まよらなブログ

25章5話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

この章の1話目を書いた時に「風邪を引いた」と書きましたが、
また風邪を引きました。
幸い、書き溜めていたので更新できます、ふー、やれやれ。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



25章5話
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「ぴぴーぴーーー!ぴぴぃーーー!!」
「馬鹿!一人で先に進むな!!」
 そんな声と共に【断罪の間】にスハイルが飛んできて、カリーナを見つけて彼女の胸に飛び込んだ。続けて、剣を抜いたままのマルカブが飛び込んできて、カリーナとアヴィーを見つけると、
「・・・・・・ッこの馬鹿ども!何考えてんだ!?」
 剣を鞘に収めて(フカビトの【真祖】がいるのだが)、二人の元に大股に歩み寄り、額を三連撃でデコピンした。
「きゃん!」
「痛いよう!」
 悲鳴とともに額を押さえる二人に、マルカブは続けて怒濤のような小言を言おうとしたが、リョウガンの生暖かい視線に気が付き、
「お前も止めろよ!?カリーナは数日寝込んでたんだぞ!?」
「知っている。」
「知ってるなら止めろよ!!」
 どうやらマルカブの心配は、二人の体調の方らしい。三階層なら、アヴィーとカリーナの二人組でも危なげなく進むことが出来るからだろう。覆面の下で薄く微苦笑を浮かべたリョウガンだが、マルカブはそれに気づいて、「笑いごとじゃねえ!」と叫んだ。リョウガンは失笑すらして、
「・・・分かっているのか?」
 と尋ねた。何が!?と叫ぶマルカブに、リョウガンは顎でフカビトの【真祖】をしゃくって見せた。
 完全に無視をされていた・・・というよりも気が付かれていなかった【真祖】は、それに気分を悪くした様子もない。呆れた様子もない。驚いていた。だが、それは、マルカブとスハイルの出現でも、彼らがフカビトの【真祖】に気が付かなかったことでもないようだった。【真祖】の視線は、マルカブがとりあえず背負ってきた荷物に注がれている。
 マルカブはフカビトの【真祖】に今更気づいて、剣を抜き直した。スハイルが「ぴッ!!」とカリーナから飛び降りて、彼女の前で翼を広げる。
「マ、マルカブ!スハイル!いいの!戦ってたんじゃない!」
「そうだよう!フカビトと人間は友達になれるかって聞かれたんだよ!」
 カリーナとアヴィーが、マルカブたちの前に両手を広げて立ち塞がった。マルカブは剣を下ろさなかったが、子どもらの言葉・・・突拍子もない言葉を否定せず、【真祖】の様子をじろりと見た。意外と冷静だ、とリョウガンは感心する。マルカブは心配性を炸裂させたときに取り乱すのだ。
 そして、判断は少し迷ったようだった。だが、【真祖】に戦意がないこと・・・むしろ戦いどころではないことを見て取ったらしい。マルカブは剣を下ろした。警戒心は解けず鞘に収めなかったが、リョウガンも苦無を下ろしているだけだったので、一般的な判断だ。マルカブはスハイルに声をかけ、仔フクロウも迷ったあとで威嚇と解いた。威嚇を解いたことで、かえって仔フクロウの本能はフカビトの【真祖】を脅威と認識したらしく、ぴーー!と泣いてマルカブの背後に隠れた。
「・・・フカビトと人が友達になれるかって?」
 震えるスハイルを肩にとめてやりながら、マルカブはアヴィーに聞く。アヴィーは頷き、「あの子が聞いてきたんだよう。」と言い訳のように言った。
 マルカブは【真祖】を見る。【真祖】はマルカブの視線を受けて、驚きから真剣へと表情を変えた。
「・・・お前にも聞こう。・・・人とフカビトは理解し合い友になれると思うか?」
「・・・・・・なんだよ、その質問。」
 マルカブは頭を掻き、それから子どもらを見て、そして肩にとまったスハイルの頭を撫でながら、
「・・・ナマイキな仔フクロウの言ってることを理解するより、意外と簡単なんじゃねえかな。」
「ぴッ!?」
 スハイルが「どういうことピヨ!?」とマルカブを睨み、髪を嘴で引っ張った。マルカブはスハイルを窘めながら、
「お前らと俺らが共存できないのは、お前らが俺らを喰うからだよな?共存できない理由ははっきりしている。だから、共存は出来ないとしても理解は出来るだろうさ。理由が分かってれば、それなりに付き合える。そこに踏み込まなければいいんだからな。・・・・・・俺にとっては、女心の方が難解だ。」
 最後の一言に、リョウガンが苦笑をしたのに気が付いて、マルカブは彼を睨みつけた。ついでに肩のスハイルが、「ぴうぴん!ぴぴぴぴー!」と喚いた。(どうやら、「リョウガン、生意気ピヨ!」と言ったようだ。)
「だから、文通とかから始めるといいんじゃねえの?」
 マルカブが肩を竦めて、そう言った。冗談に、アヴィーとカリーナはマルカブを睨みつけた。しかし、フカビトの【真祖】は「なるほど」と苦笑して、納得した。そして何故か、安堵の表情を浮かべる。
「・・・何処で手にしたか知らぬが、お前たち【空の玉碗】を持っているな?」
「・・・はあ?」
「あ、あれだよ・・・!クジュラから貰った、お碗・・・!」
 アヴィーがばたばたと腕を振って、マルカブの背に回り、荷物の中を漁りだした。マルカブは、いつもの荷物袋(中にはメディカなどの薬も常備してある)をとにかく背負ってきたことを後悔した。
 アヴィーが荷物の中から取り出した黄金色の碗を見て、フカビトの【真祖】はため息をついた。
「それは僕の手にあったもの。」
 アヴィーがびくっと身を竦める。返せ、と言われるのかと思ったらしい。だが、フカビトの【真祖】は、ただ説明を続ける。
「この世のモノでないモノをこの世に保つための力を持つ冠だ。」
 冠?とアヴィーが碗を逆さにしてみた。アヴィーの行動は無視して、フカビトの【真祖】はマルカブ・・・の背負った荷物を見た。
「そして…、 【星海の欠片】 を持つか。」
「・・・それ・・・オランピアがくれた石の名前だよね・・・。なんで、知ってるの・・・?」
 カリーナの問いには答えず、フカビトの【真祖】はまたため息をついた。しかし、そのため息は、完全に安堵のため息だった。
「・・・お前たちは僕の期待に応えるために来たようだ。」
 まるで奇跡のようにな、と【真祖】は告げ、何か聞き取れぬ妖しい呪言を唱える。するとアヴィーが持っていた【空の玉碗】とマルカブが背負う荷物の中から【星海の欠片】・・・そうオランンピアが呼んで渡してきた何の変哲のない石が突如宙へ舞い踊った。自分の持っていた碗が突如舞い上がったことに驚いたアヴィーは、マルカブの背後に思わず隠れる。
 宙に舞いあがった、欠片と玉碗。その欠片が玉碗に収まるとまばゆい光が放たれて周囲を包んだ。
 ・・・と思うと、その二つは一つになる。淡く光る白い物質。
「・・・エーテルが溢れてる・・・」
 アヴィーがマルカブの影から、厳かに囁いた。スハイルが、神妙にさえずった。エーテルを扱うアヴィーや動物の本能を持つスハイルではなくても、分かる。・・・分かるほどに、その白い物質は何らかのエネルギーを静かに放っている。
 「それは、【白亜の供物】。」と、フカビトの【真祖】は呟いた。
「・・・ま、待って・・・!」
 その言葉に聞き覚えのあるカリーナが、とっさに声を出した。
「【白亜の供物】・・・って、クジュラやオランピアの話で聞いたよ。昔、空から降ってきて、病を治した・・・っていうのが【白亜の供物】でしょう?深王様が捜していたのも【白亜の供物】・・・。なんで、今ここにあって・・・、そしてあなたの持ち物から作り出せるの?」
 カリーナの質問に、フカビトの【真祖】は答えなかった。代わりに、おそらく彼にとっての一番の目的らしいことを告げる。
「・・・さぁ、それを泣き虫の姫に渡してやってくれ。【真祖】たる王から百年越しの届け物だとな。」
「・・・それはグートルーネ様のこと?どうして・・・」
 再度のカリーナの質問にも、【真祖】は答えなかった。マルカブは【白亜の供物】というものを眺めながら、ある確信めいた閃きを持った。フカビトの力を削ぐ方法として、子どもにその力を移植する・・・という記録を以前リョウガンが持ってきた。今、その子どもを元に戻せる方法はないか・・・、フェイデンたちにも協力してもらって探している。それに対する答えは、『これ』だ。
 マルカブの確信に【真祖】は気が付いたのかもしれない。彼は、微かに満足さを浮かべた。
「僕の目論見の一つは潰れるが・・・、それでも悪い気持ちではない」
 【真祖】はそこまで話すと目を閉じ ゆっくりと壁にもたれ座る。
「さぁ急げ、あの世界樹に憑かれた王と遭遇すれば、姫には悲劇的な結末しか訪れない・・・」
 しかし、と彼は続けるのだ。
「お前たちがそこに供物を届けることで・・・、あの二人の事態は好転するであろう。」
「・・・君、もしかして、いい人なの?」
 と、アヴィーが場違いなようで本質のような、しかし幼い質問をした。フカビトの【真祖】は、口元に苦笑を浮かべた。お前たちの基準では計れまい、と囁く【真祖】に、アヴィーは頬を膨らませた。
「計れないかもしれないけど、なんでそうしたのか言ってくれなきゃ、理解し合えないよ。」
 君がそう聞いてきたのに、というアヴィーに、【真祖】は微かに肩を揺らし、そして溜め息を吐いた。
「・・・ああ、だからか。だから、話しかけてきたのだな、あの姫は。・・・・・・。」
 フカビトは独り呟いてから、その真紅の瞳を見開いて一行を睨む。
「・・・僕の問いに答えたことに感謝を示す。・・・そして、それが希望であるとも分かるのだ。・・・だが、人の仔らよ。僕が再び全能と化すとき人は最も絶望に近くなる・・・」
 だからせめて、と彼は続けた。
「その手に【異海の印】を与えおく。供物を届け終えたら、急ぎ来い。・・・姫の未来の為にもな」
 フカビトの【真祖】の声と同時に、アヴィーの手のひらに熱く焼けるような痛みが走る。
「痛い!」
 アヴィーの悲鳴に、マルカブが剣を【真祖】に向け、スハイルがアヴィーの前に飛び降りて翼を広げて庇う真似をした。カリーナがアヴィーを庇うようにしながら彼の手を見た。・・・しかし、目を向けても何もない。
「・・・あ、あれ・・・?もう痛くない・・・。」
 手のひらを擦りながら、アヴィーが不思議そうに呟いた。
 釈然としない一行の前で、【真祖】はこれ以上話すことはないとばかりに目を閉じる。
「・・・・・・・・・、」
 これ以上、ここにいても【真祖】は何も言うまい、とマルカブは判断し、アヴィーとカリーナに向き直った。
「・・・帰るぞ。・・・・・・・・・、帰ったら、説教だ。」
「ぴよッ!ぴぴーぴ!ぴぴぃー!ぴッ!」
「「・・・・・・・・・ごめんなさい・・・」」
 マルカブだけでなくスハイルにも叱られ、しゅん、と俯く二人を見て、リョウガンが苦笑を浮かべる。それにマルカブは気が付き、
「お前もだよ!」
 とリョウガンを指さして、そう喚いた。


(26章に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

もう一エピソード入れるつもりでしたが、長くなるので次に回します。
次回から5階層に入る・・・といいなあ・・・と思ってます。

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