まよらなブログ

29章4話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


まさかの、本当に快感ゲームだった「だるめしスポーツ店」に時間泥棒され
新世界樹が放っておかれております。四階層まで入ったんだけどなあ。




それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


29章4話
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 フィニック家のアル・ジルの部屋で、カリーナとミモザ(とスハイルとギェナー)がお茶とお菓子を囲んでいる。カリーナにとって、アル・ジルとミモザは『アルゴー』としての仲間でもなく、ツィーのように主従関係も兼ねるような仲でもなく、純粋にこの町で出来た友人だった。
「それで、それで、カリーナ。」
 キルトのベッドカバー(おそらくマリアの手作りだ)のかかったベッドに座って、アル・ジルがにこにこしながら問いかける。
「話したいことって、なあに?」
 ミモザはカリーナとともにラグの敷かれた床に座りながら、パッチワークのクッションを抱いてカリーナを見た。カリーナの膝の上に座ったスハイルが不機嫌そうに「ぴー・・・!」と鳴いて、ベッドのフレームに止まっているギェナーに窘められた。
 カリーナはトレーに置かれたプレッツェルを割って、スハイルに一口あげてから、
「あのね、」
 そわそわと両手を擦り合わせる。
「その・・・実は、」
「うん?」
「どうしたの?カリーナ。」
「は、恥ずかしいんだけど、」
 カリーナは頬を押さえて、
「マルカブにデートしてってお願いしちゃった・・・!」
 スハイルが「ぴぴーぴ!ぴぴ!ぴぴ、ぴーよ!!」と抗議したが、アル・ジルによって嘴を押さえられた。バタバタと羽を振ってもがくスハイルを無視して、アル・ジルは目を輝かせて身を乗り出す。
「本当!?で、マルカブは何て!?」
「あ、呆れてたけど、いいぞって。」
「やったあ!よかったね!カリーナ!!」
 わあい!と万歳するアル・ジルと、それによって嘴が自由になったスハイルは「びーーーー!!」とアル・ジルに怒ってから、
「ぴぴーぴ!ぴぴ、ぴーよ!ぴーよ!」
 カリーナに、(おそらく「ぼくとデートしようピヨ!」と)一生懸命に訴えている。カリーナは自分にしがみついてきたスハイルをよしよし、と撫でてやった。
「カ、カリーナ。あの、・・・」
 ミモザがもじもじしながら、クッションを抱きしめた。
「それじゃ・・・マルカブさんに・・・、こ・・・告白っ・・・するの・・・っ!?」
 ミモザの方が真っ赤になって質問し、アル・ジルが「きゃー!」と黄色い声を上げ、スハイルが「ぴーーッ!?」と甲高い悲鳴を上げた。ギェナーは我関しない方向を選び、翼の毛繕いを始めることにした。カリーナは困ったように手を擦り合わせながら、
「・・・そ、そのつもりは無いけど・・・」
「「無いのッ!?」」
「な、なんで二人でハモるの・・・?」
「だって!チャンスでしょ!?」
「そ、それに、デ、デートに誘ってるんだから、好きだって・・・ことじゃないの・・・?」
 興味はあるが話題そのものは恥ずかしいのか、ミモザがつっかえつっかえ尋ねてくる。カリーナは笑って、
「じゃあ、ミモザも今度アヴィーを誘ってみたら?」
 というと、「ひゃん!」とミモザは悲鳴を上げた。
「ち、違うの!あたし、アヴィーのこと、別に好きじゃない!」
「ぴよッ!」
「なんで同意するの、スハイル・・・。ミモザ。アヴィーは鈍いから、そんなこと言ってたら伝わらないよ?」
「違うもん!それに、も、もし・・・もしもよ!あたしが、デ、デ、デデデートに誘ったとしても、アヴィーはどうせ出かけるのに付き合うだけだって思うもの!」
「マルカブもそうなんだよね・・・」
「それはカリーナがちゃんと言わないからだよ!まあ・・・、マルカブに『好き』って言っても、仲間としてとかおとーさん代わりとして、とか、そんな風に思いそうだけど・・・」
 アル・ジルは腕を組み、「どう言ったら伝わるのかなあ・・・」と考え出す。本当にどう言ったら伝わるのだろう、とカリーナは心の中でため息をついた。
(私の『好き』にも、その全部が混ざってるんだもの。)
 慕情も友愛も依存も信頼も感謝も。その全てを含めた感情を、もっとも適切に表すのなら「好き」の一言。けれど、ある一面しか伝わらない。どれでもないの、そんな言葉じゃ足りないの、と訴えたとしても、それを表すのは「大好き」の一言だ。
 カリーナは膝の上のスハイルを抱く腕に、きゅっと力を込めた。スハイルは、カリーナを見上げ彼女を呼ぶ。我に返ったカリーナは、微笑んでから、
「あのね。それで・・・、デートにはマリアさんに作ってもらったワンピースを着ていこうと思うんだけど、どうかな・・・。」
「ああ!それ、すごくいいと思うよ!似合ってたもん!」
 アル・ジルが手を叩いて同意をし、ミモザが「どんなワンピースなの?」と聞く。カリーナとアル・ジルでそのデザインを説明したあとで、どんな髪型がいいか、とか、どんな靴が似合うかとか、年頃の少女の会話になっていき、スハイルとギェナーは居眠りをし出した。(と、言っても、カリーナも靴やアクセサリーをたくさん持っているわけでもないので選択肢は限られた。)
 カリーナは年相応の会話をしながら、こんな話は二度と出来ないんだろうな、と冷静に考えるのだ。


******

 カリーナが、マルカブを『デート』に誘ったのは昨日のことだった。
 時折、カリーナはマルカブを誘って剣の稽古をしているのだが、その日も二人は宿の庭で木製の剣を打ち合っていた。(なお、木製の剣はディスケが自宅の機材で切り出したお手製である。)木の剣の打ち合いで乾いた音が周囲に響く。それを見ているアヴィーが「カリーナ、頑張れー!」と応援し、オリヒメに抱かれたスハイルも「ぴぴーぴ!ぴよよえー!」と応援する。
 カリーナは、点を打ち込むようなマルカブの切っ先を剣の腹で受け止めて、弾く。弾くと言うよりも、絡め取るようにして流していく。力では負ける彼女が、重騎士の攻撃を受け流す技を応用した、独自の防御の技だ。アヴィーの隣で、打ち合いを見ていたオリヒメが感心の声を漏らした。
「・・・、ねえ!マルカブ!」
 剣を弾いて、距離をとったカリーナが、覚悟を決めたように言った。
「あのね、私が今度、攻撃するから、それが決まったら、私のお願い聞いてくれる!?」
「・・・あ?」
 マルカブは汗を拭い、
「なんだよ、いきなり。そんな賭けをしなきゃならんほどの、頼みなのか?」
「そ・・・そっちの方が、楽しいと思ったの!」
 カリーナとアヴィーのおねだりには、滅法に弱いマルカブだ。そんなお願いをしなくとも大概のことは聞き入れてしまう。それに気付いていのは、本人たちだけではあるが。
「いいぞ。・・・ああ、じゃあ、俺が防いだら、俺の頼みを聞いてもらおうかな。」
「・・・なんだか犯罪臭がする一言ですね・・・。」
 オリヒメがぼそっと口にすると、マルカブに睨まれた。
「いいよ!どんな頼み?」
「あー・・・どうすっかなあ・・・。昼まで寝てても文句言わないでもらうかな・・・。お前は何を頼む気だよ?」
 カリーナは、攻撃の体勢をとった。じりっと地面を踏む。おそらく、頼み事を口にしながら攻撃してくる・・・とマルカブは判断して、迎撃のために剣を構えた。突剣使いであるマルカブは、剣の切っ先を用いることに慣れている。彼にとって、剣は『点』状のものであり、斬撃を用いるカリーナにとっては剣は『線』状のものだ。だから、マルカブはカリーナのように剣を盾代わりに使うことは苦手である。盾は『面』状のものだからだ。故に、彼の迎撃は、速さを生かしての「攻撃される前に攻撃をする」ことだ。
 マルカブは体を上下に揺らすようにして、タイミングを合わせだした。カリーナの踏み出しと同時に、体を沈め、バネのように飛び出すつもりだ。
 とにかくカリーナに甘いマルカブは、よっぽどのことでない限りは彼女のお願いを聞いてやるつもりでいた。別に、攻撃が打ち込まれなくとも、お願いを聞こうと思っていた。ただ、これは剣の稽古でもあるので、わざと負けることはしない。それはそれで、これはこれだ。
 カリーナは、大きく息を吸って、
「打ち込みが入ったら、」
 カリーナの足に力が入る。マルカブも重心を下に沈めた。
「私とデートしてくれる!?」
 そんなことを口にしながら、タッ!と地面を蹴りだした。
「・・・・・・・・・、はあ?」
 思わず聞き返してしまい、マルカブの体の力も抜けてしまう。もうその一瞬が、熟練者になっているカリーナの前では、手遅れになる。ましてカリーナは、恥ずかしさのあまり自分の願い事も叩ききるような勢いだった。「やっぱり無し!」と言ってしまいたい!と思いつつも、・・・もう時間もないから必死でもあった。
 恋する少女は強いな、とオリヒメが感想を思い浮かべるのと同時に、カリーナは剣でマルカブの肩を打った。彼の持っていた剣が地面に落ち、痛ッ!という声がすぐ前からして、本気で打ち込んだことに気付く。
「・・・・・・、ご、ごめん!マルカブ!私、つい、思いっ切り・・・!!」
「・・・いや、それは、いいんだけど、」
 マルカブは肩を押さえつつ、
「・・・お前、何言ってんだ?」
 思わずマルカブがそんなことを聞き、カリーナは顔を真っ赤にして、
「い、言った通りだよ!二度も言わせないでよ!!」
「どっか行きたいところか、買ってほしいものがあるなら、そう言えばいいのに。」
 だからそうじゃないんだよ!とカリーナは叫んでやろうかと思ったが、カリーナの叫びよりも背後のオリヒメの殺気の方が先に膨らんだ。オリヒメに抱かれていたスハイルが、思わずアヴィーに逃げてくるほどだった。オリヒメは拳を握りしめて、
「・・・・・・カリーナ、マルカブを切り捨ててもいいですか・・・?」
「だ、ダメだよ!オリヒメ、本気の目だよ!?」
「・・・本気にもなります・・・!」
 オリヒメはぎっ!とマルカブを睨みつけたが、刀を抜く真似はしなかった。しかし、鈍さで言えばマルカブの上を行くアヴィーが、
「カリーナ、マルカブとどこか出かけたいの!?僕も一緒に行ってもいい!?」
 などと言うので、オリヒメはアヴィーの襟をつかみ、
「ダメに決まっているでしょう!?アヴィーとスハイルはこっちに来なさい!」
「え!?なんで!?カリーナばっかりズルいよう!きっと、美味しいもの食べに行くんでしょ!?」
「ぴーーーッ!ぴぴーぴ、ぴぴ、ぴーよ!ぴーよ!」」
 喚くアヴィーとスハイルを、ずるずる引きずっていった。
 それを見ながら、アヴィーとも最後にお出かけしたいけどな・・・とカリーナはしょんぼりと肩を落とす。マルカブはそれに気付いて、聞いてきた。
「・・・どうした?」
「あ・・・、ううん、何でもないよ。」
「・・・あのな、カリーナ。そういうことは賭けのタネにすんな。好きな奴が出来たら、堂々と申し込めよ。そして、」
 がしっとマルカブはカリーナの肩をつかんで、
「・・・絶対に門限は守れよ。」
 と言い聞かせた。門限なんて決めてないのに・・・とカリーナは呆れた後で、
「そうだね。そうする。」
 と、それだけ答える。好きな人に堂々と申し込んでいないのは事実だから、「そうする」とだけ答えた。


*****

 夕暮れになり、カリーナはフィニック家を後にしようとミモザと一緒に玄関まで降りてきた。ドルチェを抱いたマリアが、キッチンから顔を出し、
「あ、ちょっと待って。お菓子を焼いたんだけど、持って行って?」
 と声を掛ける。アル・ジルが、
「ねえ!聞いて、マリアさん!明日、カリーナね、マルカブとデートするんだって!」
「あら~。良かったわね、カリーナちゃん。」
 マリアはカリーナに微笑む。カリーナは恥ずかしそうにはにかんで、はい、と頷いた。それを見て、マリアは微笑みを変えずに
「あとでマルカブさんを、ぶん殴っておかないとね~。」
「ぴぴぴぴん!ぴぴ!ぴぴ!!」
「スハイルちゃんも、一緒に行く?いいわよ~。」
「ぴよッ!ぴよーぴん、ぴッぴッ!ぴッぴッッ!!」
「そういうわけだから、後のことは私とスハイルちゃんに任せて、カリーナちゃんは思い切り楽しんできてね。」
「・・・そういうわけだから・・・?」
 カリーナは聞き返すが、マリアはアル・ジルに「ジルちゃんもサビク君とデートしてきていいのよ~。」などと言っており、聞いてない。マリアが抱いているドルチェが、大きな目でカリーナをじっと見た。カリーナは、あの、とマリアに声をかけた。
「あの、マリアさん。ドルチェを抱っこしてもいいですか?」
「ええ、もちろんよ。よかったわね~ドルチェ~。カリーナおねえちゃんが抱っこしてくれますよ~。」
 どうぞ、とマリアはドルチェをカリーナに手渡す。ドルチェは、カリーナのことがはっきり見えるのか、じっと見つめ、それからにこっと笑った。
「・・・重くなったね。ドルチェ。」
 初めて抱いたときよりも、格段に重くなっているドルチェに、カリーナは微笑んだ。
「・・・これからも、もっと大きくなるんだよね。」
「・・・、」
 マリアは何か言いたげにしたが、じっとカリーナを見つめる。そして、彼女の背に回り込み、肩にそっと手を置いて、
「そうよ。ドルチェも大きくなるし、カリーナちゃんはもっと素敵な女性になるわ。・・・そういう未来よ。あなたみたいな頑張り屋さんに、やってくるべきものは。」
 マリアさんが保証します、と力強く彼女は言った。カリーナは、はい、と頷いて、マリアに向き直り、
「・・・ありがとうございました。」
 と、ドルチェをマリアに返す。マリアはドルチェを受け取ってから、
「お菓子はキッチンにあるから、好きなだけ持って行って?」
 とカリーナとミモザに言った。スハイルが、嬉しそうな声を出して真っ先に飛んでいき、慌ててカリーナがそれを追った。
 全員がキッチンに入って、玄関に残ったマリアは娘の顔をのぞき込み、
「・・・カリーナちゃん・・・、ドルチェにもお別れをしにきてくれたのね。」
 優しいお姉ちゃんね、と呟きながら、愛娘と額を合わせた。
「・・・せめて、素敵な未来が来ますように。」
 


 カリーナがフロレアルと約束をした『帰国』の日まで、あと4日。



(29章5話に続く)


---------------あとがきのようなもの-------------------

今回は「超女子!!」って感じで書きました。おばちゃん、恥ずかしいわあ。(笑)

マリアさんが唯一気付きましたが、「母の勘ッ!」とのことです。

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