まよらなブログ

30章1話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

先週はお休みの上、ちょっと更新遅くなって申し訳ありません。
本日から、30章です。第一部。完がゴールだとすれば、
最後のコーナー曲がってゴール前の直線に入りました。


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



30章1話
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「・・・びーーー・・・」
 スハイルが宿の部屋の窓に張り付いて、外を見ている・・・というか見張っている。
「スハイル、そろそろ許してあげなさい。」
 オリヒメに窘められるが、スハイルは「ぴーー!」と鳴いて反論した。カリーナとマルカブだけで出掛けていることが心底気に入らないらしい。二人が出掛ける前も大騒ぎをしたスハイルは、帰ってきたマルカブを蹴りつけることに決めたらしい。「ぴよーぴん、ぴッぴッ!」と爪の鋭い脚を蹴り出す練習をし始めた。オリヒメは溜息を吐き、部屋で本を読んでいるアヴィーに視線を移した。アヴィーは、視線に気づいたのか顔を上げ、
「スハイル、カリーナはきっとおみやげを買ってきてくれるよ。」
「ぴーーー!ぴぴ、ぴぴーぴ、ぴーよ!ぴーよ!」
「スハイルがデートしたいの?じゃあ、お花を持ってお願いするといいよ。女の子にお願いするときと謝るときは、花を持って行くといいって僕の友達が言ってたよ。」
「・・・ぴ!?ぴよーん!ぴぴぃー、ぴぴよぴぴよ!」
「いい考えでしょう?その時は、僕にお土産を持って帰ってきてね。」
「ぴよ!」
 アヴィーはスハイルと会話を成り立たせ、分厚い本をめくり・・・・・・、その本から、ひらりと紙が一枚落ちてきた。
「・・・・・・?あれ、僕、こんなの挟んだかな・・・。」
 アヴィーは床に落ちた紙を拾い上げ、そして眉を寄せた。
「・・・どうかしましたか?アヴィー。」
「これ・・・、」
 アヴィーは紙から顔を上げた。その顔が曇る。
「カリーナのメモだ。」
 オリヒメとスハイルは手紙を覗き込んだ。
 「ごめんなさい。」で始まるメモは、「国に帰ります。私のベッドの下に手紙を置いていくので、読んでください。」と続いている。
「・・・国に帰るって・・・どういうこと・・・?」
 アヴィーが呟くのを背中で聞くようにしながら、オリヒメは部屋を出て、隣の部屋に駆け込んだ。そこは、カリーナと最近ではオリヒメも泊まっている『アルゴー』の女部屋だ。
 ベッドの下をのぞき込む前に、オリヒメは部屋を見回す。テーブルに、カリーナの髪飾りと装飾品が置かれている。剣は壁に立て掛けられている。剣はは『デート』には持って行かないし、髪飾りと装飾品もあのワンピースには似合わないから、と付けていかなかった。だから、それらが在ってもおかしくはない。しかし、・・・彼女がいつも着ているドレスと靴、紋の入った鎧がない。デートに持って行くはずもないものが、無い。
 ・・・いつの間に荷造りをしたのか、とオリヒメは奥歯を噛んだ。
 アヴィーとスハイルがオリヒメを追ってきた。オリヒメはカリーナの使っているベッドの下を覗き込む。小さなお菓子の箱があった。それを引き出して開けると、そこに封筒が入っている。オリヒメは封を破り、便せんを引き出した。アヴィーとスハイルが、それを覗き込んだ。
 手紙も「ごめんなさい。」で始まっていた。そして、自分が国に帰ること、クー・シーとツィーとリョウガンも一緒に帰ること、どんな風に王位を継ぎたいか、一人一人に宛てた今までの思い出、お礼に自分の剣といくつかの装飾品、髪飾りを置いていくので受け取ってほしい、などが書かれていて、最後に、
「今まで、ありがとう。」
 と、言う言葉と、署名があった。・・・署名は『カリーナ』ではなく、『カリーナエ・アガスティーア・アルファルド』だった。カリーナの書いた文章よりも、その名前を見たときにアヴィーの心臓が嫌な音で鼓動を打つ。この街で、名乗ることのなかった本名の署名が意味するものは・・・彼女は冒険者のカリーナではなく、カリーナエ姫としてこの手紙を書いたということだ。
「・・・カ・・・カリーナ・・・帰っちゃうの・・・?」
 アヴィーはオリヒメを見て、呟いた。
「これ、冗談、だよね?」
 カリーナがこんな嘘や冗談を言うはずがない、とオリヒメは思ったが、そんなことはアヴィーこそ承知している。無言のオリヒメを見て、アヴィーはふるふると首を振り、
「オリヒメ!僕、カリーナを探しに行く!」
「ぴぴ!ぴぴ!」
「ええ、私はディスケの家と蝶亭に行きます。アヴィーはフィニックさんのところと・・・」
「あと、ミモザの家にいく!・・・そうだ!『ファクト』がいるなら、一緒に探してもら・・・」
 アヴィーが廊下から聞こえてくる音に、口を閉じた。階段を慌ただしく駆け上がってくる音と、
「アヴィー!アヴィー!カリーナは帰ってきていないか!?」
 マルカブの怒鳴るような、上擦った声が聞こえてきた。アヴィーは縋るように廊下に飛び出した。
「マルカブ!カリーナが、カリーナの手紙が・・・!」
 形振り構わず駆けてきたらしいマルカブに、アヴィーは飛びつくように駆け寄った。アヴィー要領を得ない言葉でも、マルカブは状況を把握したらしい。オリヒメが差し出してきた手紙にざっと目を通してから、「クソッタレ!」と毒づいて、
「カリーナは、あと数日で迎えが来るって言っていた。だから、まだ、この街にいるはずだ。国に帰るなら、港を出るしかない。俺は港にいって、このことを話してくる。お前等は・・・」
「僕とオリヒメで、カリーナが行きそうなところを探すよ!」
「頼む。ディスケにも手紙を見せてくれ。」
 オリヒメが軽く手を挙げて、冷静だがいつもの彼女にしては早口で提案した。
「マルカブ、数時間後に一度宿で集まりませんか?探す場所が重複しないためにも。」
「・・・そうだな、一度、6時に戻ろう。カリーナが見つかってるかもしれないしな。」
「分かった!」
「ぴぴぃー!ぴぴ!ぴぴ!」
「うん、スハイルも一緒に行こう!」
 アヴィーはスハイルと一緒に階段を降りていく。オリヒメは、『ファクト』に協力をお願いしてきます、と言い、彼らの部屋に向かおうとする。マルカブは思い出したように、
「・・・そうだ、ツィーも帰るって書いてあったな。だったら、『ファクト』も今ごろ・・・」
「・・・マルカブ、」
 オリヒメは急に淡々とした声に戻り、
「・・・『ファクト』はこのことを知っていたかもしれません。」
「・・・、どうしてそう思う?」
「・・・ツィーがシェリアクさんたちにお話しているかもしれないからです。」
「・・・そうだとして、」
 マルカブは乾いた声で、
「・・・今、お前は何を言いたいんだ?」
「『ファクト』が知っていたとしても、怒り出さないように、と。」
 オリヒメはマルカブに背を向けて、『ファクト』の部屋の方を向き、
「カリーナは、自分のせいで貴方が他人に八つ当たりをしたら、悲しみます。彼女は、貴方が好きですから。」
 そう言いながら、彼女は駆けだした。オリヒメだって焦っている。焦りながらも、そう忠告した言葉に、マルカブは奥歯を噛んだ。
 ――私はマルカブのことそんな風に好きだから、マルカブがしてくれたことにちゃんと応えたいんだよ。
 カリーナの言葉を思いだす。彼女は隣に立ちたかったのだ。だが、自分はそうは扱わなかった。想いに気づいたとしても、やはり子どもとして扱っただろうから、『もしも』なんて仮定はどこにも存在しない。
 けれど、もしも少女の精一杯の想いに気づいていれば、傷つけずにすんだこともあったに違いない。この結果が何も変わっていなくとも、あんな別れ方ではなく、カリーナは笑って「国に帰る」と言えたのかもしれない・・・
 そこまで考えて、マルカブは頭を振った。
(・・・俺は、何で、カリーナが帰ると決めつけてんだ。)
 そして、階段を駆け下りる。
(まだ、間に合う。あいつはこの街から、まだ出ていない。・・・だから、見つけられれば、きっと、引き留められる。)
 そう自分に言い聞かせながら、それでもそれは自分の希望にすぎないことに薄々気づきながら、マルカブは港へと駆けていった。


*****

 午後6時。
 オリヒメが提案したように、一度宿に集まった。
 『アルゴー』以外にも、『ファクト』とアル・ジルとサビク、コロネが、宿に集まりそれぞれの情報を伝えあう。
「港で・・・カリーナを見た人がいたよ・・・!」
 アル・ジルが泣き出しそうになりながら、報告した。
「3時ぐらいだったって・・・!造船所の方に行ったって言ってた。」
「俺と別れた直後だな・・・。」
 マルカブは呻いてから、首を振り、
「港の爺さんはカリーナを見てないって言っていた。見かけたら伝えてほしいと頼んだが・・・、カリーナの国の方から口止めされてるんだろう。言葉を濁した。」
「とりあえず、造船所の方に行ったのは間違いないんだろ。」
 ディスケが頭の中で地図を思い浮かべつつ、
「造船所の方で、爺さんかリョウガンと待ち合わせして、その後に移動してると思うけど・・・、あの辺、労働者のおっさんばっかだからな。カリーナが居たら目立つ。目撃情報はあるはずだ。爺さんたちの目撃情報も聞き込んでみるよ。」
「あたしも探しに行くよ、子どもの頃、遊び場にしてたし。」
 コロネが軽く手を挙げる。ディスケも頷き、
「あそこは入り組んでるから、地元民で探す。あの辺、夜はガラ良くないから、お子ちゃまたちは来ないようにな。」
 僕も行く!と言い出しそうなアヴィーを牽制してから、ディスケはマルカブを見た。
「・・・何か情報があれば・・・無くとも9時にまた戻ってくる。それでいい?」
「おう。頼む。・・・コロネも悪いな。」
 コロネは「気にしないで。」と言って、ディスケとともに出て行った。エラキスが窓の外を見てから、
「暗くなってきたわね。・・・女の子たちはここに居なさい。オリヒメちゃんは私と一緒に行こう。」
 エラキスの提案に、ミラとミモザとアル・ジルは一斉に反論した。エラキスは、マルカブとシェリアクをちらりと見た後に、少女たちに告げた。
「留守番しながら、おにぎりかサンドイッチでも作っていてくれる?・・・ああ、ディアデム。あなたもお留守番よ。」
「私は『女の子』なのですか?」
「・・・慣れない夜道を歩かせるわけにはいかない、という意味では。」
 ディアデムの場合は経験値の問題だが、エラキスは一括りにまとめた。いいわね?と事後承諾でマルカブに聞く。少女に暗い道を歩かせるつもりは無いマルカブは当然のように頷いてから、エラキスとシェリアクに尋ねた。
「・・・ツィーは何か言っていなかったか?」
「・・・カリーナと共に国に帰る、とは聞いた。」
 シェリアクはいつにもまして低い声で答える。
「・・だが、いつ、とは聞いていない。気がついたら、姿が見えない。まさか・・・こんな突然とは。」
「・・・私たち、何も聞いてません。帰るとか、そんな話すら、聞いていません。」
 ミラはシェリアクをじっと見つめて、非難のように告げた。
「・・・ツィーとカリーナが帰ることを、シェリアクさんたちは知っていたんですか?知っていたのなら、なんで・・・・・・私たちに教えてくださらなかったんですか。」
 シェリアクが答える前に、マルカブがミラを呼ぶ。
「ミラ。その話は一度、置いてもらえるか?今はそれどころじゃない。カリーナたちが見つかってから、俺と一緒に問い詰めるぞ。」
 ミラはマルカブを睨むように見てから、分かりました、と引き下がった。ミモザがぐすぐすと鼻を啜りながらも、
「あ、あの・・・!ク・・・クーおじいさんのことも、聞いてみるって、さっき、ディスケさんが言ってましたよね?あたし、パパに聞いてみます。きっと、おじいさん、パパにさよならを言いにきたと・・・思う・・・から。おじいさんとカリーナやツィーが一緒にいるなら・・・聞いた方が、いいと、思うんです・・・。」
「・・・そうだな。ありがとうな、ミモザ。・・・アヴィー、ミモザを家に送っていって、お師匠さんから話を聞いてくれ。」
「うん。・・・先生は、ミモザがお願いしたら、きっと教えてくれるよ。」
「・・・元老院の方にも聞いてみましょう。」
 エラキスが提案をした。
「カリーナちゃん、国から迎えが来るって言ったんでしょう?だったら・・・元老院に、船の入港とか頼んでいるかもしれないわ。」
 シェリアクが頷いた。
「元老院には私が確認しに行こう。それと、クエストのツテを頼って、顔の広い人たちに捜索を頼んでみる。」
 マルカブは全員の動きを整理するように、
「俺は港と市場を捜す。エラキスたちは北側の商店のあたりを。サビクはアヴィーと一緒に行ってくれるか?お前等は西の住宅街を探してくれ。全員、9時になったら一度戻ってくる、いいな?ミラとアル・ジルは留守番を頼む。・・・カリーナが戻ってきたら、茶でも淹れてやってくれ。」
 マルカブの取って付けたような最後の一言に、アル・ジルは「うー」と唸って泣きそうになる。ミラは、その前に叱りますわよ、と呟いた。
 それぞれがそれぞれの返事を返し、宿から出て行く。スハイルは迷った後に、アヴィーの後を追った。


*****


 師・ベクルックスからは有力な情報もなかった。数日前に、クー・シーとは別れの挨拶はした、とのことだったが、細かいことは聞いていないのだろう。「・・・最後に一緒に呑もう、と言ったのに。」と呟いた師は、かつての仲間が去る日がいよいよ近づいていることを、今、知ったのだ。無表情な師から、それでも淋しさは感じられて、「おじいちゃんを見つけて、先生のところに連れてきます!」とアヴィーは一方的に約束した。
 その後、サビクとスハイルと一緒に、カリーナたちを見ていないか聞き込んだが、そうそう情報はもたらされない。
「・・・アヴィー、もうじき、9時になる。」
 サビクが街の時計を見上げて告げた。
「一度、宿に帰ろう。」
「・・・でも、」
「・・・もしかしたら、カリーナが見つかってるかもしれない。」
「・・・うん。」
 アヴィーは頷き、街灯に停まってキョロキョロと周囲を見回しているスハイルを呼んだ。スハイルがぴよぴよ鳴きながら降りてくるのを待ちながら、最後の足掻きのように通りを見回す。
 人通りは減り、家には灯りが灯っている。しかし、その灯りも徐々に減り出すだろう。夜に向かって、街はどんどん眠っていく。人々が寝静まり、街灯だけが点々と続く街の中を、カリーナがとぼとぼと歩いているのだとしたら・・・・・・
(やっぱり、もうちょっと探そう。)
 曲がり角の先を見ようとしているサビクに、アヴィーは声をかけようとした。そのアヴィーのすぐ横を、一人の女性が通り過ぎる。「アヴィオール・D・イプシン。」と名を呼びながら、通り過ぎた。滅多に呼ばれないフルネームを呼ばれたアヴィーは女性を見上げた。20代半ばの、金の巻き毛の女性だった。
 彼女は微かにアヴィーを振り返り、
「・・・いえ、正しい名で呼びましょう。アヴィオール・ダンベルト・イプシン。お話が。」
 アヴィーの目が開かれる。その名前は・・・、本当に正しい名だった。だが・・・その正しい呼び名を知っている人間はいないはずなのだ。ミドルネームの『D』は、アヴィーがエトリアを出てから勝手に名乗っているものだからだ。エトリアの家族たちは、彼がミドルネームにその名を組み込んだことを知らない。アーモロードでは、その本当の意味を知ってる者はいない。何故、その名を名乗るのかは誰も知らないはずだった。
 ついてこい、というように、女性は路地を曲がる。アヴィーはぐっと唇を噛んでから、
「サビク!スハイル!さきに帰ってて!」
「おい!?待てよ、アヴィー!」
「ぴぴぃー!?」
「僕、あの人と話さなきゃ!」
 女性の背を追って駆けだした。



 カリーナがフロレアルと約束をした『帰国』の日まで、あと2日。



(30章2話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

繋ぎの話なので、おもしろくない。(爆)

アヴィーの「本当のフルネーム」について、
このタイミングで書くことは最初から決めていたんですが、
まさか、ここまで来るのに、3年と8か月かかるとは思いませんでした。(笑)

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