まよらなブログ

第二部・プロローグ


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

本日から、更新再開です。
第二部、ということで開始させていただきます。
今回はプロローグでして、
世界樹1か新世界樹をクリアまでした方は何となくわかるけど
そうでない方は「え?別の話なの?」と思うようなネタです。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



プロローグ:「千年の福音」
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 世界は半ば滅んでいる。
 ・・・半ばどころか、8割ぐらいか。大陸から広がった汚染 ―― 汚染と言うより疫病のようだった―― は大陸を席巻した。この小さな島国が国という形をどうにか形を保っているのは、陸続きではないから。海が汚染の防波堤となっている。それだけの理由だった。
 とはいえ、海は断絶ではない。海はどこにでも行ける道でもある。だからこそ、汚染もいつかはここに着く。かつてはるか南西の大陸で誕生した人類が、陸を伝い海を渡って世界中に広がったように。
 海によってどうにか時間を稼ぐことができたこの国で、科学者たちは最後の希望を見つけようと奮戦している。汚染を浄化する方法、人類を環境に適応させる方策、星から逃げる手段。あらゆる分野の学者があらゆる方策を考え、実行していた。
 その科学者と人類の足掻きの一つに、星間移民があった。星から逃げていく手段の一つ。人類の『種』としての希望は繋げる方法だ。国家を超えた巨大なプロジェクト(その後、速すぎた汚染によって多くの『国家』は事実上解体したが)は、巨大な移民船をエリダヌス座ε星に向けて飛ばした。かつては人類が生命体の痕跡を探した恒星系だ。それももう大昔の話で、当時の稚拙なデータを見ても知的生命体がいないと言えた。そこに人類が生存可能な惑星がある可能性は低いが、新たな候補地も見つからなかったし見つけている時間も技術も失われた。
 その移民船には、大昔のSF小説でエリダヌス座ε星の惑星を開拓した人物の名前があてがわれた。まるで願掛けだ。現実は小説ではない。小説は、現実を書き換えたりしない。けれども現実を諦めきれない足掻きの果てに、打ち上げられた移民船。それでも捨てられない希望を乗せて、打ち上げられた移民船。
 ・・・打ち上げられて、一か月後。
 ・・・・・・その移民船が大きな木に寄生されて、南の島に帰ってきた。
 移民船は衝突の衝撃で、地中深くに潜り込んだ。その上に、巨大な木がしっかりと根を張っている。かつてはロケットを宇宙に向けて飛ばしていた島の近くに落ちてくるとは、皮肉だとしか言いようがない。
「・・・皮肉ばかりでもないわ。」
 と心を呼んだかのように、向かいに座る赤毛の少女が囁いた。驚いて・・・というより不審で眉を寄せて彼女を見る。喋れないのではないか、と思っていたほど、彼女は無口だったのだ。しかし、キーボードを打つ動作は『饒舌』であって、ハッキングの手口やプログラムの稼働率など神懸かっていた。彼女の打ち込んだ言語通りにプログラムが稼働する様は【呪い】のようでもあった。
「・・・あの木が降ってきたとき・・・白い光が・・・降ってきた。」
「・・・それがこの地に広がった病と・・・、この地の汚染を浄化したことを、君は言いたいのか?」
「そう・・・。」
 馬鹿馬鹿しい、それこそ『皮肉』でしかない。
 男は奥歯を噛んだ。その奇跡のために、この木は残されている。多くの研究者がこの木を調べている。この木を取り除き、移民船を掘り起こそうと誰も言わない。落ちてきた移民船を映した映像には、この木ともう一つのおぞましい【何か】が写っていた。そして【何か】が移民船を食い破り、中に蛸のような腕・・・もしくは脚・・・もしくは別のなにか・・・を這わせ、・・・奥から人を『吸っていた』のも写っていた。
 あの衝突と正体不明の宇宙生物(生物なのかも怪しいが)の寄生を考えれば、生存者はいないだろう。それも分かっている。だが、一刻も早く、この木を取り除き、あの「何か」を駆除し、移民船を掘り起こし、・・・そして乗っている人々を助けるべきではないのか。
 奥歯を噛む彼に、少女は告げた。
「・・・ヤワン将軍も、同じように、考えている。」
 心を読まれているようだが、それについてはもう無視することにした。
「でも・・・、あの【何か】に勝てるとは考えていない。」
「・・・つまり、良識があり軍人にしてはお人好しが過ぎる彼も、人類を守るために移民船の人々を見捨てたわけだ。」
「あなたが、彼なら・・・どうするの?」
 少女の問いかけに、男は奥歯をより噛んだ。
「・・・君は、私が私情に走っているといいたいのかね?」
「あなたの・・・それは、私情だと・・・思う・・・。けど、私情に走ることは・・・悪いことなの?」
 少女は瞳を上げた。
「本当に悲劇なのは・・・自分の私情を、義務にすり替えてしまうこと・・・。私は、私情も義務も・・・どちらを大切にしても・・・間違ってない・・・と思うけど・・・」
 少女は囁くような声で問いかけた。
「より不幸になるのは・・・どっちなの・・・?それとも・・・どちらとも?」
 男は、思わず視線を逸らした。教科書でも読むかのように、固い声で返事をした。
「・・・我々は、それでも人々が不幸にならないように、研究を続けている。」
「ええ・・・。」
 少女は力なく頷き、
「・・・知っている。科学者はみんな・・・そうよ。」
 そう言って目を閉じた。
 男は深い溜息をつき、手を組んだ。
 男は白い壁と事務机、それに大きなスチール製の本棚のある部屋にいる。手前には応接用の合皮のソファ。事務机にはモニターが二台並んでいる。天井まである本棚は壁一面に取り付けられている。入り口の隣には、小さなミニキッチン。その隣に置かれた長机(どこの学校や機関にもある脚の畳めるアレだ)にはコーヒーメーカーが置かれている。コーヒーなど手に入らなくなったが。
 よくある研究室だ。実際、ただの研究室だった。どこにでもありそうな研究室だったが・・・今、これだけの設備が置かれ、強奪や暴力から守られている施設はどれだけあるだろう。どうにか国の形が保たれている極東の南の島にある研究者たちの砦は、未来を賭けられる数少ない機関として守られていた。
 そして、ここは彼の研究室だ。装飾的なものなどなく、無機質な空間。しかし、いくつか例外があった。
 一つは、蓄音機を模したスピーカー。CDもレコードも、博物館でしか見たことがない。蓄音機だって博物館でしか見たことはないが、いつの世も懐古主義者はいるものだ。・・・もっとも本物の蓄音機を知っている人間はもういないから、懐かしんでいる昔はファンタジーの世界の中にしかないのだが。
 そしてもう一つは、机の上に置かれた幾つかの写真立て。彼の論文が表彰されたときに学生たちと撮ったもの、亡き妻と写っているもの、彼と娘夫婦と孫娘が写っているもの。そして、先ほどの蓄音機をのぞき込んでいる幼い孫娘の写真。
 彼は、写真を見つめた。・・・・・・・・・生きてはいない、と、諦めるべきなのか。
 彼がうなだれたときだ。扉がノックされた。
 赤毛の少女が目をあけて、部屋の主でもないのに「どうぞ」と言った。
「失礼します。」
 入ってきたのは長い黒髪(光の当たり方で青くも見えた)の女性だった。秘書らしいスーツ姿ではあるが、凛とした佇まいは武人のようでもあった。額にある切り傷が、そう印象づけるのかもしれない。
「博士、お待ちいただいて申し訳ありません。」
 女性の背後に男がいることに気が付き、彼は立ち上がった。
「・・・到着されたのか?」
「はい。博士とお二人で話がしたい、とのことです。」
 女性は赤毛の少女に視線を向け、「行くぞ」と告げた。少女は無言で立ち上がり、彼に黙礼してから部屋を出ていく。
 代わりに、一人の男が入ってきた。
 部屋には二人の男だけになった。どちらも、それほど歳は変わらない。部屋の主の方がいくつか年上だったはずだ。だが、それぞれが専門分野で上げてきた功績を考えれば、対等な立場とも言えた。
「時間がありません。挨拶よりも早く、用件をお伝えする無礼を許していただきたい。」
 と来客は言った。
「我々の【世界樹計画】に、ご協力を。」
「・・・私が?」
「ええ。」
 来客は頷きながらも、部屋の主の背後へと目をやった。
 そこには窓・・・というより全面ガラス張りの壁がある。そして、その向こうに見えるのは、
 ―― 空から降ってきた、巨木だ。
「・・・私ではなく、」
 部屋の主は背後を振り返らずに、言った。
「あの木に用か。」
「あなたの知識とあの木の力を、我々にいただきたい。」
 部屋の主はせせら笑った。
「・・・代わりに、君は何かくれるのだろうか?軟禁までされて要求を聞くほど、私はお人好しではないぞ。」
「移民船でコールドスリープに入った人間たちは生きています。」
 不意の情報に、部屋の主は瞳を上げた。来客は瞳を上げずに、低い声で続けた。
「あなたのお孫さんは生きています。」
「・・・・・・・・・、・・・嘘だ。」
「ええ、半分は。」
「・・・どういうことだ?」
「あの木とともに降ってきた【モノ】については、ご存じでしょうか。」
「映像は見た。・・・何物なのかは知らないが。」
「【アレ】を何物かと説明できる人間がいたら、是非ともご教授いただきたい。アレは、どうやらコールドスリープ状態の人間から『栄養』を取っているようです。生かさず殺さず。眠らせ続けながら。」
「・・・・・・・・・嘘だ。」
「いえ。これは事実。管制塔に残った機能を修復したところ、移民船が放つ信号を受信しました。あまりに微弱で判定は困難でしたが、アーヴィング博士が運用を始めたスーパーコンピューターによる解析結果がここに。」
 来客はそして、鞄の中から掌より少し広い機械を取り出して、操作した。二人の間に数々のグラフが浮かび上がる。移民船には、定期的にデータを管制塔に送るようプログラムされている。そのデータの中には人々の脳波状態も含まれており・・・、
「乗客No.11413の脳波状態です。」
 その中のグラフが一枚だけ、宙に映し出された。
「多少気になる部分はありますが、生きています。」
「・・・・・・待て。何故、一部の脳機能が過覚醒状態なのだ。しかもこの部位は・・・海馬と扁桃体・・・?」
「・・・夢を見ているのでしょう。」
「記憶を司る海馬が動くのは分かるが、扁桃体は・・・。・・・悪夢を見ているのか?これは恐怖を感じているとしか・・・」
「・・・それこそが【アレ】の目的なのかもしれません。」
「・・・【アレ】?」
 彼は思わず聞き返した。来客は頷いた。
「先ほどまで【アレ】と呼んでいた、未知の生き物です。・・・生き物なのかは不明ですが。【アレ】が何らかの操作をし、乗客たちに『恐怖』の感情を呼び起こしているのではないか・・・。そう、私は推測しています。」
「・・・何故?」
「【アレ】の考えは分かりかねます。」
 来客は、機械を操作してグラフを消した。空中には、何も写らない。ただ、そこには空気があるのみだ。来客が、彼に向かって一歩踏み出した。一歩だけだったが、・・・彼は思わず後ずさった。
「しかし、ここで重要なことは、」
 来客は、低い声を一層低くした。それは囁き声だった。
「あなたのお孫さんは生きている。」
 それは、福音にも聞こえた。
 ギチギチと不自然に、彼は首を巡らせて背後の窓を見た。空から降ってきた巨木がある。囁きは続く。
「あの木のデータとあなたの頭脳を、我々にください。あれこそ、我々の求めるもの。この星の汚染を浄化する、有力な手がかりです。」
 来客の声は聞こえない。巨木を目に映しながらも、その巨木は見えていない。あの木の下にある移民船と・・・そこに乗っているはずの孫娘を、彼は見る。生きているはずの孫娘を、そこに見る!
「私たちは、あの巨木とその下にいる【何か】の解析を進めます。それは、あなたのご家族を救出するために必要な情報になるはずです。どうか、ご協力を。」
 来客は告げた。福音を述べられているのに悪魔に囁かれているような心持ちで、彼は来客へと視線を移した。


 それははるか大昔。前時代とも呼ばれる1000年前の話だ。
 かつて、男が囁かれた場所は、今はアーモロードと呼ばれている。


*******


 そのアーモロードに向かう船の上で、少年は夜明けを見ていた。
 白い空の下、水平線に火が走る。まるで火事のようだった。
 ・・・・・・一日とは、燃えるように始まるのか。
 少年は頷きながら、メラメラと揺らぐ水平線を見つめる。まぶしい。やがて太陽が顔を出し、火事のような光の反射は治まった。今度は、直接照射される朝日が眩しい。
「レグルス様!お早いんですね!」
 声は若い女性のもの。足音もなく近寄られて、背後から抱きつかれた。ちょうど頭の上に胸が乗るような身長差があるのだが、少年は気にしなかった。
「ミツナミこそ、早いですね。」
「レグルス様が起きる気配がしましたので~!」
 軽い口調で答えるが、気配というもののに敏感な女性だ。そして、影で少年を守る護衛だ。少年の行くところに付いていくのが、女性の役割でもあった。
「ミツナミ。」
「はあい?」
「一度離れて。」
「はあい。」
 渋々と離れた女性を、少年は振り返る。長い黒髪をまとめた黒装束の女性が背中の後ろで手を組み、少年を見てにこっと笑った。
「航路は順調ですよ、レグルス様。」
「そうみたいですね。」
「さ、部屋に戻りましょ。セルファが気が付いたら大騒ぎ・・・・・・」
 と、女性はバタバタと聞こえる足音に気づいて、遅かったかも~、と笑った。少女が盾を持って、甲板にばっと飛び出してきた。いつもは二つに結っている長い亜麻色の髪は、下ろしたままだった。
「レグルス様!レグルス様!?いらっしゃいませんか!?」
「ここにいますよ、セルファ。」
 少年が柔らかく呼ぶと、おおう、と少女は間の抜けた声を上げ、きょろきょろと周囲を見回した。そうしてようやく少年を見つけると、ほっと胸をなで下ろした。
「お部屋にいらっしゃらないので、心配しました。」
「申し訳なかったですね。」
「セルファは心配しすぎ~。こんな船の上で、何かが起きると思うの?」
「警戒心がなさ過ぎるんです、ミツナミは。どこであっても、レグルス様の安全を確保するのが我々の使命です。」
「でも~、盾の出番があると思う?」
「わ、私は重騎士ですよ!盾でレグルス様をお守りするのがお役目です!」
「融通利かない~。」
「ミツナミはユルすぎるんです!」
「真面目がセルファのいいところですし、自然体なのがミツナミのいいところです。」
 と、12歳ほどの少年は実に大人に受け流した。20代半ばの女性は苦笑し、16、7歳ほどの少女はぱっと顔を輝かせた。
 レグルスと呼ばれた少年は、二人を見上げ、
「ミツナミ、」
「はあい?」
「セルファ、」
「はっ!」
「もうじきアーモロードに着く。これからも、よろしく頼みますね。」
「「はい!」」
 二人の腹心は同時に頷き、少年は満足そうに笑った。




(32章に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------


新世界樹もでたので、心おきなく1000年前の話にしました。SFです。
以前、「うちの世界樹設定は世界が滅んでから1000年も経ってない。
    こぐま座のポラリスを北極星にしているから」と書いた気がしますが前言撤回です。
(個人的には西暦3500年ぐらいのつもりです。
 ケフェウス座のエライが北極星だけど暗い星だからポラリスが代わりに使われてることにしておきます。)


前半は、1000年前で「彼」はそのうち自キャラとして登場します。
後半は、第二部のキャラの顔見せです。
ショタプリ、シノ姉、ツインテファラ子で、前から、腹黒・ショタコン・くそ真面目トリオです。


なお、
もしや・・・!という人物が複数おりますが、スターシステムだったりご当人だったりアーヴィング博士は無論ドリカパパだったりスパコンは大川ボイスのアイツです。実際にあった「オズマ計画」とか、リアル世界のあれこれもぶっこんでます。あと、移民船の名は「ベントリイ号」という設定が存在しています。新世界樹にアシモフパロが見あたらない腹いせでしかありません。

あ、来客の台詞は中田ボイスでお読みください。

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