まよらなブログ

27章2話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


先週、お休みして申し訳ありません。
二話更新は難しかったので、少し早目の更新をさせていただきます。


世界樹クラスタは、新世界樹プレイ中なのでしょうが、
逆裁5クリアまで製品版をお預けしてる志水は体験版をいじり倒しております。

ミズガルズ図書館の存在とか、コールドスリープの技術とか、ラクーナの出身地がエトリアから見て北東で、海を越えるようなニュアンスで語られてないこととか、そもそもハイランダーの出身地だって、海を越えるようなニュアンスで語られてないので、地殻変動によって各地がまとまっている可能性とか、むしろ生き残った人類が各民族ごとにコロニーを作っててそれがかつての地名を引き継いでいる可能性とか、
そういう新世界樹の世界観的な部分を、
「どうやってこの話に組み込んでやろうか・・・!!」と目を輝かせて画策してます。


まあ、
「うちの赤パイに無駄な雑学というか教養があるのは、ある研究機関にいた船乗りに幼いころからいろんな話を聞いていたから」「その機関には、かつての美術品も保管されていて、フェルメールの『天文学者』(のレプリカ)もそこにあって、 その絵の写しを見せてもらったことのある赤パイは、将来のアヴィーはあんな風になるのかなあ、と思ってる」とか、絶対に表に出てこない設定が多数存在するので
ミズガルズ図書館については「キターーーーッ!!!」と思ってます。
あとコールドスリープも第二部で使うつもりだったので、「キターーーー!」と思ってます。




それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



27章2話
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 女王蟻を倒した『ファクト』は、満身創痍ではあった。だが例え、真新しい包帯が体に巻き付いていても、しっかりと視線は定まっている。・・・しっかりと定まった視線は、ベッドの上に横たわるエラキスに注がれていた。
 エラキスは意識がない、というより、眠っているようではあった。浅い呼吸で、微かに胸が上下している。怪我の処置を終えて、額に包帯が巻かれている。頭を打って、気を失ったのだろうか。それとも、上掛けで見えないが、体の傷によって目を覚まさないのだろうか。いずれにせよ、マルカブが蹴り飛ばすように扉を開けた音でも、エラキスは目を開けなかった。
 病室の扉を開けたマルカブは、それ以上は踏み込まず、けれどエラキス・・・というよりも『ガーネット』を見つめる。ミラが何か・・・おそらく辛辣なことを、言おうと口を開きかけたが、シェリアクが彼女の肩に手を置いてそれを止めた。ベッドの枕元に置かれたイスに座っていたツィーが、立ち上がった。
「・・・マルカブさん。・・・私が、未熟で・・・、だから、エラキスさんの傷を塞ぎきれなくて、それで無理させて、だから、」
 普段なら言いたいことは(一方的にでも)淀みなく伝えるツィーだが、文章にもなっていないことを口走る。ミモザがふるふると頭を振って、「だって、あたしを先に治療しようとしたから」と言った。ツィーは緩く首を振り、マルカブを見つめて頭を下げた。
「・・・だから、ごめ」
「マルカブ。」
「シェリアク。」
 ツィーの謝罪を、相手の名前を呼ぶことで、シェリアクとマルカブは遮った。続けたのは、マルカブだった。彼はシェリアクを見て、
「・・・ちょっと面ぁ貸せ。」
 廊下を指して、ガラ悪く誘う。激高しているのは、それだけで分かった。シェリアクは、何を言われても言い訳できない覚悟で頷いた。彼の大事な『ガーネット』を守りきれなかったのは事実なのだし、
 ・・・激高しておきながら、それでもツィーにそれ以上言わせなかった彼の気遣いに、せめて応えるつもりで頷いた。


*****


「何でだ。」
 廊下の片隅で、マルカブに問いかけられたのはその一言。
 だが、それで何を言いたいのかは分かるので、シェリアクは答えた。
「・・・言い訳はしない。エラキスを守りきれなかったのは、私の落ち度だ。・・・ツィーのせいではない。」
「・・・そんなことは分かってる。ツィーだって、やれるだけのことはやっただろうさ。」
 ツィーの未熟さもあったとしても、彼女は自分の出来る治療はやったのだろう。ミモザの治療を優先したのも間違いではないし、その治療もエラキスの治療も、彼女は全力かつ最速で行ったに違いないのだ。そんなことは分かっている。
 そして、それと同じように、この目の前の男がやれるだけのことはやったのも、分かっていることなのだ。
 その場にいなかった自分があれこれ言う資格など無いことも、はっきりと口にしたことはなかったが『ガーネット』をシェリアクに任せてきたのも、それは自分の諦めだったことも、そもそもガーネットに一度だって自分の想いを伝えたことがないことも、そんなこと全部分かっているのだ。分かっている。・・・結局。結局、このやるせなさは、全てをなあなあにしてきた自分の責任だ。分かっている。
 ・・・分かったところで気は収まらない。いや、分かったことで今までの後悔が押し寄せるのだ。何でだ、と言う問いかけは、自分への問いかけだ。何で、自分は彼女の側にいなかったのか、側にいることを諦めたのか、傍にいてほしいと言わなかったのか、時折泣きそうに見えるガーネットに理由を聞かなかったのは何故だったのか。どうしようもない日はせめて夕焼けを見ながら明日を祈るしかないのだと、そう言ったガーネットは明日に何を期待したのか。別れ際に潤んだ彼女の瞳の理由を、どうして問いつめなかったのか。
 「どうかお前のことを教えてほしい。」どうして、そう言わなかったのか。何でだ、という問いかけは、『彼女』自身に触れなかった自分への問いかけだ。
 それを転嫁していることも、全く八つ当たりであることも、シェリアクはそれに気づいていることも、マルカブは分かっている。分かっていながら、自分を責めるようにシェリアクに詰め寄った。それはまるで、シェリアクは自分自身だと言うようだった。
「・・・何でだ。お前が付いていながら。」
「・・・ああ。私も、そう思う。」
 シェリアクの静かな声を聞いて、マルカブは彼の胸ぐらを掴んだ。どうしてそう冷静な声を出せるのだ、と歯を噛みしめてシェリアクを睨みつける。そんな声しか出せないことは分かっている。自分が彼なら、きっとそんな声しか出せない。そして、彼が自分ならきっとこんな醜態は見せない。だからこそ、
「お前が付いていながら、なんでガーネットが倒れているんだよ!?」
 そう、叫ぶのだ。
「お前、言ったよな!自分に何があっても、仲間たちだけは絶対に帰還させるって!」
 ・・・随分と昔の話を持ち出された気がする、とシェリアクは思ったが、実際には3ヶ月も経っていない。ただ、その間の出来事が濃かっただけのこと。そして、この目の前の男が、大切な話を忘れないだけのこと。
 ・・・やはり、あれは、大切な話だったのだ。
 シェリアクは、改めてそう感じた。自分の覚悟も、彼の覚悟も。どちらも少しずつ違い、けれど重さは同じだと言われた。彼が彼の覚悟を全うしているなら、自分は自分の覚悟を全うできなかった、と責められても仕方のないことだ。
「お前たちは確かに帰ってきたよ!けど、何で、ガーネットは目を覚まさない!?何でお前は、彼女を守りきれなかった!?」
 そう唾まで飛ばすマルカブに反論できる余地を持たないと、シェリアクは感じるのだ。だから。だから、口にする言葉は一つだけだ。
「・・・、返す言葉はない。エラキスを守りきれなかったのは、私の落ち度だ。」
 けれど、とシェリアクは言い、胸ぐらを掴む彼の手を握り、自分のシャツから手を離させた。
「私は、君には謝らない。」
「・・・・・・、」
「私は、君にだけは、謝らない。」
 熱を込めて、そう断言された。シェリアクの意地だと気付く一方で、自分が今まで『彼女』を放ってきたことを責められていることにも気付く。そう、謝られる筋合いはない。・・・そんな筋合いすら、自分には無い。
 ―― でも、だからこそ。―― だったら、どうして。―― 今更、俺にどうしろと。―― 分かっている、分かっているから、頼むから。
 ・・・続けようとする言葉がいくつか、頭に浮かぶが、それは頭の中をぐるぐると回るだけだ。自分が何を言いたいのかも分からずに、ただマルカブは一つだけ理解した。自分はきっと、この男には勝てない。
「・・・ふ、・・・ざけんな・・・!」
 拳を握って、振り上げた。きっとシェリアクは避けたりしない。分かっているのに、振り上げた。・・・分かっているからこそ、振り上げた?いや、どうでもいい。とにかく、振り上げて、
「・・・!ダメだよ、マルカブ!」
 そんな声とともに、その腕に全身でしがみついてきた少女がいる。確認せずとも分かる。カリーナだ。
 ・・・何で、お前がここに来るんだよ。
 邪魔をしてきた少女への苛立ちだったのか、少女の前で醜態を見せた自分への後悔だったのか、憎々しく思った。カリーナは、目をぎゅっと閉じて腕にしがみついたまま、ふるふると頭を振った。
「ダメだよ、こんなの・・・!マルカブ、後から、悲しくなるよ・・・!」
 カリーナは恐る恐る目を開けて、そしてやっぱり恐る恐るマルカブを見上げて、
「マルカブ、後できっと、後悔して、自分のこと、嫌いになる・・・!・・・・・・っ私、そんなの嫌だよ!」
 涙まで溜めて、そう訴えるのだ。それを振り払ってまで、シェリアクに殴りかかる覚悟も度胸も冷たさも、そのいずれもマルカブには無かった。
 マルカブは拳を一度握りしめてから、それを解いた。カリーナはおずおずとマルカブの腕から離れた。もうシェリアクに殴りかかることがない、と信じている様子の少女が、正直腹立たしい。腹立たしいが、それは本当に八つ当たりでしかないことは分かっていた。
 ・・・・・・カリーナに八つ当たりをするなんて、それこそ冗談じゃない。
 マルカブは溜息すらつかずに、カリーナとも目を合わせずに、背を向けた。
「・・・驚かせて悪かった、カリーナ。」
 謝る相手は、カリーナだけだ。それは、つまらない意地だった。
「・・・頭、冷やしてくる。」
 そう言って、足早に去っていく。カリーナはその背中を見つつ、小さな声で、うー、と唸りだした。ディスケに言われたとおりだ。マルカブの未練で自分が傷つくのに、慰めることなんか出来ないのに、なんで来てしまったんだろう?
 ・・・でも、来なかったら、マルカブはきっとシェリアクさんを殴ってた。ただの勢いだけで殴ってた。
 カリーナはしくしくと泣き出した。もしマルカブがシェリアクを殴っていたら、彼はどんな顔でその拳を眺めているだろう。その顔を見るのは嫌だった。きっと彼は傷ついた。後悔した。エラキスが目を覚まさないことで悲しんだり怒っている彼に、さらに後悔まで背負わせたくなかった。
「・・・すまなかった、カリーナ。」
 シェリアクが屈んで、泣いているカリーナに声をかけた。
「・・・私がつまらない意地を張ったせいだ。」
「・・・お、大人げ、ないっ、です・・・!シェリアク、さんもっ、マルカブも・・・!!」
 しゃくりあげながらカリーナは抗議した。本当に、とシェリアクは溜息をついた。
「・・・君の方がよっぽど大人だし・・・君の前では『大人』であろうとしたマルカブの方が私より大人だろう。」
「・・・は・・・っ・・・反省、してください、ね・・・っ!」
 カリーナは瞼を拭って、シェリアクをきっ!と真っ正面から(シェリアクは屈んでいるので視線が合った。)見た。
「後で、エラキスさんに、言いつけてっ・・・!叱って、もらいます・・・!」
「ああ。そうしてもらう。」
「・・・マルカブのことは、私が、叱ってきますから・・・っ」
 カリーナはしゃくりあげつつも、しっかりとした口調で告げ、頭を下げた。
「・・・マルカブのこと、許してください。」
 ・・・やっぱりこの子は自分たちより大人だ、とシェリアクは思った。
 

*****

 マルカブが頭を冷やしに行く場所は、そう多くないように思えた。カリーナは港までやってきて、桟橋に停泊中のミアプラキドゥス号を見上げる。港の管理人からは、マルカブが自分たちの船に入っていくのを見た、と聞いている。カリーナは空を見上げた。雲がいくつか浮かぶ、気持ちのいい晴天で、時折そよそよと風が吹く。マルカブは、きっと甲板で空を眺めている。
(・・・待った方がいいよね・・・。)
 カリーナは溜息を吐き、桟橋の先に歩いていった。待つことは苦しいが、とても大切なことだ。マルカブだって、いつもは私のことを待っていてくれる。話を聞く、と言いながら、話をするまで待っていてくれた。泣きやむまで待っていてくれた。
 天気もいいし気候もいい。マルカブが甲板で寝転がっていても風邪は引くまい。だから、少し待っていよう。夜になっても出てこないなら、声はかけよう。待っていてくれた彼が大好きなんだから、私も苦しくたって待っているのだ。私が彼を好きなように、彼は私を好きにはなってくれないが、それでも同じように待っているのだ。
 カリーナは切なくもささやかで精一杯の覚悟を胸にして、桟橋の先に腰を下ろそうとした。
「カリーナエ姫。」
 背後から声をかけられて、動作を止める。背中が強ばり、息が止まる。
「お迎えにあがりました。」
 カリーナは大きく目を見開いて、屈みかけた背を伸ばした。反り返るように背中を伸ばしながら、胸に拳を当てる。奥歯を噛みしめて、目を堅く瞑る。首を小さく振ったかと思うと、背を丸めて俯いて、胸の前で手を組んだ。その手の中で、いつも首に掛かっている鮫の歯のペンダントを握りしめる。
 声をかけてきた相手から、再び声はかけられない。背中の向こうにいる迎えの者も、きっと待っているのだ。自分が振り返るときを。無理に振り返らせたら意味は消えてしまうから、待っているのだ。
 振り返るときは、王であることを覚悟したときだ。そして、その覚悟は、少しずつ決めていたのに。
 ・・・何で、今なの。
 カリーナは間の悪さを呪いながら、鮫の歯のペンダントを握りしめながら、それでも目を開け、ゆっくりと振り返った。
 そこにいるのは、王の侍医。騎士団長の娘。自分を救い、右手をつぶしたアウグストの双子の姉。
 王宮で、何度か見かけたことがある。冷たい視線の女性だ。どことなく軽蔑の混じった・・・どことなく敵意を感じる彼女の視線が、カリーナは苦手だった。
「・・・フロレアル・ダンベルト・・・。」
「名前を覚えていただき、光栄です。」
 フロレアルは深々と礼をする。王の侍医にして腹心が、病床の王から離れるとは思ってなかったカリーナは、分かっていることを思わず問いかけた。
「・・・何をしに来たの・・・?」
「先ほど、申し上げたとおりです。」
 フロレアルは淡々と告げた。
「お迎えに、あがりました。」


 
(27章3話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------



ただいま、絶賛「うちの赤パイをグーで殴りたい!」のターン!

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・なのですが、
「結局、このやるせなさは、全てをなあなあにしてきた自分の責任だ。」
の辺りとか、志水が自分の嫌いな部分をうちの赤パイに背負わせているので、
時々、申し訳ない気持ちになります。こういう部分を文章にするとき、ちょっと辛い、
・・・んだけど、背負ってもらって彼や私が駄目なりに必死なのも分かってくるので、
だからこそリアルを頑張っていられるところもあるのです。



「仲間たちだけは絶対に帰還させるって!」は12章1話の会話が元です。
その後に続く「随分、昔の話を持ち出された気がする」というシェリアクの感想は、
志水自身の感想です。・・・え、2年前の話なの!?(驚愕)

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