まよらなブログ

23章5話

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

今回は舞台が飛んで、プリ子の故郷での話になります。
行ったり来たりして申し訳ないです。
本当は、プリ子の兄さん・セイリアス(20年前の姿が長髪プリ)のこと、
もうちょっと登場させないと分かりにくいなとは思ってるんですが、
話が進まない上にこんがらがってるので、どうにもこうにも。いやはや。

まあ、『説明が足りない分は、行間をでっち上げてください。』
と、いうのが、ウチのスタイルというかスタンスなので、
どうぞ、お気軽にでっちあげてください。(笑)


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


23章5話
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 ・・・この人はどうして、国に帰ってきたのだろう。
 と、時々痛烈にそう思う。
 ・・・帰ってこなければ良かったのに。
 と、時々痛烈にそう思うのだ。
 ・・・そうすれば、せめてもう少しは長生き出来た。
 と、そう思うのは、自分が医者でこの人が死に向かっていく姿を間近で見るからだ、と言い聞かせる。
 ・・・生きてほしい・・・
 と、思うのも、人間であれば誰しもそうだと言い聞かせる。尊敬できる主に対して生きてほしいと思うのは、当然だと。それ以上の理由などないのだと。
 それ以上の理由など、持ってはいないのだと。
 それ以上の理由など、持ってはいけないのだと。


「・・・・・・・・・やっぱり妹だ・・・。」
 と、声がして、薬を包み終えたフロレアルは振り返った。部屋の入り口で、二番目の姉・ヴィオレッタが頭を押さえている。
「はい。小姉様。あなたの妹ですが。」
「そうじゃないですよ、フロレアル。お姉さまの妹だって言ってるんです。」
「小姉様も大姉様の妹ですよ。」
「ああ言えばこう言うのは変わりませんねえ。」
「小姉様が突拍子もないのも変わりません。」
 おそらく、私たちきょうだいは誰も変わっていないのでしょう、とフロレアルは淡々と告げ、机に向き直り薬紙に包んだ粉薬を小さな箱に詰める。これで一週間分だ。
 ・・・あと何回、薬を作れるだろうか。
 と、そんなことを考える。薬が必要なくなるように治療を行うはずなのに、今は薬を作れることが救いのように感じられる。薬を作る必要がない・・・というのは、あの人が死んだときだからだ。
「好きになったら自分が苦労する相手を好きになる。」
 と、ヴィオレッタが急にそう言い、フロレアルは顔を上げもう一度振り返った。ヴィオレッタは腕を組み、
「お姉さまもあなたも。・・・・・・もしかしたら、私も?」
「・・・・・・小姉様は恋に夢を見がちです。」
 私たちとは違います、とフロレアルは告げた。自分が好きになる相手のことは否定はしないんですねえ、と二番目の姉は暢気に呟いたが、
「お姉さまのように大事な人を亡くして泣く妹の姿を、優しい小姉様は見たくないんですよ。」
「私は大姉様のようには泣きません。」
「そうですか。」
「・・・死は、あの人にとって解放かもしれませんから。」
 そう呟いたフロレアルは、医者失格ですね、と自嘲した。ヴィオレッタは苛立たしげに鼻を鳴らしたが、一呼吸でそれも収めたようだった。二番番目の姉は、感情的なようで切り替えが早い。
「フロレアル。セイリアス様がお呼びですよ。」
「それならそうと、先に言ってください。医者が患者を待たせるわけにはいきません。」
 フロレアルは立ち上がる。ヴィオレッタはフロレアルに道を譲りつつ、
「患者としてお呼びなのではないです。王として、あなたに命じたいことがあると。」
「・・・ならば、尚更です。王命の前に雑談をする騎士団長の娘がいますか。」
「まあ、有りなんじゃないですか?」
 軽い口調でそんなことをいう二番目の姉を無視して、フロレアルは足早に歩いていく。その背中に、姉は声をかけた。
「大切な相手が、苦しむ姿を見るのは辛いでしょう。」
 声は暖かく、思いやりに満ちていた。だが、フロレアルの胸はすっと冷えるのだ。それは、自分の想いに気づきたくないからだ。
「あなたは、よくやったと思いますよ。」
 フロレアルは一瞬止まり掛け・・・だが、「なんの話ですか。」といってから歩き出した。ヴィオレッタはため息をついてそれを見送り、
「・・・・・・お姉さまや私なら、礼の一つもいう場面です。」
 いい加減に認めれば楽になるのに、とそう呟いた。

*****

「・・・ああ、フロレアル。すまないね。」
 セイリアスはベッドの上に書状をいくつか散乱させていた。フロレアルは眉を寄せ、
「安静にと・・・」
「そうは言っても、国務がね。」
「・・・そのようなことは、信頼の置ける臣下にお任せください。あなたの味方は私やアウグストや・・・クー・シー殿たち以外にもいるのですから。」
「そのようなこと、か。君らしくない。」
 そう言われて、フロレアルは唇を噛んだ。私は本当に時間がないんだね、セイリアスは呟いて、
「しかし、間に合ったようだ。・・・保守派貴族・・・いや、もう反体制組織というべきかな、彼らを無事に捕らえることが出来た。」
 アウグストからの連絡だ、とセイリアスは書状を一枚フロレアルに差し出した。一瞥しただけで双子の弟の字だと分かる。
「・・・カリーナエを呼び戻す準備をする。」
 セイリアスの一言にフロレアルは頷いた。
「アーモロードにいるクー・シー殿に連絡を?」
「いや。」
 セイリアスは静かに首を振った。
「本心では国に帰りたがっていないのに責務を果たそうとする若者を、二度も止められないのでは可哀想だよ。」
 彼はあれでとてもお人好しなんだよ、とセイリアスは苦笑した。フロレアルは、二度、と呟いた。
「一度目は、貴方、ですか。」
「そうだね。」
 では、何故帰ってきたのですか、とはフロレアルは問いかけなかった。・・・今更だ。聞いてどうなるものでもないし、・・・時間がないこの人に未練を抱かせたくはなかった。代わりに、別のことを聞く。
「では、誰が姫君を国にお連れする役を?ツィーですか?リョウガンは・・・難しいような気がします。彼は、カリーナエ様の臣下になるつもりですから、カリーナエ様の命令であればセイリアス様の命にも背くでしょう。」
「ああ。良いね。我が妹君に忠臣が出来た。ツィーもね、土壇場ではどうかな。彼女はカリーナエを友達だと思ってるし、王命より友情を取るかもしれないね。」
 楽しそうに王は言い、少し咳き込んだ。すぐに背を擦ろうとしたフロレアルを、片手を掲げるだけで止め、
「・・・しかし、私はカリーナエをこの国に戻すよ。」
 何があっても、と彼は言う。あなたは辛くないのですか?とフロレアルは聞けなかった。
「・・・私に命じたいこと、とは?」
「カリーナエを迎えに行ってほしい。」
 フロレアルは露骨に眉を寄せる。セイリアスは苦笑した。
「アウグストは反体制派の残党を捕らえることに忙しい。君たちの父親は隣国に向かわせているし、腹心と呼べる臣下は穏健派やパヴァンの一党と交渉中だ。ヴィオレッタは私の臣下ではないし、彼女はカリーナエをアーモロードに留まるよう説得するだろう。個人の幸せを大切にするからね。」
「それで、私、ですか。」
「恥ずかしいことに、他に信頼できる人間がいない。」
「・・・・・・、私の留守中、貴方の診察は誰がします?薬の調合は?いままで、毒殺を恐れて、私が一人で行ってきたことですよ?助手に頼むことも出来ますが、私以外の人間の作った薬は信用できないと、言ったのはあなたではないですか?」
 少しずつ、フロレアルの口調が早くなっていく。フロレアルは自分が空回り出していることを自覚した。止めなくては。でも、どうやって止まるのか。そもそも、本当に止めたいのか。・・・・・・ぶちまけてしまえば楽なのだ。けれど、それでは今まで保ってきたものに意味がなくなってしまうのだ。・・・ぶちまけてしまえば、楽なのに!
「・・・そうだね。」
 セイリアスは静かにそう言った。しかし、命令を変えるつもりはないようだった。その落ち着きに・・・言い聞かせれば分かってくれると思っているような落ち着きに、フロレアルがぎりぎりまで保っていたものが、切れた。このひりひりとした思いを抱くのは、私だけなの?と思った瞬間に、ぶつりと切れた。
「・・・・・・・・・・そうだね、ではありません!」
 いつも落ち着いた・・・というよりも、クールなフロレアルが突然声を上げても、セイリアスは驚かなかった。驚かなかった。・・・分かっているからだ。分かっていながら、彼女に悲鳴のような主張をさせるほど、追いつめたことは後悔した。
「わ、私、が、いなくても、貴方はいいのですね?私は、こんな状態の(といって、セイリアスの手首を掴んだ。骨と皮だけだ。)あなたを置いてはいけません。私が不在の間に、あなたに、も、もしものことがあるかと思ったら・・・!私は、・・・わたしは、」
「ああ。それでも、君がいいんだ、フロレアル。」
 セイリアスは自分の手首を、そっと持ち上げた。掴んでいるフロレアルの手も一緒に持ち上がり、その彼女の手の甲に額を付ける。
「・・・私は、辛い。・・・・・・かつてピックを死なせ、クー・シーとベクを縛り、・・・せめて、ピックの弔いだけでもと思いながら、何も為さずにいながら、それでも国に帰ってきた自分を思い出す。あの海の都に、あのまま留まり続けたかった私を思い出す。ピックのことで数年は傷が疼いただろうが、私は私だけの人生をあの街で送ることが出来ただろう。それは、幸せなことだったに違いない。」
 フロレアルは己の手を呆然と見つめた。触れているのは彼の額だ。熱を測るために何度も触れたことのある額。医者である彼女は、何度だって彼に触れたことはあるけれど、
 彼から触れたたのは、初めてではないか?
「・・・・・・、セイリアス様は、後悔を・・・なさっている・・・?」
 震える声でフロレアルは問いかけた。何を震えているのかは分からなかった。触れられていることか?それとも、彼に後悔を思い出させてしまったことか?それとも、自分がとうとうぶちまけたことなのか。
 セイリアスは、少しね、と答え、そして、顔を上げた。
「しかし、フロレアル。帰ってこなければ、君の忠誠や献身や・・・その他諸々の君の想いにも出会えなかった。」
 気づかれてた、とフロレアルはさっと頬を染めて俯いた。それでも、手首を掴む手は離さなかった。
「・・・私は、この国でも大切な者に出会えたからいいんだ。ただ、遠くない未来、その人と別れざる得ないのは哀しい。そして、カリーナエも今、大切な人たちに出会っている。それを引き離すことが辛いんだ。彼女だけの人生を送らせてやれないことも、大切なものと引き離すことも、・・・私と同じ苦しみを二つも与えることが、辛いんだ。」
 だからせめて、とセイリアスは続け、フロレアルの手の甲に一瞬口づけた。フロレアルがそれを理解する前に、彼は懇願する。
「・・・その私の辛さを、一緒に背負ってくれるのは、君がいい。」
 フロレアルは、行為ではなく言葉の方を先に理解した。そして、ある解釈をした。私は、この人に選ばれた。あらゆる意味で、選ばれた。選んでくれた!
 そう思った瞬間に、フロレアルはぽろりと涙を零す。零しながらも、頷いた。
「お・・・仰せのままに・・・!」
「・・・色気がない返事だなあ。これは、王としての命令だけじゃないんだよ?」
 セイリアスは苦笑する。分かっていますとフロレアルは言い、彼の手首から手を離す。そうすると、彼はフロレアルに手を伸ばし、その涙の跡を親指で拭った。フロレアルは目を閉じて、拭われるままになった。
「本当に分かっているか、不安だな。」
「・・・分かっております。・・・私も、確かに・・・こういった機微には疎い方ですが。・・・でも、」
 フロレアルは目を開けて、セイリアスを見る。悪戯をしかけるかのように、子どもっぽく。
「誰にでも、涙を拭わせるわけではありません。」
 一瞬、セイリアスの指が止まり、そして、彼は喉の奥で声を立てながら笑った。
「私の人生は、最期の最期で薔薇色のようだね。」
「ならば、その薔薇が咲いている時間をせめて長くなさってください。」
 フロレアルはベッドに散乱している書類を重ねて整理する。もう今日は仕事をするな、ということらしい。
「努力するよ。君が帰ってくるまでは、待っていられるようにね。」
「帰ってきてからのこともお考えください。」
 フロレアルは書類の束をサイドテーブルに置いて、
「私と、涙を拭い拭われるだけの関係で終わるのは、勿体ないですよ。」
 と、言った。セイリアスは全ての表情を落として、呆然と彼女を見つめ、そして顔から腰のあたりまでゆっくりと一瞥する。ゆったりとしたローブの下の彼女の柔らかな曲線を視線で辿り、
「・・・・・・・・・、まさか、そんなことを君が言うなんて思わなかった。」
 そう言いながら口を押さえる。耳まで赤くなっている王を見て、
「・・・・・・・・・いい年して何を照れているんですか?」
「照れさせたのは君だから。いやね、これがね、いかにも男慣れしてる子なら私だって照れないよ、けれどね、堅物の君からそんなことを言われるとね、・・・・・・・・・、おじさんを照れさせるものではないよ。」
「可愛らしいですね。」
「そういうことも言うものではないよ?」
 もう立場が逆転してる?とセイリアスは呻いてから、立ち上がったフロレアルを見上げた。あ、もう立ち上がっちゃうんだ、と溜め息を吐いてから、彼も王と男の混ざった表情で告げるのだ。
「・・・よろしく頼むよ、フロレアル。」
「はい、我が王。」
「・・・君が帰ってくるまでは、私も頑張るからね。・・・・・・、私も、看取られるなら誰だっていいわけじゃないんだ。」
 君がいいんだよ、と告げたセイリアスは、次の瞬間には抱きつかれていた。


(24章に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

あ、懇願のキスは掌、ですよね、うっかりうっかり。


セイリアス(20年前の姿が長髪プリ)と
フロレアル(10年前の姿が世界樹2のマグ子)の関係も実はいろいろあるんですが、
「看取られるなら君がいい」が二人の結末・・・というかゴールなので、
そこに着くまでにいろいろあって、辿り着いたらデレ期だと思っていただければ。
志水の中では、ウチのサイトの(シリアス話なときの)ロイアイのノリそのまんまで、
いろいろあったことになってますので、ご想像いただきやすいかと。(笑)

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