まよらなブログ

26章3話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

「あとは第一部・完」まで、時間はかかるがまっしぐら、という状態のためか
書き出す前の考える時間が減り、打ち込みペースが速くなっているのですが、
更新分の半分ぐらい書けると、「残りはあとで~。」と思ってしばらく放っておき
前日に慌てる、という流れは続いています。


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



26章3話
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 数日をかけて【白亜の森】・・・樹海の地下17階にあたるフロアを進んだ『アルゴー』は、その階にある野営地にいた。
 日が暮れる前だったが野営の準備をし、一息ついたところだった。魔物が現れない特殊な小部屋のような野営地で、アヴィーはカリーナに花冠の作り方を教えている。カリーナは膝にスハイルを乗せて、一生懸命に手を動かしている。
 ここが樹海でなくてどこかの花畑だったらなあ、と、焚き火をを起こしたマルカブは、その様子を見てため息をついた。そのマルカブの前に、煙草が一本差し出された。
「吸う?」
 ディスケが煙草をくわえながら聞いてくる。マルカブは一本抜き取った。ディスケは自分の煙草に火をつけてから、マッチ箱をマルカブに投げて寄越す。
「お前、腕の方はどうだ?」
 マッチを擦りながらマルカブが聞く。ディスケはゆっくり煙を吐きながら、おかげさまで、と答えた。
「でもさー、俺、がっかりしちゃったわけよー」
「・・・・・・、何が?」
 煙草に火をつけた後に、聞き返すと、ディスケは花冠を作っている子どもたちを指して、
「だって、俺の治療が終わって目が覚めたとき、おこちゃま二人が枕元にいないんだものー。おとーさんのときは、二人ともずっと傍にいてさー、目が覚めたとき、こう、左右から抱きつかれたじゃん?」
 俺もウチの可愛い子ちゃんたちを両手に花したかったよー、と両手を広げて二人を抱きしめる真似をした。マルカブはふん、と鼻を鳴らし(少し得意げでもあった)、
「スハイルが顔面に抱きついたんだからそれで満足しろ。スハイルのヤツ、治療院に入るなって言ってんのに忍び込んで、何故か俺が治療師の姉ちゃんに叱られたけどな。」
「健気だなー、スハイルも。」
「・・・それに、コロネがずっと付き添ってたんだ。満足しねえと、バチが当たるぞ。」
「健気だよなー、俺のコロネもー。」
「・・・俺の、とか言うな。」
 マルカブはうんざりして呻いた後で、
「・・・あー・・・、お前らさ、結婚する気はあるのか?」
 頭を掻きながら、聞いてみた。ディスケは煙草をくわえて、きょとんとマルカブを見た後で、ヘラヘラ笑う。
「おとーさんとしては、気になる?気になる?」
「・・・その気があるなら、あんまり無茶させられねえだろ。」
「無くても無茶させんなよー。」
「え?え?ディスケ、結婚するのかね?」
 どこから聞いていたのか、テントの中からクー・シーが出てきて、わー、と拍手をする。ディスケは、やめろよー、と手を振った。
「よくあるだろー、戦場で結婚の話とかして死んじゃう話。縁起でもないから、やめろよー。」
「おお、そうだね。フラグは立てないに越したことはないね。」
「そうそう。この話は終了ーー!」
「じゃあ、戦いが終わったらこの話の続きをしようね。」
「じいさん、それもフラグだからさー。」
 と、ディスケとクー・シーはだらだらとどうでもいい会話を続けていく。結局、俺の質問に答えてねえじゃねえか・・・とマルカブは頭を抱えた。
「・・・、出来た。」
 一方、真剣な表情で花冠を作っていたカリーナが、ほっと息を吐いた。
「これで、いいの?アヴィー。」
「うん、上手にできたね!」
 アヴィーはにこにこしながらカリーナの手元を覗いて頷いた。カリーナも笑顔を浮かべて頷き返し、
「スハイルにあげるね。」
 と、花冠を膝の上のスハイルに被せる。アヴィーはお手本に作っていた花冠を、「じゃあ、これはカリーナにあげる。」と差し出した。カリーナは髪飾りを外して、代わりに花冠を載せる。スハイルは「ぴぴーぴ、ぴよぴよ!」と声を上げた。
「可愛い、と言っておりますよ、姫。」
 クー・シーが焚き火の前に座りながら、通訳する。カリーナはスハイルを撫でながら、微笑んだ。
「ありがとう、スハイル。スハイルも可愛いよ。」
「・・・、ぴーーーーーッ!?」
 カリーナの一言に、スハイルが急に怒り出した。
「ぴぴ、ぴよぴよ、ぴーーーーッ!!!」
「な、なんで怒ってるのスハイル!」
 アヴィーが、カリーナの膝の上で跳ね出したスハイルを抱き上げて窘める。それを聞いたクー・シーが、ぶーっと吹き出した。
「おじいちゃん!スハイルは何て言ってるの!?」
「スハイルはね、『ボクは可愛くないピヨッ!』って言っとるよ。」
「もう!スハイル、そんなことで怒らなくていいんだよう。カリーナは誉めてくれたんだからね。」
 アヴィーがスハイルを窘めると、それを聞いていた大人たちは、ぶーーーーッ!!と吹き出した。アヴィーは、ばっさばっさと翼を振って抗議するスハイルを一生懸命に抱きながら、大人たちを振り返った。
「な・・・何で笑うの!?」
「だ・・・だって、アヴィー・・・!アヴィーも、そうやって・・・!怒ってるのに?」
 クー・シーは腹を抱えつつも、アヴィーに聞き返す。ディスケとマルカブは、声を出せないほどになっている。(マルカブに至っては煙を吸って咳き込んだ。)アヴィーはみるみる真っ赤になって、
「だって!僕、可愛いって言われるの嫌だもん!誉め言葉じゃない!」
「だからね・・・!・・・ぷぷ・・・!ス・・・スハイルも、同じように嫌だって言っとるんだよ・・・!ぷぷーーー!!」
「ス、スハイルと僕は違うよ!」
「ぴーーーッ!ぴぴぃー、ぴーーーーッ!!」
 スハイルは、アヴィーを蹴りつけた。違わないピヨ!と主張してるようだ。
「蹴るのやめてよう、スハイル!スハイルは、カリーナに誉められたんだからいいでしょ!」
「・・・だからね、アヴィーも「可愛い」って言われるときは誉められてるから怒っちゃだめだよ。」
 カリーナがスハイルを受け取って、よしよしと宥めながらアヴィーに言うと、
「僕は誉められてないよう!」
 と、アヴィーは腕を振り回して否定した。大人たちはただただ爆笑するだけで、それ以上からかうこともフォローすることも出来ないでいる。
 カリーナは、アヴィーよりもスハイルを落ち着かせることにしたらしく、
「ごめんね、スハイル。・・・うん、そうだ。花冠、似合ってるよ。」
 と、笑顔で伝えてスハイルを抱きしめる。スハイルはそれだけですっかり機嫌を直し、ぴよん!と鳴いてカリーナにしがみついた。なんだか納得できない、とアヴィーはつぶやいてから、更に笑い続けている大人たちをキッ!と睨みつけ、
「みんなは、笑いすぎッ!!」
 ムキーっと怒り出すのだが、その様子を見た大人たちは、
「可愛いなー、アヴィーは。」
「本当に可愛いねえ。」
「まずは、自覚しろ。」
 と、火に油を注ぐ。アヴィーが、またぷんぷん怒りだそうとしたときだ。
「・・・ぴ?」
 スハイルが野営地の入り口を見て、声を上げ、カリーナの胸から飛び降りた。そして、翼を広げながら、
「ぴーーー!!」
 と、警戒の声を上げる。魔物がでない野営地だったため、完全に丸腰だった『アルゴー』は入り口に体を向けるだけで精一杯だ。
「・・・、そんなに警戒をしてくれるな。」
 現れたのはクジュラだった。スハイルは、「ぴーーー!!」とまた警戒の声を上げる。以前、クジュラとオリヒメが街で刃を交えようとしたことを覚えているのだろう。カリーナはスハイルを抱き上げて、問いかけた。
「・・・クジュラも、探索中?」
 クジュラは「探索ではなく見回りだ。」と答えた。【白亜の森】が王家の森で姫がここにいるのなら、彼が森を見回るのも当然だ、と今更納得する。
 クジュラは、一同を見回した。
「・・・お前たちに、話をしたいことがある。少し長くなるが・・・、・・・聞いてもらえるか?」
 意を決したように紡がれた言葉に、一行は頷くことしかできなかった。


*****

100年前の海都は恐れと不安と猜疑心で満ちていた。大異変により海都近辺にフカビトが現れるようになり、大異変により海流も変わって交易も断絶した。王は兵を率いて襲ってくるフカビトを倒し続け、とうとうフカビトを生み出す【真祖】も捕らえた。その妹である姫は兄の無事を祈りながら彼が帰ってこないことを嘆いていた。
 そんな姫に、ある重臣が甘く囁いた。だが、兄王の力になれるのは貴女だけだと、そう囁いた。そして、兄の力になりたいと思いつつ病弱な体ではそれも出来ず、ただ祈り続けていた姫の孤独や思慕や・・・多少の優越感を揺り動かした。
 姫は兄の力になれるのなら、と甘い囁きに同意した。・・・それは、兄王が捕らえた【真祖】の力の一部を己に移植することだった。そうすることで、【真祖】の力は削がれ、兄王たちに有利に戦いは進む・・・そう囁かれたのだ。
 力の移植は苦痛ではなかった。事前に学者たちから丁寧な説明を受け、移植手術に対する不安はほぼなかった。措置には数日かかったが、痛みが襲ってくることもなかった。数日間の疼きはあったにせよ、苦痛はなかった。
 そればかりか、病弱だった姫の体は軽くなり、走れるようにもなったのだ。姫は喜び、兄の帰りを待ちわびた。兄の帰りを待ちながら、軽くなった体で密かに【真祖】に会いにも行った。姫は自分の体が元気になったことを、【真祖】のおかげだ、と思っていた節もあった。【真祖】はまるで友人のように語りかけてくる姫に驚きながらも・・・・・・、それを邪険にすることはなかった。姫は何度か【真祖】の元に通い、・・・姫自身の感想だが、二人は「打ち解けた」。アマラントスの花が己の体を維持することも、【真祖】が教えてくれた、と言った。
 そして、兄王は王宮に帰ってきた。姫は喜んで自分の身に起きたことを報告した。・・・兄王は激高した。フカビトの力を移植する、ということは、姫はもはや人ではない、ということだった。一度混ざったものは、元には戻れず、姫は長い年月を掛けて人から『フカビト』に変わる。そして、いつかは【真祖】や【魔】の眷属になる・・・つまり、倒すべき敵になる、ということだった。兄王は、己の留守中に起きた出来事に激高した。兄王がいれば許さなかった措置だった。
 兄王は、姫にフカビトの力を移植し『人に非ざる』身にした者たちを処罰した。彼らは「自分たちは海都を思って行ったのだ」と高らかに反論した。許しを乞う者はいなかった。彼らは自分たちの行いを、正しいと信じていたからだ。フカビトの真祖の力を削げば、今の海都が抱える脅威は減る。姫がフカビトと化すまでは時間もある。その間に、フカビトと【魔】を倒せるかもしれない。時間稼ぎに過ぎずとも、その間は海都と人類を護れる、そう判断したのだ。フカビトの力を移植する相手は子どもがいい、と分かり、そこで身寄りのない子どもを利用しなかったのも・・・彼らが彼らの正義を信じていたからだ。フカビトと戦う使命を持ったアーモロード王家の姫なら、この崇高な目的もいずれ分かってくれる。そう考えてのことだった。しかし、己の妹を利用され激高した兄王に断罪され、その後、彼等の姿を見た者はいないのだ。
 そして、兄王は街の一部と兵士たち・・・そして世界樹を連れて、海底へと向かった。力の一部を姫に移植され、子どもの姿になったフカビトの【真祖】も連れて、海底に向かった。これ以上、妹を危険な目に会わせるわけにはいかず、せめて妹のフカビト化を遅らせるために、力の源である
【真祖】を更に地底に封じた。
 そうして、『フカビト』との戦いに専念したのだろう。妹が『フカビト』と化してしまう前に、【真祖】を、【魔】を、倒そうと。妹の存在を忘れてしまうほどに、戦いに専念したのだろう。
 ・・・誰かが悪かったわけではないのだ、と、当時を知る人間は口にする。誰かが悪かったわけではない。皆、自分以外の誰かを助けるために行動したことだった。・・・おそらく、重臣に『フカビトの力の移植』の方法を吹き込んだ存在も・・・利己的な考えでそうしたのではない。
「誰かが悪かったわけではない・・・。そう、元老院の婆様も言っている。」
 クジュラは『アルゴー』を前にして、そう言った。
「・・・・・・、しかし、だからこそ、救われてもいいはずだ。・・・そうは、誰も言わない。皆、救われることを願っているのに・・・諦めている。・・・俺も、俺の父も祖父も、元老院の婆様も・・・姫様でさえも、諦めていた。」
 だが、とクジュラは『アルゴー』を見つめる。そして、この場にいない機兵の少女を思う。諦めることを『諦め』させたのは、目の前にいる緊迫感のない冒険者たちと、機兵の少女だった。
「100年が掛け金ならば、少しぐらい賭けねば勿体ない。そう思ったんだ。」





(26章4話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------


クジュラさんメインで書くつもりだったのに、だらだら日常パート入ってしまいました。
まあ、読みどころは、前半と後半の落差です。



「フカビトの真祖は深王が捕らえた」
「姫と真祖は会ったことがある」
「真祖は深都の先である第三階層にいる」とゲームに出てくる事実を並べると、

「兄王が海都にいるときにフカビトの真祖を捕らえた」→
「このときに姫は真祖と会っている
 (深都ルートEDから姫は深都に行ったことがないと思われる)」→
「その後、兄王はフカビトの真祖も連れて海底に向かい、第三階層に封じた」

という流れしかないと考えて、そこをどう説明するか考えた結果の過去話です。
絶対悪を作らない、と思って、この妄想話を書き出しているのですが、
考えれば考えるほど「お前のせいだとしか思えねえよ世界樹ーーー!!」と思ってます。
(なお、世界樹の言い分は二部で書きます。)




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