まよらなブログ

25章1話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


二週お休みして申し訳ありません。
なんかもう、忙しいのやら風邪引くやらでばったんばったんしてます。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



25章1話
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 麒麟を倒して一週間。兵士たちが忙しそうにしていたが、海都は平和だった。
 その一週間の間、転移装置の繋がる先がアーモロードの王家の【白亜の森】であることを『アルゴー』は確かめた。転移装置を使った深王は【白亜の森】に侵入しているのだろうが、海都はまったく平和なのである。深王はフカビトと【魔】を討つつもりがあっても、人間や海都を害するつもりはないようだから、当然といえば当然ではあった。
 その平和な海都の街外れにあるディスケの家を、マルカブは訪ねていた。ディスケは治療院で施術を受けた後、自宅で療養中だった。しばらく安静が必要だが、クー・シーの初期の治療と海都の医療技術のおかげで、長い療養期間は必要ないようだ。自宅療養中のディスケの世話は、コロネがしているらしい。玄関を開けて出迎えたのも彼女だった。
 ディスケは、ベッドの上でウトウトしている。クッションにもたれ掛かっているが、横になってはいない。眼鏡を掛けたままだし、ベッドの上には本(機械工学の専門書のようだ)が開きっぱなしだったから、うたた寝なのだろう。傷が熱を発するのか、サイドテーブルには水を張った洗面器に濡れたタオルが掛けてある。サイドテーブルの前に置かれたイス(コロネが看病するときに座っているのだろう)の背もたれにはスハイルがとまっており、やっぱりウトウトと舟をこいでいた。マルカブが入ってくると、ディスケは起きたがスハイルは寝たままだった。
「具合はどうだ?」
「・・・あー・・・まずまずかな。」
 ディスケは眼鏡を外して、目をこすり、それから眼鏡をかけ直す。舟をこいでいたスハイルがガクっと背もたれから落ちそうになり、「ぴ!?」と飛び起きる。そしてマルカブを見つけてからキョロキョロと周囲を見回し、
「ぴぴーぴ?ぴぴぴえ?」
「カリーナもオリヒメも、ついでにアヴィーも来てないぞ。俺だけだ。」
「ぴーーーー!?」
 スハイルが飛び上がり、マルカブを蹴りつける。ディスケも唇をわざとらしく尖らせて、
「なんだよーなんで連れてこないんだよーうちのカワイいコちゃんたちー。おにーさん、さみしいだろーよー。」
「うるさい。今度は連れてくる。」
 スハイルの頭をわしっと掴んで、マルカブは聞き流した。ディスケは苦笑した。
「おとーさんは様子を見にきたわけだ。俺の具合次第では、子どもたちに会わせるのもどうかと思うもんな。」
「軽口叩けるぐらいに元気だって分かったから、今度は連れてくる。」
 マルカブはそう言って、イスに腰掛けた。スハイルはサイドテーブルに飛び移り、マルカブに文句らしいことを喚いてから、
「ぴよえー!」
 と、コロネを呼び、器用にドアノブを回して部屋を出て行った。カリーナやオリヒメの代わりに、コロネに甘えてくるらしい。「アイツ、しょうがねえな。」とマルカブはぼやき、ディスケは「スハイルは健全な男の子なんだよー。」と笑った。それから、ディスケは尋ねる。
「元老院は何か言ってきてんの?」
「ミッションを受けることにした。転移装置の先が、王家の森・・・【白亜の森】に繋がってる。で、そこに姫さんが療養中だ。その森にいるだろう深王を見つけて、姫を守るっていうミッションだ。」
「じゃあ、こんなとこにいる場合じゃないだろうよ?急がないと、深王はどんどん奥に進むんじゃねえの?」
「オランピアがその探索を遅らせているらしくてな。『ファクト』も深都からミッションを受けて姫さんを探すことになってるけど、・・・まあ、探索を進めるより先に、やりたいことがあるって言っててな。深都側の【白亜の森】の探索も進んでない。」
「・・・オランピアがなんで探索を遅らせてるんだ?」
「オランピアからお前への伝言を、『ファクト』が預かってきた。お前が探索に復帰するまでは、深都側の探索も進めないってさ。・・・お前、オランピアに何やったんだ?」
 マルカブが半分からかい、半分は訝しげに問いかける。ディスケは眼鏡をかけ直して、
「・・・多分、俺へじゃないよ。アミディスや曾々祖父さんへの義理だ。オランピアは、曾々祖父さんのこと知ってるみたいだから。」
 窓の外に見える世界樹を見ながらそう言った。そして続ける。
「さっき、『ファクト』は探索を進めるよりも先にやりたいことがあるって言ってたけど、もしかして・・・三階層の女王蟻を退治に行ってんの?」
 マルカブはディスケの聡さに頭を抱えそうになりつつ、
「・・・ああ。」
 とだけ、答えた。そうか、とディスケは囁いて、
「アミディスの敵討ちか・・・。なんか申し訳ねえなあ。」
「お前が申し訳なく思う必要はねえだろ。・・・それに、敵討ちってわけでもないと思うんだ。シェリアクは敵討ちっていう発想より、これから犠牲者が出ないためにっていう考えの方が強いだろうし。」
「まあ、無駄なことはしないもんな、シェリアクは。」
「・・・敵討ちが無駄だと、言ったわけじゃないぞ。」
「でも、あまり生産的じゃないよな。」
「・・・それで気が済んで前向きになれば、それはそれで生産的だろ。」
「お前、本当にそう思ってんの?」
 鋭く聞いてきたディスケに、俺に絡んでどうするんだよ、とマルカブは言おうとしたが、止めた。アミディスが死んだことをディスケは割り切ったわけでもないし、体調も悪ければ八つ当たりもする。まして、ここには子どもたちもいない。聞くのが自分だけなら、止める必要もない。ディスケのわがままで困るのが自分とクー・シーだけなら聞いてやる、と言ったのは、自分だ。
 だが、ディスケの方が自分の様子に気が付いて、苦笑を浮かべる。
「悪い。ちょっと八つ当たりだな、これじゃ。」
「・・・まあ、そういう時もあるだろ。」
 どうしてコイツもカリーナも自分自身に対して厳しいのかな、とマルカブは心の中で溜め息をつきながら返事をする。おとーさんは優しいなー、とディスケはわざと棒読みで感想を述べてから、
「俺もシェリアクを見習って、今後のことを考えよう。」
「・・・気が済んでないなら、無理に今後のことを考えなくてもいいと俺は思うけどな。」
「本当におとーさんってば優しいんだからー。大好きー。」
「・・・カリーナやアヴィーにならともかく、お前に言われてもな。」
「ひどいなあ。贔屓だ、贔屓。えこひいき。」
 唇を尖らせて、そう言ったディスケだが、すぐに真面目な表情を作る。彼の切り替えの早さも知っているから、マルカブはただ聞き流すだけだ。
「あのさ、さっきの元老院からのミッションと、深都のミッションの話なんだけど。」
「ああ。」
「深王が姫様を狙ってるっていう前提のミッションじゃねえ?」
「・・・ああ。」
「何で?そりゃ、海都と深都には誤解もあるだろうし、ゲートキーパー倒したり倒されたり、いろいろ気に入らないところもあるだろうけど。深王が世界樹に魅入られてたとしてもだよ、姫様を狙う必要ってないと思うんだよな。」
「・・・深王が世界樹に魅入られてるだけ、ならな。」
「・・・・・・なんか知ってるのかよ。」
 マルカブは溜め息をついた。子どもたちには言う気もなかったが、ディスケにも言う気がなかったのは、ディスケがこのアーモロードの人間だからだ。だが、ディスケ自身がミッションの違和感に気がついたのなら、言わないわけにもいかない。
「・・・別に証拠があるわけじゃないし、実際に姫さんの腕が蠢いたのを見たのは俺とスハイルだけだ。だから、俺の推測だと思って聞いてほしい。」
「・・・なんかもう、すでに不穏な話なんだけど。」
「姫さんはフカビトに憑かれてる」
 そう言ったマルカブは、少しの間の後で、「・・・と、思う。」と付け加えた。一瞬、マルカブの言葉が理解できなかったディスケだが、その付け加えのおかげで吹き出すだけの余裕を持てた。
「自分の考えに自信持てよー、おとーさーん。」
「うるさい。俺の推測だと思って聞けって言っただろう。」
「じゃあ、なんでそう思ったのか教えてくれよ。まず、お前とスハイルが姫様の腕が・・・蠢いた?・・・のを見た?」
「・・・こう、皮膚の下に何か・・・タコでもいる感じでな、波打ったんだよな。」
「・・・例えがグロテスクですよ、おとーさん。」
「俺だって嫌だよ、女の子の皮膚の下にタコがいるのを想像するのは。でも、まあ、そんな感じだ。ただ、見間違いかもしれないし、あのときの姫さんの・・・気配が変わった様子は、俺たちの勘違いかもしれない。そんなのは証拠にならない。」
「スハイルは、証拠になるって言い張りそうだけどな。・・・ああ、だから、元老院で姫様に会ったとき、警戒してたんだ。」
 それで?とディスケは先を促した。
「お前は自分の勘だけで推測なんかしないだろ。自分に自信がないんだから。他にも何かあるんじゃねえの?」
「・・・自分に自信が無い、は余計だと思うけどな。まあ、他の理由は深都が『ファクト』に言ったことだよ。フカビトは人間を操って、世界樹を狙ってるってんだ。で、海都の人間がフカビトに憑かれてるって。」
「・・・それが姫様だって?」
「『ファクト』が深王と世界樹にそう言われたらしくてな。深都側の思いこみもあるかもしれないし、・・・深王は記憶もなくしている。自分の考えも無くして、世界樹の言い分を信じてる可能性もある。ただ・・・、アマラントスを使って100年生きてきた、と、語ったのは姫さん自身だ。そして、そのアマラントスはフカビトが力を保つための花なんだって深王は言っている。」
「・・・姫様がフカビトに憑かれているにせよ、深王が世界樹に憑かれているにせよ、深王が姫様を狙う理由はあるってことか。」
「それが事実か思い込みか、ねじ曲げられた情報かは、ともかくとして、な。」
「・・・で、マルカブとスハイルは姫様がフカビトに憑かれているだろうと思うわけだ。」
「・・・さすがに見てしまったものはな。」
 見間違いならいいと思うよ、とマルカブは小声で呟いた。確かに、とディスケも小声で返事をする。グートルーネ姫がフカビトに憑かれていたのなら、いずれ倒す必要が出てくるかもしれない。色白の姫が自分たちを信頼してミッションを任せていることを考えれば、それは避けたかった。
 マルカブは頭を掻いてから、少しだけ話を逸らした。
「・・・リョウガンが、前に持ってきた話、覚えてるか?フカビトの力を子どもに移植して、フカビトの力を削ぐっていう記録の写しを持ってきただろ?」
「ああ、うちのおとーさんと『ファクト』のパパさんがご立腹だったアレね。」
「・・・俺は、その子どもが姫さんだったんじゃないか、と思ってる。」
「・・・・・・お姫様にそんなことするかな?」
「姫だからそうしたのか、別の意図があるのか、姫さん自身が望んだのか、姫さんの兄がそうしたのかは分かんねえよ。ただ・・・もし、フカビトの力を移植する方法があったのなら、戻す方法もあるんじゃないかって思うんだよ。・・・時間は限られてるが、その方法を探してもいいんじゃないかって。」
「戻す方法って・・・リョウガンにまた元老院に忍び込んでもらうの?」
「まあ、それも方法だし、深都側に資料がないかシェリアクが探している。俺も、お前の療養中にあちこち調べてみるつもりだ。フェイデンやアヴィーのお師匠さんは、学者の立場で研究機関の蔵書も読めるからな。思い当たる記録がないか、調べてもらってる。・・・あんまり、一家の父親に、深入りさせたくないんだけどな。」
「まあ、うちのおとーさんにも深入りさせたくないけどね、俺としては。」
「俺も深入りしたくない。」
 けど、そうも言ってられないからな、とマルカブは呟いた。ディスケはそんなマルカブを、ぼんやり見つめた後で、
「一応、聞いておくけど。」
「おう。」
「・・・それでも元に戻す方法が見つからず、姫様と深王が出会ってしまったら?」
 ディスケの問いかけに、マルカブは溜め息をつかなかった。それにディスケは、急な寂しさを感じるのだ。そんなディスケの唐突な心境の変化にマルカブはまったく気がつかずに答える。
「・・・引き受けたミッションを達成すべきだろ。」
「・・・本当に姫様がフカビトに憑かれていたら?」
 次の質問にも、やっぱりマルカブは溜め息をつかなかった。コイツ、そこまで一人で考えてからここに来たんだ、とディスケは感じ唇を噛んだ。・・・ここで、俺と考えてから決めればいいのに!
 最悪の場合にもっとも悲しい決断をしたとき、マルカブは「自分が判断した」と言って仲間の誰にもその決断を背負わせるつもりがないのだ。それが苛立ちも通り越して、寂しい。自分と考えてから決めれば、その決断の責任を半分背負える。子どもたちに責められても、その責めも半分背負える。なのに、もう、決断してきた、というのなら、そこに入る余地はない。
「・・・、ミッションを達成した後で、そのフカビトを討つんだろうな。」
 ディスケが唇を噛んだことには気がつかず、マルカブは淡々と答えた。


(25章2話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------


微妙にすれ違っちょる、うちの赤パイと眼鏡バリ。

ちょっと話が込み入ってきてるので、5階層からの目的を書いておく回になりました。
あまりおもしろくない回だな。
バリ療養期間中なので、探索は進みません。
次回は別のキャラたちの具合が悪くなる予定でプロットつくってたら、
志水の具合が悪くなりました。

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