聞き返す。
「姫に王位を継がせること・・・いや、そうではないですな。・・・マルカブやアヴィーやディスケから、貴女を引き離すことですか。」
 カリーナはぐっと唇を噛んだ。
「・・・クー・シーは、・・・私をみんなと引き離すつもりでいるんだ。」
 クー・シーは口を開きかけ・・・何か言おうとしたが止めた。代わりに、
「ええ。」
 と、きっぱりと頷いた。何を言っても言い訳になる、そう思っているに違いなかった。言い訳ぐらい言ってもいいのに、とカリーナは思う。それぐらいは、許す。今の生活が心地よいのはクー・シーも同じだ、と知っているからだ。
「・・・私は、王になんかなりたくない。・・・ううん、王になるのは・・・正直、どうでもいいの。でも、みんなと一緒にいられないのは嫌なの。」
「ええ。知っていますよ。」
「・・・・・・でも・・・そんなんじゃ、ダメなのも分かってるの・・・。・・・・・・、ううん、」
 カリーナは顔を上げて、窓の外を見た。世界樹が見える。
「分かってきたの。私は・・・、私だけの幸せとか楽しみを、追ってるだけじゃダメなんだよ。」
 ぎゅっとスカートをカリーナは掴む。この姫が思い出しているのは、この街の姫君だ、とクー・シーは分かっている。兄王に会うためだけに、100年を生きる姫君だ。その願いを非難する気はカリーナには無いだろう。ただ、その願いだけのために生きている、その生き様が・・・おそらく納得できないのだ。クー・シーは溜め息をついた。
「・・・わしは、姫には、深王やセイリアスのように、自分の幸せを捨てるような王にもなってほしくないんですがねえ。」
「・・・・・・セイリアス様は・・・幸せを捨てたの・・・?」
 クー・シーは「さて、どうでしょうか。」と呟いた。ツィーが話を流すときに、同じ言い方をする。それを知っているカリーナは、クー・シーを睨みつけた。
「誤魔化さないで。私、教えてほしいの。セイリアス様のこと、知らないんだもの。・・・『兄様』なのに、何も知らないんだよ?」
 カリーナの言葉は徐々に弱くなり、顔も俯きがちになっていく。彼女は少し思案した様子を見せてから、でも、と続けた。
「・・・・・・・・・、セイリアス様も、私のことよく知らないはずだよね・・・?それなのに・・・王位を継がせるつもりだって・・・、よっぽど・・・せっぱ詰まっているというか・・・時間が無いというか・・・・・・、・・・・・・他に頼る人もいない、独りぼっちなんじゃないかって・・・思うの。・・・・・・あ、クー・シーがセイリアス様の友達でいてくれるのは、セイリアス様も嬉しいって思ってると思うよ?でも、」
 クー・シーは満足そうに頷いた。
「勿論です。わしのような友人を持てたことを、セイリアスは喜ぶべきなのですよ、まったく!しかし、わしは王族でもかの国の者でもございませんから、セイリアスの責務は背負えません。おそらく、誰もその責務は背負えません。・・・それが孤独だと、姫は仰ってくださるわけですな?」
「う、うん・・・。」
 カリーナは頷いた。
「独りは辛いよね。・・・私は、フィデリオのことやお祖父様のことでずっと辛かったって話をして、マルカブが一緒に泣いてくれて嬉しかったんだよ。」
「それは初耳。」
 驚きませんが、とクー・シーは苦笑した。マルカブがあんな風貌で、涙脆いことは知っている。カリーナは慌てて、手を振った。
「な、内緒だよ。マルカブは、こういうことを知られるの嫌がるもん。」
「照れ屋ですからな。30も過ぎて。」
 恥ずかしがることないのにね、とカリーナは小さく笑ってから、視線を落とし、
「・・・私は、自分だけが辛いんだと思ってたことを、マルカブも一緒に辛くなってくれて、・・・変だけど、嬉しかったの。・・・セイリアス様がどんな思いで政をしてるか知らないけど・・・でも、辛いこといっぱいあるよ。・・・そういう国だもの。」
 そういう国、か。クー・シーは心の中で溜め息を吐く。
「・・・・・・・・・、私、一番大好きな人が私のことで辛くなってくれて嬉しいって思ってる。私の半分を持ってくれて、嬉しいって思ってる。」
 カリーナは胸に下がった鮫の歯のペンダントを握りしめ、その拳で押さえた。息苦しさ中の、疼くような熱。後悔の中の悦び。正直なところ、それだけを感じ続けていればいいのだ、と思う。でも、それではきっと、いけない。
「・・・、私は、マルカブが私にしてくれたことを、他の人に出来るようになりたいの。だって、嬉しかったし・・・それに、ずっとして貰ってるだけじゃいつまでも子ども扱いされるんだもの。」
 恋する少女は強いですな、とクー・シーは呟こうとして止めた。カリーナは、恋だけしてればいい、とは思っていない。
「・・・それは、セイリアス様に対してもだよ。セイリアス様が私たちの国で背負っている辛さを、一番早く半分背負えるのは、多分、私なんだってことも分かってる。」
 クー・シーは眉を下げた。泣き出しそうだった。しかし涙が見えたとしても、それは嬉しさの涙なのか感謝の涙なのか悲哀がさせたものなのか懺悔だったのかは分からなかっただろう。ただ、カリーナに分かっていることは、クー・シーは自分のことも異母兄のことも大切に思っている、ということだ。
「・・・私は。セイリアス様のことも、独りぼっちにはしたくない。でも・・・私も独りぼっちにはなりたくない。」
「・・・ええ、ええ。分かっております。・・・分かっておりますとも!」
 ああ、憤怒の涙だ。カリーナは思う。クー・シーは、怒っている。そして、憤りながらも何も変えられない自分にも怒っている。自分たち兄妹の運命めいたものへの憤りを、この人も半分は背負っているのだろう。
 クー・シーもマルカブは涙脆いってあんまり言えないと思うんだけどな、とカリーナは少しだけ微笑んだ。
「・・・・・・あのね。だから、教えてほしい。セイリアス様が何を考えて、王になったかとか・・・何を考えて政治をしてるか、とか。分かってないのに半分は背負えないもの。それに、分かったからこそ背負わないって決めることも出来るし。」
 クー・シーは頷いた。
「仰せのままに、姫。・・・姫の仲間としててのわしは、心苦しく悲しくもあります。セイリアスの友人としては、感謝の気持ちでいっぱいです。ですが・・、わしは今、誇らしい気持ちが一番強いかもしれない。わしの大切なカリーナ姫に対しての誇らしさが、一番強いかもしれない。」
 ありがとう、とカリーナは微笑んでから、少し考えてから、
「・・・いろいろ聞きたいんだけど・・・ちょっと話が長くなるかな・・・。クー・シー、私の部屋に行こう。」
「む。男と自室で二人きりなど、おとーさんに叱られてしまいますよ。」
 カリーナはおかしそうに笑って、立ち上がった。
「おじーさんを部屋に入れることを?」
「むう。わしも若いころはそれなりにブイブイ言わせてたもんですが、年は取りたくないですな。」
「それに、もう一人呼ぶから二人っきりじゃないよ。」
 そう言って、カリーナは部屋の扉を開けた。クー・シーは首を傾げながら、隣室に向かうカリーナについて行く。カリーナは二人部屋を一人で使っている。(冒険者が集団で泊まることが多い宿なので、一人部屋がないのだ。また、オリヒメは何らかのコネがあるらしく、別の宿を利用している。)使っていないベッドには、胸鎧や手甲が置かれている。それと、タオルケットを敷いた大きめの籠も置かれている。スハイル用のベッドらしい。
 適当に座ってね、とカリーナは言いながら、窓を開けた。
「リョウガン、その辺にいるんでしょう?降りてきて。」
 外に向かってそう言ってから、カリーナは自分のベッドに腰を下ろした。一瞬の間の後、リョウガンが窓の枠を掴んで部屋へと入ってきた。窓辺に跪くリョウガンは明らかに困惑していて、クー・シーはなんだか申し訳ないような気がするのだ。
「リョウガンも適当に座ってね。」
 とカリーナはテーブルと椅子を指した。クー・シーは、お言葉に甘えて、と椅子に腰掛けたが、リョウガンは立ち上がって窓を閉めただけだった。座る代わりに、リョウガンは問いかける。
「・・・姫。どのよう御用でしょうか?」
「うん。あなたにも聞きたいことがあって。リョウガンは、自分で志願して私の護衛をしているんだよね?」
 カリーナの口調が、日常の彼女らしいものになっている。しかし、リョウガンは心を開かれたわけでも許されたわけでもない、と思うのだ。彼女は何かを試してくる。そうでなくてはわざわざ呼び出したりしない。リョウガンは声を固くして答えた。
「はい。以前に申し上げた通りです。」
「さっきまで、私はクー・シーと話をしてて、これからセイリアス様が何を考えて王でいるかを聞こうと思う。それを聞いた上で、・・・私がこれからどうするべきかを考えたいの。」
「はい。」
「・・・もしも、セイリアス様の考えがあなたは納得できなくて、でも私が納得してしまったら・・・、もしくは、あなたは納得できたのに私が納得できなかったら・・・、あなたはどうするの?」
 リョウガンはカリーナを見つめ、眉を寄せた。
「・・・どういう意味でしょうか?」
「・・・オリヒメが、命令の真意を知らなくても自分は命令に従うだけだって言ってた。私は・・・それは違うんじゃないかって思うんだけど、リョウガンはどうなの?もし、私が理不尽な命令を出したり、意味が分からない命令をしても、従う?私とあなたの考え方が違う場合、どうするの?」
「進言は致します。」
「私は、間違っていたら止めてほしい。」
「はい。ですが、臣下の進言が正しいかも分かりません。」
「・・・それは、そうだけど。」
 カリーナは眉を寄せ、
「・・・なんだか、責任を押しつけられてる感じもする。・・・あ、リョウガンにじゃなくて、オリヒメが言ってたことが・・・だけど。さっき、クー・シーとも話してたけど、私の責務を、誰かにちょっとだけ一緒に背負ってほしい。責任が命令を出す方にあるのは分かるし、いちいち命令される側の話を聞いてる場合じゃないのも分かるんだけど・・・、もしかしたらこれは私が責任を負いたくないだけのことなのかもしれないけど・・・、でも、命令に従われるだけなんて、その命令が正しいものであれと祈られるだけなんて。そんなの、私、寂しいよ。でも・・・命じられる側ってそうなの?」
 リョウガンはカリーナを見つめ、それからクー・シーを見た。クー・シーは寂しげにカリーナを見つめていたが、リョウガンの視線に気づくと表情を消した。リョウガンはもう一度カリーナを見て、そして口を開いた。
「姫は、誠実な御方です。」
 答えにはなっていないことは自覚している。こんなことを求められてはいないことも自覚した。だが、今、思ってることを正直に口にすることにした。自分は自分の考えや思いを口にする、それを示そうと。
「姫は、ご自分が間違っているのではないか、とお考えになってしまうのでしょう。」
「だって・・・、絶対に正しいなんて思えないもの。」
 それは彼女に自分以外の別の視点がある、ということだ。他者を慮るだけの余地が彼女にはあるということだ。だからこそ、リョウガンはカリーナに仕えることにした。仲間を苦しませないためだけに、自分を死なせなかったこの姫に仕えることにしたのだ。王になったときも、会ったこともない民や家臣を想像し、心を砕き、迷いながらも決断するだろうと思ったから、この姫に仕えることにしたのだ。そして、永遠にそのような姫でいてほしい。
 ならば、敬愛も出来ると感じたこの姫に、応えるべきなのだ。
「だからこそ、私は姫にお仕えします。姫の迷いは、姫ご自身だけではなく他者をお考えだからです。」
 ですから、とリョウガンは続けた。口約束にならないように、この言葉は自分にしっかり刻みつけておかねばならない、と。そう覚悟しながら。
「・・・その迷いを振り払うことは出来ないかもしれません。ですが、迷いを軽くすることが出来るのであれば・・・私は、姫以外の『他者』として、私の考えをお伝えします。私はどのような命令にも従います。・・・しかし、姫が命令を下す判断の手伝いをすると・・・そう、誓わせていただきます。」
「・・・命令を下す判断の手伝い?」
「はい。姫が判断する際に必要な情報・・・臣下としての私の考えをお伝えさせていただきます。間違ってると思えば、そう言いましょう。足りないと思えば、補足を述べさせていただきます。どうにもならなければ・・・、最初から考え直しましょう。それでも、迷いは姫に付いて回ります。しかし、それでも、様々な方向から物事を見た結果の判断であれば、迷いも軽くなるでしょう。そのお手伝いは出来るかと・・・」
 リョウガンは、はたと我に返り、首を振った。
「・・・思いたいのですが、自信はありません。しかし、そのお手伝いをすると、そう、誓わせていただきたい。」
 カリーナはじっとリョウガンを見つめるのみだ。頬を緩ませたのは、クー・シーだった。リョウガンはカリーナの反応を待ちながら、自分の述べたことを反芻する。誓うといったことを忘れていけない。絶対に忘れてはいけない。
 カリーナは、静かに頷いた。
「・・・ありがとう。リョウガンが、自分の出来る精一杯のことを応えたのは、分かった。」
 それから、と彼女は続ける。
「・・・あの、今まで、ごめんなさい。」
「・・・・・・・・・、は?」
「その・・・そっけない態度をとり続けて・・・・・・ごめんなさい。」
 そわそわと両手をこすり合わせるカリーナと呆然と彼女を見つめるリョウガンを見て、クー・シーだけが吹き出した。笑わないでよ、とカリーナに睨まれて、クー・シーは申し訳ない、と手を振りつつ、
「いやはや、誠実な主は誠実な臣下を得るものですな。」
 カリーナ自身が勝ち取った忠誠の塊を、少し寂しげな目で眺めるのだ。



(23章5話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

「照れ屋ですからな。30も過ぎて。」系の台詞ですが、
一番恥ずかしいのは、30も過ぎて照れ屋であるというそのこと自体なんだよ、
と思う志水も照れ屋です、三十路も過ぎて。


プロットメモには
「リョウガンから忠誠の言葉。(SQ4に繋がるように)」
と書かれていますが、見事に繋がりませんでした。
が、そもそも世界樹3から4に繋がる部分を文字に起こす予定は無く
書き手の個人的満足しか満たさない部分なので、まあ(どうでも)良かろう、うむ。


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