まよらなブログ

24章5話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


ちょっと気ぜわしいというか、本業が大変な中、
石版を集めて世界を復活させたり、英国紳士とナゾを解いていたり
店長として3月の新作服をばっさばっさと売りさばいたり、
3DS内でも大忙しなので、今回は短い話になってしまいました。

でも、ごめん・・・ゲームが本業の息抜きなんだ・・・



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


24章5話
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 マルカブは弩を抱えたまま、倒れた麒麟を見下ろす。ぜえ、と荒い息を吐き、麒麟を見下ろす。額を打ち抜かれて生きているものはいない、と思いながらも、警戒が解けない。起きあがってくるのではないか、と思って、弩を放り出せない。
 その耳に、金属音。我に返って振り返ると、オランピアとクジュラが打ち合い、そして離れたところだった。
 オランピアは倒れた麒麟を見、その前にいるマルカブを見た。マルカブは弩をオランピアに向ける。
「・・・ここまでの強さとは計算外・・・。」
 それはクジュラに対してなのか、『アルゴー』に対してなのか。いずれにせよ、オランピアはすっと姿勢を正して、
「・・・仕方がありません。」
 小声でそう告げた瞬間、突然激しい光が周囲を襲う。・・・しばらくして目の調子が戻ると、そこにはもうオランピアの姿は確認できなくなっていた。
「・・・逃げた・・・?」
 弩をオランピアがいた場所に向けながら、マルカブは呟く。ふと、弱々しく吹き出す声が聞こえた。
「・・・・・・弩に・・・矢弾、入ってないぞ・・・」
 それじゃ敵に向ける意味がないだろーよー・・・と続く声を聞いて、『アルゴー』は一斉にそちらを見た。
「「ディスケ!!」」
「ぴぴぴ!」
 カリーナとアヴィーとスハイルがディスケの元へ駆け寄った。ディスケは、クー・シーに右腕に包帯を巻かれながら、どうにか笑みを浮かべて見せた。
「悪い・・・、何も出来なかった・・・」
「ううん!いいの!そんなこと!」
「もう大丈夫だよう!」
「ぴぴぴーーー!!」
 カリーナとアヴィーがぶんぶんと首を振り、スハイルがディスケの顔面にしがみつく。ディスケが苦しげな声を上げたので、それをアヴィーとカリーナが引き離した。マルカブは弩を肩に担いで、スハイルに苦笑を浮かべているディスケに歩み寄り、
「悪いな、勝手に借りた。壊れてないと思うけどな。」
「・・・上出来だよ、おとーさん。今から、弩使いになる?」
「遠慮する。」
 と答えて、一瞬黙ったマルカブは、何かを言おうと口を開き掛けた。だが、ディスケは左手の人差し指を口の前に立てて、それを止める。
「・・・だからさ、それは言わない約束にしない?」
 ケトスと戦ったときのことを謝罪しようとしたことも気づいているんだろうな、とマルカブは溜め息をついた。マルカブは頭を掻き、
「・・・クー爺、ディスケの傷の具合は?」
「きちんとした治療は必要だし、治療に時間がかかるかもしれないね。でも、大丈夫。痕は残るかもしれないが、機能に障害は残らない。」
「痕、残すなよー。そこも治せよー。」
「それをわしに言われてもね。麒麟に言いなよ。」
 クー・シーの表情から緊迫感は完全に消えている。一刻を争う状態は完全に脱したようだ。マルカブはもう一度溜め息をつき、弩を降ろした。
「・・・全員無事か、『アルゴー』。」
 靴音を立てながらクジュラがゆっくり近づいてきた。オランピアがいた場所を見ながら、
「・・・さすがに不利を悟ったようだな。」
 逃げるが勝ちとも言うが、とクジュラは皮肉りつつ、『アルゴー』へ近づいてくる。激しい戦いの為、その足取りは弱く激しい痛みをこらえている様子だった。
「・・・連中を止めねばなならないが、まずは深王が転移装置を使ったことを元老院に伝える必要がある。」
 お前たちが報告に行ってくれ、とクジュラは言いながら、片手を伸ばし一本の鍵を差し出した。
「それと、これを渡しておく。あの女が落としていったものだ。何かの役に立つかもしれんぞ。」
 月の模様が刻まれた鍵を渡したクジュラは、その場にどっかりと腰を降ろし、深い息を吐いた。
「・・・だ、大丈夫?クジュラも怪我してるよう。」
「クー・シーに手当てしてもらった方が・・・」
 アヴィーとカリーナが心配そうに問い掛けた。スハイルからも心配そうに見つめられ、クジュラは苦笑を浮かべ(一方、「うちの子たち、いい子だろう!?」「でも、うちの子だからやらないぞー。」とクー・シーとディスケに茶化されて、そちらはめんどくさそうに一瞥した。)、柱に寄りかかった。
「俺は、少し休んでから戻るさ。・・・お前たちも準備が出来たら、気にせずに行ってくれ。」
 それに生返事をしながら、渡された鍵をマルカブは見つめる。この上の階にあった、巨大な像のついた扉の鍵だろうか?しかし、あの扉には鍵穴らしいものはなかった。オランピアが落とした鍵なら、深都のものかもしれないが。
 オランピアが鍵を使って扉を開ける場面を見たような気がしたが、それは追々思い出せばいい。今必要なことは仲間の治療だ。
 マルカブは鍵をポケットに放り込んだ。

*****

 樹海から街に戻るまでの道、崩れた城壁に寄り添うように道祖神が置かれている。その前に立ち、樹海の入り口をじっと見つめている娘に、目の良いアヴィーとスハイルが気が付いた。
「ぴぴぴえ!」
「あ!オリヒメだ!」
 スハイルはとっととオリヒメに向かって飛んでいく。オリヒメはスハイルを腕に止めてから、改めて『アルゴー』を見た。ほっとしたように表情がわずかに緩んだが、また無表情に戻り、ゆっくりと頭を下げた。
「お帰りなさい。」
「「ただいま!」」
 アヴィーとカリーナが答え、オリヒメは顔を上げた。そして、『アルゴー』に歩み寄ってきた。
「ディスケは怪我を?」
「・・・そうなんだよー。」
 ディスケは右腕を三角巾で吊り、マルカブの肩を借りている。弩は、カリーナとアヴィーが二人で持っており、彼らの荷物をクー・シーがまとめて持っている。オリヒメはクー・シーの持つ荷物を半分受け取った。
「オリヒメ、迎えに来てくれたの?」
「迎えに来たというより、待っていました。」
 カリーナの問いに、オリヒメはスハイルを肩に留め、荷物を持ち直した。
「宿で待つのも落ち着きませんから。」
「・・・お前、元老院から謹慎命令出てなかったか・・・?」
 マルカブが聞くと、オリヒメはしれっと「バレなければ良いのです。」と答えた。礼儀正しい言動に反して、本当にやりたいい放題な娘だな・・・とマルカブは呆れる。樹海入り口付近にいれば冒険者に目撃されてバレないはずはないのだが、シラを切るか、そもそも謹慎が必要なのかと反論するか、咎められても相手にしないつもりなのだろう。
 オリヒメは、本当に元老院からの謹慎命令はどうでもいいらしく、あっさり話題を変えた。
「待っていたのは私だけではありませんよ、カリーナ。」
「?」
「あそこの木の上に、貴女のシノビが潜んでいます。」
 オリヒメは顎で近くの木を示す。木の枝が、がさりと音を立てた。どうやらそこに潜んでいるシノビは、無遠慮なオリヒメの暴露に慌てたらしい。スハイルが「ぴよーー!」とその木に向かって飛んでいこうとするのを、「そっとしといてやれよー、スハイルー。」とディスケが止めた。
「・・・リョウガンでしょう?心配なら、樹海までくればいいのに。」
 とアヴィーが呟くと、カリーナは「ううん。」と答えた。
「・・・いいの。樹海の中のことは、私が『カリーナ』としてやっていることだから。護衛がいたら・・・、『カリーナエ』になっちゃうから・・・。・・・それがイヤだってこと、リョウガンは分かってくれてるから。」
 カリーナの臣下でも・・・いや、だからこそ、『彼女自身』の冒険を邪魔する気になれないらしい。彼女の樹海での冒険は、彼女だけのものだ。それをカリーナは大切に思っている。・・・それを、リョウガンは認めた、ということだ。
 ・・・でも、それじゃあ。まるで。いつか国に帰るのだからせめて今は、と同情しているみたいじゃないか。
 そう、マルカブは思い、思わずカリーナの頭に手を乗せてわしわしと撫でた。カリーナはマルカブを見上げ、「ありがと。」と微笑んだ。慰めたんじゃないんだ、と思いながら、マルカブは短く「おう。」と返事をした。樹海の冒険でしか、ただの『カリーナ』として生きられない彼女を慰めたわけじゃない。そうではない。お前はいつまでだってココにいるんだぞ、と言い聞かせたくて、思わず頭を撫でたのだ。
 カリーナは「あとで、リョウガンには私からお礼を言うから、そっとしておいてあげて。」といい(臣下の面目丸潰れだが、本人にそのつもりはないらしい)、仲間たちを見た。
「早く帰ろう。ディスケの傷も見てもらわないと・・・。それに、元老院に深王様が転移装置を使ったって報告も、早い方がいいよ。」
「そうだね!急ごうよ!」
 アヴィーがそう言って、弩を抱えたまま走り出そうとし、一緒に弩を抱えているカリーナは前につんのめって転びそうになった。カリーナが転びかけたのを見て、スハイルがアヴィーを蹴り付けた。
「きゅ、急に走らないで、アヴィー!」
「ぴーーー!!」
「ご、ごめん!じゃ、じゃあ、出発するよ!掛け声かけるから、それに合わせて進むよ!」
 そう提案したアヴィーと同意したカリーナはともに弩を抱えながら、いち、にー、いち、にー、とかけ声をかけて早歩きで進んでいく。「・・・運動会みたいですね。」と呟いたオリヒメとスハイルが続いた。
 その二人の背中を見ながら、微笑ましいねえ、とクー・シーが笑い、ディスケは同意してから、ちらりとマルカブに視線を向けた。
「・・・あんなに可愛い子なんだから、おとーさんの気持ちは分からなく無いけどさ、」
 子どもたちと少し距離が出てきてから、ディスケが低く囁いた。
「・・・いつかは子離れしなきゃダメなんだと思うぞ?」
「・・・うるせえな。とっとと行くぞ。そんな話より治療が先だろ。」
 進もうとするマルカブに、「それはどうだろうねえ。」とクー・シーが首を傾げた。
「心の準備は早い方がいいとは思うけど。姫に恋人が出来たらどうするつもりなんだね、おとーさんは。」
 クー・シーが髭を撫でながら問いかけると、
「とりあえず、相手の身辺調査だろ。」
 と、マルカブは真剣な表情で真剣に回答した。


(25章に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

「・・・運動会みたいですね。」のあとに、
「むしろ電車ごっこみたいだけどな。」という一文があったんですが、
『・・・・・・世界樹界に電車はねえ!!』と気がついて最終推敲で慌てて消しました。


次回から25章です。ミッションを受けたりしますが、
バリの療養期間に入るので、ダラダラと日常パートです。

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