まよらなブログ

29章2話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


先週、お休みして申し訳ありません。
本日、29章1話と2話を同時更新します。
こちらは29章2話です。1話を先にお読みください。



それでは、2話です。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



29章2話
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 姫と深王に【白亜の供物】を渡した『アルゴー』は、フカビトの【真祖】と戦う準備を始めていた。
 カリーナがグートルーネ姫との対談を終えて宿に戻ってくると、マルカブとアヴィー、ディスケ(と、その肩に載ったスハイル)が今まで描いた地図を囲んで額を付き合わせている。スハイルが、カリーナが帰ってきたことに気が付いて、ぴよぴよ鳴きながら彼女の胸に飛び込んだ。カリーナはスハイルを抱き留めて、
「ディスケ、来てたんだ。」
「おうよー。スハイルが、カリーナに会いたい!って騒いでさー。」
「ぴよん!」
「でも、宿に来てみたらカリーナは姫様んとこに呼ばれたっていうんだもんよー。スハイルがヘソ曲げて大変だったんだぞー。スハイルにへそは無いけどさー。」
「ぴよーん!!」
 スハイルは、すりすりとカリーナの頬に頭を擦り寄せた。カリーナはよしよしとスハイルを撫でながら、三人が囲んでいる地図を見た。
「お姫様、元気だった?」
 アヴィーがカリーナに問いかける。カリーナは、うん、とだけ頷いた。姫の体が未だにフカビトや魔からの影響を受けやすいことは、姫自身から口止めされていた。折角、私の体とお兄様の記憶を戻してくれた『アルゴー』ががっかりすることが無いように、と姫は微笑んだ。いつか必ず、100年とかからず、『アルゴー』が【魔】を倒してくれるのだから、それまで耐えてみせましょう、と姫は笑った。
 『アルゴー』が【魔】にたどり着く前に、カリーナは国に帰ることになる。去り際に、カリーナは、自分が【真祖】や【魔】を倒すことに協力できないことを姫に詫びた。姫は、貴女は貴女の決めた貴方の為すべきことを、とカリーナを見送った。
(・・・私は、この国が幸せになることも考えながら、自分の国を治めよう・・・。)
 帰りの馬車の中で、カリーナはそう考えた。それが姫の忍耐へのせめての協力であるように思えた。
 ぼんやりとグートルーネのことを考えていたカリーナに、
「今ね、真祖がいる場所がどこなのかって話をしてたんだよ。四階層の神殿の奥にいるって声は言ってたけど。」
 とアヴィーが地図を指して言う。
「三階層の断罪の間に、あの真祖はいなくなってたんだって。オランピアが見てきたらしいんだけど・・・。」
「・・・あの封印されてた扉を開けられるぐらいには力が戻ったってこと?」
「そうなんだろうね。」
「で、一つ、開いてない扉があったなって話をしててな。」
 と、マルカブは四階層の地図を引き出して、
「ここに、取っ手も鍵穴もなくて大きな像がついた扉があったろ?」
 地図上では行き止まりだが、メモで(そのメモの字はカリーナのものだ)『扉あり』と書かれた箇所を指す。
「ここしかないだろって話になった。」
「うん。・・・でも、鍵穴もないんだよね・・・。開くのかな・・・。」
「四階層はもともと海都の神殿だったっていうからな。神殿の作りがそのまま残ってるなら、開ける方法を深王・・・じゃ、なかったな。王様が知ってるだろうと思ってな・・・オリヒメに元老院に確認に行ってもらってる。」
「オリヒメが?」
「もう宿での謹慎を解いてもらっていいだろうって直談判に行くっていうからさ。ついでに頼んだんだよ。」
「でも、遅いねえ。オリヒメ。」
「・・・・・・えっと・・・あの、多分、待たされてると思う。私がグートルーネ様と会ってたから・・・フローディアさんもザイフリート様もそこにいたの。元老院の人も、確認できる相手がいなかったんじゃないかな・・・」
「・・・ああ。じゃあ、悪いことしたな。」
「きっと、怒って帰ってくるね、オリヒメ。謹慎解くのも忘れられてるって怒ってたし。」
「・・・ね、オリヒメの謹慎が解かれたら、探索に参加してもらおうよ。」
 カリーナは提案した。自分とクー・シーがいなくなった後、オリヒメがいるのは心強い。早めに探索に慣れてもらえれば、それに越したことはない。スハイルが、ご機嫌に鳴いて賛成した。
「・・・私がどうかしましたか?」
 あからさまに不機嫌なオリヒメの声がした。スハイルが、ぴよーん!機嫌のいい声でとオリヒメに向かっていったが、抱き留められはしなかった。しばらく、スハイルはオリヒメの周囲をぐるぐる飛び回っていたが、どうしても抱き上げてはくれないようなので、カリーナの元に戻っていった。
「オリヒメ、お帰り。謹慎は解かれた?」
「ええ。ですが、私の謹慎のことはすっかり忘れていたようです。こちらは、大人しく従っていたのに。」
「・・・大人しくは従ってないだろ・・・。」
 樹海にこそ入らなかったが、宿を出て街を歩いていたり樹海入り口まで『アルゴー』を向かえに来ていたオリヒメに、マルカブは呆れた様子でつっこんだが、一睨みされただけで流された。カリーナがおずおずと声をかける。
「オリヒメ、ごめんね。私がグートルーネ様と話していたから、フローディアさんもクジュラもグートルーネ様のところにいたの。だから、謹慎解除の返事も遅くなってしまったと思うんだけど・・・。」
「カリーナのせいではありません。お気になさらず。・・・むしろ、カリーナが姫君とお会いすることを知っておきながら、私にそれを伝えなかったマルカブの方が問題かと。」
「オリヒメも八つ当たりするんだなー。」
「八つ当たりではありません、ディスケ。正当な主張です。」
「あー、分かった分かった。俺が悪かったよ。で、謹慎解かれたんだろ。お前もこれから探索に加わる?」
「流さないでください。探索には加わります。【魔】の元にたどり着くことが私に下された命令ですから。」
「まあ、まずは【真祖】と戦うことになるんだけどな。」
 マルカブが頭を掻きながらそう言うと、アヴィーは首を傾げた。
「あの子と・・・【真祖】と戦わないとダメなのかな?」
「アヴィー。」
「・・・フカビトが人間を食べる・・・から、放っておくことは出来ないよ。でも・・・あの子、僕たちに人間とフカビトは友達になれるかって聞いたんだよ。お姫様に【白亜の供物】を渡すように言ったりさ・・・、本当に悪いフカビトなのかな・・・。」
 悪くない人を倒すのは嫌だなあ・・・とアヴィーは呟いてから、彼にしては信じられないぐらい大人びた苦笑を見せた。
「・・・でも、ケトスだって悪い鯨じゃなかったんだよね。・・・もう、僕、そんなことをいう資格、ないよね。」
 無邪気の固まりのようなアヴィーにそう言われては、返す言葉は見つからない。不器用なりに気遣いをするマルカブにも、アヴィーのことはよく分かっているカリーナにも、明るく慰める術を知っているディスケにも、言葉を見つけられない。一瞬、落ちた気まずい沈黙を動かしたのはオリヒメだった。彼女は『アルゴー』に完全に帰属していないが故に、淡々と話題を変えた。
「・・・先に、頼まれていたことのご報告をしてもよろしいですか?かつての海都には神殿の奥に進む術があったのか、元老院で確認しました。」
「・・・あ、ああ。ありがとうな。」
「いえ。海都にあった神殿にはそのような扉は存在しない、とのことです。おそらく、フカビトが作り上げたものであろう、と。・・・そうであれば、なおのこと、向かおうとする扉の奥に真祖がいる可能性は高いかと。」
「そうか。じゃあ、問題はその扉をどう開けるかってことか。」
「行ってみたら、開けてくれるんじゃねえの?真祖は俺たちを待ってるみたいじゃん?」
 ディスケが冗談のようにいいながら、アヴィーを見て、
「でさ、そこで、聞いてみればいいじゃんかよ、アヴィー。戦わないで済むならそれがいいと思うんだけどどうよ!?って。意外と答えてくれるかもよ?何せ、俺らを待っててくれるんだしさ。」
「・・・う、うん。」
 明るい口調だが、励ますような暖かさも感じて、アヴィーは頷き、
「そ、そうだよね!聞いてみよう!ありがとう、ディスケ!」
 にこにこしながら、礼を言った。
「じゃ、そうと決まればさ。明日にでも、浅い階層で探索してみねえ?オリヒメがどう戦うかを知らないと、危ないと思うんだよなあ。ショーグンって、ちょっと特殊らしいし?」
「あ!エトリアのブシドーも、ちょっと変わってたよ!シルンが「ブシドーは使いにくい!」って怒ってた!」
「・・・悪意がないのは分かるのですが、その言い方はどうなのでしょうか。」
 オリヒメが額を押さえて呻くように抗議した。


*****

 その二日後、クー・シーは樹海の入り口の木陰に座って、水筒の茶を啜っていた。その隣に立ったままのベクルックスがいる。
「あと一週間か。」
「そうだね。世話になったよ、ベク。アヴィーのこと、よろしくね。」
「・・・セイリアスを頼んだ。」
「任せといて!・・・とは言えないなあ。セイリアスは結構一人でなんとかしちゃうしね、姫もセイリアスを独りにはしたくないと思ってくださっている。わしの出番はないかもね。」
「・・・アヴィーはお前たちが帰ることに気付いていない。ミモザも知らない様子だ。・・・言わないのか?」
「姫が言わない限りは、わしからは言えないね。まあ、国に帰るなんて言ったら、引き留めるだろう?そしたら、姫の決意は揺らぐからね。言えるわけもないんだろうけど。」
「・・・何も言わずに行くのもどうなんだ。セイリアスが国に帰ると言ったときだって・・・私たちですら散々揉めた。」
「そうだねえ。若かったなあ~、わしも!」
 笑うクー・シーの隣で、ベクルックスは溜息をついた。そして、踵を返す。
「おや、帰るのかね。ベク。」
「ピックの墓参りにきただけだ。お前とともに、『アルゴー』を待つつもりはない。」
「愛弟子が帰ってくるのを迎えてあげなよ。「ただいま」を言うアヴィーは可愛いよ?」
「尚更だ。『アルゴー』水入らずで過ごせ。」
「・・・丸くなったなあ。さすが一児の父だよねえ。」
「・・・帰る前に、一度飲もう。」
「ベクから誘うなんてね。」
 クー・シーは笑い、
「・・・ありがとう。二度もわしを見送ってくれて。」
 返事はなく、振り返りもしないが、ベクルックスは軽く手を上げてそれに答えた。かつての・・・いや、今でもか、仲間を見送って、クー・シーは息を吐き、茶を啜る。
 『アルゴー』はオリヒメを加えて、探索に向かった。とはいえ、オリヒメを加えた探索の調整なので、二階層を進んでいる。そのため、大怪我もないだろう、とクー・シーは留守番を買って出た。サボりたいだけだ、と仲間たちは文句を言ったが、クー・シーは留守番中にベクルックスとピックの墓参りに向かいたかったのだ。
 二度と来るはずもないと思っていた海都に来て、おまけにピックの死の背後に何があったのかが分かり、しかもそれを解決することが出来た。
(おまけに、いい子たちとまた仲間になれた。)
 この街を去ることに、クー・シーは未練はない。フカビトも【魔】も海都の安全も、クー・シーとしてはどうでもいいことだ。【魔】は仲間たちが誰かと協力して倒すだろうと信じてもいるし、仮に倒さずに仲間たちが海都を去ってもそれはそれで良かった。樹海で無惨な死を迎えることだけは避けてほしいが・・・、そればかりは心配してもどうにもならない。
 カリーナを苦難しか見えない道に進ませることだけが、心苦しい。セイリアスと同じように苦悩する道が見える。
(・・・だからこそ、わしも帰らないといけないよねえ。)
 セイリアスのためだけではなく、カリーナのために。一緒にいられない
人たちの代わりに、一緒にいたいと思う。
「わし、そろそろ寿命が来てもいいかなって思ってたんだけど、」
 クー・シーは自分の上空、木陰を作る木を見上げた。
「そうも言っていられないなあ。女の子が頑張ろうとしているのに、放っては逝けないよ。そうは思わないかね、」
 リョウガン、と木の上に控える姫の忠臣に声をかけた。樹海の冒険中は護衛をしない、というカリーナの命令というか頼みを忠実に守っている彼は、木の枝の上で樹海の入り口を見つめながら「聞かれるまでもなく。」と答えた。
 彼が答えを告げた口許には覆面がない。クー・シーは首を捻り、
「お前、顔を隠さないのかね?」
「・・・今後、姫が、己の臣下と誇れないような仕事をするつもりはない。顔を隠す必要もなく・・・、姫の誇りのためにも私は顔を隠さない。」
「・・・いやはや、お前も姫並のバカ正直さだ。おじいちゃん、嬉しい!」
 リョウガンはじろり、とクー・シーを見下ろして、クー・シーは肩を竦めた。リョウガンの声が上から降ってくる。
「・・・声が聞こえる。帰ってきたようだ。」
「賑やかだからねえ、うちのギルド。」
 よっこらせ、とクー・シーは立ち上がり、リョウガンは気配を消した。
「・・・あ!おじいちゃんだ!」
「ぴいぴーーーん!」
「ただいまー!クー・シー、待っててくれたの?」
 わいわいと、子どもたちが手を振ってくる。クー・シーは、いつも通りに、けれども大切に、大切に答えることにした。
「おかえりーー!おじいちゃん、待ってたよーー!」



 カリーナがフロレアルと約束をした『帰国』の日まで、あと7日。



(29章3話に続く)


---------------あとがきのようなもの-------------------

プロットにはクー爺ちゃんは登場してないんですが、
彼も別れを言う相手が何人かいるよなあ、と思ったらついつい出張りました。
クー爺ちゃん的には、兄と妹が同じ道を進むのを見守るしかないループを繰り返してるわけで、
そう考えると、爺ちゃんちょっと切ない。


姫が真祖に対して思うこと、も書きたかったんですが、
国に帰るつもりのカリーナにそんな話はしないよなあ、と思って割愛しました。
書かないだけで思っていないわけではないので、
この話において姫が薄情者だとは思わないでもらいたい。
(二部で書けそうだったら書きます。結構、愛憎入り交じってるんじゃあないかと。)

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