まよらなブログ

24章4話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


ちょっと気ぜわしいというか、リアル生活が大変で
話の内容が手抜きになっているような気がして仕方ありません。
まあ、倒れない程度に、リアルもオンラインもやっていこうとは思ってます。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


24章4話
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 麒麟が喉を逸らし、息を吸う。
「ぴーーッ!」
「耳を塞いで!!」
 スハイルの警告と、ディスケを抱き起こしクー・シーの治療の手伝いをしているカリーナの命令はほぼ同時だった。何故?など問いかけることも考えず、気を失いかけているディスケ以外が耳を塞ぐ。麒麟はつんざくような嘶きを発する。掌で覆われた耳の中にも、その嘶きは飛び込んできて鼓膜を振るわせた。耳のいいアヴィーが「痛い!」と叫んだが・・・だが、それだけだった。先ほどのアヴィーのような視界の揺らぎや口が回らない、といったことは、誰にも生じなかった。
 あの嘶きは、耳の奥の三半規管に影響を与えるのだろう、とクー・シーは理解したが、それを口にする暇はない。ディスケの治療に専念せねばならない。とはいえ、三半規管のことなど知りもしないスハイルやカリーナが、あの嘶きの影響は耳を塞ぐことで回避できることに気づいたのだから、説明する必要はない。スハイルは野生の勘だろうし、カリーナは持ち前の観察力で、麒麟が声をあげることに気づいたのだ。今はそれでいい。
 麒麟は足踏みをし始める。その体が陽炎のように揺らめいた。発熱し、周囲の空気を揺らしているのだ。アヴィーは集めたエーテルを解放し、麒麟を一瞬で氷の中に閉じこめた。その速さと氷の量(体の大きな麒麟を丸ごと包んだのだ。)に、仲間たちも舌を巻く。
「やった・・・!」
「ううん!ダメだ!」
 アヴィーが泣きそうな声で否定した。
「すぐに溶ける!」
 麒麟を包む氷の中で、気泡が生じた。気泡は麒麟の口からだ。つまり、そこは水になっている・・・ということだった。それは、つまり。氷は内側から溶けている、ということだ。
 氷・・・というよりも水の中で、麒麟が足を一踏みした。弾けるように氷が割れ、濡れた瑞獣が現れた。その長い尾から滴る水も、発熱している体によってすぐに蒸発していく。
 麒麟はアヴィーに狙いを定めて、駆けてきた。野生の勘なのか、瑞獣としての勘なのか、どうやら主戦力が誰なのか分かるらしい。アヴィーはびくっと身を竦めた。
「ぴーーー!!」
「避けろ!!」
 スハイルが飛びながらアヴィーの服の襟を引っ張り、マルカブがアヴィーを突き飛ばす。小柄なアヴィーは転倒した。(ついでにスハイルも転倒した。)麒麟の体当たりは避けられたが、転んだアヴィーの脚を麒麟の爪が引っかけた。
 マルカブが剣を向けて麒麟に踏み込み、麒麟は剣先を避けて間をとった。マルカブはもう一歩踏み込んで、アヴィーの前に立つ。さらに一歩は踏み込まない。
「アヴィー!傷は・・・!」
「深くない!」
 アヴィーは即答した。麒麟の鋭い爪に引っかかれ、ズボンのふくらはぎの部分が裂けている。だが、その布に赤い染みが広がる様子はなかった。出血は多くないようだ。
「・・・でも・・・!!」
 アヴィーは自分の脚を押さえて、困惑した声を出す。
「・・・脚に、感触がないんだ・・・!」
 毒でも入れられたか・・・!とマルカブの背中を汗が伝う。スハイルがぴーぴー鳴きながらアヴィーの脚を翼で擦っているが、「感触がないよう・・・!」とアヴィーは泣き出しそうな声を上げた。
「クー爺!聞いてたか!?どうしたら、」
「テリアカα!」
 クー・シーはディスケの治療をしながら、単語で答えた。示された道具の名前を聞き、カリーナが背嚢の中からテリアカαを取り出しアヴィーに向かって投げる。テリアカαはアヴィーと麒麟の間に落ちた。
 ―― 麒麟がその薬に視線を落とし・・・
 マルカブが麒麟に向かって踏み込んだ。麒麟に剣先を何度も突き出す。その角で剣が弾かれると、片足を軸にそのまま体を回転させて、再び突きを繰り出した。
 威力よりも速さを重視した剣撃。刺すのではなく弾かれること前提の踏み込みだ。一撃目が弾かれれば二撃目へ、二撃目が弾かれれば三撃目へと移行するため、その踏み込みは弱い。重心の移動がスムーズに行えるように、地面を強く踏むことはない。
 マルカブの目的は麒麟に傷を与えることではない。彼の剣技にはアヴィー星術やディスケの弩のような威力はない。ただ、その速さと揺れる船の上で走る技量を最大限に生かし切る。そうして、麒麟を防戦するのみに追い込み、徐々に麒麟を後退させていく。
 地面に落ちたテリアカαが、マルカブの踵の位置に来た。マルカブは己の体を前へ蹴り出すついでに、テリアカαを後ろに蹴り飛ばした。スハイルが飛び上がり、飛んできたテリアカαを嘴でキャッチする。そして、アヴィーの元まで飛んでいきテリアカαを渡すのだ。
「ぴよーー!!」
 そしてスハイルが甲高く鳴く。その声を背中で聞いたマルカブは最後に一突き繰り出して、麒麟を後退させようとした。彼の狙いは、テリアカαをアヴィーに渡すことだ。目的を達したならばこの剣劇を終了させるつもりだった。
 だが、それまで防戦一色だった麒麟が急に前へと押し出てくる。
 麒麟はマルカブの剣先にも怯まずに、前へと強引に押し出た。結果、マルカブの剣先が、麒麟の鼻の上を掠める。それでも麒麟は前にでてきて、剣先は鼻先から目元を抉る。だが、それはマルカブの攻撃ではない。麒麟が自ら動いた結果の傷だ。
 怯んだのは、マルカブの方だった。前へ出てきた麒麟は、首を下げた。・・・と思うと、反動を利用して素早く首を持ち上げる。下がった角が、マルカブの剣を下から引っかけて、跳ね上げた。剣は円を描いて宙に飛ぶ。
 丸腰になったマルカブは、さらに踏み込んできた麒麟の角によって後方へ弾かれた。さらに突進を加えようとした麒麟の行く先を阻むように、カリーナは剣を投げつける。カリーナの剣は麒麟の脚に引っかかり、麒麟は思わずよろめいた。その足下へアヴィーが小規模ながら、鋭い氷の刃を発生させる。
 マルカブは咳き込みながら、霞む視界で自分の剣を探した。自分の真横にはディスケの弩、麒麟の足下にはカリーナの剣が落ちているのを見つける。仲間の武器は見つかるが、己の剣が見あたらない。焦りを浮かべたマルカブの耳に、ぴーー!!とスハイルの甲高い声が飛び込んできた。そちらを見る。スハイルが床に突き刺さった突剣を抜こうとしている。だが、仔フクロウの力では剣は抜けそうになかったし、マルカブからも遠かった。
 氷の刃で足を傷つけられた麒麟の体の陽炎が、より一層濃くなる。アヴィーは、エーテルの動きを感じて身震いをした。麒麟は先程の炎の技を使うつもりだ。だが、蠢くエーテルの量は先程の比ではない。
「・・・、炎が来る!」
 徐々に高まるエーテルの密度に、アヴィーが叫んだ。その叫びを聞いて、麒麟はアヴィーに意識を向ける。発熱する体で、アヴィーに向かって突進した。テリアカαを渡されたものの、氷の星術を使うことに時間を割いたアヴィーの脚は、まだ動かない。
 ともかく麒麟を止めねば。
 マルカブはそれだけを目的に、自分の真横に落ちている弩を持ち上げた。ディスケが軽々と扱うだけあって、見た目よりは軽量だった。どう照準を合わせるのか分からないので、発射口をとりあえず麒麟にむけ、見様見真似で引き金であろうレバーを引く。ディスケが装填していたらしい矢弾が弩から発射された。弩の重さより、発射の反動の方が重かった。矢弾の放出とともに、反動で発射口が跳ね上がる。銃も使うマルカブは、これでは当たらない、と確信した。だが、いいのだ。目的は、麒麟の意識を逸らすかその突進を阻むことなのだから。
 矢弾は、奇跡的に麒麟の肩に突き刺さった。麒麟は、前足を上げ激しく嘶いた。アヴィーは呆気にとられたが、カリーナの声で我に返りテリアカαを己に使う。まさか当たるとは思わずに、アヴィー以上に呆気にとられているマルカブにも、カリーナは鋭く命じた。
「マルカブ!次弾装填!」
 そう命じながら、ディスケから矢弾のケースをもぎ取って、マルカブへと投げた。
「出来る!?」
「・・・やるしかないんだろ・・・!?」
 思いも寄らないことになった、とマルカブは思いながら、ケースから矢弾を抜き取る。ディスケの動きを思い出しつつ弓矢の構造を考えながら、矢弾を装填した。弩は巨大ではあるが、構造自体は一般的なクロスボウと同様だ。クロスボウは珍しい武器ではないため、構造の把握は容易だった。
 撃つことは出来そうだ。だが、当てることが出来るだろうか。
 先程の反動の大きさと照準合わせの難しさを考えれば、麒麟に当たったことが奇跡なのだ。ディスケだって、冒険当初はよく的を外していた。それを今始めて弩をもった自分が当てられるとは思わない。
 弩の持ち主であるディスケは、朦朧としながらも意識はあるらしい。時折苦悶の声が聞こえてくる。治療には随分と時間が掛かっている。右腕を雷で灼かれたのだ。早く街に帰って治療を受けさせねば。それにもし、麒麟が再び雷を落としたのなら。その攻撃に耐えられるだけの体力は残っているのか。
 ・・・・・・ああ。こんな気持ちでお前はケトスの前に立ったのか。
 胃がひっくり返るような緊張感を感じながら、マルカブはその緊張感をかつては自分がディスケに強いたことを痛烈に後悔した。いや、ディスケが感じた焦りや責任は、今自分が感じている以上だったに違いない。だって、自分はあのとき本当に死にかけていたのだから。出血量を考えれば、時間との戦いだったはずだ。そんな仲間をケトスの前に立たせたことを考えれば、
 ――、的を外せるわけがないだろう!?
 矢弾を装填し、マルカブは弩を抱え麒麟に向かって走り出した。
「アヴィー!麒麟の足止めを頼んだ!」
「う、うん!」
 意図は確認せず、アヴィーは素早くエーテルを集め、再び氷の刃を麒麟の足下で展開させる。麒麟は前にも後ろにも下がる事が出来ず、その場で足止めを食らう。だが、その麒麟の周囲に狐火のような炎が現れた。アヴィーの予告通り、威力を上げた炎の技を使うつもりだ。
 カリーナは背嚢から、瓶を取り出した。そのまま瓶を麒麟の近くに投げつける。床に落ちた瓶は割れ、中から液体がこぼれたと思うと霧になって周囲に立ちこめた。わずかにひんやりとする霧を破るように、マルカブは床を蹴った。
 麒麟が炎を発した。麒麟から発した炎は業火のようだったが、瓶から現れた霧がその炎を包み、勢いを半減させた。
「そうか!耐熱ミストを使ったんだ・・・!」
 アヴィーが目を輝かせてカリーナを見た。「買っておいてよかったね!」とカリーナは頷いた。興味本位で買ったものの、背嚢の奥に仕舞いこんだままの耐熱ミストの存在を、カリーナは咄嗟に思い出したのだ。耐熱ミストは周囲の熱効果を半減させる・・・との売り文句だったが、効果は覿面だった。
 半減された炎は、マルカブの姿を隠すにも十分だった。その炎の間から、マルカブは麒麟に向かって飛び出してくる。炎に真正面からつっこんでくるとは思ってもいなかった麒麟の額に、マルカブは弩の発射口を押しつけた。
 ・・・・・・単純な話だ。
 と、マルカブは苦笑した。当てることが出来るか分からないのなら、外せないぐらいに接近すればいい。幸い、それだけの脚は持っている。零距離まで攻撃をくぐるための覚悟や勇気などは必要ない。かつて自分を救うために前衛で踏みとどまった覚悟や勇気に、応えるだけの、
 ・・・・・・単純な話だよな。
 と、マルカブは苦笑を濃くした。そして、麒麟が前足の爪で己を引き裂くよりも、その巨体で己を弾き飛ばすよりも速く、弩のレバーを引く。
 矢弾は、麒麟の脳髄を貫いた。
 

(24章5話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

テリアカシリーズがどういう薬なのか、ちょっとハッキリしてもらいたい。


耐熱ミストが急に登場してしまって、失敗したなあ、と思うんですが、
ネイピア商会で新商品が出ると、お子ちゃまたちは物珍しさから、
「買ってーー!」「使ってみたいーー!」「ぴよー!」とねだるので、
根負けしたオトンが「耐熱・耐氷・耐雷のうち、一つだけだぞ!」と一個買ってやった、
というそんな裏設定でお願いします。


ゲームデータ上では、キリン戦でのうちの赤パイはサブスキルでバリスタで
「前陣迫撃砲術」をバカスカ撃っていたので、こんな展開にしてみました。
「トリックスター」でTP回復するので、威力より手数だった。

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