まよらなブログ

30章4話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

読める小説と読めない小説の違いは何か、という命題に立ち向かおうと
自分が「ちょっと読めないなあ。」と思っている文章をじっくり読んで、
「ダラダラしているところが苦手」ということに気が付きました。

その後、自分の文章を読んで、
・・・・・・・・・・・・、ダ、ダラダラしてる! と思いました。

読んでくださる方、どうもありがとうございます。
ダラダラしてるシーンでも文章はダラダラしないように頑張ります。


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


30章4話
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 クー・シーにとって、過去とは思い出である。
 そんな柔らかい言葉でまとめられるような記憶の蓄積。かつては感じた痛みは、苦さを経由して、甘みさえも感じるようになる。時折、そっと取り出して、眺めながら愛でるようなもの。・・・過去とは愛でるものなのだ。
 カリーナは、このアーモロードの出来事を、過去のことにしようとしている。彼女はこのアーモロードの出来事を、己の支えにするだろう。時折、思い出してはくすりと笑い、こっそり泣き、夢に見たりする。それ自体を、クー・シーは否定しない。そうやって時折、優しい記憶に逃げること。それが、人をどれだけ救うか。その価値を否定するほど、クー・シーは野暮ではない。
 セイリアスもそうだ。このアーモロードにかつて存在した『ムルジム』というギルド。その思い出が、彼を困難な道でも前に進ませる力になっている。セイリアスとピックとベクと自分が紡いだ思い出が、セイリアスの力になっている。それを嬉しいと思えないほど、クー・シーは冷たくもない。
 そして・・・、彼は周囲に思われるほど、無責任でもなかった。
 放っておけない、と思ったから、セイリアスとともに彼の国に行った。もう失いたくないと思ったから、彼の力にもなろうとした。実際、そこそこの力にはなれただろう。今もこうして、カリーナを連れて帰るわけだし。
 だが・・・、クー・シーは『そう在るべきだったのだろうか』とも考える。
 自分はセイリアスの仲間であった。友人だった。味方でもあった。だが、彼の隣に・・・、孫娘がカリーナに対してそうしようと決めたかのように、中身こそ違っても、『使命を果たそうとする同志』として、存在したことがあっただろうか?己の生き様を見出そうとしたことが、果たしてあっただろうか。そしてもし、『同志』として存在していたら・・・セイリアスはどう思っただろうか?
 ・・・『同志』とは、心強いもののはずだ。
「・・・わしが出来なかったことを、もう一個だけ、マルカブにはやってもらおうかね。」
 クー・シーはそう呟いて、立ち上がった。

 ・・・クー・シーにとって、過去とは思い出である。
 そして、この二回目のアーモロードでの出来事は、思い出の塗り直しだ。


*****


「ぴぴぴ!ぴぴーぴ、ぴよぴよ!?」
 ばさばさと飛んできたスハイルを、ディスケは腕にとめた。
「ダメだ、見つかんねえし、情報もない。スハイルはどうだった?」
「ぴー・・・。」
 スハイルはディスケの腕に停まったままで項垂れ、それからぷるぷると震えだした。
「・・・・・・ぴぴーぴ、ぴー・・・?」
「泣くなよ、スハイル。これだけ皆で頑張って探してるんだから、そろそろ見つかるって。」
「・・・ぴぴーぴ・・・」
「なんで、誰もおじいちゃんの名前を呼んでくれないのかね。」
 不意に沸いた声に、ディスケとスハイルは周囲を見回す。「おじいちゃん、寂しい!」といつも通りの声は、ディスケの背後からした。ディスケがばっと振り返ると、クー・シーが長い髭を撫でていた。
「ぴいぴーーーーーん!!!」
 スハイルが、クー・シーに飛びついて、ぴよぴよ!と泣き出す。悪かったねえ、とクー・シーはスハイルを撫でながら、ディスケに向かって、
「お前とスハイルだけかね?」
「・・・・・・、だから、出てきたんじゃないの?爺さん。」
 ディスケの低い問いかけに、クー・シーは肩を竦めた。聞き流すことにしたらしく、次の質問に移る。
「おとーさんとアヴィーは?」
「・・・マルカブは宿で休ませてる。アヴィーもそこに居させてる。アヴィーがいれば、おとーさんは無理しないだろうから。」
「無理しない、というより、無理できないんだろうけどね、うちのおとーさん。」
「で、うちの『おじいさん』はどうするつもりなわけだよ?」
 ディスケの言葉に含まれた毒とも棘ともつかないものに、気が付かないクー・シーでもない。苦笑した。
「ごめんね。わし、家族ごっこから一抜けだよ。」
「・・・一番乗ってたヤツが何言ってんだよ。」
「賢いお前にしては、ずいぶんと突っかるねえ、ディスケ。分かってるんじゃないの?」
「・・・・・・、何を?」
「・・・・・・姫を止めるべきではないってことだよ。」
「ぴ!?」
 ディスケよりもスハイルは反応した。
「ぴいぴん!!ぴぴーぴ、ぴぴ、ぴよぴよ!!」
「『カリーナは、ぼくと一緒にいるんだピヨ!』って言われてもねえ。姫は帰るって決めたわけだし。」
「ぴーー!ぴいぴん、ぴっぴっ!ぴっぴーーっ!!」
 スハイルは、クー・シーを蹴りつけた。「『じいちゃんなんか嫌いピヨ!』って言われてもねえ。」と苦笑するクー・シーを見て、スハイルはぷるぷると首を振り、もう一回クー・シーに抱きついた。「ぴぴ、ぴいぴん、ぴよぴよ!」と鳴きながら抱きついた。「嫌いじゃなくて好きだ」と言っていることは、とディスケにも分かった。ごめんね、とクー・シーはもう一度謝った。
「・・・スハイル、」
 ディスケは静かに、
「こっちに来い。」
「・・・・・・ぴ・・・?」
「・・・・・・お前が、好きだって言っても、抱きついても、爺さんも帰っては来ないんだよ。」
「・・・・・・・・・・・・ぴ・・・・・・?」
 スハイルはクー・シーを見上げて、クー・シーが「そうなんだよ。」と言うのを聞いて、
「・・・・・・!ぴーーーーっ!!」」
 最後にクー・シーを蹴りつけて、ディスケの元に飛び去り彼に抱きついた。ディスケは、スハイルを撫でてやりながら、
「それで、何しに来たんだよ、爺さん。スハイルをからかいにきたわけじゃないんだろ?」
「勿論だよ。わしはね、姫を国に帰すけど、こんな別れ方、望んじゃいないよ。」
「だったらもう少し、やり方があっただろうよ?」
「そうかもしれないね。でも、姫にも悟られたくはなかったし。姫だって、仲間の変化に気が付かないほど鈍くもないよ。」
「・・・俺は顔に出ない方だけどな?」
「まあ、黙ってるのも辛いんじゃないのかね、ディスケ。それはきっと、マルカブとアヴィーを騙すことになったよ。」
「・・・カリーナのためなら、嘘ぐらいつくよ。」
 俺もマルカブもアヴィーもだよ、とディスケは溜息を吐いた。クー・シーは、それを見ながら、ディスケが次には話題を変えてくることを確信する。この溜息は、いつもは切り替えの早いディスケの、それでも切り替えきれなかったものを、切り捨てるための行動だ。
「―― それで、爺さんは、」
 ディスケはやはり切り替えた。過ぎたことは聞かず、この先のことだけを聞くと決めたようだ。
「何をさせたいと思ってんだよ。」
「そりゃあ、姫にきちんと別れの儀式をさせてあげたいんだよ。」
「ぴーーーー!」
 スハイルが嫌々と首を振った。クー・シーはそれを見つめて、言い聞かせるように優しく告げた。
「・・・お別れをしても、ずっと仲間でいられるような、そんな別れ方を、せめて姫にはさせてあげたい。」
「姫『には』ってどういうことだよ。」
「わしはまだ後悔してるってことだよ。」
 ディスケはじっとクー・シーを見つめた後、吐き捨てるように「めんどくせえ爺さん。」と呟いた。クー・シーは笑った。
「わしは、わしのやらなかった『もしも』に賭けたい。付いてこなくとも支える方法、共に居なくても協力できること、手段が違っても同じものを見定めること。わしは、そういうことを信じられなかったから、セイリアスと一緒にいったんだ。一緒にいなきゃ、どうにもならないと勝手に思ってね。もし、別の場所から、セイリアスの力になっていたら、彼と同じものを目指す同志であったら、彼を外から救うこともできたかもしれない。」
「・・・『もしも』なんて言ってたら、キリがねえだろうよ。爺さんはやれるだけのことはやったと思うよ。カリーナとカリーナの兄ちゃんは別人だろ?力になる方法だって、違うもんだ。」
「ありがとう。お前も優しいから好きだよ。」
 ディスケはただじっとクー・シーを見つめるのみだ。いつもなら軽口ぐらい叩くだろうが、重々しく沈黙する。だからこそ、クー・シーは次の言葉をディスケに任せた。
「・・・・・・、別れの」
 ディスケは、重そうに口を開いた。
「儀式を、行うには・・・、カリーナが俺たちと会わないといけないと思うんだけど?」
「会わせようとしたって、姫は会おうとしないから、わしは偶然か力ずくかのどっちかだと思うんだよね。無理に会わせるのは、騎士が護衛してるから無理だろうね。リョウガンの協力があれば別だけど、彼は姫の命令を聞いちゃうからな。」
 クー・シーが髭を撫でて、ちらりとディスケを見た。彼は眼鏡をかけ直している。ディスケの頭は計画を立てることに向かっているのだろう。・・・だから、次に来るのは具体的な質問だ。そして、実際、そうだった。
「出航の時間は?」
「明日の11時。」
「カリーナがどこにいるか、教えてもらうことは?」
「教えてもいいけど、そこに乗り込んでも無理だよ。さっきも言ったように、騎士が護衛している。」
「・・・じゃあ一つ、聞いてもいい?」
「どうぞ。」
「剣と茨の紋の国は、海運国家じゃないって聞いてるけど、」
「そうだよ。港は一応あるけど、農地も資源もある程度あるからね。交易するのも、主に陸路だ。」
「カリーナの乗る船の船乗りと、マルカブの操舵、どっちが上?」
「そりゃあ、あんなお人好しでも元々はケチな海賊やってたウチのおとーさんの方だよ、えへんぷい!」
 クー・シーがわざとらしく胸を張ったが、ディスケは無視をした。
「じゃあ、狙えるタイミングは一つだな。」
「さすがだね。」
 クー・シーは笑い、すぐに真面目な顔で一気に続けた。
「船は商船を装っているらしい。一国の姫が乗るには小型なやつだ。沖合にでたら、ガレオン船が待ってる。それと合流して、国に帰る。ただし、港から出たらどの方向に向かい、どのルートを通っていくかはわしにも知らされてない。一部の人間だけだ。そして、この情報だってフェイクかもしれない。今のわしは嘘をついていないけど、わしがお前たちに情報を漏らす可能性は常に考えられているだろうから。」
「・・・いや、それだけ分かれば十分だよ。どっちにせよ、港に異国のガレオン船が入ってくるとは思えない。でも、小型船で姫君が国に凱旋することもない。だから、ガレオン船と合流する確率は高い。本当は港を出たところを待ち伏せできるといいんだけど、海都の警備隊が近づけさせないと思うんだよな。でも、大型の帆船が待機できる場所は、かなり絞れるし、そういう質問ならアモロの船乗りはペラペラ教えてくれる。当日の風と潮なら、マルカブが読める。相当、絞り込めるはずだ。」
 だから狙うなら海上だ、とディスケはきっぱりと述べた。さすがだねえ、とクー・シーは口笛を吹いた。
「お前は頭がいいから安心だ。・・・・・・アヴィーとマルカブのこと、頼んだよ。」
「爺さんはカリーナのこと、ちゃんと守れよ。」
 互いに、相手は「当然」と答えることは知っている。知っているから、「当然」とは答えなかった。これは、ただの挨拶だ。
 それは、クー・シーとディスケの『別れの儀式』だった。


*****

 サビクとアル・ジルは港の管理人の老人のところにいた。
「だからね、カリーナが国に帰るとしたら、船で帰るしかないでしょう!?カリーナが乗ってる船を知っていたら、教えてほしいの!」
 直球すぎるアル・ジルの質問に、老人はパイプをくゆらせながら、「さあ・・・分からないな。」と答えるしか出来ない。
「・・・君たちの話を総合すると、カリーナは姫君でその迎えの船がこの港に来ている、ということになるわけだ。」
「そうだよ!」
「カリーナが姫君か。・・・まあ、品のある子だとは思っていたが・・・、・・・・・・・・・それにしたって『アルゴー』に馴染みすぎていなかったかな?姫君だというのは本当なのかね?」
「本当なの!」
「・・・じいちゃん。話、逸らさないでよ。」
 サビクが口を挟むと、老人は苦笑を浮かべた。アル・ジル相手なら幾らでも煙に巻けると思ったが、なかなか賢いサビク相手ではそうもいかないようだ。
「私は、ただ港の管理を任されているだけで、異国の船に対する権限は何もない。公式でなく、国が隠すべきだと判断した出航であれば、さすがに私にも知らされないこともある。」
「知らないってこと?」
「もしくは、知っていても口外できないってことかもしれんがね。それとも、港に張り込むかね?毛布とランプぐらいは貸せるが。」
「・・・・・・もうちょっと、貸せるものはない?」
 サビクが周囲を見回しながら訪ねた。地図と海図ぐらいかな、と答えながら老人は立ち上がる。
「さて、私は仕事に戻らなければならない。君たち、ここにいるのは構わないが、ここにいてもカリーナは探せないぞ。何せ、ここで貸せるものは、毛布とランプと地図ぐらいだ。地図も海図も引き出しの中だ。借りていきたければ、勝手に持って行きたまえ。返してくれれば、構わない。」
「・・・いいのか?」
「ああ、使い古した海図だが、船乗りたちには貸している。もし、そこに何が書いてあったとしても、私は『口外』はしていない。」
 そう言って口の前に人差し指を置く老人に、サビクは目を輝かせた。
「・・・・・・!ありがとう!今度、お礼をするよ・・・って言っても、花か薬草ぐらいしかないけど・・・。」
「いいや。それより、スった財布の中身を早く返済してあげなさい。・・・頑張りたまえ。」
 サビクの返事に、老人はにっと笑い、彼の肩を軽く叩いて去っていく。サビクは一礼したあとに、机の引き出しを開けた。アル・ジルはそれを覗きこみ、
「サビク、地図を借りていくの?」
「ああ。地図は借りていいって言ったろ?わざわざ。」
「う、うん。そうだけど・・・」
「そこにヒントがあるんだと、おれは思う。アーモロードの周りは入り組んでるから・・・外洋に出るまでは、アーモロードの船乗りが航路を選んでるだろうし、その間の航路の安全って、アーモロードの責任になると思うんだ。だから、港のじいちゃんが知らされないはずはない。実際、昨日と今日、港には衛士が多いし、警備隊の船が何台か出てる。」
「・・・そ、そっか!」
「せめて外洋に出るまでの道が分かれば、ミアプラキドゥス号で先回り出来るだろ?俺たちじゃ航路が分からなくても、マルカブには分かることもあると思う。地図だけでも持って行けば、ヒントになると思うんだ。」
「・・・すごい!サビク、頭いい!!カッコいい!」
 アル・ジルが無邪気にサビクを誉めて、サビクは「別にフツーだよ。」と頬を掻いた。そして、一枚の地図を見つける。地図には、赤鉛筆で、アーモロードの島を回るような線が書き込まれている。そして、その線の下には、明日の日付が書いてあった。
 サビクとアル・ジルは顔を見合わせた。
「・・・・・・、これ、みんなに見てもらおう。」
「うん!」


 カリーナがフロレアルと約束をした『帰国』の日まで、あと1日。


(30章5話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

ディスケとサビクは、問題解決力が高い、
という設定があるのですが、やっと片鱗を匂わせられました。(笑)
あと、港のおじいちゃんもやっと書けました。おじいちゃん回ですね、今回。

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