まよらなブログ

32章1話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


本日から、今のアモロの話に戻ります。
ダラダラとした話になってしまいましたが、
まあ、そんな連中の話なのでいいやあ。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。




32章1話
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「やっぱり、気功師いないと辛いなー。人員急募だな。」
「そうだな。・・・港の爺さんが紹介したい気功師がいるって言ってたから、後で聞きに行ってみる。」
「あとさー、防御力に問題があると思うんだよな。」
「それは今に始まったことじゃねえだろ。」
「そうなんだけど、重騎士を入れてさ、俺らの中で誰かがサブクラスで治療の技を使うのも、有りじゃねえ?」
「誰が治療役になるんだ?お前とアヴィーは、治療役より攻撃役に回したい。オリヒメもだ。」
「じゃあ、おとーさんしかいないじゃんー。」
「俺じゃ、大した治療はできない。向き不向きがあるだろ。」
「マメな性格だから看病はうまいのになあ。」
 そんな会話を背後に聞きつつ、オリヒメはこっそりとため息をついた。彼ら『アルゴー』は探索を中断し、海都に戻ってきたところだった。迷宮の入り口から街に向かう間の道・・・森と遺跡に囲まれた道を歩く。朽ち果てた建造物に寄り添う道祖神が見守る道で、『アルゴー』は緊張感のない会話を続けている。オリヒメはその会話を聞き流しながら、先ほどまでの探索を思い起こす。
 四階層にあった開かない扉・・・。フカビトの姿を模した像のついた扉。その前にもう一度やってきたとき、アヴィーの手の甲が光った。以前、【真祖】によってつけられた印が光ったかと思うと、扉が開いた。
 その奥には、細い通路とフカビトの猛攻があった。そして、さらに奥から発せられる混沌とした気配もあった。フカビトの中でも力のある近衛兵や信奉者たちと戦うだけでも苦労するのに、奥から漂う気配に当てられながらの戦闘は必要以上に消耗した。まして、『アルゴー』は戦闘スタイルを変えたばかりで、三重にも消耗した。
 大した距離も進めず、彼らは一度、迷宮から離脱した。その帰り道だ。
「・・・少しの間は苦労しそうですね。」
 背後の会話に参加したつもりはないが、オリヒメはそう呟いた。聞こえていたのか、だよなー、と背後から相づちが返ってくる。
「慣れるまでの間はなー。やっぱり、おとーさんが治療役になるのが妥協点じゃねえ?」
「・・・お前は俺に治療されたいのか?」
「いやー、カワイイ子の方がいいけどよー。あ、オリヒメ、やる?」
「私は治療者には向きません。切開や切断なら出来るかもしれませんが。」
「うわ、コワい。」
 そんな会話を聞いているのかいないのか・・・、・・・ほぼ間違いなく聞いていないのだが、オリヒメの前方でアヴィーとスハイルが何か言い合いをしている。
「だから、さっきはスハイルが悪いんだよ!僕が星術を使うときに、前に出たら危ないのは分かるでしょう!?」
「ぴぴぃー、ぴっ!!」
「僕、今から炎を出すよって言ったよ!」
「ぴー!」
「聞いてなかったスハイルが悪いんだよ!」
「ぴーーッ!?ぴぴぃー、ぴっぴっ!ぴっぴっ!」
「蹴らないでよ!僕の所為じゃないってば!ねえ、カリーナもそう思うでしょ!?」
「ぴぴーぴ!ぴぴ、ぴぴよぴぴよ!」
 そう言って、アヴィーとスハイルはばっと振り返り・・・・・・、そこにカリーナもクー・シーもいないことに改めて気が付いて・・・、そしてアヴィーとスハイル以外の『アルゴー』も決まりが悪くなって・・・、しばらく沈黙が降りた。
「・・・・・・さ・・・・・・」
 沈黙の中、アヴィーが声を震わせた。
「寂しいようううう・・・・・・!」
「・・・ぴぴーぴ・・・!ぴいぴーん・・・!」
 うええん、と泣き出すアヴィーとスハイルに、マルカブは溜息混じりに歩み寄り、
「・・・お前等、何回同じことやってるんだよ。」
「だって、・・・だって・・・!」
「ぴー!」
「ああ、分かった。分かってる。泣くな泣くな。」
 と、マルカブはそれぞれの頭を撫でる。
「おとーさんも何回同じことしてやってんだろうなー。」
「・・・カリーナたちが帰って四日目なのに、慣れませんね。」
 それをディスケとオリヒメが呆れ気味に眺める。
 『アルゴー』は大きく変わったが根本は変わらないままだったし、
 ・・・・・・カリーナとクー・シーのためにも変わってはいけないと考えているのだろう・・・
 そう、オリヒメは感じるのだ。

*****

 『アルゴー』が宿に帰ると、「みなさんの留守中に手紙を置いていった人が何人か。」と宿の少年が預かった手紙の束を差し出してきた。
 それを宿のラウンジで開封し、一通り中身を読んだマルカブはうんざりと息を吐く。テーブルを挟んで向かいに座り、煙草を吸っているディスケも苦笑した。
「一通ぐらいラブレターがあってもいいのになー。」
「・・・全くだ。」
 マルカブはガリガリと頭を掻く。封筒の中身は、言ってみれば履歴書だ。
 「深都を発見したギルド」「迷宮の最奥に進むギルド」「姫と王と救ったギルド」、・・・そして世界樹の謎に最も近いギルド・・・として、『アルゴー』は有名になっている。おまけに、『アルゴー』はこれから巨大な敵に挑むらしい・・・、そんな噂も立っている。名を上げたい冒険者たちにとって、メンバーが欠けた『アルゴー』に加入することは大きなチャンスだ。そういった冒険者たちが、『アルゴー』の人員不足を耳聡く聞き、自分を売り込みにくる。彼らが置いていった手紙には、彼らのセールスポイントが羅列されていた。事実もあるが、多くは都合のいい誇張で彩られているのだろう。
 マルカブは手紙を律儀に読んだ上で、便箋を一通一通封筒に収め直し、
「馬鹿馬鹿しい・・・。名を上げたきゃ、自分でギルド作れっていうんだよ・・・。今まで、誰とも組まなかった奴らが何を言ってんだかな・・・。ただの便乗じゃねえか。」
「ああ、それは同意するなー。それに、『アルゴー』に対して売り込み行為って、悪い印象になるのにさ。俺らに対する研究が足りないよなあ。」
「・・・悪い印象?」
「だって、お前もアヴィーも、自分を売り込んでくるガツガツした人間、あんまり好きじゃないじゃん?その時点で、めんどくさくなってアウトだろ?まあ、オリヒメも強引に仲間入りしたけど、あの子は自分の能力を売り込んではこなかったからなあ。」
 ディスケがおかしそうに指摘をし、マルカブは再び頭を掻いた。確かに、押し売りは苦手だった。
 ディスケは笑ってから、テーブルの上に置かれた封筒を見つめ、
「俺も、無理に誰かを加入させる必要はないとは思ってるんだけどさ。」
「・・・あ?」
「・・・お前はさ、・・・もしかして、カリーナと爺さんがいない穴を埋めることに、罪悪感みたいなものを感じてたりする?」
「・・・・・・・・・、何を言ってんだよ。」
「もしも、そうなら、それは間違いだと思うぞ?」
 封筒から目を上げずディスケは言い、マルカブはつまらなそうに鼻を鳴らした。
「・・・そんなの、俺も間違いだと思ってる。」
「じゃあ、罪悪感を感じてないって言い切れる?」
「言い切れるか。新しい仲間が入ったら・・・、それこそカリーナたちがいない証明になっちまうだろ。」
 でも、とマルカブは続けた。
「そんな俺の感傷や我が儘で、俺らの探索が止まったり、俺らの誰かが危険な目にあったなら・・・、それこそカリーナに顔向け出来ないだろ。」
 あの子は我が儘を我慢して自分の責任を果たしに行ったんだから、とマルカブは囁いた。ディスケは小さく笑みを浮かべた。
「おとーさん、大人になったなー。」
「・・・何で上から目線なんだ。」
 マルカブが眉を寄せたタイミングで、カツカツという乾いた足音が二人に寄ってきた。
「ディスケ、」
 固い少女の声がする。ディスケは顔を上げて、
「おう、ディアデム。どうした?」
 近寄ってきたアンドロの少女を迎える。ディアデムの後ろにはエラキスが付き添っていた。ディアデムは二人の前で立ち止まり、一度エラキスを
振り返った。エラキスが「自分で言える?」と聞くと、彼女は頷いて、もう一度ディスケを見て口を開いた。(病院に来た子どもと付き添いの母親みたいだ、とマルカブは思った。)
「腕の関節に小石がはまってしまいました。取り除いたのですが、念のためディスケに見てもらった方がいいとエラキスが。見ていただけますか?」
「ああ、いいよ。・・・あー、でも工具が家だ。」
「私の部屋に工具があります。それを使いますか?」
「そうしよう。じゃあ、工具持っておいで。見るのは、ここでいいかな?」
「はい。了解しました。」
 ディアデムが頷き、部屋へと一度戻っていく。
「急にごめんなさい。私たち、ディアデムにとって何が良くないことなのか、まだ分からなくて。」
 エラキスが謝罪をした。ディスケはくわえていた煙草を灰皿に押しつけた。
「平気平気。メンテナンスも兼ねるしさー。ついでに、エラキスもメンテの様子を見ていけよ。なんかあったときに見てやれるだろ?」
「ええ、そうさせてもらうわ。よろしくね。」
 エラキスは綺麗に微笑みながら頷いた。こりゃマルカブが未練たらたらなのも分かるわーとディスケは思いながら、ディアデムの説明をしておく。
「実は、ディアデムは自分の状態をモニタリングしてるらしいから、あの子が何も言わないうちは慌てなくても平気なんだよー。」
「あら・・・。心配しすぎたかしら。」
「でも、何か言ってきたときは、もう異常が起きてるってことなんだよ。予防っていう考えは、ディアデムには、まだ、無い。だから、念のため、って言ってもらったのは良かったよ。俺もデータほしいしさー。」
「じゃあ、これも渡しておいた方がいい?ディアデムの肘の関節にはまった石なんだけど。」
 と、エラキスがテーブルに黒い石を置いた。黒くごつごとした、気泡のような穴が無数に空いた石だった。大きさは、ごく普通に道ばたに転がっていても違和感のない小さなもの。こんな大きさでも関節にはまるのか・・・とディスケは呻きながら、石をつまみ上げて観察をする。
「これ、溶岩の塊だろ?『ファクト】は三階層探索中なのか?」
 マルカブが石を見て尋ねると、エラキスは頷いた。
「ええ。ディアデムが探索慣れしてないから。まずは様子を見ようって、三階層に戻ってるの。ちょうど源泉調査の依頼もあったしね。」
「あ、ツィーの代わりにディアデムが入ってんのか。」
 石を観察しながらのディスケの何気ない言葉に、
「・・・ええ。・・・代わり、ではないけどね。」
 エラキスは少々気に障った様子で答え、マルカブがテーブルの下でディスケの臑を蹴った。大げさに痛がるディスケを余所に、マルカブはエラキスを見上げて、
「・・・悪いな、エラキス。こいつも悪気はないんで許してやってくれ。」
「ええ。・・・でも、あなたたちこそ、どうなの?。」
「・・・どうって?」
「・・・聞いたら悪いことなら、ごめんなさいね?私たちはディアデムが探索メンバーになって、5人で探索をしている。あなたたち、今4人でしょう?もう一人、誰か入れないの?」
「・・・メンバーは募集中なんだけどな、」
 マルカブは封筒の束を振り、
「どうもピンと来ない。」
「あんまり簡単に、新しい仲間を迎え入れたくないおとーさん心なんだよ。」
 ディスケが臑をさすりながら言い、マルカブに睨まれた。エラキスは、気持ちは分かるけど、と呟いてから、
「・・・それで怪我をしたり、勝てる魔物に苦戦したりしたら、それこそ、カリーナちゃんたちは喜ばないわよ。」
「・・・それも分かってる。」
 マルカブは呟いて、立ち上がり、
「・・・そうだ。港の爺さんも知り合いに声かけてみるって言ってくれてんだ。ちょっと聞きに行ってくる。」
 工具箱を持ってきたディアデムと入れ違うように、その場を去った。
 ディスケは「いってらっしゃーい。」とそれを見送りながら、ディアデムから工具箱を受け取る。エラキスはマルカブを見送りながら、呆れた様子で小さく溜息をついた。
「・・・相当、参ってるわね。」
「まあ、空の巣症候群っていうやつだよ。」
 ディスケは、マルカブが座っていた椅子をディアデムに勧めながら苦笑した。ディアデムが不思議そうに首を傾げながら、
「空の巣?・・・スハイルが巣立ちをしたのですか?」
「巣立ちをしたのはカリーナだよ。さ、腕を見せて。」
 ディスケの答えに、ディアデムはますます不思議そうに首を傾げつつ、彼に言われるままに腕を差し出した。


(32章2話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

前回から一転して、気が抜けてる『アルゴー』です。
いつも通りの『アルゴー』、ともいいます。

『ファクト』が受けてる依頼は「源泉調査依頼」のクエストです。
志水の中では、これは『ファクト』が受けたことになってます。
こればっかりは、ギルマス以外は女の子な彼らが受けたの方が絶対に楽しい…
と思ってます・・・・・・・・・、書かないけどね!(笑)

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