まよらなブログ

30章3話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

ふと、年内で第一部終了するようなスケジュールだと気が付きました。
っていうか、年はまたぎたくないなあ・・・・・・



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


30章3話
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「ぴぴぃー!」
「アヴィー!どうしたんだよ!?」
 とぼとぼと路地を歩いていたアヴィーに、スハイルとサビクが駆け(スハイルは飛び)寄った。アヴィーは、スハイルを腕にとめてから、緩く首を振り、
「ううん、何でもないよ。」
「何でもないわけないだろ!?お前がカリーナ探しを中断するようなこと・・・!」
「・・・そうだ、宿に帰らないと。誰かがカリーナを見つけてたら、いいな。」
 活気がないアヴィーの様子に、サビクはぐっと言葉を詰まらせた。それでも、彼は聞いてきた。
「・・・カリーナに関係することなのか?さっきの・・・。」
「・・・・・・、うん、まあ。」
「じゃあ、マルカブたちにはちゃんと話せよ。」
 そう言って、宿に向かう道を急いだ。 

*****

 9時をかなり過ぎて戻ってきたアヴィーたちは、宿のロビーでイライラと待っていたマルカブにいきなり叱られた。アヴィーとスハイルは、しゅん、と項垂れたが、サビクは予想の範疇だったので聞き流しつつ、
「マルカブ。それで、カリーナは見つかってないのか?」
「見つかってたら、連れて帰ってるだろうが・・・!」
 心配性を通り越して不機嫌になっているマルカブだが、カリーナが見つからないことがそもそもの原因だ。サビクはその点に注意を向けて、アヴィーに対する苛立ちを逸らしてやることにした。
「・・・そっか。こっちもカリーナを見たって人がいなかった。アヴィーの先生も、クーじいさんから話を聞いてないって。な?」
 アヴィーに話を振ると、アヴィーはおずおずと頷いて、
「うん。先生は、おじいちゃんたちが国に帰ることは聞いてたらしいんだけど・・・、いつ帰るかは聞いてなかったみたい・・・。先生も、おじいちゃんにまだ会えると思ってたみたいだよ。」
「・・・・・・クー爺も何考えてんだ・・・!」
 マルカブは頭を押さえてから、
「俺とディスケ、それにシェリアクは、またカリーナたちを探す。二人にはもう出てもらってる。お前等は宿にいろ。・・・サビク、アル・ジルがカリーナが見つかるまで帰らないっていうんだよ。一晩泊まってもらえるか?アヴィーと一緒にいてもらえると、俺も安心だ。」
「構わないけど、マリアさんたちに言わないと・・・」
「この後、外に出ながらフィニック家に寄ってくる。」
 マルカブはアヴィーを見た。アヴィーは「僕もカリーナを探す!」と言ってくるに違いない、とそう思っていたのだが、アヴィーは押し黙ったままだった。
「・・・アヴィー。どうした?」
「・・・・・・、うん。・・・あの、」
 アヴィーは少し言いよどんでから、
「ううん・・・マルカブが帰ってきたら、話をする。」
「・・・それで間に合うのか?」
「うん。カリーナが、帰ろうと、もしかしたら思い直してるかも・・・。そのとき、夜道を歩くのは怖いと思うから、もし夜に外にいるなら早めに見つけなきゃ。」
 『もしかしたら思い直しているかも』?その『もしかしたら』は、『思い直していない』ことを前提にしているようだった。マルカブは眉を寄せたが、いずれにせカリーナを見つける方が先だった。
「・・・アル・ジルとミラがおにぎり作ってくれてる。腹減ってるだろ?食って寝ろ。お前たちには、明日の朝に、また捜してもらうから。」
 それもまた、今夜中には見つからないだろう、とマルカブは気づいているような言い方だった。サビクが眉を寄せたが、アヴィーは力なく頷いた。スハイルがばさばさと飛び回る。
「ぴよーぴん!ぴぴ!ぴぴ!!」
「お前も留守番だ、スハイル。」
「ぴーー!?」
「いつも10時には寝てるくせに何言ってんだ。アヴィーと一緒に朝起きろ、分かったな。」
「ぴーーーーッ!ぴぴーぴ!ぴぴーーぴーー!!」
 スハイルが喚くと、宿の従業員の咳払いがした。うるさいぞ、とマルカブがスハイルの頭をつかんだ。
「あ、良かった。アヴィーくんたち、帰ってきたのね。」
 スハイルの声を聞いて、エラキスが階段から降りてくる。マルカブは、ちょうど良かった、とエラキスにスハイルを押しつけた。いつもはエラキスにすり寄るスハイルだが、「ぴぴーぴ!」とカリーナを呼んでマルカブに付いていこうとする。エラキスがそれを抱いて止めた。マルカブは宿の玄関の扉を開けた。開けながら、エラキスを振り返る。
「エラキス、アヴィーたちのことも頼む。飯、食わせてやってくれ。・・・・・・怪我が治ったばかりのところで悪いな。」
「ええ。大丈夫よ。」
「アヴィー、スハイル、迷惑かけんじゃねえぞ。サビク、アヴィーたちが余計なことしないように見ててくれ。オリヒメも帰ってきてる。何かあったら、オリヒメかエラキスに頼め。」
 扉が閉まりきるぎりぎりまであれこれ細々とマルカブは口を出しながら、外に出て行った。
「気をつけて。」
 とエラキスが閉まる扉に声をかけ、扉が完全に閉まるとアヴィーたちに向き直った。
「部屋におにぎりあるから、まずは食べましょ。サビク君、アル・ジルちゃんが待ってるから、先に行ってあげて。」
「は、はい!」
 サビクは先に階段を上がっていき、ぷるぷる震えて泣き出したスハイルを抱いたエラキスは、アヴィーにそっと声をかけた。
「・・・何か、迷っているの?」
「・・・・・・・・・、」
 アヴィーは顔を上げてエラキスを見つめ、
「そう、なんだと、思います。」
「何を、迷っているの?」
 アヴィーは目を伏せて、
「・・・、カリーナは、思い付きで行動しないです。」
「そうね。」
「・・・だから、きっと、もう、決めている。」
「・・・そうかもしれないわね。」
「でも、僕、帰ってほしくないんです。」
「・・・みんな、そう思ってるわ。」
「・・・でも、きっと、・・・」
 アヴィーが拳を握りしめて、
「重さが違うんです。」
「・・・・・・、どういうこと?・・・と聞いた方がいいのかしら?」
「・・・・・・、いいえ。まずは、マルカブと話さなきゃ。」
「そう。」
 エラキスはアヴィーの背中をそっと押した。
「じゃあ、その時にきちんと話せるように、今はご飯を食べましょうよ。少し休めば、考えもまとまるわ。」


*****

 夜明けまで探したが、カリーナは見つからない。
 一度宿に帰ってきたマルカブは、もう一度探しにいこうとした。しかし、一度寝ろ、と珍しく強い口調のディスケによって、部屋に押し込まれた。冗談ではない、寝ていられるか、と思って立ち上がったところで、アヴィーがおにぎりとお茶をもって部屋に入ってきた。このタイミングは、ディスケの差し金だろう。
「マルカブ、何も食べてないでしょう?残り物だけど・・・」
「・・・おう。」
 正直、食欲などなかったが、アヴィーがテーブルに置いたおにぎりを口に運ぶ。それをじーっと見るアヴィーの視線に気づき、
「・・・そうだ、お前、俺が帰ってきたら話をするって言ってたよな。」
「うん。」
「悪いな、待たせた。」
 マルカブは寝る代わりに、アヴィーの話を聞くことにした。椅子に座り、茶を飲んでから、
「今、話すか?」
「うん。」
 アヴィーは頷いたが、座りはしなかった。
「あのね、マルカブ。・・・僕、昨日、カリーナを迎えにきた人に会った。」
「・・・・・・・・・、なんだって?」
「僕の母さんの妹だった。」
「・・・・・・、それで、そいつは何か言ったのか?」
「・・・・・・、カリーナは、帰りたくないけど帰るって決めたんだって。それが、自分の役目だからって。」
 そうだろう、そういう娘だ、土壇場では責任感もあるし行動力もある。自分だけが良ければそれでいい、などとは絶対に言えない、そういう娘だ。王族の義務を捨てきれないことも知っていた。だから、それには何も意外性はない。意外だとしたら、
「・・・お前は、それを聞いてどう思ったんだ?」
 アヴィーがこんな話をすることだ。
「・・・・・・カリーナは、すごく覚悟して決めたんだと思う。」
「・・・ああ。」
「でも、僕は、ただカリーナに『帰ってほしくない』ってだけなんだよ。」
「・・・・・・・・・、俺もそうだが?」
「僕のは、覚悟とかじゃないんだよ。ただ、カリーナに帰ってほしくないだけなんだ。・・・カリーナからしたら、わがままだよ。そんな、わがままなだけで、カリーナは止まってくれる?カリーナは、わがままを抑えて帰るって選んだのに。」
「・・・、お前はカリーナを国に帰したいのか?」
 マルカブの声が冷たく固いことに、アヴィーは気づいた。そうじゃないよ、とアヴィーは首を振る。
「僕、カリーナと一緒にいたい。それ、にカリーナが居たくないところに、行かせたくない。」
「だから、探してるんだろうが。」
「・・・マルカブは、カリーナを探して、見つけたらどうするの?」
「帰るなって説得する。」
「・・・説得できると、思ってるの?」
 アヴィーの一言に、マルカブは彼を睨みつけた。アヴィーは怯まなかった。
「マルカブ。カリーナは僕らのことが好きだよ!マルカブのこと、カリーナは一番大好きだよ!でも・・・、僕ら、それに甘えてない?カリーナは、僕らの言うことを選ぶだろうって思ってない?」
 マルカブは一瞬だけ呆然とアヴィーを見つめた。何を言っているんだ、と思いながら。しかし、確かに自分の中に「カリーナは自分の言うことを聞くだろう」という思いもあった。それは説得ではない。今まで、カリーナが自分に懐いていたからそう思っただけのこと。
 しかし、どこにもそんな保証はない。カリーナはあれで頑固だ。過ちを認める程度には素直だが、今回のことに正誤などない。カリーナが自分の人生を決めたのだから、彼女に過ちはない。
 だから、カリーナに会って伝えるとしたら、自分たちはお前に帰ってほしくない!というそのことだけだ。説得など・・・できる材料は何もない。
「僕たちが、帰ってほしくないっていうのは・・・間違ってないよね?」
 だって、帰ってほしくないんだもん、とアヴィーは囁いた。
「・・・でも、『僕たちが帰ってほしくないから、帰らせない』って言ったら・・・、それはただの押しつけだよね・・・?」
「・・・・・・」
「押しつけて、カリーナに『帰らない』って言わせたら・・・・・・、僕らは、カリーナが僕らのことを好きなことを利用してない?」
 嫌われたくないから言うことを聞くってことにならない?とアヴィーは続けた。マルカブは奥歯を噛んだ。
「カリーナが・・・嫌われたくないから言うことを聞くって選択をする娘だと思うか?」
 アイツは、俺の「帰るな」にも「帰る」と言った娘だぞ。昨日の昼の出来事を、マルカブは思い出す。・・・止められなかったのだ。すでに、もう、止められなかったのだ!
「思わないよ。でも、だからって、押しつけていいわけないじゃないか。それこそ、カリーナが、断れるだけ強いってことに甘えているよ。」 
 マルカブは頭を抱えた。カリーナを迎えに来た人間に何を言われたのか知らないが、この子どもは何を言っているのだろうか。自分たちがカリーナに甘えたり、まして彼女を利用するようなことがあるだろうか。だが、・・・だが、実際、彼女に甘えてはいなかったか。気づくべきだったことに、気づかなかったのは何故なのか。きっと彼女は自分たちを選び続けるという、そんな理由のない安心のせいではないか?
 自分たちは、家族じゃないのだ。残念なことに。だから、どこまでも自分たちを選ぶなんて保証はどこにもない。例え、自分がカリーナとアヴィーのことを選び続けたとしても、カリーナとアヴィーが自分のことを選び続けてくれることはない。結局、他人の集まりなのだ、残念なことに。だからこそ、価値のある集まりではあっても、永遠などは存在しない。
「・・・・・・じゃあ、どうしろっていうんだよ!?」
 マルカブは思わず叫んだ。アヴィーがビクっと肩を竦めるのを見て、マルカブは叫んだことに後悔した。
「・・・ぼ、僕だって、分からないよ!」
 アヴィーはそれでも反論した。彼が反論できるだけの強さのあることに、俺は今、甘えてしまった、とマルカブは唇を噛んだ。
「分からないけど・・・!カリーナが止まらないかもしれないけど・・・!でも・・・・・・!」
 アヴィーは泣きながら、
「僕はこのままカリーナと会えないのは嫌だ!」
 僕にはそれぐらいの理由しかないんだよ!とアヴィーが叫んだ。



(30章4話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

まったく言いたいことが書けていない気がして凹んでいます。ずもーん。

 

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