まよらなブログ

27章5話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


新世界樹の感想を読みたくてあちこち回ったり回らなかったりしてますが、
まあ、大きな路線変更もあるので、文句も意見もあるのは致し方ないと思ってます。

だが、一言だけ言いたい!
「新作を6年待ってみろよ!文句なんか言えなくなるぜ!!」

と、いうわけで、いよいよ6年ぶりの逆裁シリーズ最新作の発売日が迫ってきました。
多分、来週は更新作業してる場合じゃなくなるので、一週お休みします!(宣言した)
その次の週も、泊まり込みの業務があるので、
もしかしたら更新が難しいかもしれませんが・・・、善処します。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



27章5話
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「どこに行ってたの!?急にいなくなるから、心配したよう!!」
「ぴーー!!」
 カリーナとマルカブが宿に帰ると、アヴィーとスハイルがきゃんきゃん喚いて出迎えた。その背後で、ディスケが「熱烈な『おかえり』だなー」とへらへら笑う。アヴィーはマルカブが手に提げている焼き菓子の袋を見て、
「あ!もしかして、カリーナとお菓子食べてきたの!?ずるい!僕も食べたかった!」
「ぴ!?ぴーーーッ!!」
「食べてねえし、お前等の分もここに入ってるんだから文句言うな。・・・で、アヴィー、一つ頼まれてくれないか?」
「なあに?」
 何を買ってきたの?と袋をのぞき込みながらアヴィーが聞き返す。マルカブは袋の中から、箱に入った菓子を取り出して、
「これ、『ファクト』に見舞いってことで渡しに行ってくれ。」
「うん。いいよ。」
 何も考えていないアヴィーは素直に頷いた。
「きっとツィーは喜ぶね。ミモザもまだ治療院にいるみたいだし、渡してくる。」
「ぴぴ!ぴぴ!」
「スハイルも行く?スハイルは病室に入れないよ?」
「ぴよ!」
「いい子にできる?治療院では、静かにしててね。」
 お前も静かにしてろよな、とマルカブは呻く。スハイルはアヴィーに注意されたことが気に入らないらしく、アヴィーの髪を嘴でくわえて引っ張った。そのスハイルを、ディスケがひょいっと肩に載せて、
「俺も一緒に行ってくるから、心配しなくても大丈夫だよ、おとーさん。」
「・・・余計に心配になるんだがな。」
「じゃあ、行こうぜー、アヴィーにスハイル。」
 ディスケはアヴィーの首に腕を回し、引きずるように治療院の方へ向かっていく。カリーナはそれを見送りつつ、
「・・・、ディスケは・・・きっと、私たちが外に行った理由に気づいてるよね・・・」
「馬鹿だけど、そういうのは鋭いからな。」
「・・・・・・・・・、きっと私たちの代わりに、シェリアクさんに謝ってくれるんだろうな・・・。」
 カリーナは、しゅん、と俯いた。
「私たちが謝らなきゃいけないのに・・・」
「・・・何で、『私たち』なんだよ。」
 マルカブが頭を抱え、
「謝るのは俺だけだろ。お前はシェリアクに何も悪いことしてないだろ。」
「そ・・・そうかもしれないけど・・・」
 カリーナはマルカブを見上げてから、ぷいっと視線を逸らし、
「・・・・・・私は、マルカブとは『私たち』がいい。」
 唇を尖らせて、小声でそう呟いた。小声過ぎて、マルカブには聞き取れず、
「何だって?」
 と思わず聞き返すと、
「聞き返しちゃダメだよ!本当にデリカシーがない男だね!」
 どこから聞いていたのか、いつの間にかその場にきたクー・シーが、丸めた新聞紙でスパーン!とマルカブの頭を叩いた。
「このダメダメだめんずに、年頃の娘として何か言っておやりよ!オリヒメ!」
 クー・シーはパコンパコンとマルカブの頭を叩きながら、背後にいるオリヒメに話を振った。宿に顔を出しにきたらしいオリヒメは、溜息をついてから、
「マルカブに言っても、もう、どうしようもない気がします。」
「あ、それもそうだね。」
「・・・ですから、カリーナ。余計なお世話だとは分かってますが、思い直した方がいいと思います。」
「い、いいの!ホントに余計なお世話だよ!」
 カリーナは、マルカブから菓子の袋をもぎ取って、
「私、お茶の用意してくる!クー・シー、手伝って!」
「了解しました。おお、ワッフルですな!美味しそうな匂いが!くんかくんか!」
「・・・ちょっと待て、クー爺!お前、人の頭、いきなり叩いておいて!」
「おとーさんの分はおじいちゃんが食べちゃってもいいですかな!?」
「おい!人の話聞けよ!」
 と言っても、聞いてもらった試しもなく、クー・シーとカリーナは厨房に入っていった。訳が分かんねえよ、と呻くマルカブを、オリヒメは白い眼で眺めてから、
「・・・いいんですか?」
「何が?カリーナのことか?」
「・・・それについても話し合いたいと思うのですが、今は置いておくとして。ディスケです。」
「・・・女王蟻退治で『ファクト』が怪我をしたことが、か?」
「はい。ディスケの親戚のような方が、女王蟻に殺された、と聞きました。そのことと、『ファクト』が女王蟻退治の依頼を受けたことと、・・・『ファクト』が怪我をしたことは全く別の話ですが・・・、ディスケは別の話とは思わないでしょうから。」
 マルカブは低く呻いた。
「・・・何で、」
「?」
「『アルゴー』に入って一番日の浅いお前でも分かることに、俺は、すぐに気がつけなかったんだろうな。」
 気づいていれば、シェリアクに喰ってかからなかったのに。そうマルカブは後悔もする。オリヒメは、何があったのか知りませんが、と言いながら白い眼を再び向けた。
「私はもう十分に『アルゴー』のつもりですが。」
「そうか。悪かったよ。」
 マルカブがひらひら手を振りながらも素直に謝ったので、オリヒメは、それで良し、としたらしい。ディスケが帰ってくれば、マルカブは彼に礼を言うのも分かっていた。だから、ところで、と話題を変えた。
「あのお菓子の袋は、最近評判のお店のものですよね。私の分もあるのでしょうか?」
「・・・・・・。」
「・・・・・・目を逸らさないでください。」


*****

「何があったのか知らないけど、多分、あの菓子は、マルカブの謝罪の品。」
 治療院の廊下に置かれたベンチに座って、ディスケはシェリアクに告げた。シェリアクは、溜息をつき、
「謝罪をしない、と言った私相手に、律儀な真似をしてほしくないのだが。」
「まあ、そういう奴なんだけどなー。まあ、俺にとってはお礼の品で、カリーナにとってはけじめみたいなところもあるんだろうし。そういうのを全部まとめた品物をおとーさんが買ってきたわけだよ。重いぞー。」
「・・・ありがたく頂いておく。エラキスが回復したら、彼女にも食べてもらうよ。・・・容態は安定してきてね、いずれ目を覚ますだろう、とのことだ。」
「そりゃ、よかった。伝えておくよ。エラキスにも食べてもらおうと、日持ちのする焼き菓子を選んでるんだろうしさ。その辺、妙に所帯じみてるんだよなあ、さすがうちのおとーさん。」
 ディスケは苦笑してから、溜息を吐き、
「ありがとなあ、アミディスの仇を討ってくれて。・・・そのせいで、エラキスやお嬢さん方にも怪我までさせてしまって。・・・すまなかった。」
「・・・アミディスを助けられなかったのは私で、それに私たちで決着をつけたかった。君が、礼を言うことでも謝罪をすることではない。」
「『私』と『私たち』で使い分けてるってことはさ、」
 ディスケは伸びをしながら、
「シェリアクも、アミディスが死んだことを自分のせいだって思ってるわけ?」
「・・・・・・、まあ、そうなるな。」
「・・・俺たち、みんな、同じようなことを言って謝罪し合ってるんだよな。」
 馬鹿みたいだよなあ、とディスケは笑い、膝を叩いて立ち上がった。
「だからー、もう、お終い!誰のせいでもないし、誰でもみんなのせいだ。『誰か』のせいじゃない。だから、謝るのはお終い!」
「・・・君のその切り替えの早さは美点だな。」
 シェリアクが苦笑したときだ。病室の扉が開いて、顔を出したのは『ファクト』の一員であるアンドロのディアデムだった。女王蟻退治には行かず、宿で『ファクト』を待っていたディアデムは、表情を変えずにシェリアクに告げた。(なお、ツィーたちには、アヴィーとスハイルと一緒に菓子を食べてくるように言って、休憩所に向かわせた。)
「シェリアク。エラキスが目覚めそうです。」
「・・・分かるのか?」
「心拍数と呼吸の様子から、そう考えます。しかし、脳波を測っていないので、正確な予測ではありません。」
「いや、十分だ。」
 シェリアクは立ち上がり、ディアデムと入れ替わるように病室に入る。ディアデムは気を遣ったわけでもないのだろうが、廊下に残り、
「・・・ディスケ。」
 自分を組み立て、整備をしてくれる技師の名を呼んだ。ディスケは、ポケットをまさぐってタバコを取り出そうとして、・・・ここは治療院であることに気が付いて、苦笑して動作を止める。自分の前に来たディアデムを見上げて、
「んー?何だー?」
「人間は、不便です。」
「・・・どういう意味?」
「アンドロのように、パーツを取り替えるわけにはいかないのです。」
 そうだなあ、とディスケは苦笑したが、表情を真面目なものに変えてから、造られたばかりのアンドロの少女に言い聞かせた。
「でも、ディアデム。それは怪我人やその人に親しい人の前で言っちゃダメだぞ。」
「どうしてですか?」
「・・・哀しくなるからだよ。」
 もっと適切な言い方があるだろうなあ、と思いながらディスケは告げ、ディアデムは少し考えてから(もっとも彼女に思考の時間はほぼ必要ないのだが。)、
「哀しい、という意味が、私はよく分かりません。」
「そうか。まあ、もうちょっとしたら分かるよ。・・・分かってほしいし、ディアデムなら分かると思う。俺はそう思うよ。」
「はい。」
 ディアデムは頷いてから、まじまじとディスケを見つめ、
「ディスケ。ですが、聞いてほしいと私は思っています。よろしいでしょうか?」
「おー。なんでも言ってごらんなさい。」
「・・・おそらく・・・目覚めないエラキスを見て、私の、思考を司る回路が通常の60パーセント以下の出力に落ちたこと・・・、それは原因不明であり、先ほど自己点検を行ったのですが、回路自体には異常はなく、出力も通常のままなのです。60パーセント・・・もしくはそれ以下に落ちた、と私が感じたのです。ありえない表現ですが、それは思考が『固まる』とも表現することが適切のように思います。ミモザの星術で、水が一瞬で凍り付くような、急激な変化でした。」
 ディスケの目がかすかに開かれたことにディアデムは気が付いた。ディスケは驚きを表さないように努めて、「続けて。」と言った。ディスケの瞳孔の開き具合、息を一瞬飲んだ音、かすかに上がった体温などは、ディアデムには一瞬で把握できることではあり、ディスケが隠そうとしてもほぼ無駄なことだった。だが・・・、ディアデムはディスケの体の変化に気が付き、彼がかすかな興奮状態にいることには気づくものの、それが『驚き』と『喜び』の混ざった感情からくるものだ、とは把握できなかった。
 「続けて。」と言われたことに、機兵の少女は従う。
「他にも・・・体の間接部が錆ついたかのように軋む感触、胸のあたりに圧迫感がありました。私の体の素体は錆はつきませんし、貴方の整備を先日受けたばかりですから、埃や汚れによって動作不良を起こすとは考えられません。貴方の整備に不備はない、と私は判断します。」
「それは嬉しいなあ。」
 ディスケは笑いながら、整備対象物に自分の整備の不備を指摘されるのはキツいなあ、などと考えた。ディアデムは、続ける。しかし、その言葉は少し遅れ気味になった。
「・・・エラキスを見ながら、考えていました。私に生じた、私の変化はなんなのかと。私は、感情を理解していませんが・・・、人間が、強い感情を感じたとき、体にも変化が生じることは知っています。・・・ですから、・・・もし・・・、もし、私の感じた変化と同じような変化が人間の体にも起こるのなら・・・、私のあのときの『状態』は、・・・人間が、哀しみ・・・怖れ・・・そう呼ぶ感情にある『状態』に・・・相当するのではないかと・・・」
 ディアデムは辿々しく言葉を紡ぐ。そのことに、ディスケは驚きをもって彼女の顔を眺めた。今度は驚きを隠さなかった。機能上では言いよどむ、ということがないはずの機兵が、口ごもりながら続けている。
「・・・そう、思うのですが、私は間違っているのでしょうか?」
「・・・・・・・・・、すげえ・・・・・・・・・。」
 ディスケは、放心したように呟いた。不安そうに自分を見つめるディアデムに気付き(『感情』を理解していない、というディアデムの表情から感情を読み取るのは、ディスケがそう読み取った、という結果でしかないのだが)、ディスケは我に返った。
「深都の・・・世界樹の技術ってすげえなあ。そんな高度なことを言えるんだ。」
「高度、ですか?」
「迷ったり、疑ったり、自信がなかったり、そういうのはさ、決まってることしかできないただの機械じゃ、出来ないんだよ。」
 ディスケは、一人頷いて、ディアデムを改めて見つめた。ディアデムは、彼の目が少し変わったことに気付く。ディスケは、自分がディアデムを見つめる意味が変わったことに気付く。技師ではなく長く生きている人間として、彼女を見ていることに気付く。
「・・・ディアデムは育て甲斐がありそうだな!人としてさ。」
 ディスケは、かつて曾々祖父がオランピアに言ったことと同じことを、そっくりディアデムに伝えた。ディアデムは首を傾げた。
「じゃあ、宿題だ、ディアデム。エラキスが目覚めたときに、いつもと違う感触を感じると思う。そのときの思考や感触を、よく観察して、俺に教えて。それもきっと、君が感情を・・・人間を、理解するのにきっと役に立つよ。」
「了解しました。」
 ディアデムは頷き、病室の扉を見つめ、
「早く。目覚めたエラキスと、話がしたいと。私は今、そう考えています。」
 静かに希望を述べるディアデムに、ディスケは微笑を浮かべた。「希望を述べる」なんて、なんて人間らしいのだろう、と思いながら。


******

「三週間、ですか?」
「うん。」
 厨房で湯を沸かしながら、クー・シーは隣に立つカリーナを見つめる。カリーナはやかんを乗せた火を見つめながら頷いた。
「私と、リョウガンはそのつもり。だけど、ツィーには、エラキスさんや『ファクト』のこともあるから強制はしない。クー・シーももう少し、ここにいたいなら、そうして。・・・でも、セイリアス様は・・・すごく長く生きられるわけじゃないから・・・早めに戻って、セイリアス様と過ごしてほしいって、私は、そう思う。これは命令じゃなくて、私の希望だよ。だから、クー・シーにも強制はしない。」
「・・・姫が決めたのであれば、わしはその期間に従います。ですが・・・、短くはないですか?」
「・・・時間がない人を、待たせるのもよくないと思うの。」
「・・・それは、そうですが。」
「でも、三週間あれば、グートルーネ様のところに【白亜の供物】は届けられると思う。・・・そこまでは、私もしたいと思ってる。」
 クー・シーは呻いたが、カリーナに反論も否定もしなかった。賛成もしなかったが、クー・シーが自分とともに国に帰るだろうとカリーナは考えていた。彼はそのためにこの街に来たのだから。
 分かりました、とクー・シーの答えが返ってきた。カリーナは、うん、と頷いた。少しの沈黙の後に、
「・・・あのね、クー・シー。私、自分がどういう風に国を治めたいか・・・言ったよね。」
「ええ。聞いておりますよ。」
「大切な人の大切な人が幸せであるように・・・人の繋がりを断ち切らせないことで、国と大切な人を護るんだって。もしかしたら、私が実際に王になったら、もう少し中身が具体的になったり、ちょっと内容が変わるかもしれないけど・・・、私がそう決めたことは間違ってないと思う。」
 でもね、とカリーナは溜息をつき、そして顔を上げて笑った。
「・・・やっぱり、自分の好きな人が他の人のことを好きなのを見てると、悲しくなっちゃうね。」
「・・・・・・・・・、姫。」
「・・・辛いけど、頑張る。そう、決めたんだもの。」
 クー・シーは大真面目な顔で、カリーナを見つめた後に、くるりと踵を返した。
「わし、マルカブのことを殴ってきます。」
「本気で殴ったらダメだよ。」
 カリーナはそれだけを、苦笑しながら告げるのだ。
 ・・・・・・その諦観が憎々しい。そう、クー・シーは思った。


(28章に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

この話の最大の書き手的盛り上がりは、
アンドロのディアデムが自分の変化と状態を語るところですね。
この部分を書くために、何度も何度も、
ダニールがベイリに再会して「喜び」の表現をする部分を読み返しました。
高校生のころに、アシモフのロボットたちの感情表現の仕方を読んで、
すっごい衝撃を受けたんですよね。
ロボットがロボットとしてできる範囲で誠実に答えてる、
すごいロボット目線で、ロボットの言葉を書いてることに衝撃を受けたんですよね。

もう、何のこっちゃな話ですが、
興味を持った方は、アシモフのロボットシリーズをお読みください。
まずは短編「私はロボット」がおススメです、
ダニールは「鋼鉄都市」からのシリーズに登場します。(文庫版を押し付けながら)


新世界樹にアイザックさんが出てこないので、腹いせのように推してます。

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