まよらなブログ

27章4話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


新世界樹をやっている某Iさんに、
「大川ボイスのキャラの名前がアイザックさんだったら教えてくれ。」と伝えたところ
「大川さん出たけどアイザックさんじゃなかったよ!」と情報をもらいました。
なんでハインラインとクラークが名前の由来のキャラがいるのに、
アシモフだけいねえんだよ新世界樹ーーーーー!!!(Wikiに張り付きながら)


大川ボイスキャラは中盤以降に登場のようですよ。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


27章4話
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 自ら三週間を期限にしたカリーナを、フロレアルはじっと見つめた後に頷いた。三週間で出発できるなら上々だ。
「では、三週間後にこの港から出発できるよう、準備いたします。非公式とはいえ、一国の船を港に入れるのですから、海都に了解を取るべきかと思いますが、よろしいでしょうか?」
「それは、私とクー・シーで元老院に伝えます。」
 カリーナはあっさりと提案する。
「あなたが伝えるよりも話が通りやすいでしょうし、・・・これからの『アルゴー』のこともお願いしておきたいですから。」
「お手を煩わせて申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。」
 フロレアルは極めて事務的に答えた。カリーナは皮肉げに
「・・・そうやって、私の身分を明かして海都に恩を売ることも、故国のためになるでしょうし。」
 と付け加え、フロレアルは平然と頷いた。その様子を見て、カリーナは溜息をつく。フロレアルは誠実ではない方法も良しとするようだ。王宮での狭い付き合いではあるが、騎士である彼女の父親や双子の弟は実直そのものだった。双子でもこうも違うのか、とカリーナは感心さえして、
「・・・貴女はアウグストと双子なのに、考え方が全く違うんだね。」
 カリーナは口調を普段のものに戻して、感想を述べた。フロレアルは頷く代わりに、
「『アウグストは臆病者だが卑怯者ではない。フロレアルは卑怯者だが臆病者ではない。』」
 と、胸を張り、声を張った。誰かの口真似のようだった。瞬きをするカリーナに、フロレアルは素の淡々とした口調に戻って答えた。
「・・・そう、上の姉が言っておりました。」
「・・・・・・、」
 カリーナは、今更、――本当に今更――、気づく。フロレアルは、アウグストとは双子で騎士団長の娘だ。そして、アヴィーの養母でフィデリオの大切な人であるシルンも、騎士団長の娘だ。つまり、フロレアルの上の姉とは、
「・・・・・・シルン・・・?」
「姉を『シルン』と、そう呼ぶ方もおりますね。誰にでも呼ばせているわけではないようですが。」
 フロレアルはため息を吐き出した。
「私は、貴女が許せません。姉からフィデリオを奪い、アウグストから右手を奪った。・・・私だけが、貴女を許せないままです。」
 カリーナはぐっと言葉を詰まらせたまま、何も言えずに立ち続けた。立ちすくむのではなく、両足をしっかりと地面につけて立ち続ける。受け止める気概で立つ。己の民の言葉に耳を傾けないで、己の民の怒りを受け止めないで、何が国王か。
(私は、人の繋がりを守るんだって決めたんだ。)
 だから、家族のことで怒り哀しむその言葉も背負うのだ。決めたばかりのことをすぐに撤回するほど、無責任な少女ではなかった。
 カリーナが何も言えず、しかし逃げもしなければ視線を逸らしもしない様に、フロレアルはもう一度、溜息を吐き出した。先に視線を逸らしたのはフロレアルだった。カリーナが立ちすくみながらも受け止めようとする様子に感心しながらも、急な寂しさも感じるのだ。その『何もできなくとも逃げない』様子は、彼女の主であり想い人である国王の生き様とよく似ていた。
 ・・・彼に会いたい、と強烈に感じたとき、カリーナの提示した三週間は長過ぎるように思えた。だが、大切に想っている人々と永遠に会えないことを覚悟して国に帰る、と決意した少女の前で「三週間は長過ぎる。」など、言えるはずもない。
 ・・・三週間は長過ぎる。ならば・・・、永遠は絶望だ。
 フロレアルはカリーナの決意の重さを思いながら、静かに口を開いた。
「もういいのです、とは言いません。私が、あなたを許すこともないでしょう。・・・ですが、認めましょう。あなたが、大姉様やアウグストに許されるだけの人間であることは。・・・もっともあの二人は、許すどころか恨んでもいませんが。」
 そう言って、フロレアルは一礼した。
「・・・三週間、私もこの国に留まります。お互い、有意義に過ごせますよう。」
 そして頭を起こすと踵を返し、桟橋を戻っていく。カリーナは呼び止めようとしたが、呼び止めて何を伝えるのか全く分からなくて、伸ばしかけた手を中途半端に宙に浮かせたまま黙る。
「・・・・・・・・・、あ。」
 そしてしばらくして、声を出した。
「アヴィーのこと・・・教えてあげればよかった。」
 最初に思いついたのはそんなことだった。フロレアルはシルンの妹なのだから、アヴィーにとっては立場上の叔母だ。
 後でまた会うこともあるだろうからその時に教えよう、と思っていると、桟橋でフロレアルとすれ違うようにしてリョウガンがこちらに向かってくる。フロレアルとリョウガンは、一度視線を交わしたようだが、何かやりとりをする様子もなかった。
 カリーナはリョウガンが自分の前までやってくるのを待ってから、静かに告げた。
「三週間後、国に帰ります。」
 カリーナの宣言に、リョウガンは頷きもせずに耳を傾ける。
「あなたも、私の国に行く準備をしてね。」
「了解いたしました。」
 リョウガンはただ静かに答えるのみだ。カリーナは、うん、と頷いた後に、
「・・・ごめん。あなたは私の臣下なんだから、私がどんな王になりたいか、とか・・・どんな風に国を治めたいかとか・・・、伝えなきゃいけないこと、いくつかあると思うの。それで、あなたに協力をお願いしないといけないと思うんだ。・・・・・・でも、」
「・・・いずれ、お話ください。」
 リョウガンはカリーナの言葉を遮った。三週間は、短すぎる。自分に語り掛ける時間すら、惜しんでほしい。リョウガンはそう思う。
「国に帰る道中でも、姫が王位を継ぐ前日でも。私は命尽きるまで、姫の臣下です。私と姫には、時間はあります。」
 ですが、とリョウガンは静かながらも語気を強くした。微かに震えるその声に、カリーナは気づいた。
「・・・ここにいられるのは、・・・三週間なのです。」
「・・・うん。」
 カリーナは頷いて、それから微笑んだ。リョウガンの声が震える理由は、一つしか思いつかなかった。
「ありがとう、リョウガン。私のことで、悲しんでくれるんだね。」
 リョウガンは息を飲み、それから再び声を震わせた。
「・・・・・・・・・・・・、姫にとってここで過ごす時間の意味は・・・、分かっているつもりです。『アルゴー』が、姫にとって何よりも大切であることも。」
「・・・うん。ありがとう。」
 カリーナはもう一度礼を言い、そしてミアプラキドゥス号を見上げた。
「・・・お言葉に甘えるね、リョウガン。少し、一人にさせて。」
 リョウガンは頷き、静かに桟橋を戻っていく。カリーナは今度こそ桟橋の先に座って、マルカブを待つことにした。


*****


 ・・・だっせえなあ、とマルカブは空を見ながら思う。
 ミアプラキドゥスの甲板に寝そべって、海都の空を見ながら思う。頭を冷やせば・・・冷やす前から、どう考えても八つ当たりでしかないことは分かっていたのに、何だってシェリアクに食ってかかったのだろう、と考えても致し方ない。ただ、とにかく、だっせえなあ、とそんな感想しか自分に抱けないでいる。
 まったく、カリーナが言ったとおりだ。「後悔して、自分のことが嫌いになる。」まったくその通りで、それ以上のことは何も起こらない。そんなことは分かっているのに、カリーナに止めてもらうまでは止められなかったのだ。ガキに面倒かけてどうすんだよ、とマルカブは大きな溜息を吐いた。
 マルカブは、非常に残念なことではあったが、自分が立派な大人だとは思っていない。「立派」というのは、人格者だとか地位があるとか、そういうことではない。自分の食い扶持は自分で稼ぎつつ、人様に多大なご迷惑をおかけしない程度には大人ではあったが、自分以外の誰かを背負って生きていけるような「大人」ではない。まして、この年まで後のことを考えずダラダラと生活していたのだ。子どもから見て、頼れる大人だとは思えない。
 でもマルカブは、少なくともカリーナとアヴィーの前では、多少情けなくとも「大人」でありたいのだ。辛いときには頼ってほしいし、せめて安心ぐらいはさせてやりたい。それを覆してまで、自分の怒りとも無力感とも哀しみともつかないものを吐き出すつもりはなかったし、・・・それを覆してまで、恋敵とも言える男を殴るつもりもないのだ。カリーナの前で、そんなことをしてたまるか、とも思ったし、あの子を不安にさせないためならいくらでも我慢もできる。・・・つまりそれは、自分のことよりも、一度は惚れた女よりも、
(・・・・・・ガキどもを選んだっていうことだ。)
 マルカブは雲を見ながら、息を吐いた。それは溜息というよりも深呼吸だった。自分のことよりも一度は惚れた女よりも、子どもたちを選んだなら、最後まで選び通すべきだろう。
(・・・カリーナ、心配してんだろうな。)
 と、思えば、早く安心さてやりたい気もしたし、一方で帰りたくない気にもなる。しかし、カリーナと顔を合わせにくい、という理由で帰らないのなら、それこそ本当に子どもみたいだ。さすがに、そこまで幼くないマルカブは、息を吐ききって、腹筋の力だけで起きあがる。甲板に置いていた帽子・・・アヴィーとカリーナがバイトして買ってくれた帽子・・・を取り、それをぐるりと一周回して見つめてから、頭に載せた。
「・・・・・・帰るか。」
 よっこらせ、と立ち上がり、何とは無しに船から外を見て、桟橋の先に座ってるカリーナに気づいた。本当に心配させていたようだ、とマルカブは呻いた。
「・・・カリーナ。」
 船縁から声をかけると、カリーナは振り返る。マルカブを見つけると、ほっとしたような表情を見せた後でおろおろと視線を泳がす。
「あ、あの、あのね、マルカブ、・・・あの・・・・・・、」
「・・・心配させて悪かったな。」
 何と声をかけていいか、困っているカリーナを見て、マルカブは自然と落ち着いた。
「・・・冷静になったよ。帰ろう。」
「・・・・・・・・・、ホント?」
「嘘ついてどうすんだよ。もう、シェリアクに殴りかかったりしないから、帰ろう。」
「わ、私が心配してるのは、そっちじゃないよ。・・・その・・・・・・、マルカブ、哀しいなら、もうちょっとここにいても、」
「大丈夫だ。落ち着いたし、アヴィーたちも心配してるだろ。俺はそっちの方が気になってきた。帰ろう。」
 マルカブはそう言いながら、船から降りてくる。カリーナは立ち上がり、マルカブのところに走り寄った。手の届くところまでくると、マルカブはカリーナの頭を強めに撫でた。
「さっきは止めてくれてありがとな。お前の言うとおりだ。あのままだったら、後悔してた。」
「・・・うん。・・・余計なことしてごめんなさい。」
「何で謝るんだよ、礼を言ってるのに。」
 マルカブは最後にカリーナの頭を撫でてから、
「何か、菓子でも買って帰ろう。エラキスの目が覚めたら見舞いにでもなるものをな。」
 お前が食べたいもの選べよ、と言いながら、マルカブはカリーナの背を押した。それは謝罪でもあり礼でもあることはカリーナには分かっていたので、素直に頷きながら、
 ・・・一緒にお菓子を食べられるのも、一緒に歩けるのも、・・・頭を撫でてもらうのも、あと三週間なんだ。
 ・・・ということは、出来るだけ考えないようにした。



(27章5話に続く)


---------------あとがきのようなもの-------------------

途中で出てくるうちの赤パイの「大人」の感覚は、まさに志水の感覚です。
もっとも、「誰か」を既に背負ってる自分に気づいてない辺りが、
いい方向の内省が出来ないうちのダメパイです。


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